試合終了は22時近く。秋の寒さも感じる季節に、熱い試合を展開してくれた。「変化」と「現在地」が凝縮された一戦である。
本日はそこに垣間見れた変化を中心にレビューでお届けする。
試合情報

試合開始直後から気になった変更点は、センター2枚の振る舞いだ。
試合最初のビルドアップでは、小野が左CBに入る形をとった。これに対して岡山は神谷を下げ、ルカオと河野を2CBに合わせてきた。岡山のボランチ2枚が森島のチェックに入るため、名古屋はIHへの長いボールで逃げるしかない。菊地、マテウスのサイズ感に加え、後ろの噛み合わせによるプレッシャーもあり、良いボールは入らない。ここまでが、試合開始からわずか1分間の出来事だ。
ビルドアップのステップアップ
直後のビルドアップでは、シュミットがプレスを受ける場面があった。その場面を見ると、小野は最終ラインに降りない形を取っている。4分14秒から4分39秒を見ても、3バックを広げ、岡山の2トップに対して幅を取ることで、中央エリアのパスコースを空けている。もし神谷も噛み合わせのために出てくるなら、シュミットでルカオを外し、2センターへ配球する。
いつもと違うのは、1センターではないため、左右から戻ってくるボールを逆側のセンターが受けられる点だ。サッカーにおいては当たり前の戦術選択であり、2センター(2ボランチ)を置く意味そのものでもある。しかしミシャが就任してからは、1センターにする戦術的な意味合いより、1センターにすること自体が目的になってしまい、苦労した試合が多かった。そんな苦しい試合が続く中で、開始直後の「自分達から噛み合わせに行ってしまい、ロングボールになってしまう」という肌感から、チームの矢印を「現実」に振り替えたところには、ステップアップを感じる。

岡山の守備の曖昧さと名古屋のビルドアップ対応
センターにやたらとボールが入る展開は、岡山の守り方の曖昧さにも助けられた。前述のとおり、名古屋にはシュミットをビルドアップに入れる3枚(2CB+GK)と、シュミットを入れずに幅を取る3枚(3CB)の2パターンがあり、どちらでも最終ラインは基本的に3枚になる。この形に対して、岡山はルカオがどこにプレッシャーに行くのかを決めていなかったように見えた。
ファーストディフェンスとしてのルカオが、2CB+GKの3バックと3CBの3バックのどこに噛み合わせるのかが、あまりにも曖昧だった。例えば、シュミットもビルドアップに参加するタイミングでルカオが佐藤に行かずシュミットに行けば、河野は佐藤に出ていきたい。一方、3CBだけで幅を取る形では、ルカオは佐藤と森島のところを消すように出ていくので、河野のマークは徳元に変わる。ビルドアップの形に対して、毎回ルカオの守備選択が浮く時間があるため、連動する守備の選手が一つ遅れている。
神谷は早々に撤退して、プレスがズレる時間を消しにいった。大変だったのは河野と松本だ。岡山は、ルカオと河野の2トップ気味で稲垣、佐藤を抑え、シュミットにはどちらかが2度追いする形に変更する。しかし2トップに変えると、6分22秒からの場面のように名古屋のセンターが降りてくる形をとられたり、2CBがそのままルカオを割と楽に剥がしたりしてしまう。シュミットのところまで守備に行けない形に変えたことも相まって、名古屋の2センターには松本が出ていく形になった。
神谷は引いてスペースを消してもヨシ!となる一方で、松本は、岡山の2トップが守備で制限できていないところを潰しに行くため、前に出ていく展開が増えた。この試合ではそこ(名古屋のセンター2枚へのプレッシャー)の遅れが目立ったので、いつも以上にセンター周りはすっきりしていた(5分から20分まででも、2CBをどうしようか悩んでいる時間の方が長い)。

小野のサイド出張と中盤の連動
もう一ついつもと違ったのは、小野(センター)がサイドへ出張する回数の多さだ(特に効いていたのは右サイド)。20分3秒からのような形では、森島が降りる動きと相まって、小野、徳元、菊地が相手の選手間に立っているのがよく分かる。
小野が神谷を押し込み、森島がCBの位置に下がると、岡山はボランチが出てこないと噛み合わない。そこで2トップ(ルカオ、河野)に加えて竹内が出てくる。ただ、SBの位置にいる徳元は噛み合わせられないので、山根が高い位置まで出てくる。松本と山根は、菊地と徳元への守備に突っ込めない(早い時間帯に、長いボールをスペースに落とされていたことも相まって)。そのため、この展開はボールを下げてハマるかと思いきや、空き続けた徳元の運びからフィニッシュまで持ち込めた。

