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2019年シーズンレビュー(2) チームの魅力と戦術編

若者の意識の変化

次に紹介するのは、今の若者たちが、どういう理由で就職を決めたのかを調べた調査である。
Point ① 変わる企業選びの軸「就職=就社」に変化の兆しが
2019年卒学生に対して「就職先を確定する際に決め手となった項目」を尋ねたところ「自らの成長が期待できる」が47.1%と、約半数が回答する結果となりました。
労働市場では「グローバル化やテクノロジーの進化による競争激化」によって、企業寿命が短くなる一方で、「人生100年時代」「職業寿命の伸長」という現象が生じ、「定年まで一社に勤め上げる」「新卒で入社した企業は一生安泰」という志向にも変化が見え始めています。学生のコメントからは、安定志向が伺えるなか、「将来が見通しづらい社会では自らの成長こそが安定に繋がる」という声が多く挙げられました。こうした背景から、「入社の決め手」として、将来のキャリアにつながる「成長」を挙げる学生が多いと考えられます。(引用元: https://data.recruitcareer.co.jp/column/20190131001/

就職先を確定する際の決め手(n=978)
就職先を確定する際の決め手(n=978)

このアンケートの対象は21歳前後、ちょうどサッカー業界でも若手選手の年齢層だ。彼らが自分の働きたいところを選ぶ際に重視するのは「自らの成長が期待できる」が半数近い。

  • セカンドキャリアを考えれば、会社の良し悪しではなく自分の成長が最も大事だと考えたから(成長期待)
  • やりたいことがあったし、なりたい自分像もあったので、自分が成長できる環境に身を置きたかったから(成長期待)
  • 仕事を通じて得られるものがある仕事をしなければ、社会人として生き残れないと考えたから(成長期待)

就「社」から、就「職」へ

人材業界では、若者の会社選びがいままでの会社に運命を託す、という形から、職業のプロフェッショナルとして、キャリアのためになる会社を選ぶようになってきていると考えられている。

アンケートの結果からもわかるように、サッカー選手が自分の腕頼みで生きるプロフェッショナルであるように、若者もサッカー選手などと替わらない自分のキャリアを考えた選択をするようになってきている。

サッカー選手のキャリアアップとは

「キャリアアップ」とは、特定の分野について現在よりもさらに専門的な知識を身に付け、能力を向上させて、自分の価値を高めることを指す。転職によって現職より収入が多い仕事を得たり、昇進したりするなどもある。
サッカー業界では、欧州チームへの移籍などがキャリアアップになるだろうが、国内でもキャリアアップになると考えられるチームがある。
チームとしてキャリアアップになりそう、と考えられるのは横浜Fマリノスだろう。マンチェスターシティへの直通経路を持ち、世界で実績を持つ監督を起用している。チームにタイするバックオフィス全体でのバックアップも他の追随を許さない。本年度の優勝よりも前から、選手間でのチームの評判は良いようだ。

もう一つが監督の指導を受けることでキャリアアップになりそう、というチームもある。何チームかあるが、その筆頭が大分トリニータだろう。片野坂知宏監督は、情熱的に、それでいて緻密に指導を行う。チーム全体でのバックアップという意味では横浜Fマリノスには及ばないモノの、監督の求心力と指導力だけで言えば、Jリーグでも最高クラスのはずだ。

これらのチームに共通しているのは、チーム全体でのバックアップだったり、監督の指導力だったり、キーとなる要素は異なるモノの、「よいサッカーをしている」ということだ。どちらも上位に位置している。

誰が見ても、よいサッカーをしている、というチームには選手も観客も自然と集まる。

では、名古屋グランパスはどうだっただろうか、観客は増えたが、選手は出ていくばかりだ。名古屋グランパスはキャリアアップに繋がるチームだろうか?

風間八宏の基本戦術:4-2-4

風間八宏さんの基本戦術は「攻撃は最大の防御なり

攻めている間は攻められないという考え方だ。しかし相手もプロ、ミスなしで攻め続けることはできない。ボールポゼッション70%なんていう試合もあったが、30%もあれば点をとれるチームは点を取れる。実際それで負けた試合は多数ある。
相手を押し込んでいれば、あたりまえだがグランパスの選手はほとんど相手陣内にいる。裏には広大なスペースがある。ミスを犯せば脆い。

押し込んでくるのが判れば、中央を固めて、相手のミスでボールを奪ったら、大きく逆サイドに展開すればほぼフリーで攻撃ができる。
後追いで守備がうまく行くケースはほとんどない。

