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グランパスを会計で科学する(グランパスが無料チケットを配布し続ける理由)

グランパスを会計で科学する(グランパスが無料チケットを配布し続ける理由)

Jun.Sです。私は普段、会社決算などを分析するとき、とにかく数字を比較します。そして時には、掛けたり割ったりもして特徴を探ります。今回は、そんな管理会計(会計を経営に役立てるしくみ)視点による分析事例を用意してみました。(PLの中にある「入場料収入」の増加要因分析となります)

今年の8月10日(土)@豊田スタジアムの川崎戦で、鯱の大祭典イベントの企画として、小中高生10,000人が無料招待されます。(無料チケットの配布)
今シーズンに入り、大学生平成生まれを対象としたものや、県内小中高校生の卒業記念と称したりと、グランパスは多くのバラまき(無料招待)施策を昨シーズンに続き行っています。

その結果、観客動員数の増加に大きく貢献する一方で、有料チケットの割高感や販売の機会損失を生むほか、ダイナミックプライシングに影響を与えるなど賛否を呼んでいるのも事実です。
【注】私はマーケティングのプロでも、研究学者を目指すわけでもないことから、この記事で賛否を議論しようというものでは決してありません。

チケット単価の伸び悩み

そこで、今回は、PLの中にある「入場者収入」を「総入場者数」で単純に割ることで求められる「チケットの平均単価」を考察してみました。さまざまな席種がある中で、本来、どの席種が好まれ、売れているかの指標となりますが、残念ながら具体的な席割数や販売数が公開されていませんので、把握できる情報で計算した一席あたりの平均価格を使います。

グランパスの入場者関連データグランパスは、ここ5年間で入場者数も入場料収入も大きく伸ばしてきました。これは大変素晴らしい成果です。しかしながら、チケット単価で見ると大幅に低下しています。徐々に単価を下げつつ、とうとう2018年シーズンは、2,200円台まで下落しました(14年度比△16%減)。これは、いったい何が起こっているのでしょうか?

無料招待イベントの増加

総入場者数が増えているのにも関わらずチケット単価が下がる理由は、一人あたりの入場者収入が下がっていることであり、シーズンチケットやスポンサーチケット、席数の多い自由席や高校生以下など低価格帯の席種が多く買われていことに加え、無料招待イベントによる無料チケット入場者が増えたことによる影響と考えられます。
ちなみに2018年度の無料招待イベントは、

  1. 5/5(土祝) 横浜FM戦 小中高生10,000人
  2. 7/29(土) 札幌戦 大学生3,000人
  3. 8/5(日) G大阪戦 大専門学生3,000人
  4. 8/11(土祝) 鹿島戦 小中高生10,000人

が実施されており、計算過程は省略しますが、ざっくり計算すると単価引下げのおよそ半分は無料チケットの影響によるものです。(単価0円なので大きく影響します)

無料チケットを配布する目的

無料チケットを配布する主な目的は以下のとおりです。

  1. ライト層(新規含む)の取り込み
  2. 上記同伴者の購買力(チケット、物販など)
  3. スタジアム満員感の演出(現地のみならず、中継画面などにも影響)
  4. デジタルマーケティングに用いる属性データの入手
  5. 話題性による広告宣伝

といったメリットがある一方で、有料チケットの割高感や希少性が生まれることによる機会損失(買い控え)や、ダイナミックプライシングによるチケット高騰化にも影響を与えているものと推察します。ちなみに、大人自由席の標準価格は、パロ瑞穂2,100円、豊スタ2,300円です。

J1クラブのチケット単価

ここで、他クラブの状況と比べてみます。(2018年シーズンJ1に在籍していたチームで、決算未発表クラブの湘南・磐田・柏を除く)

J1のチケット単価
浦和が安定して高いチケット価格を維持しています。ダイナミックプライシングなど特別に高い価格設定を行なっていないことから、無料招待イベントなどを実施せず、高い集客力を維持している裏付けとなります。(入場者数の減少課題に対して席種を増やすなどの対策はしています。)

グランパスに関しては、他のマーケティング施策と合わせ、上記で述べたメリットも十分に取り込んできているものと考えられるため、無料チケットの配布は決して間違った施策とは言い切れません。クラブの基盤づくりとして集客増を最優先の課題として行っている経営の判断もあるかと思いますので、ある程度の単価下落は織込済みの可能性が高いです。ただし、いずれ入場者数も頭打ちとなることから、今後はダイナミックプライシングをはじめ、単価アップに向けた施策も次々と打ち出されるものと思います。
これらの経過をしっかりと見届けるため、「チケット単価」という指標も注目してはいかがでしょうか?

動向を注視したい新潟と琉球

さらに参考として、注目すべきクラブとして新潟と琉球を取り上げます。私個人の印象と数字を見る限り、これまでに無料チケット配布が多かったクラブかと思います。(間違っていたら、分かり次第修正します)

新規入場者関連データ
新潟の集客力の高さは有名ですが、なかなかチケット単価の向上が見られず、また、入場料収入も下降線をたどり、これまでの無料化施策がなかなか成果に結びついていません。2018年シーズンは、J2への降格とともに成績も振るわず、大幅な入場者減となり、ピーク時の2005年シーズンから約△60%の減少となりました。負のスパイラルに突入しています。

琉球は、小学生以下の入場が無料となっているほか、学生は500円、大人は1,300円から入場可能です。しかしながらチケット単価は、驚きの200円程度であり、無料チケット配布の影響が大きく出ているものと思われます。2019年シーズンは、J2への昇格とともに入場者数の更なる増加が見込まれることから、これまでの無料入場者の取込み(ライト層の有償化)が重要となってくると思われます。

大きな結論なくダラダラと書き殴った感も否めませんが、簿記や会計の扱いに興味を持ち始めた方々や、普段数字を扱うことが苦手な方々も含め参考になれば幸いです。

また、鯱の大祭典では、多くのサポーターが現地に詰めかけると思いますので、勝利を期待しつつ、大いに盛り上げて楽しみましょう。
私もシャチユニが届くのが待ちきれません!(現地行けないけど・・・)

About The Author

Jun.S@グラファミ税理士
愛知生まれ東京在住の関東グラファミ。これまで某一部上場企業の経理マンとして10数年勤める傍ら、昨今の副業解禁(終身雇用制度の崩壊)ブームに乗って、税理士として会計事務所の経営も始める。また、学生時代、サッカー部の友人に誘われた現パロマ瑞穂ラグビー場(鹿島戦)で、会場入りする平木初代監督と偶然出会い、ガッチリ握手のエールを送り合ったことがきっかけで、グランパスを溺愛するようになる。実際のところ、選手経験に限れば、サッカーより野球のほうが圧倒的に長く、現在でも学童(少年)野球コーチをボランティアで行っているほか、現役選手として税理士会野球部に所属しているほどである。
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