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ゴール裏と応援の未来 シンゴさん&カズヤさんインタビュー(3)

第1回 ULTRAS NAGOYAってなんだ? シンゴさん&カズヤさんインタビュー(1)
第2回 楽しめこの時を!スタジアムで1つになる シンゴさん&カズヤさんインタビュー(2)
第3回 ゴール裏と応援の未来 シンゴさん&カズヤさんインタビュー(3)

降格とゴール裏の変化

グラぽ:
降格は色々な転機だったのかなと思っています。降格の前と後で、ゴール裏に何か変化ってありましたか。

カズヤ:
ゴール裏の変化……。

グラぽ:
あんまり無い感じでしょうか。

シンゴ:
濃くなった気はしますね。ゴール裏の変化っていうか、自分は結局ずっとそこにいたからわからなかったけど、後々考えてみたらそうだったのかなとは思いました。

カズヤ:
落ちた時と優勝した時のチケットも持って来てます。落ちた時って、ここに”信頼”(編注:グランパスの2016年スローガンだった)って書いてあるんだよ。

信頼のマーク(上から3枚目)
信頼のマーク(上から3枚目)

シンゴ:
2016年って、本当に何やってもうまくいかないし、結局自分たちで毎回毎回ポジティブに持っていきたくて、みんなにもいろいろ言った声も挙げたんです。

でも、そんな活動とピッチで広げられてることとのギャップがすごすぎて、もう希望が無いんじゃないかと思った。

結局、時間が過ぎていくのを見てるだけで、それでも、ちょっとでもきっかけがあれば良い方向に変われるんじゃないかってずっと探してました。

「絶対あるから、あるから」って、みんなにも、自分にも言いながらやってたんです。

クラブの人からは、初めてじゃないかなって思うんだけど、トヨスポの体育館で「このままでいくのかどうか」という説明会みたいなのものがありました。

クラブの人たちも、ピッチを後押ししたい、何かしたいし何か本当にやれることがあれば全部やりたいって思ってたのに、結局それが全然届かないっていう状態で、すごいみんながジレンマを抱えながらあの時間を過ごしてました。

2016年小倉監督休養が決定する柏戦
2016年小倉監督休養が決定する柏戦

結局、監督が代わってボスコ(・ジュロブスキー)が来ました。

それは単なるきっかけにすぎないんだけど、もうがむしゃらに本当に最後の最後までみんなで本当にやることやってみようねって声掛け合ってました。

クラブの人とも連携を取って全部やろうって言ってやったんだけど、ああいう結果(J2降格)だったじゃないですか。

本当に、最終戦の終了のホイッスルが鳴ったときには喪失感しかなかったです。自分たちがこれだけ思って、何か伝えようとしても伝わらないし、じゃあ自分たちがやってることって何なんだろうなって虚しさしかなかったんですよ。

でも、ゴール裏のみんなは、それでもすごく辛抱強く応援し続けてくれたし、声も挙げてくれたし。

カズヤ:
なんかそれぞれ想うことはあったとは思うけど。

シンゴ:
その想いみたいなのは、みんなすごくあったと思うんです。でも降格したら終わりじゃなかったですよね。

「2017年からどうなっていくんだろう」っていうのは、正直、俺も全然決めきれなくて。「このまま自分がコールリーダーやってていいのかな」ってその時には本当に思いました。

でも、周りの人が「辞めないですよね」、「まだ続けてください」、「終わってないじゃないですか」って、そういう声を掛けてくれて、すごくありがたかったです。

シーズンが終わって1週間後、2016年のチームの最後の練習の時に、新聞から色んな記事が出てきたり、選手の去就も不透明な感じの中で、俺はナラがどう動くのかなということだけがすごく気になってました。

練習場に行ってナラ(楢崎正剛)と話したんです。すると「自分はやろうと思ってる。このままじゃ嫌だし、落とした責任も感じてるから。もう一回頑張ろうと思うんで、1年でJ1に戻るために頑張るから、一緒に頑張ろうよ」と言ってくれた。じゃあ、やらないとなって感じにはなったんです。

それでも、人も代わるし、流れも変わっていく中で、本当にどうなっていくのか全然わからなかった。ただ、監督も風間さんに代わって、クラブの中で、またもう一回、一から積み上げていく、いろんなことを決めたり作っていこうってしてる中で、不安はあったけど変えるなら希望を持ってやっていきたい、そんな想いは、みんなの中ですごくあったと思います。

前回の『風』チャントの話もそうでしたけど、希望を持って変わろう、できれば上向いて・前向いてやっていこう、1年でJ1に戻るっていうのを最低限の目標として活動しよう。そんな目標をみんながはっきり持てたと思います。

カテゴリーとしては落ちたけど、今まで作ってきたものがベースになって、そこからさらに強くなるための上積みを作れる年に、2017年はなりました。試合も、途中までは全然うまくいかなかったですけど、そこから、選手も、クラブも、俺たちも一緒に積み上げていった部分はありました。だから、あそこで積み上げる仕組みみたいなのはできたんじゃないかなと、俺としては2017年をそう捉えてます。

