得点は21分、31分、42分。このままいけば10分に1点か!?と思わせるようなゲーム展開。
後半は得点こそ奪えなかったが、夏の気配と共に始まる「名古屋の夏」
試合情報
セレッソのプレス回避策
リーグ戦も折り返し近くなり、各チームともに「○○チーム対策」が確立されつつある。このあたりの分析力が、Jリーグを難しいリーグにしている理由で間違いないだろう。
名古屋対策といえば「プレスをどうやって躱すのか」が定番となり、各チームが自分達なりのプレスのかわし方を披露する場になりがちだが、セレッソ戦においても開始から「セレッソのプレスの躱し方」に苦労した。
名古屋は前線で相手のセンターバック、セレッソの中盤をマテウス+稲垣で抑え込む形を取る。では「セレッソのサイドバックに対して名古屋はどう対応するのか?」。この部分がセレッソが考えた名古屋対策だった。
セレッソは前線4枚を名古屋の最終ラインに当てるような形を取ることで、名古屋のウイングバックを押し込む。すると名古屋のウイングバック(和泉・森下)がセレッソのサイドバックや中盤にアプローチすることが難しくなった。
通常であれば前線の誰かが降りたり、ウィングバックが連動することで成り立つ名古屋の2センター。
プレスが連動できなくなると、苦しくなったのは米本の周りのスペース。
セレッソは空いている米本の周りのスペースに前線の4枚を降ろして来ることでキムジンヒョンからプレスを省略するようなボールが付く展開となる。
編注:Twitterでもキム・ジンヒョンのパスの正確性を褒めるツイートが多かったが、もちろん正確性は素晴らしいのだが、普段よりプレッシャーが少ない形でボールを受けられたからと言うことも理解しておきたい
この展開をどうするか?と悩んでいる間に失点となる。
これは恐らくセレッソのゲームプラン通り。名古屋に対応される前に点を取り、名古屋が焦ってプレスがかからなくなったところで2点目、3点目を入れるという作戦。
4枚に押し込まれて下がっていた選手達が攻めた後にどう守り直すのか?プレスを省略された後にどうするのか?が曖昧になっている間にやられてしまった。
この形に対しての修正としてはまずは最終ラインの上げ方を顕著にした事。そうする事で最終ラインと米本。米本と前線の縦幅を圧縮し、ボールを受けるスペースを潰した。
“入りで相手に一発を食らってしまいましたけど、そこからはやるべきことがはっきりしたかなと。僕が奥埜(博亮)選手を見失っていたんですが、マンマーク気味につくようになってからは守備がハマるようになりました。個人的に入りが悪かったと思います。
ー相手をうまくつかめなかったことで球際を作ることができなかったと。
前からいく中、僕は背中で消していたつもりが消せていなくて、相手が浮いてしまっていました。ただ、自分の前に相手を置いておけばハマるなと。個人的に後ろで見てしまったことがいけなかったと思います。前もハマっていたのでもっとマンツーマン気味でいけば良かったです。途中からそれがハマって、前に当てられたとしてもはじいて、セカンドを拾う場面が増えていったので、うまく修正できたと思います。”
https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=2994&cid=105
それと同時に守備の整理をした。長谷川監督も試合後コメントで言っていたが、奥埜には米本をハッキリと付けるようにした。そうする事でセレッソの前線3枚を3センターバックで見るタスクを明確にした。
名古屋が助かったのは、セレッソがサイドバックをある程度浮かせていたにも関わらず、そこから激しくボールを持ち上がって名古屋の選手に対して選択肢を迫る!というような状況にならなかった事だ。これがかなり楽なゲームとなる要因だった。
名古屋が見つけた糸口
