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データで振り返る2022グランパスシーズンレビュー:選手起用編 #grampus

概要

  • ここ数年同様,2022年も「いつものメンバー」だったのかどうかを検証してみる
  • 選手起用のトレンドと名古屋の傾向を把握する

本編

(本記事単独でご理解いただけるよう,過去の記事と重複した記述が多くなっています.)

2020年,新型コロナウイルスの影響で大会日程が大幅に過密になる方向に変更されました.選手の健康管理も含めた対策の一つとして,「交代選手枠5名」の臨時ルールが2020年から採用されました.

参考:5人交代制は永続ルールへ…規則改正機関IFABが推奨 | Goal.com

このルールは2021年以降Jリーグでも引き続き採用されており,これを前提とした選手起用が定着しつつあります.

「多くなった交代枠を活用しているかどうか?」は,「出場時間が多くの選手に分配されているかどうか?」と言い換えられます.この観点から,「出場時間集中係数」と名付けた指標を定義・算出しています.2020年10月に記事を1本書きました(好調名古屋グランパス,過密日程で心配なのは…?:出場時間の集中度合いをはかってみる | グラぽ).

「出場時間集中係数」の説明(再掲)

(昨年の記事から係数の算出方法の説明を再掲します.)

サッカーは11人の選手が90分プレーするスポーツです.選手交代も無く,1シーズン全試合同じ選手がプレーするのが「最も出場時間が集中している」状況と考えられます.

実際には選手交代や試合ごとのスタメンの変更があり,出場時間は選手の間で分配されます.通常,J1のチームは1シーズンで30名前後の選手を起用することが多いので,ひとまずここでは「30人の選手が1シーズンの試合時間をすべて均等に分け合う」状況を「最も出場時間が集中していない」ことと定義しましょう.

これらの状況を表したのが下の図です.図では,試合の出場時間が長い順に並べ替え,さらにその時間を順に積み上げて棒グラフにしています.灰色が11人のみがフル出場,青色が30人が均等に出場している場合です.横軸は出場時間が多いほうからの選手の順番,縦軸は合計の出場時間数です.

出場時間集中度の説明 灰色:11人に集中,青:30人が均等
出場時間集中度の説明 灰色:11人に集中,青:30人が均等

実際の選手起用は灰色よりは短く(下)で青よりは長く(上)になります.そのとき,青色の図形からはみ出た面積を灰色で見えている部分の面積で割ることで,選手の出場時間の集中度合いをはかることとしましょう.実際に11人フル出場であれば1.0,30人が均等に出場していれば0.0であり,このように決めた値は必ず0.0から1.0の間の値となります.そして,実際の出場時間が灰色に近い程1.0に近い値が出てきます.この値をここでは「出場時間集中係数」と呼ぶこととします.

算出と分析:名古屋はどれくらい「スタメン固定」なのか?

言葉の説明ではわかりにくいので,2022年シーズンの名古屋の出場時間を利用して図を描いて出場時間集中係数を算出します.以降,出場時間はすべてJ1リーグ戦のものです.また,データはSoccer D.B.(https://soccer-db.net/ )さまで公開されているものを利用しています.

(出場時間順位と累積出場時間から出場時間集中係数を算出.名古屋グランパス.2022年リーグ戦終了時点
(出場時間順位と累積出場時間から出場時間集中係数を算出.名古屋グランパス.2022年リーグ戦終了時点

2022年は29人の選手(2021年の23人より多い)でリーグ戦の試合時間を分配し,その係数は0.820でした.2021年の0.79よりも値が大きくなっており,出場経験者数は多くなりましたが,特定の選手に出場時間が偏っていました.

では,この変化はリーグ内で見るとどうなのでしょうか?2005年以降の集中係数をJ1リーグ戦で算出し,年ごとに箱ひげ図を作図しました.

J1リーグ各クラブの出場時間集中係数.2005年から2022年.赤四角は名古屋.上部の数値は名古屋のJ1リーグ戦順位.
J1リーグ各クラブの出場時間集中係数.2005年から2022年.赤四角は名古屋.上部の数値は名古屋のJ1リーグ戦順位.

