開幕3試合の評価は?
編集A:ここまで3試合で1勝1分1敗です。ここまで見てきてどう思われますか?
デスク:正直言うと、想定以上の結果だ。シーズンプレビュー でも書いた通り、今年のグランパスは、序盤かなり苦労すると思っていた。3連敗も覚悟していた。
編集A:そうですよね。キャンプもろくにできてない=新監督になったのにチームが熟成できていない。選手個人で言っても、新型コロナウイルス感染症の影響でコンディションを上げるどころかむしろ落としているであろう選手もいる。厳しい条件だけが残っています。
デスク:そうなんだよ、その悪条件下での開幕戦の圧勝には本当に驚かされた。
編集A:さすがベテラン監督、というところですね。よくまとめてきた。
デスク:新戦力の台頭は好材料だ。酒井宣福、仙頭啓矢、レオ・シルバ、チアゴ・パグヌサットが非常によくやってくれた。
編集A:こうしてみると、センターライン総取っ替えなんですよね。もうチームとしては別物と言っていい。
デスク:ヴィッセル神戸戦はそうだったな。しかし、その後の試合には違和感があるんだ。
編集A:え?違和感ですか?
違和感1:これってターンオーバー?
編集A:開幕3試合のスターティングメンバーの変遷をまとめてみました。
デスク:これを見て、どう感じる?
編集A:リーグ戦を見据えて、ルヴァンカップの2試合ではターンオーバーをしているように思えます。
ターンオーバー:試合の重要度に応じてスターティングメンバーを大幅に入れ替えること。(他のスポーツでは意味がまったく異なる)
デスク:はたして本当にそうなんだろうか?
編集A:と、言いますと?
デスク:清水エスパルス戦だけ見ると、宮原和也・中谷進之介・レオ・シルバ以外8人入れ替えている。これだけ見ると開幕戦で出番がなかった or 出場時間が限られた選手にチャンスを与えたように見える。ではサンフレッチェ広島戦はどうしてこのスタメンになったんだろうか?
編集A:えっと、試合間隔が1週間空いたので、主力組の試合勘を維持するために?でしょうか。
デスク:中3日でサガン鳥栖戦があるのに主力をガンガン使って?試合勘を目的とするなら、主力組の出場時間は制限した方がいいはずだよな?
編集A:たしかに。神戸戦の先発で、早めに下がったのは仙頭啓矢だけで、ランゲラック・中谷進之介・チアゴ・稲垣祥・吉田豊はフル出場、マテウス・カストロも79分プレーしていますね。
デスク:レギュラーの半分がフル出場っていうのはちょっとターンオーバーとは違うと思うんだ。
編集A:じゃあ、どんな目的があるんでしょうか。
キャンプで練習試合を行うことで、見極めるはずだったこと
デスク:最初にも書いた通り、キャンプでは練習試合が1試合、そのほかも2試合しかできていない。その練習試合で行うはずだったことはなんだと思う?
編集A:「戦術の徹底と確認」が第1ですよね。
デスク:その通り。でももう1つある。それは「新しい戦術に適した、新しいレギュラーの見極め」だ。現在はそれが十分ではない状況ということだ。
編集A:ちょっとこの3試合の選手セットを比較してみています。
デスク:見て気づくところはあるかな?
編集A:あ!この3試合、4箇所の先発、全部違う組み合わせです。
デスク:そこから導き出される結論は、長谷川健太監督は「新しい戦術に適した、新しいレギュラーの見極め」をやっている、ということだ。
編集A:え、公式戦で、ですか?
デスク:時間があるのであれば、1人か2人ずつ入れ替えながらやっていくのが、結果も残しやすい。だが、もうシーズンは始まってしまっている。
編集A:ひょっとして序盤戦は同じようなことが続きますか?
デスク:いや、この3試合にベンチに入っている選手というのが長谷川健太監督にとっての「大きなグループ」になるだろう。そのなかの組み合わせには限界がある。
編集A:こうやってまとめてみると、入れ替えづらいGKを除けば、出場可能な選手で試されていないのって吉田晃・吉田温紀・豊田晃大だけなんですね。
デスク:怪我の丸山祐市・河面旺成以外の組み合わせは追試を含めてもあと少しで終わるはずだ。逆に、ここまででチャンスが与えられた選手のファンは、まだ下を向く必要はない。十分にチャンスは残っている。
違和感2:なんで甲田英將と仙頭啓矢はサンフレッチェ広島戦で45分交代になったのか
編集A:ルヴァンカップを中心に、キャンプで出来なかった選手の実戦での確認を行っている、というのは納得行きました。でも確認のため、というのであれば前半良かったと思われる甲田英將と仙頭啓矢を、何故45分で交代させてしまったのでしょうか?
