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To be or Not to be 悩ましいオフシーズンがやってきた

祝☆残留

2019年12月7日、鹿島アントラーズに今季好調を誇ったトヨタスタジアムにて敗戦。しかしながら、事前の入れ替え戦行きの条件であった20点以上の失点、ということには至らず、自力で残留を確定。ジェットコースターのようだった2019シーズンは、14位で終える形となりました。

マッシモと戦った8試合

9月28日の広島戦から指揮を執ったマッシモ・フィッカデンティ監督。8試合を指揮して結果は1勝3分4敗。勝ち点を6積み増す形となりました。この間の戦いぶりについて、風間監督の頃と比較してみましょう。と言っても、風間監督の時の数字は前半の好調期とその後の不調期では大きな差があります。ここではアウェイ川崎戦までを風間監督好調期、ホーム松本戦~アウェイ清水戦までを不調期と定義して、並べてみます。

風間好調期 風間不調期 マッシモ期
勝敗 7勝3分2敗 1勝4分9敗 1勝3分4敗
勝点 24 7 6
平均勝点 2点/試合 0.5点/試合 0.75点/試合
得点 21得点 18得点 6得点
平均得点 1.75得点/試合 1.29得点/試合 0.75得点/試合
失点 8失点 32失点 10失点
平均失点 0.67失点/試合 2.29失点/試合 1.25失点/試合

並べてみると胃が痛くなる数字が並ぶ不調期の数字。ひどい以外の言葉がありません。もしこの勝ち点ペースで残されていた8試合を戦ったとすると、期待できた勝ち点は4点です。もし4点を加えた勝ち点35でのフィニッシュだったと仮定すると、来季に向けた準備という意味では最悪な、16位で入れ替え戦を戦わなければいけない位置でした。監督交代により失点は約半分になりました。数字上は、守備を整備したことで得失点のバランスが圧縮され、その効果でつかみ取った引き分けの数が効いての残留、と言って良いのでしょう。

その一方で、8試合でわずか6点に終わった攻撃は悲惨なものでした。自陣奥まで引き込む守備戦術となったことでロングカウンター中心の攻撃が増えました。しかし、残念なことにこの戦術には現在の名古屋の面々はアンマッチ。カウンターのスピードは上がらず、ボールを持てばジョーにロングボールをぶつける以外の選択肢が持てず。前田直輝が個人で打開する以外に得点の道筋を見出すことができないまま、シーズンを終えることになりました。

結局のところ先制点問題は解決せず

少し前にみぎ氏がこのエントリーにて、「先制点が取れなかったことが響くサッカーだ」と書いています。今季のグランパスの戦いぶりは先制点が取れた試合と取れなかった試合、どのようになっていたのか、集計してみると下のようになりました。

風間好調期 風間不調期 マッシモ期
先制時勝敗 7勝3分1敗 1勝2分1敗 1勝
非先制時勝敗 1敗 2分7敗 3分4敗
先制試合率 91.6% 30.8% 12.5%

この数字を見ると、好調期にはできていた「先制点をとる」ことが不調期には出来なかった、ということが非常によくわかります。これは、みぎ氏が書いている通り、相手のゴールをこじ開けられずにバランスを崩した結果カウンターを受けるという脆弱性が、自らのチームのコンディション不良や相手チームの研究などにより露わとなった、ということでしょう。その一方で、風間監督のサッカーとはまた違ったベクトルで先制点が必須と言えるサッカーをしているフィッカデンティ監督指揮下においても、先制点を取る道筋ができなかったことも事実です。

そもそも、ゴールが生まれづらい競技であるサッカーにおいて、先制点が重要であるという事実は指向するサッカーで変わるわけでもありません。たとえば下の表は2015年~2019年において、リーグで最も多くの勝ち点を稼いだチームの先制・非先制時の勝敗です。

先制時勝敗 非先制時勝敗 先制試合率
2015広島 18勝1分 5勝4分6敗 55.9%
2016浦和 19勝2分 4勝3分6敗 61.8%
2017川崎 19勝4分 2勝5分4敗 67.6%
2017鹿島 17勝1分 6勝2分8敗 52.9%
2018川崎 17勝2分1敗 4勝4分6敗 58.8%
2019横浜FM 20勝1分2敗 2勝3分6敗 67.6%

