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世界に挑んだ若鯱達

 

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コパアメリカや久保建英の注目よりもU20代表とトゥーロン国際の若鯱の活躍が気になる名古屋サポーターの皆さんご機嫌いかがでしょうか。自称「伊藤の人」ことゆってぃです。

グラぽさんのポーランドでの伊藤と菅原のことについて書きませんか?というツイートを見てサッカー素人ながらに飛びついてしまい筆を走らせております。

おそらく彼らの凱旋試合となるであろう、ルヴァンカップ仙台戦に合わせて公開させていただきます。

皆さんは彼らの活躍どう思ったでしょうか?

もう選手もサポーターも前を向いている頃ですが、彼らを試合で迎え入れる前にもう一度彼らの勇姿をふりかえりましょう。

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ポーランドの空で味わった苦み

 

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サッカーのレジェンド、ヨハンクライフはこう言いました。

「才能ある若手にこそ、挫折を経験させなければならない。挫折はその選手を成長させる、最大の良薬だからである。」

ポーランドで鳴り響いた試合終了の笛は菅原と伊藤の闘いの終了の笛でもありました。その音を聞いた時、上に引用したクライフのこの言葉が浮かんできました。

でもそれは強がりだったかもしれません。ただただ悔しい。

本人達の感じる悔しさに比べたら屁でもないかもしれませんが、僕が一番悔しいと思ったのは、菅原と伊藤を知らない人にとって、彼らの印象は「攻守ともに活躍したが、最後にミスした選手」と「能力はあるがPKを外し、試合で存在感を残せなかった選手」となってしまった事です。

普段からの彼らを知る、ほとんどの名古屋(と磐田)サポーターは、彼らの本来の力を知っているのでそんなことはないでしょう。ただ、心理学者のエドワードテイラーとスーザンフィスクの共同研究でも述べられている通り、「ネガティブな衝撃の度合いが心に残りやすい」と言われています。名古屋以外の多くのサポーターのは、ネガティブな記憶をされてしまっているかもしれません。人間というものはそういう生き物なのです。

そんなネガティブな記憶を少しでも塗り変えられるように、彼らがどのように闘い、どのような進化を遂げてきたのかを記したいと思います。

攻守ともにチームを牽引した菅原由勢

 

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彼に関しては他のクラブチームのサポーターのみならず、様々な記者からも大絶賛されていました。(それだけで名古屋サポからしたらごはんがおいしい!)

ここまで彼がチームにハマったのはなぜなのでしょうか?

名古屋でも採用している442というスタイルは共通していますが、影山監督率いる代表チームと風間さん率いる名古屋のサッカーは異なります。風間さんのようにボールを持ち相手を引き出すことはしていませんでした。そんな中で輝けた理由は、フィードの正確さと運動量、そして442のシステムの利用する頭脳だったのではないでしょうか。通常442の戦術システムでは各ポジションで明確な役割を与えられます。そこで彼が求められたものは何だったでしょうか?

必殺仕事人

U20ワールドカップ日本代表のシステムの特徴は、442のサイドに単体で縦にも横にも仕掛けられる選手を置くことでした。そして後ろから中央にいる選手(セントラルMF:以降CMFと略す)はサイドの動きに合わせてフォローをします。

仕掛けられる選手をサイドに置いてあるだけあって、攻撃の組み立てはサイドから行われるパターンが多くみられました。

日本の両サイドが前に仕掛ける気持ち強かったことに対して、対戦相手は「来るなら待つよ」といったスタンスで網を張って待つ、という対処をしてきました。

そこで菅原の出番です。

菅原は前に行こうとする選手のフォローのような形で上がることでサイドでオーバーロード(一定の場所に人数を集中させる事)をかけたていました。その状態になった時のメリットは沢山あります。

たとえば選手の距離が近くなり、それによりパスが安定します。さらに数的優位を作ることによって、パスの出し手、受け手が裏や空いたスペースへ入ることができるようになります。またボールを奪われた時にネガティブトランジション(守備への切り替え)が、素早くできるようになります。

きちんとオーバーロードができていれば、チームを活性化することができるわけです。しかし、オーバーロードがチームとして機能したか、というとYESとは言えなかったのではないかと僕は感じました。

ただ、菅原由勢はそれで終わる選手でもありませんでした。

君の背中に見た面影

さあ、菅原のオーバーロードからパスコース作って活性化だ!そう思いきや前の選手は流動的に動くことができません。ああ!前の選手がセンターバックに張り付かれていて自由に動けない。これでは崩すことができない。絶望的!

