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なぜ失点が繰り返されたのか?プレスやマンマークじゃない原因を探る 第27節 川崎フロンターレ戦ピンポイントレビュー #グランパス #grampus #frontale

3試合勝ち無しvs3連敗の対戦。高校生の1ゴール1アシストでも勝ちが転がってこなかった。10人になるまでの戦い方をワンポイントで振り返る。

試合情報

いつものテーマ「守備局面の立ち位置」

前節から続く課題である「守備局面の立ち位置」。川崎フロンターレ戦でも、このテーマが試合の行方を大きく左右する重要な要素となった。ピッチ上で選手たちの立ち位置が、いかにチームの意図を映し出し、また時にそのズレが命取りになるか、試合を振り返り分析する。前節のワンポイントレビューから継続して考えるテーマなので読んでおくと分かりやすいかもしれない。

試合序盤で露呈した、前線と最終ラインの「意識の乖離」

試合開始わずか2分。この試合の課題を象徴する場面が訪れる。名古屋が前線からプレスを仕掛けたものの、川崎のサイドバックは巧みな動きで和泉をいなし、一気に名古屋陣内深くまで侵攻した。

この時、名古屋のピッチ上では二つの異なる意思が混在していた。後方のDFラインとボランチの計7人は、相手の侵攻に対して深く引いてブロックを敷く選択をした。一方で、木村、和泉、そしてキャスパー・ユンカーからなる前線の3人は、高いラインを保ち、前からプレッシャーをかけようと試みたのである。

この前線と後方の「意識の乖離」が、守備のズレを生んだ。特に和泉は、前線の意図を汲んで相手サイドバックへ果敢に寄せたが、後方のサポートがないため、簡単なワンツーで突破を許した。結果、最終ラインは数的不利な状況で相手と対峙せざるを得なくなった。

前線の選手が高い位置を取りたいのは、裏を返せば「攻撃への切り替え時に、その場所からスタートしたい」という狙いの表れだ。しかし、チーム全体の意思統一がなければ、それは単なる前残りとなり、後方には「早く前に蹴り出すしかない」という性急な攻撃を強いることにも繋がっていた。たかが前半2分、されど前半2分。この時点で、チームの守備方針には明らかなズレが生じていたのだ。

この場面も、強いメッセージ性を持ってチームを動かすのであれば、あと数メートルディレイして、しっかりサイドバックと正対するように身体を入れるべきだった。そこから1.5列目のスペースに降りてくる選手や、中央に入るパスをCMFが寄せて奪う。そうした次の展開に影響を与えられる精度で、守備の選択をしたかったところである。

個々の守備技術はひとまず置くとして、問題は守備における「選択」の部分だ。なぜその選択をしたいのかを考える必要がある。IHの2人が高い位置で守備にアプローチするのは、裏を返せば「攻撃の局面でその位置にいたいから」である。前線の選手が高い位置にとどまりたいがゆえに、後方の選手が前に出ざるを得ない状況になる。後ろだけで構えても不利を抱えるだけであり、攻撃への切り替え時も前線に選手が残っているため、急いで前に蹴り出す形になる。その結果、「早く攻めること」を後方に強いているように見えてしまった。

☝️ポイント

たかが前半2分、されど前半2分。結局、ピッチ上での方針がそのわずかな時間でズレてしまったということだ。ズレの要因には守備技術だけでなく、選手の特性、特に前線の選手に見られる「守備が好きか嫌いか」という性格も大きく影響している。技術はあっても守備が嫌いな選手、守備は好きでもうまくいかない選手。現状では、守備を好む選手たちが主導権を握れていないことや、チームとして勝敗や攻撃力に課題を抱えていることもあり、守備局面だけではまとまりにくいのかもしれない。

一方で、木村や和泉が「攻撃局面でどうするか」を考えるとき、例えばビルドアップの際に少し下がる動きを取り入れると、守備局面でもポジションが低くなり、「受ける位置の良さ」や「前にプレスへ行く際の全体判断の助け」につながる。その結果、前半開始時に生じたチームのズレが自然に修正される瞬間もあった。つまり、ビルドアップに関わる選手は守備の側面から、前線の選手は攻撃の側面からアプローチしつつ、最終的に同じ地点へ着地させることが重要なのだ。

「思考停止」が招いた失点シーンの分析

最初の失点もまた、根源は「守備の立ち位置」にあった。

スローインという限定的な状況下で、誰が、どこに、なぜプレッシャーをかけるのか。その優先順位がチーム内で共有されていなかった。ここで山本にスローインが渡るのが嫌なのか?稲垣と森が遅れて出るのが嫌なのか?チームとしてどっちが嫌でどっちが守りやすいのか?問題。結果として生じた一瞬の迷いが、相手にワンツーでの突破を許し、連動してマークが剥がれていく。最終的に生まれた決定的なスペースを使われ、失点に至った。

