ピッチで苦しそうな選手の顔に一緒になって苦しみ、18人各々の熱量の違いを感じてしまい落胆した花粉の飛ぶ豊田スタジアム。残ったのは夏日という思い出とマスクの日焼け跡でした。
苦しいが振り返る。前へ進むために。冷静に。
試合情報
札幌スタイル
駒井が降りて、田中、宮澤、駒井で酒井と柿谷のプレスを打ち消す。荒野が中央で左右に顔を出す。駒井が上がれると荒野、高嶺、駒井の三人でセンターを囲む。サイドではシャドー(青木、荒野)、ウイングバック(菅、金子)、センターで数的優位を取って行く。
とにかく攻撃では荒野のセンターの裏に顔を出したり、名古屋のサイドバックを内側にピン留めさせて大外のウイングバック(金子、菅)を浮かせるための動きが秀逸だった。
サイドハーフが内側に絞れば大外を使う。サイドハーフが外側を観ればセンターの内側でジャブを打つ札幌。
プレスの意図の違い
名古屋はプレスに関してセンターと前線のサイドハーフへの指示がピッチ上で違う事が気になった。
前線の選手はサイドハーフも含めてプレスに行きセンターの裏の場所でボールを回収したい。センターの選手は前線の2人でプレスしたところに対して出たボールを自分たちが回収したい。そんなチーム内での「取り所の相違」が気になった。
これはぶっちゃけ去年からの「能動的に取るには?」という課題であり、去年は「引く事」でごまかしていた部分だ。
そんなチームが「これはハマらない…!」となった時に「引いて何とかしたい」となるのは当然のことだろう。
この癖をどうするか?これが長谷川グランパスの最初の一歩かもしれない。
仙頭の交代の意図
仙頭を交代した理由としては2つ考えられる。まず一つは構えた時点で金子を吉田か仙頭かどっちが見張るのかが曖昧になっていたのが大きいのではないだろうか?6分40秒のシーンですでにそれが起きていた。札幌のビルドのやり直しは3バックからスタート。札幌の二列目は相変わらず駒井のみ、そこには柿谷がつく。この時点で名古屋は構える素振りを見せたが仙頭は田中を見るのか、金子を見るのか曖昧に。それは荒野が吉田をピン留めした事で大外が空いたことも大きいが、守備のスイッチが入る準備で構える事を曖昧にした結果、金子が空き福森から逆サイドへ展開の形に。遅れて下がってきた仙頭だったが今度は一枚後ろの田中が空き、クロスが上げられた。
もう一つは札幌の中央の人数が多い事での中央でのビルドアップ関与が出来なかったので札幌のウイングバックを引き込んでから縦に勝負したかったのではないだろうか?今まで仙頭はチームの枠組みとしてセンターの選手が動いて仙頭の生存できる場所を作ってるのではなく、苦しいセンターの動きの結果“出来てしまったスペース”を仙頭が使ってるだけなので今回の前半のようにビルドアップの時に稲垣とレオシルバが逃げるスペースがないような配置だと仙頭が顔を出す場所が減ってしまうのかもしれない。
仙頭の顔出しをいかに能動的にできるか?が、これからのポイント。
名古屋の攻撃の形
本来名古屋がやりたかったのは30分の形だろう。サイドを圧縮してから展開。圧縮したサイドがフィニッシュ部隊。酒井がサイドに流れ、宮原が内側を走って横と奥をとる。酒井が入り直す素振りを見せたが稲垣は酒井が入り直す前に宮原を選択しパスがズレる。駒井のプレスが酒井で止まったので酒井のスペース侵入幅も稲垣が前を向く時間も生まれた。しかし、貰う前に自分が流れてきている選手が「どう配置されているのか確認していなかった為」稲垣の最善の選択肢は宮原となる(酒井が入るスペースがどうなっているか事前に顔を上げて見ていない)
柿谷が稲垣がこっちを向くか、酒井に預けてくれるかを悲しく待っている姿がこのシーンは印象的だった。
とにかく球を持っているときに「見えてない、確認してない」という場所を無くしていきたい。1人でもその状態が出来るとレオシルバ、そして前を向いてるセンターバックに負荷がかかる(前を向ける選手が限定される為、相手のプレッシャーの対象になる。)
酒井のダイビングヘッドにしろ、この30分の崩しにしろ「アドリブに見える物を1つの手札として計算し対応する力」はあり、形になっている。その手札をどれだけ「事前に見て感じる事が出来るか?」が重要になる。
後半から
ビハインドで今までもある稲垣を上げてビルドアップは根性のプレスと同数ビルドアップ部隊にして稲垣を2ndボール回収係の4132のような形に。酒井に当てたボールを回収できるスペースをなんとか作る。
ゴール期待値は上がるものの(名古屋2.17:札幌0.62)最後までゴールを割ることはできなかった。
試合後感想
酒井の最初のダイビングヘッドが決まっていたら違った結果になったかもしれないが、前線を変更したからと言って勝てたかどうかは分からない。皮算用して自分の中で都合をつける事はいくらでもできる。酒井のエアリアルデュエルは7で3win。無理に逃げる長いボールが多かった中で充分な働きだろう。
今シーズンからは去年よりプレーのクオリティが要求される。伸びしろが今まで目を瞑っていた部分なのは明らか。チームの為にわざわざそこに目を向けてやってるのは理解していきたいと思う。
後半、藤井が動揺していた所を阿部とレオシルバのベテラン二人が身体を張って持ち上げようとしてる姿には、こみ上げるものがあった。
批判の声が出るのも理解できるし、悪いとも言わない。実際このプレークオリティを現地で見せられてるので腸が煮えくり返っているが、それを自分で消化して、こういう時こそ大きく構えられる人間を目指していきたいと思わされるような、成長を与えてくれる試合だったと割り切る。
さいごに
時間は待ってくれない。3日後。また3バックの巧者の広島。解決策をそろそろ見つけてくれると願って。