ボールを運ぶことの本質~前半のまとめ
ちょっとした変化で言えば、菊地がほぼトップ下気味に、中盤3枚の一角のように振る舞っていたのも、ここ最近の名古屋の変化かもしれない。得点シーンもマテウスが降りているところから始まっている。前から来る相手に対して「数的優位」を作る場所がはっきりしている点も、2センターと意味は同じだ(要するに、2センターも守備者の裏で数的優位があるということ)。後半、この役割を杉浦が目立たない中でやり続けたことは、目いっぱい評価してあげたい。
42分52秒から、徳元がマークが来る前に剥がして運び、菊地に刺し込んだ形は、いつもの「名古屋の形」だった。稲垣のところで神谷の守備の矢印を人で変えられなかった(ボールで逆は取れていた)のは、稲垣が急遽CBに入った影響が出ていた部分だ。それでも先制点での小野の運びも含め、ようやく「ボールを運ぶこと」の本質が浸透しはじめたように見えた前半だった。
AIくんの要約
試合開始直後
- 小野が左CBに入るも岡山に合わされ、長いボールで逃げるしかなかった(開始1分間)。
ビルドアップのステップアップ
- 直後から小野が降りずに3バックが幅を取り、中央のパスコースを空けた。
- 1センターの目的化から「現実」へ矢印を振り替えた点にステップアップを感じる。
岡山の守備の曖昧さ
- 名古屋の最終ライン2パターンに対し、ルカオの噛み合わせ先が曖昧で守備が遅れた。
- 2トップ気味への変更も剥がされ、名古屋のセンターへのプレッシャーが遅れた。
小野のサイド出張と中盤の連動
- 小野のサイド出張が右で効き、小野、徳元、菊地が選手間に立った。
- 岡山は噛み合わせきれず、空いた徳元の運びからフィニッシュまで持ち込めた。
前半のまとめ
- 数的優位を作る場所がはっきりしており、後半もその役割を担った杉浦は評価したい。
- 稲垣の急遽CBの影響はあったが、「ボールを運ぶこと」の本質が浸透しはじめた前半だった。
岡山の守備の噛み合わせと崩し
後半に入ると、神谷の高さが変わり、佐藤にアプローチする位置が高くなる。岡山はようやく、3CBに対して3トップで明確に噛み合わせに来た。
名古屋は佐藤が絞り、小野がサイドに出る形で、神谷が出てくるのを抑えている。ただ、高嶺には竹内、藤井にはルカオがマークについている。河野も、神谷がピン留めされると、佐藤から見えるパスコースを消すために佐藤へ出ていくので、縦に刺し込む場所はない。そのため、自然と甲田、徳元からどう展開するかという話になる。松本は2センターのところから徳元へ出ていくので、そこは遅れて来る。52分13秒からのような、遅れによるズレを使った崩しは見られた。
ただ、岡山は根性で前線から噛み合わせている都合上、最終ラインと中盤の間のスペースが広くなる。名古屋は木村を投入したこともあり、ロングボールでチャンスを狙う時間が増えていく。

そんな中で、気になる形を一つ挙げたい。60分25秒からの形だ。佐藤が右に入ってからとも言えるが、甲田をワイドから降ろし、サイドでボールを持たせる形が増えた。2センターをサイドに出張させるわけでもなく、前線でマンツーマンの噛み合わせが起きている甲田を降ろす展開である。
この60分25秒からの場面でも甲田に降りてくるよう要求しているが、2センターは4枚に囲まれている。ボールを持ってマークを引っ張れるのが、右は佐藤、左は徳元であることは配置から分かる。ここで甲田を降ろすことで、2センターの周りの4枚が守備で何か困ることが起きるのか、という部分が気になった。前半は、シュミットがいる3枚といない3枚で最終ラインの幅が変わり、相手のマークの幅やプレスの距離を利用して2センターにボールを供給していた。ところが後半に入ると、噛み合わせが起きているビルドアップ部隊が、相手の2センター、2シャドーの脇に人を立たせることをやめてしまった。

結局のところ、後半のポジティブトランジションでは、岡山がサイドに人をかけて中央に人がいなくなるタイミングを突いた、カウンターでの前進が目立った。この影響もあったのか、65分には藤井とサイドを入れ替えた(ガウショ対策もあるとは思うが)。
また、噛み合わせが起きたときにセンターがCBの位置に落ちることで、噛み合わせを剥がして中央のコースを開ける鉄板の形が、なぜか65分まで鳴りを潜めていた。高嶺を降ろして佐藤と藤井の距離を開けるだけで、その一発目でシュミットから小野へ楽々とパスが通った。同時に藤井は、神谷を剥がして運べるかの様子を見ながら、ワイドの幅を気にしてプレーする。

後半の展開は今後の課題
形としては、下から十分にビルドアップできる形だった。しかし1センターからの展開に切り替わり、1プレイヤー分距離が遠いパスを通しながら前進することになったため、技術的なエラーが増えて見えた。
試合をクローズする流れだったが、ロングボールを制限しないまま後ろで勝負され、延長に持ち込まれることとなった。宮本、オベルダンが入ったことで、名古屋のセンターもプレスを引き出され、オープンな展開になっていく様子も見られた。名古屋としては、相手の守備が切り替わったときの立ち居振る舞いが今後の課題になると考え、後半の流れをピックアップした。
AIくんの要約
岡山の守備の噛み合わせと崩し
- 後半、岡山は神谷の位置を上げ、3CBに3トップで明確に噛み合わせてきた。
- 縦に刺し込む場所がなく、甲田、徳元からの展開と、松本の遅れによるズレを使った崩しが中心になった。
- 岡山の最終ラインと中盤の間が広がり、名古屋は木村投入もあってロングボールが増えた。
後半に気になった形
- 60分25秒から、甲田をワイドから降ろす形が増えたが、相手の守備を困らせる効果は見えにくかった。
- 前半のように相手の2センター、2シャドーの脇に人を立たせる動きが消えた。
- 前進はカウンター頼みとなり、65分には藤井とサイドを入れ替えた。
- センターがCBの位置に落ちる鉄板の形は65分まで見られず、使った途端にパスが楽々と通った。
後半の展開は今後の課題
- 1センターからの遠いパスで前進することになり、技術的なエラーが増えた。
- ロングボールを制限できず延長へ持ち込まれ、終盤はオープンな展開になった。
- 相手の守備が切り替わったときの振る舞いが今後の課題である。
さいごに
前半に見せたステップアップは、チームの確かな収穫だ。一方で、相手の噛み合わせの変化やプレスの転換に対する後半の対応、そしてオープンな展開でのマネジメントは、次への明確な宿題として残った。延長戦に持ち込まれたこの一戦の教訓を、次のステージへどうつなげていくか。
キーワードは「塩梅」と「使い分け」だ。