伊藤が森から原にアプローチを変えたのが巧かったとはいえ、これはマンマークが~、ハイプレスが~という特定のシステムが問題なのではなく、局面における判断、いわば「思考の放棄」が招いた失点と言える。直前のプレーでは、インサイドハーフ(IH)が低い位置で相手ボランチにプレッシャーをかけてボールを奪う良い形があっただけに、成功体験をチーム全体で継続できなかったことが悔やまれる。

2枚でCBを操る

川崎の理想形は、14分56秒からの場面に表れているといえるだろう。ウイングバックが名古屋のサイドバックと正対し、3バックの間(藤井―三國、三國―原)に大関とエリソンが立つ。この形になると、名古屋の3バックに対して3トップ(エリソン―橘田―伊藤)で対応することが不可能になる。その結果、名古屋のCMFの周囲で、川崎はSHとボランチを組み合わせてマンツーマン守備をかいくぐることができる。川崎のSHが名古屋のCMFを引き出すことで中央が空き、そこに縦パスを刺し込んで大関やエリソンを使う形が成立していた。

ビルドアップからのこの形を防いだ後に、きれいな形ではないものの、CMFの隙間とCB間の隙間が全く同じ幅になり、縦に刺し込まれてエリソンにゴールを決められたのは、不運というべきか何とも言えない場面であった。

☝️ポイント

ボールロストの直前の形では、中山が一度ボールを運んだこと、そしてキャスパーと木村の走るレーンがともに完璧であった。重要なのは、このような場面で「ボールを一つ運んだときに何が起きるかを理解した上で、パスを出せるかどうか」である。中山が一歩運んだ時点で次に対面するのはファン・ウェルメスケルケンであり、木村はその背後を走り抜け、キャスパーはCB間でできる限り相手のラインを引っ張っていた。ここで木村に出せるかどうかが分岐点だった。

自分たちがマンツーマンやハイプレスといったアクションを起こしている以上、人対人の構造がどのように成り立ち、どう展開していくのかを理解してほしいのが本音である。ボール保持そのものが難しくても、自分たちの採用している構造を理解し、それを応用できないのは「落とし込み」だけの問題ではない。

似たような課題

試合の流れが変わったのは、飲水タイム明けだった。2点リードした川崎のプレスが緩やかになったことに加え、名古屋側にも明確な変化が見られた。それまで高い位置に張りがちだったIHの和泉と木村が、中盤の低い位置、いわゆる「1.5列目」あたりに頻繁に顔を出すようになったのだ。

このポジション修正により、チームは複数の好影響を得る。

  • 守備の安定: IHが中盤にいることで、相手ボランチへのプレッシャーが効き、守備のバランスが整った。
  • ビルドアップの安定: 低い位置でボールの経由地ができたことで、最終ラインからのボールの引き出しがスムーズになった。
  • 攻撃の起点: 中盤でボールを持つことで、相手を釣り出し、空いたスペースを効果的に使う攻撃の形が生まれた。

飲水タイムから前半終了までは、IHの位置が高くなったことと、川崎の出足の衰えが重なった。そのタイミングで同点に追いつけたことが、90分間戦い抜くことができるきっかけになった。

☝️ポイント

結局、川崎も守備局面で攻撃局面を想定していた立ち位置が変わってしまった。その変化によって、名古屋は攻撃局面につなげるポジションを取ることができた。釣り出し方がサイドではなく、一度縦方向(GKやCB経由)での釣り出しが必要になったことで、名古屋は全体を圧縮する時間を得られた。その上で縦方向に釣ると、エリソンの周囲に人がいない状況が繰り返し生まれた。

両チームがうまくいかなかった時間の原因は似ていた。名古屋はIHが下がって守備をすると、その位置がボールの経由地にもなる。そこから相手を釣り出して大外を使う形が見えたのは大きかった。気づくのは遅かったが、試合中に光明を得られたのは良い点だった。これは永井が縦方向のスピード勝負に出るときの牽制にもつながった。

つぶやき

  • プレッシングの是非が議論されがちだが、本質はそこではなかった。和泉、木村といったIHの選手がビルドアップに関与するためにポジションを下げたことで、結果的に守備の立ち位置も改善された。この修正が機能し始めたことで、チームは攻守にわたって安定感を取り戻したのである。
  • 10人になりながらも、監督と選手が勝利を目指して戦い抜いた姿勢は評価されるべきだろう。
  • 個々を見れば、相手エースと対峙しながら1ゴール1アシストを記録した森の奮闘は目覚ましい。守備面での更なる成長を遂げた時、彼の未来はさらに大きく開けるはずだ。
  • 「守備は攻撃の第一歩」という言葉があるように、適切な守備の立ち位置こそが、安定した攻撃のリズムを生み出す。この試合で得た教訓を、チームは次戦での勝利へと繋げていかなければならない。

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