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グランパスを会計で科学する(資本金)

みなさん、こんにちは。Jun.Sです。

前回の消費税ネタに続いて、今回も、響きがちょっと固めの内容になってしまいましたが、精いっぱい噛み砕いたつもりですので、(これを機に楽しんで)お勉強してくださいね!

今回は、各クラブの「資本金」を取り上げています。BS(Balance Sheet:貸借対照表)に記載されているもので、株主(グランパスで言えば、トヨタ、中日新聞、中部電力など)から出資・投資されたお金の総額となります。

一般的に、資本金とは、会社の規模や体力を示すものと考えられており、外部からは信用力のモノサシのひとつとも言えるでしょうか。各々みなさんに感じるイメージもあるかと思います。そして、その規模は、ビジネスにおいて、入札や資金調達、人材採用といった場面で多くの影響を受けるものです。

クラブ別の資本金

早速、以下をご覧ください。各クラブの資本金額となります。各カテゴリーの上位と下位を並べています。

(注)本来であれば、株主からの出資額のうち資本金に組み入れなかった資本剰余金などを含んで説明すべきところですが、今回は簡略化のため省略します。
(注)本来であれば、株主からの出資額のうち資本金に組み入れなかった資本剰余金などを含んで説明すべきところですが、今回は簡略化のため省略します。

ご覧のとおり、カテゴリーに加え、クラブ間で大きな開きがあるのが分かります。冒頭で、資本金は、会社の信用力のモノサシとお伝えしましたが、鹿島が15億円を超える規模である一方で、横浜FMや神戸でさえ1億円を割り、G大阪はなんと10百万円しかありません。これは、一体どういうことでしょうか?

そこには、もちろん金額が小さいことによるメリットがあるからです。特に税金面でメリットが大きいのですが、資本金が1億円以下の場合、いわゆる中小企業とみなされ、さまざまな優遇措置があります。法人税の税率が軽減されるほか、交際費の一部経費化や事業税の外形標準課税の回避といった節税が可能となります。(また、資本金が5億円以上となると会計監査人の監査が義務付けられ、管理費用が増えます。両者とも資本金の額のみで判定されるのは、やや乱暴だとは個人的に思うものの…。)

したがって、節税を意識した資本金の設定は実務上よく行われることであり、昨年にも岐阜が実施しています。(269百万円→80百万円。節税効果約11百万円との報道あり…。)

資本金の推移(J1リーグ)

こちらは、Jクラブの(経営の)歴史を物語る資本金の推移です。細かい数字ばかりですみません。

2006年以降の資本金推移
2006年以降の資本金推移

大きな特徴としては、リーマンショック(2008年度)前後に、札幌と仙台の資本の圧縮が進み、広島は増資(資本金の増加)で一度は耐えたものの2012年度に息が絶え、減資(資本金の減少)や高額年俸者の契約を見直すなど緊縮財政に拍車がかかりました。札幌は、野々村社長のもと、近年ではさまざまな営業施策に加え資本の増強を進めています。横浜は、2014年度にマンCの出資を受け入れたほか、神戸は、資本金が98百万円のまま維持されたことにより、昨今の補強の原資はすべてスポンサー収入で賄っている構造です。また、鳥栖は、2015年度以降、段階的な増資と合わせ大口スポンサーの獲得により戦力補強に成功しています。

なお、横浜FM、G大阪、神戸、大分の4クラブが現在、資本金1億円以下のJ1クラブとなります。(J2は7クラブ、J3は8クラブ)

なお、グランパスは、現在のところ資本金が105百万円です(おっと・・・)。従来は400百万円であったものの、2016年度に累積赤字を解消するために減資(400百万円の一部を損失補てん)したうえで、トヨタから新たな出資を受け入れました。トヨタによるグランパスへの出資比率は従来22.5%であったものの、この一連の取引により、50.1%まで引き上げられ、グランパスは連結子会社化されました。(株主数に変化がないので、株主に変更はなく出資構成が変わったものと推測)

http://nagoya-grampus.jp/news/pressrelease/2016/0615post-613.php

こちらは、これまで分散していた経営の責任を明確化するために、いったん過去の損失を解消したうえで、トヨタの責任で今後の経営を担うという決意だったのです。(実態は債務超過によるライセンス剥奪のリスクが大きかったと思いますが)

その後は、ご承知のとおり、トヨタの子会社として、小西社長の舵取りのもと、積極的な投資や施策を仕掛け、現在の躍進につなげています。具体的な数字は、こちらの記事で詳しく。

今回は以上となります。

かけ足となりましたが、いかがでしたでしょうか?「資本金」という、これまで聞き慣れた言葉ではあったものの、内容の理解があいまいだった方も少なくなかったかと思います。少しでも頭の整理が進み、会計や税金に興味を持っていただけたら嬉しいです。

それでは。

About The Author

Jun.S@グラファミ税理士
愛知生まれ東京在住の関東グラファミ。これまで某一部上場企業の経理マンとして10数年勤める傍ら、昨今の副業解禁(終身雇用制度の崩壊)ブームに乗って、税理士として会計事務所の経営も始める。また、学生時代、サッカー部の友人に誘われた現パロマ瑞穂ラグビー場(鹿島戦)で、会場入りする平木初代監督と偶然出会い、ガッチリ握手のエールを送り合ったことがきっかけで、グランパスを溺愛するようになる。実際のところ、選手経験に限れば、サッカーより野球のほうが圧倒的に長く、現在でも学童(少年)野球コーチをボランティアで行っているほか、現役選手として税理士会野球部に所属しているほどである。
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