デスク:これは想像に過ぎないのだが、想定される理由はポジティブな方向とネガティブな方向で2種類考えられる。
編集A:ポジティブな方向から聞かせてください。
デスク:もう期待通りだから、これ以上テストする必要がない、という場合だ。この試合、この仙頭啓矢のところまでボールが届かず、仙頭啓矢が降りてくるか、甲田英將が運ぶことによって攻撃が成り立っていた。点はとられたものの、前半はポジティブに感じたのではないかと思う。
編集A:フィッカデンティさんなら、うまく行ってる組み合わせは基本的に変えませんよね。
デスク:「その試合に勝ち」続けることがミッションだったと思われるフィッカデンティさんと、「長期的に勝てるチームを作る」というミッションを与えられていると思われる長谷川健太監督の立場の違いだと思われる。そもそもルヴァンカップのグループステージは「2位以内」に入れば良い。幸いにしてまだ2位との勝ち点差は少ない。
編集A:この試合では、今後のための組み合わせを試すために捨てたと?
デスク:そうかな?捨てているなら、後半から主力と言えるレオ・シルバ、酒井宣福、相馬勇紀を投入するとは思えないのだが。組み合わせはシャッフルしているが、大きなグループのなかでのやり繰りだ。戦力を落としているわけではないはずだ。
編集A:あー・・・確かに。あからさまにターンオーバーで手抜きしているわけではないですからね。
デスク:この試合捨てる、みたいなことをやっちゃうとさ、ヌルくなるんだよ。空気感が。別の試合とかでも「この試合、捨ててもいいんじゃね?」って選手が思うようになっちゃう恐れがある。
編集A:そういうの嫌いそうですよね、長谷川健太監督。
デスク:ニコニコしているイメージあるけど、実際にはめっちゃ苛烈な監督らしいぞ。フィッカデンティさんほど軍隊っぽくはないようだけど。だから、色んなことを試しつつ、戦力はちゃんと投入してファイティング・ポーズは取り続ける。これが長谷川健太監督のスタイルなんだろう。そういうところがベテラン・・・熟練というのかな。オレ的には「古狸」というイメージがある。
編集A:ネガティブな方向の理由はどんなことが考えられるのですか?
デスク:試合後インタビューで、長谷川健太監督はこう語っている
ー押し返すために選手たちにどのような指示をされたのでしょうか?
https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=2392&cid=105
前半は足元(へのボール)が多かったため、もう少しシンプルに(相手の)背後を狙おうと酒井(宣福)を入れました。前線での起点に何度かなったと思いますが、サイドでもう少し複数人が絡まなければ崩せないと思います。今日はシンプルにマテウス(カストロ)、甲田(英將)、相馬(勇紀)が1対1となる場面があまりにも多すぎました。もう少しコンビネーションで崩すシーンを増やさなければ難しいと思っています。
編集A:確かに単発の攻撃が多くて、複数人で絡んだ崩しというのが前2試合に比べて減ってしまっていました。
デスク:柿谷曜一朗だと裏抜けができない、という判断なんだろうな。あとは休ませたい、という意図もあったとは思う。甲田英將は良かったけど、自分が持ち出す以外のチャンスメイクについてはまだまだ改善の余地があったと思う。それでも十分に戦術兵器と言えるな。
編集A:甲田英將には守備面の課題があります。マテウス・カストロの裏で、昨年1人で守備を頑張っていた宮原和也と組ませたい、という声も聞きました。
デスク:おそらく、そのあたりのセットも近日中に試されるだろう。間違いない。甲田英將はまだ課題が大きいが十分に魅力のある選手だ。ただ、まだ課題が大きいほうを気にして甲田を「守るために」出場時間を絞っている、とも考えられる。
編集A:なるほど。ビルドアップとか、長谷川健太監督が仕込むのが苦手な分野の問題も残ってはいますが、「人を扱う」という点に関してはベテランでもあります。そこに期待したいですね。
デスク:古狸の腕前を信じよう。