いよいよ2022年シーズンが始まる。
結論から言うと、かなり厳しいシーズンになるはずだ。その要因は次の2つだ。
- COVID-19陽性者が多数出た影響が大きかったこと
- ヤクブ・シュヴィルツォクのドーピング陽性問題の解決が遅れていること
COVID-19陽性者が多数出たことで、チーム作りの仕上がりが遅れている可能性は高い。
練習試合も沖縄SV戦とジュビロ磐田との非公開試合のみ。これで仕上げろと言われても、長谷川健太監督は魔法使いではない。ムリだ。
ましてや8人の陽性者のコンディションを整えるためには明らかに1ヶ月以上かかるはずだ。それも陽性となっていたメンバーによってはかなり大きな影響があることが予想される。
そんななか2月3月だけで8試合を消化しなければならない。その8試合でチームを作っていくような形になるだろうし、そうなると勝敗に大きな期待はできないだろう。
優秀な選手が多いので、シーズン中盤以降徐々に押し上げることはできるだろうが、上位を狙うにはこの8試合の遅れはキツい。
グランパスファミリーにとっては、我慢が求められる前半戦になるはずだし、覚悟して応援していって欲しい。
長谷川健太サッカーのキーワード「ファストブレイク」とは
ファストブレイクは、もともとバスケットボール用語になる
その要素は以下のようなものになる
- 相手の攻撃の選択肢を狭めて奪い、確実にマイボールにする
- マイボールにした瞬間にボールホルダー以外の選手が複数で速攻をかける
- アウトナンバー(3:2や2:1で、オフェンスが数的に有利な状態)を作り出してシュートに持ち込む
動画を見て貰った方がイメージがつきやすいだろう。
単なる速攻で単騎で突撃をするのではなく複数メンバーによる局所的な数的優位を作るということがキモだ。
昨季、カウンターのシーンでマテウスが1人突っ込んで3人がかりで潰されるようなシーンをファミリーなら何度も見てきたことだろう。それではダメだ、ということだ。
「得点が少ないことを改善して欲しい」というミッションを持って着任している長谷川健太監督にとって重要な戦術になる。
インサイドグランパスの練習動画を見ているだけで、ファストブレイクを意識して出来るようにしようとしていることが感じられた。
長谷川健太サッカーのキモ「相手攻撃をフィニッシュまで行かせず、奪いきってマイボールにする」
これも昨季、ブロックを作って守ってはいるものの、相手の攻撃をはじき返すだけで、ずっと相手ボールの時間帯が続くという試合が多かったことをファミリーなら覚えているだろう。
ファストブレイクを機能させる要因の一つは固いディフェンスと、シュートを決めきれないと「走られる!」という心理的なストレスを相手に与えることだ。
カウンターを警戒していれば、どうしてもカウンター対策に人数を割かなければならない。これによりゴール前に入り込む選手の数を抑制することもできる。これが守備をうまく行くようにする要因になる。
これを要素分解すると、
- 固くてシュートを防ぐことができるセンターバック
- マイボールにした1本目のパス(バスケで言うアウトレットパス)に長けたディフェンスライン
- こぼれ球を拾うことに長けたセントラルMF
が必要になる。センターバックは強さと、さらに上手さが求められそうだ。
昨季のようにDFラインで各駅停車のパスを繰り返しているようではファストブレイクは狙えない。
長谷川健太サッカーのキモ「数的優位を作りつつ、速攻できる中盤」
FC東京ではストライカーでもあるディエゴ・オリヴェイラを中盤サイドに置いていることがあったが、その理由はボールをその強さで運べるからだ。名古屋グランパスでは、相馬勇紀とマテウス・カストロがその役割を担うはずだ。
ただ思い出して欲しいのが、逆サイドには東慶悟のようにボールを落ち着かせることができる選手を起用していたことだ。名古屋グランパスではその役割は阿部浩之や仙頭啓矢が担うことになるだろう。
(ポイント)ボールを落ち着かせることができる選手ということで仙頭啓矢をサイドの候補にも挙げているが、本来ならばサイドに置いてしまうと仙頭啓矢の強みの1つである広い視野からのロングボールが狭い範囲でしか出せないということになる。阿部浩之に課せられた役割は重くなるはずだ。
ボックス・トゥ・ボックスなプレーヤー(自陣のペナルティーエリアから相手陣内のペナルティーエリアまでをプレーエリアとするような選手)である稲垣祥や仙頭啓矢、長澤和輝、レオ・シルバらのセントラルMF陣も、ファストブレイクにおける数的優位を作るプレーヤーとして重要な要素になるはずだ。
(ポイント)レオ・シルバを単騎で前にださせると、中盤中央なだけにプレッシャーをきつくかけられて、ボールを奪われるポイントになる可能性がある。バスケで言うアウトナンバー(3:2や2:1で、オフェンスが数的に有利な状態)を作らなければレオ・シルバの起用が穴になってしまう可能性もある。
長谷川健太サッカーのキモ「ラストパスを決めきるセンターフォワード」
相馬勇紀のサイドをえぐってのクロスや、阿部浩之のエグいラストパス、仙頭啓矢の矢のようなロングパス。多彩な手段で攻撃を組み立てることができると思われるが、それらに対応できるセンターフォワードが必要だ。
今年の名古屋グランパスには献身的でかつシュートの上手いセンターフォワードが2人いる。彼らに期待しよう。
さらに言えば怪我の影響で全盛期ほどではないにしても強くて動ける金崎夢生、出場停止が明ければヤクブ・シュヴィルツォクもいる。前線については心配は要らない。
基本布陣4-4-2
基本布陣は4-4-2と想像する。
【名古屋グランパス】柿谷は「今週は別メニュー」 今季加入の河面旺成は軽い筋肉系トラブル(中日スポーツ) – Yahoo!ニュース
オフに盲腸(虫垂炎)の手術をした影響で、シーズン序盤は柿谷曜一朗の先発は難しいかもしれないが、最終形はこうなるのではないかと思っている。
サイドについては相馬勇紀 or マテウス・カストロ or 齋藤学 or 森下龍矢と、阿部浩之 or 仙頭啓矢の組み合わせになることを予想する。
シーズン序盤は盲腸の柿谷曜一朗のところには仙頭啓矢を置くしかないだろう。代わりになれる選手が彼くらいしかいない。その代わり中盤を務めるのはレオ・シルバか長澤和輝になりそうだ。稲垣祥は鉄板だろう。
センターバックについては高さ・強さではチアゴ・パグヌサットに軍配が上がるが、パス出しの精度で徐々に藤井陽也が取って代わるのではないかと予想する。ただ、ルヴァンカップで吉田晃らにチャンスが与えられる可能性も高いと思われる。
サイドバックは宮原和也と吉田豊で決まりだろう。河面旺成や成瀬竣平がどれだけ絡めるかも期待したいところだ。
攻撃的布陣の4-3-3
サイドを活かした攻撃的布陣ということであれば、4-3-3へのシフトチェンジもあり得る。この形であれば守る場合も満遍なくスペースを埋めることができる。守備時にまずボールを拾うことが重要なファストブレイクでは、中盤中央を3枚で厚くするという方法もあり得る。
「強い守備からのファストブレイク」をより強く意識した布陣と言えるだろう。
布陣の完成まで、まずは我慢
FC東京でも、ファストブレイクが定着するまでだいぶ時間はかかった。
冒頭でも書いたように、名古屋グランパスの2022年では、定着を遅らせる要因は多数あり、開幕戦にその完成形を見ることは難しそうだ。
少しの我慢を強いられることになると思うが、ファミリー全員で後押しをしていこう。