そんな風に思ったとき、もの凄い勢いでカットインしてCMFとトップの選手の間のスペースに入ってシュートを打ちました。その選手こそが「菅原由勢」だったのです。

そのあとはトップの選手のマークがきついことを確認した瞬間、ゴールキーパーと張り付かれてる選手の間に鋭いクロスを差し込んだのです。さらに中央の選手と同じラインや中央に加勢して相手選手が何かアクションを菅原に対して起こさなければならないような動きを何回も行っていました。

その時、僕は菅原由勢の動きにある選手の面影を見ました。それはドイツのサイドバックで司令塔として活躍しているヨシュア・キミッヒ。

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キミッヒはトメルケルを高度にこなすだけではなく、チームのアクションを促す『溜め』、選手の配置を認知する『視野』、状況に応じた『配球』ができる、世界一のサイドバックだと僕は思います。キミッヒも中央でプレーする選手だったところをグアルディオラにコンバートされてサイドバックで成長し、世界一になったなあと感慨にふけっていました。菅原もセントラルのMF、そしてセンターバック、代表では右サイドバックで定着した事もあり無理矢理だけど似てる点があるのかな?なんて思っていたりしました。

失礼ながら、同時期にコパ・アメリカ、トゥーロン国際大会が開催され、有力なメンバーをすべて選出することがでいなかったU20ワールドカップのなかで、一番出色の出来を見せた選手は菅原だと言い切ってもいいのではないでしょうか。もっと目立つ選手の多い名古屋ではあまり見られなかったプレーをこの大舞台で見せつけてくれました。やはり彼はレベルの高い選手なんだなあと再認識させられました。そういえば、夏に向けてスタメン組が体力的にきつくなるこれから、和製ヨシュア・キミッヒを見に行きませんか!!そして、風間さん!リーグ戦でも菅原を使って!(懇願)

最後のミスは成長のあかし

 

あまり思い出したくないのですが、失点シーンのミスは振り返らなければならないでしょう。人間、判断能力が落ちたときにとっさに出る選択肢はいつも選んでいる選択肢。最後の最後で名古屋でおこなっている狭い感覚でのパス回しの選択肢を選んでしまったのではないでしょうか。残念なのは、名古屋であれば近くに寄ってくれている選手が、このチームにはいなかった。仕方ない、としか言えません。

菅原由勢にはデルピエロのこの言葉を捧げたいと思います。

「試合において選手というものは相手だけでなく自分自身とも戦わなければいけない。それは自分の限界との戦いでもある。」

 

彼が自分自身の限界と戦ったことは間違いない。そこには手抜きや諦めなどはない。その姿を名古屋サポーター、いや、日本代表サポーター皆が誇りに思うはずだと思っています。

伊藤洋輝、未来へ向けて

 

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ロベルト・バッジョはこう言いました。

「PKを決めても誰も覚えていないが、はずしたら誰もが忘れない。」

伊藤洋輝、彼にとって、このU20ワールドカップは苦い思い出になったでしょうか?

初戦では、Twitterを中心に以下のような戦評を書かれていたことが目につきました。

「中盤のスペースをケアできず、球際で負けるシーンも目についた。29分には不用意なスライディングで警告を受け、劣勢のゲームで緩慢なディフェンスが目立った。パスミスやボールロストも多く、運動量も足りていなかった。」

散々な評価内容でした。速報評価点はチーム内最低の4.5、次戦のメキシコ戦では藤本にスタメンを奪われクローザーとして試合終盤に出場するのみでした。

イタリア戦では引いて守りに徹するイタリアに対し前へ出る事、スペースに入ることを徹底しました。が、勝ちを引き寄せることができるPKをストップされてしまいます。なぜ伊藤洋輝は目立たなかったといわれたのか、評価があまり良くなかったのでしょうか。

ボールに乗らなかった想い

 

彼のプレーの特徴は以前ここで紹介させていただいたのでそちらを見ていただけるとありがたいです。

簡単に言うとパスに関しては「他の選手の動き出しや受ける動きを察知して攻撃のスイッチを入れる縦パスが出せる選手」です。ではなぜ印象に残らずに終わってしまったのでしょうか。

伊藤洋輝を活かす戦術といえば、中央から崩すかたちではないでしょうか。アンカーの位置にポジションをとる伊藤はパスコースを探して、前線の選手がいかに繋げるかを見ます。中盤中央の低めの位置から前線にクサビを直接入れることができれば、攻撃陣に良いスイッチをいれることができます。

ところが前線に直接繋げることができなければ、彼より高い位置にいるサイドハーフやサイドバック、相方のCMFにボールを持ってもらうことになります。当然、伊藤より一枚上のポジションにいる選手たちにボールが渡ると、高い位置になりますので相手のプレッシャーも大きくなります。エクアドルもイタリアもそこへのプレスはかなり強かったり、ディフェンスの網を張ってきたりしていました。

本来プレッシャーがかかり相手の数的優位がどこかに発生するということは、逆に味方の誰かがフリーになるということです。そこで伊藤が低い位置で受け直して出来上がったスペースを利用したり、ボールのないサイドに捌いたりができる、というのがもっとも望ましい形です。

しかし、できませんでした。

2列目の選手が持つと攻撃陣は裏を取る動きを多用していました。伊藤洋輝はボールに関わることなく、前で行き詰まるボールを後ろでポジションを修正しながら見ていることしかできなかったのだろう、と感じました。前に速く勝負できるということは、今回の代表の良きところでもあり、伊藤洋輝が活きなかった原因でもあると思います。

