2万5000という少し寂しいスタジアムに呼応するように雨がちらついたが、選手やスタジアムにいる人達の熱気が雨予報を吹き飛ばした。
選手も応援する人達も自分たちにベクトルを向け続けて過ごした結果が出た。
“熱い名古屋の夏”はまだ始まったばかり。
試合情報
川崎の対名古屋式
川崎は山根が絞って大島、シミッチ、山根でセンターラインのような形をとった。
シミッチが底に腰を落として、大島はボールの出し入れのサポート、脇坂はシミッチと縦関係を形成する。
シミッチ、大島、山根、脇坂で中盤のダイヤモンドを形成する事で名古屋のセンターは川崎の中盤に対して4対2の不利を背負う形となる。
この中盤の選手が縦関係になる形。サンフレッチェもこの形を選択して、名古屋の中盤を迷わせ、プレスの連動を無効化し、名古屋の守備戦術選択を構える形へと変えさせられるものだった。
参照:
中盤で4対2を作った上で川崎は遠野、宮代、脇坂が降りてボールを貰う動きをする。この動きをすることで名古屋のセンターがプレス連動した場所に顔を出す。そして、名古屋の最終ラインを釣り出す事でスペースを造ってゆく。
前半20分までは大外に張り続けていた家長がフレキシブルなポジションを取りながら中央にも顔を出してボールの出し入れに参加する。
この明らかな役割の変化の裏には名古屋の守備の形が関係しているかもしれない。
川崎は中盤の底に人を置く形をかなり長い時間続けた。家長が役割を変えてシミッチと大島のラインが横に揃うようになるまでは、シミッチが「中盤の底からパスを出す形」を続ける。
中盤の底を作る形を取ると名古屋はプレスがかなり弱くなる。川崎は中盤をダイヤモンド方式にするためにこの試合でもプレス連動しにくい展開となった。
そんな中でマテウスの位置に注目してほしい。センターラインの形成に参加して、前線の2枚がプレスに行くとセンターの3枚が「セットでプレス連動する形」を作る。
前線と2列目の5枚で中央を絞め、その5枚がセットで動く&構える事で自分たちのズレを最小限にした上で、川崎の楔に対応するような形にした。
前線の5枚セットの守備を崩すために瞬間的な優位性をとりたいので家長が自由なポジションを取るようになったのだと思うが、現地で目の前で観ていると張っている時に高井や車屋に「外に振ってこい」というようなジェスチャーをしていたので、試合開始から中央を絞られてしばらくの間はボールの動かし方で名古屋の中央の狭さを広げようとしていたのだろう。
大島とシミッチが入れ替わりながら名古屋のセンターの横に立って、その位置でボールを受ける場所を造り続けたのも恐らくは中央の名古屋のユニットを広げたかったからと想像する。
右では家長が人を広げようと試みる。左では大島とシミッチがボールの出し入れで名古屋の中央を広げる。
家長が自由な位置を取り始めてからは、家長が内側、高井と山根が外回りを選択して森下、河面に対して2対3で攻略する形を多用する。
前半は川崎の右からの攻めが効いていた為に河面が晒されるような形に見えたが、これも実はマテウスが「下がって守備をしている結果」が響いている。
今まで名古屋の構え方は3421でボールサイドと逆側のシャドーが下がるという約束だったが今回はマテウスが固定で中盤に下がる役割を持った。
マテウスが下がる場所は攻め終わりのマテウスの位置で決まる。(稲垣の脇なのか?内田の脇なのか?)
今までならばマテウスが前に出れば永井が下がり、永井が前に出ればマテウスが下がるという構えるところからのプレスの形がキャスパーと永井が固定のプレス部隊になった事で永井の「激しい追い方」の回数が増えた。
当然後ろにマテウスが構える事と、自分の激しいプレスの回数が増えれば下がって対応するプレー選択は少なくなる。
実際永井の裏の山根が浮いてる時間というのはかなりあり、マテウスが下がって来ない時に川崎はサイドで勝負をかける。
そうなると山根にボールが入る形の時は河面が対応する必要が出てきて、河面の裏にポケットが出来る瞬間が見られた。
アンカーがいる事で名古屋のユニットが中央に固まると思ったのか、川崎は大島、シミッチを露骨に横に並べて脇坂を高い位置に置く。442のような形を取り、名古屋のプレスを露骨に誘い出す。大島やシミッチが外に流れて受けたり、上福元を絡めて名古屋のプレスから優位を取る。
川崎は名古屋のプレスを回避したら稲垣周辺の広大なスペースから勝負するというパターンを取り始める。
この形をやられると名古屋は回避されたら即引いて構える形を取ってしまう。
後半大島からの配球やシミッチの前目からの楔が増えたのは、川崎の形の変更と上福元を含めた川崎の最終ラインのプレス回避の技術からくるものだった。
名古屋の目の付け所
名古屋は川崎の前線からのプレスの時に起こる「ズレ」に目を付ける。
まずは前半34分のシーンの名古屋がやり直す選択をしたシーンからのチャンス。
やり直すときに逆サイドに展開した事で、和泉は遠野を押し込んだままにする。試合開始時から遠野、脇坂、宮代で名古屋の最終ラインにプレスをかけ制限していた所の人が変わった。
家長が森下に付いている事が約束のような形になっていたものが前線に宮代、脇坂、家長が残っていた事でなんとなく制限に行ってしまった事で森下の対応(山根のチェック)が遅れた。
32分のユンカーの抜け出しのチャンスも、家長が森下についてなかった状況でチャンスとなる。
この“ウイングバックを抑える選手がいないと遅れていても前に出る癖”川崎の右サイドのこの癖が直接2点目の結果につながる。
32分のキャスパーが後ろに居ても高井に任せて出ていく形。そのまんま和泉が宮代を剥がした後の永井を放置して取りあえず出てしまった形と同じになる。
もちろん高井の守備技術がJでトップクラスだったらという話にはなるが、前半の結果を受けてユニットの守り方として約束や設定をお互いしておけば高井のポジションも変わっていたかもしれない。
裏返せば、名古屋側の分析担当が前半の山根と高井の関係性をある程度見抜いていたのであればチームとして大勝利。和泉はインサイドグランパスのインタビューでも「スペースが気になったので行けると思った」というような趣旨の発言をしてるので、それに気付けるところが和泉が和泉たる所以なのかもしれない。
試合雑感
- 1失点目の上福元の処理の伏線のように見えたのは試合開始直後の内田が侵入した時のシーン。その時も左に流れるボールのキャッチングで抑えきれない瞬間があった。
- ランゲラックのセーブが神懸かっていたのは確かだが、守備陣が最後まで諦めずに“コース制限”していたシーンも同じぐらいの働きだった。
- ボールの運び方に詰まった時、長いボールも出せて、受ける自信から勇気を持って選手間に立てる河面。影のMOM。試合後インタビューも是非
- メインのMOMは間違いなく内田。顔の出し方、デュエル、運動量が素晴らしかった。インサイドでは今まで出れなかった悔しさや東京に負けたことに対する悔しさも語ってくれている。説明を見るよりも是非インサイドを読んでほしい
- 森下も和泉も受けたら内側に剥がすプレーがとことん刺さっていた。コンタクトの曖昧さにかなり助けられた。
- マテウスがビックリするぐらいチームを落ち着かせるプレー選択をしていた。降りて時間を作る、守る。マテウスがこういう動きをしてくれてる限りは“強い名古屋”が見れるはず。前田と良い争いをしてほしい
最後に
週末はマリノス戦、自分達を信じて。
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