はじめに
こんにちは、東京在住のグラサポでレフェリー・ルール担当のOTC公式(@Gram_Leorep)です。いつも判定について、ゆるく分かりやすくをモットーに、解説しています。少しでもグラサポを始めとするJリーグを愛する皆様へのルールについてのリテラシー向上につとめればと思い発信していますので、以後お見知りおきを。
さて、今日は非常に嬉しく思います。それは、名古屋が得点したシーンについて、「何故、得点なのか?」と解説できるからです。いつもは大抵、名古屋が損した(言い方おかしいですが)判定について泣く泣く解説している一方、今回は逆なので、筆が進みますね。それでは、解説していきましょう。
なお、前提の確認です。得点シーンはこちら。さてご覧ください。
今回の争点「オフサイドのインパクト」
皆さんはこのシーン見ていかがでしたか?
論点はただ一つ、永井はGK飯倉にインパクトを与えたか?
横浜FMサポーターの皆さん、「オフサイドだろ!!!!」そう思いましたよね?
ひょっとしたら、名古屋サポーターの方も「なんでオフサイドないの?」と感じる方も少なからずいるはずです。
正直、私は元々GKでしたので、飯倉が抗議したくなる気持ちも痛いほど、よくわかります。GK目線では永井の位置は、正直、邪魔(気が散る)でしたよね。
私はゴール裏の前列で試合を見ていて何が何だか分からなかったので、試合終了後、リプレイを改めてこんな投稿を立て続けにしました。
Postのとおり私の考えでは、このシーンは「得点で問題なし」だと考えており、
以下の2点がポイントと言いました。(後ほど詳しく解説します)
- インパクトの瞬間とボールの軌道を永井は遮っているか
- 永井は、ボールを避けるまたはプレーする明らかな行動をとっているか
そして、町田x名古屋での名古屋の失点って何?という方は、以下のハイライトをご覧ください。
いかがですか?名古屋の得点と酷似していませんか?
これが町田の得点なら、今回のシーンも得点なのはある意味一貫していると思ってます。
この時もこんなPostをしています。
なお、この時私はこんな投稿をしています。そう、勘が良い人はもうわかるはず。
この時も、「インパクトの瞬間」と、「避ける動き」について言及しています。
実際、町田x名古屋についてはVAR音声が公開されており、
主審は「ラインオブビジョン(GKから見えるボールの軌道上)にいない」、VARは「ボールの方向に動いていない」と発言していました。
では、何故上記の2点が重要なのでしょうか?
競技規則に記載されている「インパクト」
ここで、まず重要になってくることは、競技規則にどう書かれているか?です。
競技規則上、以下のいずれかに該当したらオフサイドとみなされます。
- 明らかに相手競技者の視線をさえぎることによって、相手競技者がボールをプレーする、もしくは、プレーする可能性を妨げる。
- ボールに向かうことで相手競技者にチャレンジする。
- 自分の近くにあるボールを明らかにプレーしようと試みており、この行動が相手競技者に影響を与える。
- 相手競技者がボールをプレーする可能性に明らかに影響を与えるような明白な行動をとる。
上記4項目のうち、「ボールに向かっているかどうか」「明らかにプレーしようと試みているか」は見れば分かるので、割と簡単ですよね。
よって、オフサイドの判定を複雑にすることが、太文字にした項目になります。
ここから少し難しくなります。
明らかに視線を遮るかは映像をよーく見たら皆さんにも分かるかと思いますが、「ボールをプレーする可能性に明らかに影響を与えるような明白な行動」って何だよ?ってなりますよね。
そんな時に使えるのが、過去に私が作成した、何回も使いまわしているフローチャートです。
この中のインパクト3要件、全て満たしたらインパクトを与えたとみなされます。
- オフポジの選手のボールとの距離
- オフポジの選手とインパクトを与えた選手との距離
- オフポジの選手の行動(明白に避けようとしたか)
さて、横浜FMx名古屋のシーンに戻りましょう。
Q.1 永井は明らかにGK飯倉の視線を遮ったか?
→明らかに遮ってはいない。むしろ横浜FMのDFがブラインドにも見える
Q.2 永井は明らかに影響を与えるような明白な行動をとったか?
→ボールとの距離:近い。 飯倉との距離:近い。 明白な行動?→明白には避けていない
従って、私の意見ではオフサイドは適用されずに、得点だと考えております。
審判団の対応
今回のゴールシーンは正直、判定難易度は極めて高いです。
現場のレフェリーは瞬時に位置関係を把握し、競技規則に則り判定を下さないといけません。そして、オフサイドのインパクト関係は審判団の主観です。
もしかして気付いた方もいるかもしれませんが、坊薗副審(国際副審)は得点後、通常であればセンターラインへ向かってダッシュするところを、ダッシュせずに、その場にStayしていました。
これは、オフサイドと認識しているものの、インパクト判定になると感じた時に取る行動になります。そこで、谷本主審(国際主審・PR)の情報と持ち合わせて判定したことになります。また、VARについては「明白な誤り」でない限り介入できないため、審判団の判定が誤りという証拠がなかったということになります。
オフサイドのインパクト判定は全部が全部、白黒つくものではなく、少し条件・状況が変わるだけで判定が変わります。また、オリジナルディシジョンによっても判定は変わりえます。例えば、今回審判団が「永井がGKの視線を遮っている」としてオフサイドと判定した場合、VARとして「明白に視線を遮っていない証拠」がない限り、介入することはできないため、もしかしたらオフサイドになってたかもしれません。
視線を遮っているかどうかって判断するの滅茶苦茶難しいんです。私は何回も映像を確認できましたが、もちろん現場の審判団はリプレイを見ていません。
その意味で得点という判断をオリジナルディシジョンした審判団は素晴らしいと思います。
さいごに
ということで、2024シーズンの判定解説はここまでです!
1年間、様々な発信をしてきました。私は常に解説するスタンスとして、「何故、その判定なのか?」をニュートラル(どっちのチームにも肩入れせずに、審判は何を考えてその判定をしたのか)のポジションから解説することを心掛けています。
そのため、時には「お前はグラサポなのか?」「審判擁護」と罵詈雑言を浴び枕を濡らす日々でしたが、このように発信を続けられるのも「参考になった」「なるほど」と言ってくれる皆様と、「いつも応援や発信ありがとうございます」と言ってくれる審判関係者の皆様のおかげです。
来年も引き続き発信しつつ、シーチケホルダーのグラサポとして、ホームに往復10時間かけて通い声を枯らす予定です。
また、私事で恐縮ですが、オフシーズンの余興として「VARのない世界」を絶賛執筆中です。(今は、執筆やめてこのコラム執筆しています@福岡出張中)
VARがない世界では、優勝や残留はどうなったのか?どこのチームがどのぐらい得・損してるのか?どのVARが多く介入し、どの審判が多く介入されるのか?等Factを基にコラムを書きますので、是非完成したらご覧ください!(宣伝でした!)
ではグラぽ読者の皆様、また(次回、恐らく来年のレフェリングスタンダード解説で)お会いしましょう!よいお年を!
文責:OTC公式(@Gram_Leorep)