グラぽ:
そうですよね。

カズヤ:
ナラ(楢崎正剛)がいたっていうのはやっぱり大きかった。俺達は個人の選手を応援してるわけではないですが、チームの柱で、ずっとキャプテンで、練習場とか行く度にコミュニケーション取ってもらってました。

俺達が何か言いに行った時には一緒に頑張ろうって言ってくれた、その人が、2016年の終わりに来年もやるって言ってた。

ナラってJ1の出場記録をずっと伸ばしてたじゃないですか。俺達、ナラの600試合出場後初のホームの試合(編注:2015年10月24日、瑞穂でのアルビレックス新潟戦)で、最初に600って出して、途中で700に変わるってコレオをやったんです。

ナラにもっと試合に出てもらって、もっともっと日本の伝説になって欲しいって思っていたので。これを言うとナラは「そんなの(笑)」って言うんだけど、早く、1年でJ1に戻ってナラのJ1出場記録を伸ばさせたいって思いはありましたね。

ただ名古屋にあるだけのクラブだった

カズヤ:
俺は落ちた時には怒りしか感じなかったんですけど、その怒りはクラブに対してのものでした。クラブの中身には怒りしかなかったんですけど、落ちた時にガラッと変わる・変えようとしてるのが見えたんです。

小西社長就任というのもあって、クラブが変わろうとしてるのが見えた。

それまでは、なんとなくJ1の10位ぐらいで、適当にお金かけてそこそこ勝ってみたいな、ただ『名古屋って街にあるだけのチーム』と思われていたのが、自分たちが期待するようなクラブとして存在感を増すんじゃないのかなと思えたんです。

俺達だけじゃなくて、みんな感じたと思うんですよね。監督も代わって、スタイルから何から全部一から作っていこうとしてた。クラブもちゃんとそう言って、社長もそう言ってた。

2016年までがあったからこそ、新しいものをこれから作っていくんだっていう想いも一番強かったはずです。

J2を戦ってるっていうよりも、新しくみんなでちゃんとしたクラブを作ろうとしてたのは、多分みんなが感じてたことなんだろうと思う。

クラブの新しい未来をみんなで作っていくんだっていう夢を、風間監督にその夢を乗っけてやれたんで、むしろゴール裏の熱量は、より濃いものになりました。

人数は最初はちょっと減ったかもしれない。でも今までなあなあになじんでたのがギュッと濃くなれたって思います。

もちろん「1年でJ1に戻るんだ」って思いがあった。でも俺もシンゴも、クラブの未来をこれから作るんだっていう思いが初めて湧きました。

ここからもう一回、未来を、夢を目指してやっていこうってなりました。だから降格してゴール裏がどう変わったかと言われると、「濃くなった」のかなと。

熱量とかも含めて。人それぞれ思いはあったと思うけれど、そういうのがギュッと濃くなった気がしますね、2017年から。今はその濃さがどんどんスタジアムに広まってるような気はします。2016年まではちょっと、ぼやけてたところは正直あったと思います。

シンゴ:
アウェーに行くのでも、初めて行くスタジアムって2017年は結構あった(編注:初のJ2で、初対戦のクラブが多数あったため)じゃないですか。

レベルファイブスタジアム
レベルファイブスタジアム

だからみんなで冗談っぽく、「1年だけだし、行ったことないスタジアムだから行かないとね」て言ってたんです。実際、アウェーでも、本当に結構な人数来てたじゃないですか。みんなで変えていきながら、楽しみながら、でもやっぱりJ2は1年限定にしなきゃいけないっていうのは、みんなの中で会話として自然に出てた。

グラぽ:
そうですよね。自分もあの年は遠距離で言うと福岡も丸亀も行きました。

カズヤ:
スタジアムの警備員さんに「お疲れさまでした。来場ありがとうございました」なんて言われて。「ありがとう。でも、来年は来ないから!」って返してました(笑)。

アウェイ動員が多くなったのも、『新しいクラブの未来をみんなで作っていこう』って気持ちもあったからじゃないですかね。

シンゴ:
自分たちで支えたい、そういう思いが2017年に強くなった人は絶対多いと思いますよ。

カズヤ:
本当に転機でしたよね。降格しなかったら、だらだらずっと『何となく名古屋にあるチーム』してたんじゃないでしょうか。

落ちた後、風間監督である意味良かった。なんでかっていうと、「極端なこと」を始めたから、『これで勝ったら新しい名古屋すげーじゃん』て夢をみんなが見れたと思います。

グラぽ:
私もずっとグラぽというサイトをやっていて、見ようによっては風間さんのことを擁護するような記事も上げてるんですけども、確かに極端だよなと思いました。ちょっとおかしいよねっていうようなところもたくさんありました(苦笑)。

カズヤ:
思うことはいっぱいありましたけど、ただ、ぶっちぎり方が面白かった。今まで色んな監督がいましたけど、普通に勝ったり負けたり『普通』だった。降格してチームを新しくしようとした時に、未来のビジョンを示すには風間監督は一番ぴったりな人だったんじゃないかな。それに俺達もみんな乗っかったというのはあったから。

クラブヒストリー

グラぽ:
やべっちFCで放映されたグランパスのクラブヒストリー(編注:2019年9月22日放映:サポーターと地域の揺るがぬ想いと題して放送された)はご覧になりました?

