グランパスはホームに横浜Fマリノスを迎え、1-1で引き分けました。この試合、どこを見るかで評価が変わってくるように思えました。ゲームの主導権をグランパスとマリノスのどちらも握っていた時間があり、好ゲームと言えば好ゲーム、泥仕合と言えば泥仕合とも言えるでしょう。引き分けという結果も必然だったのではないでしょうか。
このレビューではマリノスにやられたところ、こちらが上手くやれたところ、それぞれを試合の時系列で振り返ってみましょう。
はじめに 両チームのフォーメーション
基本は4-4-2。アーリアが出場停止につき、小林と和泉のセンターハーフ。八反田が復帰し右サイドに、宮原が右サイドバックに入りました。対するマリノスは4-3-3。
前半35分まで 躍動するマリノスの偽サイドバック
偽サイドバックって何? というかたにはフットボリスタのこちらの記事をご参照いただくとして………(https://www.footballista.jp/column/44251)、マリノスの両サイドバック、特に左サイドバックの山中のプレーが実に効果的で、グランパスの右サイドをめちゃめちゃに蹂躙していました。
やられた例1 中盤に入ってきた相手をチェックできない
前半のある場面です。偽サイドバックの典型的なパターンで、サイドバックが真ん中に入り組み立てに参加します。
サイドバックはそのまま前線でウィングとセンターハーフの間に入り込み、相手(この場合グランパス)のマークを混乱させるとともに数的同数or優位を形成します。
このパターンに、目を覆いたくなるほどやられていました。
やられた例2 チェックに行って交わされて中盤で数的不利に
主にシャビエルがマリノスの左CB or SBにプレスに行き、八反田も合わせてプレスに行くのですが、剥がされてしまいます。
すると八反田のいない右サイドのスペースにパスを出されて危険な状況になっていました。
最近のグランパスでは『前から行っても取れなさそうな時は行かない』との共通認識がスタメン組にはできつつあったように見えていました。今のグランパスでは組織的に相手を嵌め込んでボールを奪う、という形は取っていないので、周囲との連動がない状態でプレスに行ってしまうとスペースを作るばかりで、相手の狙い所になってしまっていました。
怪我離脱から復帰した八反田には実戦での共通認識を得る機会が足りていないでしょうから、そういう意味で厳しかったかもしれません。シャビエルが行き、八反田康平が行って、ボールを奪うことを目的とするのか、相手の攻撃を制限することを目的とするのかが曖昧だったように感じます。ボールを奪うことを目的とするならば、それ以外のメンバーが連動する必要があります。
この状況も同じことで、八反田だけが突っ走って前プレスをしたと思ったら、最終ラインは上がっていないし八反田の空けたスペースには誰もいないし、大変なことになっていました。
極めつけは以下のようなケースです。
SBへのパスコースを切るわけでもなくチェックに行ったら、CB→SBへの一本のパスを通されただけで圧倒的不利なとんでもない状況に。
連動できていない関与者全員の責任
マリノスの左サイド=グランパスの右サイドがめちゃくちゃにされていたので、どうしても八反田の名前を出しているのですけど、八反田個人がそこまで悪いかと言えばそうとは思えないんですよね。
どちらかと言えば、周りが連動できていないことが問題だし、連動してラインを上げないなら周りが八反田にコーチングしてやれという話でしょう。復帰した八反田には厳しい状況だったと思います。そもそも、守備ではなく攻撃のためにスタメンを選ぶ風間監督だけに、八反田を起用する守備面でのデメリット<攻撃面でのメリットと判断したからこそ、八反田スタメンだったはずですよね。そのメリットは残念ながら発揮されずに、守備でのデメリットをマリノスに突かれてしまいましたが、貴重な戦力の八反田の復帰は喜ばしいことです。次節以降に期待しましょう。
失点シーン 既に新井に頼っている守備
右サイドをめちゃくちゃにされていたグランパスですが、マリノスの最後の精度の問題や、グランパス守備陣の最後の頑張りもあり、前半途中まではどうにか失点無しで耐えていました。
この2試合のグランパスの守備の原動力となるのはやはり新井一耀です。新井が危ないところをカバーしたり跳ね返したりして防いでいた場面も多く見ることができました。ところが皮肉にも、失点シーンでは、その新井の影響力の大きさが表に出てしまったのです。
上図のように新井一耀がチェックに行き、ボールを奪いきれず、結果として『新井が釣り出された』状況になったところでクロスを入れられヘディングで合わされ失点。ホーシャが足を痛めていたらしいことも災いしましたし、櫛引もマークの受け渡しについて悔やんだコメントをしていましたけども、復帰2戦目にもかかわらず、新井の守備面での影響力の強さを感じずにはいられませんでしたね。
前半35分以降 八反田⇔秋山
個人のせいとは思えないがやられまくっていた八反田に代えて秋山がイン。
秋山が左に入り、青木が右に回りました。これはおそらく、青木の個の力で、対面するマリノス左SBに圧力をかけて、自由に攻撃させないように、との意図だったのではないでしょうか。その策がはまったのか、あるいはグランパススタッフの事前分析どおりマリノスの足が止まってきたのか(こちら→ https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=195&cid=102 の有料部分をご参照ください)、特に後半60分頃から顕著にグランパスが主導権を握っていました。
主導権を握った攻撃
グランパスが明らかに主導権を握り、マリノスを押し込んだ結果、例えばこんな状況ができていました。
マリノスさん、圧力を受けると引いて固まってブロック守備は良いけど、逆サイドがどフリーとか、まるでどこかの名古屋グラ………ゲフンゲフン………『人数が揃っていても守備が堅くなるわけではない』のでお互い気をつけましょう!
同点シーン
同点シーンも、マリノスは引いて守って人数足りているのに、ボールホルダーの小林と、肝心のジョーが何故かフリーで、そこがフリーならまあそうなりますよね、というグランパスのゴールでした。
最後は泥仕合
お互いに足が止まってきてスペースは間延びし、決定機もあったが、主にランゲラックのスーパーセーブもあり引き分け。下位チームどうしの試合終了間際ってこんな感じだよね、という試合でした。
これこそが風間さんの名古屋グランパスの攻撃だったはずだ
正直なところ、マリノスの守備が途中からかなりイマイチだったことを差っ引いて考える必要はあるかと思います。ただ、去年、グランパスが主導権を握った試合ってだいたいこういう攻撃をしていたはずなんですよね。押し込んで揺さぶって、相手を混乱させて得点する。色々な要素はあれども、今シーズン初めてそういう試合運びをできたことは収穫で、一方で相手が疲れてくるまでにゲームをコントロールできずに失点したことが課題でしょう。願わくはより巧みなゲームコントロールが次節見られることを願って応援しましょう。