ここから大まかに読み取れるのは、

  • 優勝するようなチームは多くの試合で先制点が取れる
  • 優勝するようなチームは先制点を取った試合で勝ち点を落とさない
  • 優勝するようなチームは先制されても最低限の勝ち点をつかみ取る反発力がある
  • 優勝するような実力のチームでも先制された試合は分が悪い

ということではないでしょうか。これと今季のグランパスの集計を見比べてみると、風間監督時代の好調期にはこれらのチームに近いことができており、不調期にそれができなくなったこと。そして、不調期にはそれができなくなり、手当もできなかったために監督交代をするという決断に至ったこと。監督交代してみたものの、思うような形では自分たちの先制点まで無失点で粘れなかったこと。これらが結果のデータからも伝わってくるように思います。

どこまで行けるかフィッカデンティ

最終節のセレモニーの後の囲み取材で、続投の方向性であることが判明したマッシモ・フィッカデンティ監督。前任者の後を受けてという難しい形であったとはいえ、(ある意味、誰にとっても)思った通りの結果が出なかった8試合となりましたが、続投については「6~8週間準備期間をもらえれば全く違うものを見せる」と意気軒昂です。

さて、彼が言う「全く違うもの」とはどういうものなのでしょう?未来は予測しきれるものではありませんが、過去と現在の延長上にありがちなものです。ここ8試合を現在とするなら参考とできる過去は日本に来てからの4シーズンあまりの指揮内容でしょう。下にまとめてみましょう。

2014FC東京 2015FC東京 2016鳥栖 2017鳥栖 2018鳥栖
順位

9位

4位

11位

8位

解任時17位

勝敗

12勝12分10敗

19勝6分9敗

12勝10分12敗

13勝8分13敗

7勝9分13敗

勝点

48

63

46

47

30

得点

47

45

36

41

23

失点

33

33

37

44

31

先制時勝敗

11勝5分1敗

17勝1敗

9勝4分1敗

11勝4分5敗

6勝1分1敗

非先制時勝敗

1勝7分9敗

2勝5分8敗

3勝7分10敗

2勝4分8敗

1勝8分12敗

先制試合率

50%

52.9%

41.2%

58.8%

27.6%

FC東京時代の彼のチームは、固い守備をベースに長短のカウンターを繰り出し、上手くいかなければ太田のクロスやセットプレーで仕留めるタイプのチームでした。決まり手としてはカウンターが多かったとはいえ、太田の左足という飛び道具でもって、けしてボールを持ったとしても無力なチームではなかった、ただそれでも優勝を勝ち取るほどの破壊力には足りなかった、そういう印象です。

ただ、FC東京はフィッカデンティ監督の「その先の伸びしろ」に疑問を抱いていたのかも知れません。4位という好成績を残しながら契約は延長されず、指揮するチームを鳥栖へ移すことになりました。その鳥栖の初年度は前年崩壊していた守備を失点を17点も減らすという形で立て直した一方、得点を取ることに極めて苦労し、勝ち点を失い続けました。2年目は攻撃面では進歩を見せ、20試合で先制点を奪うもその半数の試合はリードを保ちきれずに勝ち点を落とすゲームが頻発し、守備は悪化。2018年は再度守備を締めなおしたものの今度はそれまでをはるかに上回る得点欠乏状態に陥り、残り5試合の時点でもって解任の憂き目に遇うこととなりました。

攻撃的な引出しはあるのか否か

日本で指揮したチームの残した結果を見る限り、フィッカデンティ監督は「守備の構築に手腕のある監督」という評価が適当であるように思います。シーズンを通して指揮しての失点数が30点台のシーズンが3回、2018もあのままいっていれば失点自体は30点台で収まっていたであろうことを考えれば、その部分については十分な能力の持ち主と言えるでしょう。その部分が評価されたのであれば、残留という目的のみであれば、今回の交代劇もあながち理がないわけではないように思えます。