箱ひげ図の見方はこちらをご覧下さい 箱ひげ図 について超カンタンに解説してみた

リーグ内でいうと,直近数年同様名古屋は「選手起用が一部の選手に偏っていたクラブ」であることが分かります.2022年は集中係数が最も大きいクラブでした.

年ごとの全体の変化を見ると,2020年以降分布の中央値が明らかに小さくなっており,各クラブが選手交代のルール変更を積極的に利用していることが分かります(負傷離脱や移籍などの要因もあり得ますが,これらは年ごとに大きく変わらないと仮定しています).また,パンデミック前・ルール変更前の2019年からすでに選手起用を分散させる傾向が現れていることや,2022年はその2019年の傾向に近いことが興味深いです.2022年は「11月のワールドカップ開催」という例外がありシーズンの進行が例年とは異なり,その影響があるかもしれません(が,分析するデータや手段を持ち合わせていないので仮説の提示に留めます)

では,上位チームはどのような選手起用戦略を実行していたのでしょうか?集中係数と順位の散布図を示します(2005年以降のJ1リーグ戦).

横軸:出場時間集中係数,縦軸:順位.J1,2005年から2021年.オレンジ:2022年.赤四角:名古屋
横軸:出場時間集中係数,縦軸:順位.J1,2005年から2021年.オレンジ:2022年.赤四角:名古屋

首位の横浜F・マリノスは26人,2位の川崎Fは24人と出場選手数が少ない(少ないほうから2,1番目)ですが,集中係数は0.7前後と大きくありません.出場可能な選手でスカッドやベンチメンバーを組み,適切に出場時間の配分を行えていることがわかります.

ここ数年のトレンドを見るために,直近5年(2018-2022)とそれ以前のマーカを変えてみます.分配係数と順位の関係もそれぞれの期間ごとに計算してみます.

横軸:出場時間集中係数,縦軸:順位.J1,2005年から2021年.オレンジ:2022年.赤四角:名古屋
横軸:出場時間集中係数,縦軸:順位.J1,2005年から2021年.オレンジ:2022年.赤四角:名古屋

やはり全体的な傾向として出場時間はより分配される方向(オレンジにはコロナ前の2018,19年を含みます)であり,近似直線の傾きもほんの少しですが立つ方向に変化しています.リーグ全体の選手起用はより分配する方向に変化しており,その利点を十分生かしたチームが上位進出を実現できている,と解釈しています.

推測を交えた私見・評価

2022年のグランパスは相馬選手が日本代表としてワールドカップ出場,藤井選手が立派なセンターバックとして目を見張る成長を遂げるなど,若手の躍進にうれしいニュースがあった年でした.ただ,リーグ全体や上位と比較すると選手起用の分配が素晴らしかったとは言いづらく,スカッド構成時点での問題,特にシュヴィルツォク選手の去就が定まらないこと,の影響が1年かかっても消化しきれなかった,と考えております(年俸の支払いなどの実情はわかりませんが,処分が解除されたらすぐにでも試合に出したい主力選手がいる状況で,同等の外国籍選手を獲得できるとは考えづらいです).

我々の「名古屋」の名前を冠して今年1年誇らしく戦い抜いた選手・監督はじめクラブ関係者の皆様に御礼申し上げます.これからもずっと,名古屋グランパスが「名古屋」という名前を関する意味があるクラブになってほしいなぁ,と常に願っております.

年始のご挨拶

名城大学情報工学部で教員をしております小中 a.k.a. konakalab (https://twitter.com/konakalab ) です.早いもので2022年もとっくに終わり2023年がはじまってしまいました.2022年シーズンの個人的感想は「我慢」でした.主力選手をあのような形で欠いて補強にも制約がある中で,若手の成長と強固な守備でよく耐えてくれたと思います.

 現地観戦は2試合.うち1試合はゴールデンウィークにサッカー初観戦の友人を誘っていい席で観てきました.友人がスタジアムのデカさに驚いていたり,観戦も楽しかったと行ってくれたのがありがたかったです.

 グラぽ的な貢献としては2022年もシーズン中の記事を全く書けずベンチ外の様相ではありましたが,シーズン終了に当たって編集長よりお声がけいただきシーズンレビュー記事を書くこととしました.年末までに書きたかったのですが体調不良や本務などが重なり,2023年シーズンも始動した後となりすみません.1か所でも,へぇ,と言っていただければ幸甚です.

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