厳しいことばかり書いたが、風間八宏さんのことが大嫌いだったという川崎フロンターレFW小林悠のインタビューを紹介しよう。

与えられたポジションは、センターフォワードではなく、右に開いたポジションだった。初めてやるポジションに、最初は戸惑いしかなかったという。
「右サイドでやることが多くなって、正直に言って何をすればいいかわからなかったです。真ん中でワンタッチでシュートを打ってゴールを決めるだけの選手だったので、右サイドでプレーすることも嫌だったし、『オレはフォワードなのに、なんで右をやんなきゃいけないんだろう』って思っていました」
前向きな小林にしては珍しく悲観的で、ともすると投げやりな気持ちになってしまうこともあった。家に帰れば、妻に愚痴を言ってしまったこともある。風間監督就任以来、スタメンで出ていた試合で前半でピッチから退いた試合もいくつもあった。だが、うまくいっていない原因は自分自身にあることに気付いていた。
風間監督は、ミスをせず、ボールを失うことなく、相手をはがしてフリーになり、連動してボールを動かしていくサッカーを標榜している。小林は、相手のマークを外すということが練習でできなかったという。
「練習では、チームの守備陣も話を一緒に聞くので、その筒抜けの状況でマークを外すということが難しくてできなかったです。ギリギリまで待って味方選手の顔があがった瞬間に1、2歩パッと動けばよいというのが最初は難しくて、動きすぎたり、早いタイミングで動きだしてしまったりしました。今は、タイミングと1、2歩動くだけで相手をはがせるようになった。それは、風間さんになってからできるようになったことです
できないことのイラだちは相当なものだった。
「引き出しがなくて、やりたいけど、できない。そういう自分にイライラしていました。本当にかっこ悪い自分だったと思います」
そういう自分を変えようと、シーズン終了後に、サッカーノートに決意を綴った。
「来年は、絶対に言い訳をしない。人のせいにもしない。右サイドが自分のポジションだと思って取り組もう」

https://www.frontale.co.jp/f_spot/pickup/2014/13.html より一部引用

風間八宏さんは人間としてはぶっきらぼうで、優しくはない。だから人間として大好き、と言われることはそんなに多くなかったようだが、サッカーの技術に関しては本物の腕を持っているようだ。実際、風間八宏の指導で上手くなりたい、という表現は移籍選手から多く聞かれた。

一方で風間八宏さんは技術について妥協はしない。技術の高い者を信じた。だから起用は偏る。頑張ったから報われるということはない。練習で良いプレーを見せなければ使われることはない。結果、使われなかった選手にとっては辛い監督になってしまった。小林悠のように、一度信じてやってみる、ということをできる選手はそうはいない。選手を引き寄せることもあるが、風間八宏さんのこだわりが原因で離してしまうこともある。両面を併せ持つ監督だった。

時代の変化についていけなかった

風間八宏さんのサッカーが後半戦急激に勝ち点を取れなくなった要素として、ジョーの負傷からのコンディション低下と、米本拓司や丸山祐市の離脱を理由として挙げるのは簡単だ。

それ以上に大きな要素が1つあると考えられる。スカウティングだ。
現代サッカーでは相手のうまくいっていないところをビデオ画像などを含めて様々な角度から探し出すことが当たり前になってきている。
メンタル面まで含めて分析が行われているのだ。

https://twitter.com/footballista_jp/status/1205429493940158464

象徴的なのがホーム横浜Fマリノス戦だ。押し込めていたはずなのに、本当にいいようにカウンターで5発を食らった。

自分たちのことしか考えていなかったから、相手のことを理解しようとするようなことはあまりなかったということなのだろう。
相手は技術だけではなく、こちらのスカウティングを向上させてきていた。スカウティングの向上を上回る素晴らしい技術を持つ、というのは今の名古屋グランパスではまだ難しかったのかもしれない。

フィッカデンティの基本戦術:4-3-2-1

風間八宏さんのサッカーと対照的なのは、フィッカデンティさんの4-3-2-1だ。単純に言って、前の人数が減り、カウンター志向になっている。シャドーは1トップの近くにいることになる。

クリスマスツリーについては皇太@不死鳥さんの記事を読んでいただくといいかもしれない。

https://note.com/soccrkichigai/n/n52591792a106

4-3-2-1での基本布陣
4-3-2-1での基本布陣

堅守速攻というのが基本になると思うが、押し込むサッカーを基本としていた人材に、いきなりのやり方変更は難しかったようだ。

まったく違うやり方を強いられて、かなり強いストレスを感じている選手も多かったようだ。現時点(2019年12月24日時点)でレギュラーから抜けている選手はいないが、今後はわからない。

またフィッカデンティさんとやりたい、と言って加入しようとする選手も今のところはいない。

正直、いまの時点でフィッカデンティさんが名古屋でどういうサッカーをしたいのかはまったく見えない。だからこそ、フィッカデンティさんを理由に加入する選手はいないだろう。

4-3-2-1を好んでいることは判ったが、4-4-2や4-2-3-1を併用したり、試行錯誤は見て取れた。

ただ、

名古屋グランパスは常に強いチームであるべきです。

大きな成果を達成するために必要な犠牲を全て払う覚悟が我々にはあります。

共に闘いましょう。

https://nagoya-grampus.jp/news/pressrelease/2019/1220post-1335.php

と、語っていることからも大きな変化が生まれてきそうだ。

1月から始動して、キャンプやトレーニングを経てカップ戦やリーグ戦が始まっていくわけです。その時にどういう選手が手元にいるかによって、どのようなチームを作るかを考えていかなくてはなりません。もちろん、「こういう選手が必要だ」というリクエストは出しています。戦力がそろって初めて、どういったサッカーができるかという話になってくると思います。

https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=1194&cid=104

選手の入れ替わりもこれから何人もありそうである。

Jリーグ内でのキャリアアップの頂点に立ちたい

サッカーチームとしての良いサイクルは、

  1. 優秀な監督による、魅力的なサッカー
  2. 優秀なスタッフによる、チームとしてのバックアップ(分析・フィジカル・メディカル)
  3. 優秀な企画・マーケターによる、大規模な集客
  4. 優秀な営業による、継続的な資金確保

この4つが揃ってはじめて生まれる。

名古屋は3,4についてはほぼ成功しつつある。

しかしピッチ内についてはまだまだだ。来年は1.や2.でも素晴らしい振り返りができることが望まれる。

4つが揃って、選手が競ってグランパスに入りたくなり、観客もグランパスが見たくてしょうがない、そんなチームに2020年はなってくれることを祈っている。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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