伊藤洋輝の特殊なポジション

伊藤洋輝は足が特段に早いわけではありませんし、守備の意識がものすごく高いわけではありません。エクアドル戦やイタリア戦では身長があり、強さはあるものの、アジリティに欠ける伊藤を相手選手が複数人で狙って動きを制限し、ミスを誘っていました。

しかしこのような不利な状況でも、足下の技術と、広い視野を活用することができれば、相手のタイミングをずらして攻撃を活性化し、事態を打開できたのではないか、と思っています。しかしうまくいかなかった原因には、彼のポジションに特殊な事情があるのではないかと考えています。そこに彼に課せられた課題が潜んでいる。

セルヒオ・ブスケツ。パスサッカーの権化であるバルセロナにて皇帝と呼ばれ、中盤の底からパスを供給する名アンカー。

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彼が攻撃にてリズムを出したり敵を翻弄したりして活躍できるのは、ルックアップの回数が多いからでもパスの精度がいいからだけではない。僕はそう思っています。

その秘密は、「受ける側」との関係性があるからではないでしょうか。いかな天才的なパサーであっても、受けることができる選手がいなければパスを届けることはできません。

今大会緒戦エクアドル戦で、伊藤洋輝に求められたのは、たくさん動いて相手を潰すことではなく、適切なポジショニングで受け手との距離感を保ち、ボールを配給しつづけることだったのではないか、と思っています。まさにブスケツ。

しかしこのU20ワールドカップ日本代表では、先述の通りサイドで早く前にボールを進めるサッカーであったように思います。中央に伊藤のようなパスを出せる選手を置いたならば、彼を中心に回してほしかったという思いもあります。

イタリア戦での修正能力

 

イタリア戦を前に伊藤洋輝は取材に対しこう答えました。

「ボールに触って、自分の推進力、ゴール前に顔を出すというところをもっともっと出していければ、チームとしていい攻撃もできてくる。チームのためにどれだけ身を粉にして走るかだと思うので、そこもまた意識してやっていきたい。」

https://www.footballchannel.jp/2019/05/29/post323681/ より引用

イタリア戦の伊藤洋輝には変化が見られました。アンカー的な低い位置を取るのは変わりませんが、いつもより早く左右上下に顔を出したり、菅原のサイドに寄るときには得意のワンタッチで詰まった味方からボールを引き出すことができていました。そして相手選手の動きを止め、右サイドの攻撃を得意のボールさばきと視野で活性化させていたのです。

ボールを捌くだけではなく、守りに徹するイタリア相手に空いたスペースへ顔を出しボールを持ち上がり得意のミドルシュートでイタリアのDF網を揺さぶり続けました。2試合目のスタメンを藤本寛也に奪われた悔しさをばねに感情的になることなく自分のプレーを分析し修正した点はさすがにレベルが高い選手だなと感じた。

伊藤洋輝と藤本寛也

 

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正直書きたくありませんが、触れないわけにはいかない話題なので、伊藤洋輝と藤本寛也のことについても書きます。

伊藤と藤本は今大会、何度となくサポーターたちに比較されてきました。

走れる藤本、走れない伊藤。

顔を出せる藤本、消える伊藤。

今大会では前からプレスに行くことが多く、斎藤光毅が前でボールを刈り取る役割を担うことが徹底されていました。しかしその斎藤光毅がはがされてしまった時、機動力に優る藤本のほうが危機管理上、適切な役割を果たせたのは間違いありません。選手とチームの相性というのは厳然として存在します。

もしも、前の選手が「パスコースが切られた」と相手に思わせるプレスができたならば、「今はボールを取りきる」「今は引く」という判断ができる伊藤のカバーリングが活きたかもしれません。伊藤洋輝の予測能力がいかせるとしたらそういう形しかありません。しかし長い期間熟成されているチームならばいざ知らず、チーム全体で前からパスコースを限定していくことは代表チームでは難しかったと自分は思っています。

今回のチームでは藤本のほうがマッチしていました。いずれは走れない伊藤、消える伊藤から予測できる伊藤、ピッチを支配する伊藤と進化することを信じています。

ポーランドで得たもの

 

僕はこのポーランドでの闘いを通じて、彼らは成長というより進化したと思っています。かつて日本代表の指揮も執ったイビチャ・オシム監督は「厳しい状況においこまれるほど、選手は問題を解決しようと努力し、発想が豊かになるものだ」と語っていました。菅原由勢と伊藤洋輝の二人も、U20ワールドカップの舞台で厳しい状況に追い込まれることで変わったと言えるのではないでしょうか。単なる経験を積んだ、というだけではなく、真剣勝負のなかからこそ得られる、貴重なものを得られたのではないか、と思っています。

二人ともフル代表への道がおぼろげながらも見えたはずだし、そこにたどり着くまで彼らのために声が枯れるまで応援しようと誓った大会でした。

若鯱達よ「人間は負けたら終わりなのではない。辞めたら終わりなのだ。

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