その一方で、彼に攻撃的なサッカーを落とし込む能力というかチームの得点力を上げる引き出しがあるかと言われると、そちらには疑問符を付けざるを得ません。FC東京と鳥栖のフィッカデンティ監督就任前のシーズンから就任中の数字を並べてみます。

順位 勝敗
2013FC東京 8位 16勝6分12敗
2014FC東京 9位 12勝12分10敗
2015FC東京 4位 19勝6分9敗
2015鳥栖 11位 9勝13分12敗
2016鳥栖 11位 12勝10分12敗
2017鳥栖 8位 13勝8分13敗
2018鳥栖 解任時17位 7勝9分13敗

見ていただいてもわかる通り、どのチームについても就任最初の年、大きく改善したのはいずれのチームにおいても失点数でした。得点数はむしろ鳥栖では微減、FC東京では激減となっています。では就任2年目に得点力が大きく伸びているかというとそうではなく、FC東京の2年目は得点は微減ながら勝負強さを発揮できたシーズンとなり順位アップ。

鳥栖の2年目は得点は増やしたものの失点はそれ以上に増え、勝敗がはっきり着く機会が増えた上で勝ち点としてはほぼ現状維持、という結果となりました。さらに3年目は全く得点が取れずに下位に沈んで解任となっています。

この推移をみると、彼と大森強化部長が自信をもって断言をした、「彼は守備だけではない=攻撃も良化させられる」という内容の根拠はいったいどこにあるのか、わかりません。

初年度は彼のいう「6~8週間の準備期間」を彼自身が不足していると指摘した体力の強化や、守備の強化に費やしたからという理由が成り立つのかもしれません。だとしても、2年目に大きな良化が見られず鳥栖で任された3年目はむしろ悪化した事実は重いようにも思えます。

それでもオフシーズンはやってくる

漏れ伝わってくる各種インタビューの内容を見聞きする限り、大森強化部長の意思としては「選手は揃っている」ということのようです。それはつまり、根幹となるメンバーを残せさえすれば、結果を出せるだけの選手がいるということでしょう。この発言をしたことで強化部は「現在の選手のコアをできる限り温存して来季に臨むこと」、そして監督は「その選手をベースに、目標となる順位をクリアすること」に対して責任を持たなければならなくなりました。
今回チームから発表された山口素弘氏の執行役員就任は、彼らに責任を果たすための活動を、きちんとチームとしてチェックをしていくために置かれたポジションなのではないか、そのように考えています。

結びとして

今回の件で、名古屋グランパスというチームは、「結局のところ何かがあれば屋台骨が容易に揺らぐチームである」ということを内外に喧伝することになりました。

サッカー選手がプレーするチームを選ぶ際の要素は色々ありますが、年俸が高かったり環境が整っていれば良いというわけでもありません。

そのチームがどのようなサッカーを目指すのか、それが継続されるあてはあるのか。方針転換があればすぐに出場機会の変化が起きる世界において、「こういうサッカーをしていく」というビジョンが固まっているチームに選手は惹かれていくものではないかと思います。

そういう意味で、名古屋グランパスは、内外の選手に選んでもらうために、フィッカデンティ監督のサッカーで良くなっていくこと、そこに自分の居場所があると思ってもらわなければいけません。

グラついているチームであることをこれほどまでに示してしまったチームです。離脱をする選手が出ても致し方なく、外の選手には選ばない理由を示してしまっている中で、補充に留まらない補強が行えるかどうか、なんとも心許ない状況と言えるでしょう。
「ゆでガエル理論」というものがあります。 熱いお湯にカエルを入れると驚いて飛び跳ねる。 ところが常温の水にいれ、徐々に熱していくとその水温に慣れていく。 そして熱湯になったときには、もはや跳躍する力を失い飛び上がることができずにゆで上がってしまうというのです。

我々は、そしてチームに関わる方々は、環境の変化に気づくことができているでしょうか。チームが選手からの求心力を失い、気がついたら飛び上がることができなくなる、そんなことがないように祈っています。

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