一方で名古屋がセレッソの攻略の糸口として目を付けたのは、セレッソの前線4枚が前に残る事で発生する後ろ6枚と前線との間のスペースだ。
そして前線が戻ってこない事によりセレッソのセンターの選手がサイドのカバーに行かないといけなくなる状態になる事だった。
前半15分のシーン。藤井にボールが渡るとセレッソはセンターと一緒にスペースを埋めていた為田が迷いなく最終ラインに圧を掛けに来た。それと同時に和泉にも山中がチェックに行く姿を見せる。その瞬間にマテウスが山中に向かって侵入していく。為田の裏、山中の前に向かうマテウスの侵入に対して鈴木徳真がカバーに行く。
鈴木徳真が居たスペースに稲垣が侵入して、藤井→稲垣からチャンスを作る。
この場面のセレッソは後ろ6枚はおろか為田はセンターで構えて3枚にし、カピシャーバはしっかりと大外の森下を見張れる位置まで引いている状態にあった。しかし、名古屋がボールを持ちながらラインを上げると自分たちからスペースを埋めていた安全な形を崩して「セレッソが考えるデフォルト配置(424)」に戻す素振りを見せた。
それと同時に気になったのはセレッソの守備の基準の部分。マテウスがセレッソのセンターの脇に侵入した瞬間に、為田がマテウスを追っている(=押さえつけていた和泉がフリーになる)のに、和泉に当たりに行くのをやめてマテウスを見ていた山中を見て感じたのは「どっちつかずの守備基準」
スペースを埋め直す事も、当たりきることもやめてしまうこのスペース問題は結局、名古屋の同点ゴールにつながった。
同点ゴールのシーン、マテウスと藤井がボールを持って動いた事で構えていたセレッソ側にスイッチが入る。前線4枚はプレッシャーをかけ、センター2枚はマテウスに引っ張られ前半の15分と同じような場所にスペースが出来る。山中も和泉に対して開いてはいるものの抜かれるまで和泉の位置を確認する事はなく、後ろからボールを触られる瞬間まで反応出来なかった。
台風接近に伴う強風の影響なのかキムジンヒョンがサイドに蹴るボールがかなりの確率でラインアウトする展開となり、中央への長いボールが増えていった。そうなると強度においては遅れは取ることはなく。出す場所が無くなって行く展開にキムジンヒョンが飲み込まれてセットプレーから勝ち越し。
この時点でセレッソは裏返されてもサイドで人数を掛けなければいけない状況に。
そこから3点目で勝負あり。
後半の変更
セレッソは名古屋と形を併せる形に寄せて、明らかにボールの当て合いを挑む展開になる。
前半あまり使って来なかったサイドバックにボールを当ててサイドに人数をかけて中からカピシャーバが侵入するような形や、レオセアラが受けるシーンも見られたが強度勝負ならこちらに分があった。
点が入らず攻めあぐねる展開となったが、セレッソのプランを前半で壊した。という点では向こうが後手で手札を切った事になるので大きないみを持つ塩展開だった。
特に長澤が体調不良の影響で登録されなかった代わりに投入された内田。札幌戦で酒井が守備で迷いが出た原因が後ろとの守備約束の共有と体力にある事を分かってなのか、センターに「追える選手」を投入した。
試合雑感
- マテウスのキックが良かったのは低い弾道。台風で風が強いから高い所狙うなと指示でも出ていたのかも?それがいい影響になったのなら毎試合強風がでる扇風機を会場に
- マテウスがボールを引き取って稲垣が奥を取る。昨シーズンから仕込んでいたポケットを取る鉄板パターンが再現できるように
- 後半のキャスパーのシュートが決まっていたら貴田の投入が早かったのかも?
- 丸山、プレークオリティが下がって来たという意見もあるが「ここは絶対負けないで欲しい」という場所で抑えきる部分では対カピシャーバで大仕事を。
さいごに
明日は天皇杯。名古屋グランパスが「名古屋」で試合をしてくれる数少ない日。
そして東海対決。
一駅先、二駅先に歓声が瑞穂に響くあの光景が久々に帰ってきます。