最初にお断りさせていただきますが、以下の記述は、一企業人としての各種報道の解釈の結果書いているもののため、内容については一切保証できかねます。
トヨタ自動車株式会社とそのグループ企業抜きでは、グランパスは今の事業規模を維持出来ない
本来、プロスポーツとは事業として独立しており、スポンサー収入と入場料収入、物販収入で自立できるものである。
だが、Jリーグの一部の企業は完全な独立を果たしているわけではない。
以下は2018年度 クラブ経営情報開示資料 – Jリーグからのデータである。
名古屋グランパスはスポンサー収入に大きく依存している。会計2017年度はJ2だったため少なくなってしまったが、2018年度は神戸に次ぐ2位をキープしている。クラブの収入の大半は、この莫大なスポンサー収入に頼っている。
トヨタ自動車グループからのスポンサー収入比率を下げることは大きな課題で、プロスポーツクラブとして自立をするためには新規スポンサーの獲得は急務。しかし現時点ではトヨタ自動車グループからの支援に頼らざるを得ない。
入場料収入や物販収入も改善傾向にあるが、スポンサー費用に比べれば微々たるものであることもわかる。
現時点ではトヨタ自動車株式会社とそのグループ企業なしには、グランパスの存続は難しいことがわかる。
トヨタ自動車株式会社がグランパスに求めるもの
トヨタ自動車株式会社(以下TMC)は、慈善事業を行っているわけではないので、メリットが必要である。
一般的に、企業スポーツの目的は以下の通りとされる。
- 従業員の連帯感醸成
- 企業の広告宣伝・イメージアップ
- 地域貢献
グランパスの場合は、依存度は高いものの、一応は独立したプロスポーツチームなので、1番上は当てはまらない。
これは外部からの想像になるが、TMCがグランパスに求めているものは「企業のイメージアップ」と「利益」の2つであろうと想像する。
1つ目の「利益」については、現状では他チームと比べてもかなり手厚いスポンサードを受けていることになる。プロスポーツチームであれば、広くスポンサーを集めて利益を出し、「通常レベルのスポンサード」に是正することが求められるのは当然のことだ。この点については、現在素晴らしい勢いでスポンサーを増やしていることはサポーターならば誰でも知っていることだろう。
2つ目の「イメージアップ」を求めるとなると、必要になるのが「より多くの人たちに」「気持ちのいい勝利を見せて」グランパスと、その裏側にあるTMCのイメージアップを実現したいと思っているのではないか、と思われる。
幅広くスポンサーを得るためにも、イメージアップを幅広い層にするにも、勝利は絶対必要である、と想像される。
トヨタグループのスポーツチームは、ラグビーのトヨタ自動車ヴェルブリッツと、バスケットボールのアルバルク東京があるが、これらを含めてTMCの人事本部はグループのスポーツチームに対して支援する機能を持っていると想像される。
人事部の持つ機能としては、「人の処遇」がある。「処遇」とは、社内のことであれば、社員の給料(昇給や昇格)や役職(昇進)を決定する、ということになる。うまく行っていない組織については、どのような人を充てればよいのかを考えることにもなる。TMCから課せられたミッションがうまくいっていないと判断されたらば、人事本部も動く可能性がある。
グランパスの経営陣のミッション
もちろんこれも想像に過ぎない。ただ企業のミッションの1つには、株主の期待に応えるということが必ず含まれるはずだ。
ということは期待は以下のようなものではないだろうか。
- 事業によって利益をあげなければならない
- 観客動員数をアップして、認知度をあげられなければならない
- 勝利をあげなければならない
そうなると、これらは以下のようなモデルで関連付けられる。
東海圏での観客動員には、第3者的な「なんか面白いことをやっているぞ」という評判が大きな影響を与える。
普通の人がスポーツで面白そう、と思うには以下の4つの要因があると考えられる。
- 勝利によるカタルシスを得られる
- 感動的なストーリーが味わえる
- 滅多に見られないスターが見られる(ストイコビッチなど)
- 見ていて面白いプレーが見られる(ベンゲル期の名古屋)
こういうメリットを期待して、一般観客はやってくる。(チームそのものを愛してしまったサポーターの行動要因は別である)
残念ながら、3番目の「スター」はいないので、それ以外の3つは確実に提供できなければならない。
そうなると監督には、見ていて面白いプレーが見られて、ある程度勝利できて、観客動員に貢献できるサッカーをできることが求められる。風間八宏さんには、そういうミッションが課せられたことが想像される。
監督就任時に目指したいこととして、「スタジアムを満杯にする」ということを挙げていたことからも裏付けられる。
強化担当には、その面白いプレーを見ることができるような選手の獲得がミッションとして課せられていたのだろう。
どこで歯車が掛け違えたのか
2019年途中までのグランパスは、概ね上手く行っていたと思われる。
ただ出場機会を保証することを誘い文句として選手を集めることには限界があった。
ここからは想像だが、
- ポジションは11個しかない。
- 選手を新たに獲得すると、その分出場機会が得られない選手が出てくる。
- 出場機会が得られなくなった選手は、特にグランパスに思い入れがあるわけではない。
- 出場機会を求めて出て行く
ということが何回も起きていたことが想像される。
その出場機会を得られなくなった選手の不満は、どこにいくか。それは強化担当である。
強化担当にとっては、
- 自分が獲得してきた選手を使って貰えない。
- しかも勝てない
- だったら俺を使え、と出場機会を得られなくなった選手の不満が爆発し、強化担当に不満がぶつけられる。
ということを何回も繰り返したことが想像される。
この繰り返しが、「選手の雰囲気が悪い」という強化担当の評価に繋がったのではないか。
選手補強を繰り返すのであれば、勝利は義務である。そうでなければ選手の不満が爆発する。勝利していれば、機会を得られてていない選手が不満を抱えていても、大きな爆発はできないはずだ。
監督と強化担当が対立構造では、勝てるわけがない
本来、グランパスに課せられたミッションのために「両輪」とならなければならない監督と強化担当が対立構造になってしまっては、強化そのものがうまくいくことはない。
実際2019年夏の移籍マーケットでは、太田宏介と山田康太の2名しか獲得をすることができず、不満を述べていた選手達の大多数を移籍で失うことになった。
期待の新人相馬勇紀が移籍した本当の理由はわからない。しかしこのような対立構造に、彼自身か、彼自身を支えるエージェントが危険性を感じたのでは、と想像している。
どのチームでも機会を得られていない選手はいるが、ここまで大規模な流出になることは少ない。対立構造がそれを助長したのでは、と筆者は想像する。
本当の意味で、強化担当と、監督が一つのチームとしてシーズンに当たれることが望まれる。