カズヤ:
見てない。

グラぽ:
すごく感動的にまとめられていたんですが、違和感が一つあったんですよ。名古屋・愛知の地域振興とセットで盛り上がるようになったと描かれていたんです。

カズヤ:
やべっちFCで?

シンゴ:
あれは作られてるなって。

グラぽ:
そう。ちょっと作られてる感じがあって。

シンゴ:
俺は見たんですけど、結局はちょっとお涙ちょうだいな、そういう感動的な形に持っていくために作ってないかなって、正直ちょっと感じました。

グラぽ:
そうですよね。

カズヤ:
ただ、まだまだそんなに街ごと盛り上がってるとも思えないですね。

観客動員と座席指定

グラぽ:
フィッカデンティさんになって、真っ当で、普通の監督になっちゃって、観客動員に影響しないかどうか懸念があります。

カズヤ:
実際、瑞穗の試合(大分トリニータ戦)などでも空席があって、全然満席じゃなかったですからね。

グラぽ:
そうでしたね。

カズヤ:
最近、瑞穂はずっと満員御礼でやってきたのに。

グラぽ:
そこがちょっと心配ではありますよね。

カズヤ:
様々な客層がいて、チーム状況によって変わる観客動員が、俺達がスタジアムの雰囲気を盛り上げる事により増えたらいいなと思ってます。

俺達がスタジアムの雰囲気を盛り上げようと思ってやってることの一つです。どうやって全体を巻き込もうとかいろいろ考えて、どの人たちも一緒になれることを考えていかないといけないと思ってます。

グラぽ:
ここのところのいろんな世の中の流れで、スタジアムの完全指定席化もあり得ると思います。そういう話は、クラブからUNに打診されたことはありませんでしたか。

カズヤ:
「あまりにも自由席の席取りのマナーが酷いので、クラブが着席ルールを導入する」となった時に、そこから抽選の話が生まれました。でも、今のやり方では本当にみんなの負担でしかない。

現状の瑞穂では難しいのですが、全席指定席化した時、じゃあ一番初めの指定の時、誰がどこってどう決めるんだって問題は残るんですよね。たとえば俺とシンゴがゴール裏最前列中央って言っても、どういう理由で俺達が優先されるんだって話になるじゃないですか。

グラぽ:
そこが難しいですよね。

カズヤ:
難しいですね。もうここ1年半くらい、みんなが納得できる方法を提案できないか、時間があればずーっと考えてるんです。今のやり方には、限界はありますよね。苦労しかないですもんね。

青井:
このお話については、僕が2019年3月に「グラぽ」に書かせていただいた記事の内容にリンクすると思います。着席ルールが導入されたタイミングで、現地でかなり混乱があったことに端を発して書かせていただきました。内容は『チケットが持つ意味ってなんでしょうね?』という根本的な事についてでした。

チケットというものは『その人はその場で観る』という権利・事実を表すものでしかないし、自由席チケットではその場所すら表してない。じゃあ、自由席の場所を誰がどうコントロールするのか。着席ルール導入時点ではまだ試行錯誤で、悪質な席取りが横行していた事実を前提に、どうバランスを取るか苦労している、しばらく見守らなければならないのでは、そんな内容を書かせていただきました。

僕の中では、ゴール裏がやっている応援活動はスタジアム演出の一環としてとらえるべきものだと思っています。応援の純度・良さを少しでも維持していくために、座席の問題は計画的に実施しなければならないと思っています。

カズヤ:
そこなんですよね。クラブの中にも熱量を持っている方がたくさんいます。俺達は彼らと一緒に今の応援風景を作ってきた想いがあります。

チームの魅力とかもあるんですけど、今どれだけチケットが売れようが、あの雰囲気の中で盛り上がっているのを楽しめて、「良かった」って思うからこそリピーターが来て、集客も出来るんですよと分かっている人もいます。

それを抽選とか、「どこに居ても応援は出来るでしょ」みたいに言われても納得できないし、それでは雰囲気も維持できません。

指定席化も含めて、良い方法を提案したいのですが、俺達だけで雰囲気を作ってる訳ではないのでやりながら正解を見つけるしか無いです。

俺達だけのことを考えたら、もう何でもやっちゃえばいいんです。でも、今はみんなが仲間だって言ってるのに、ゴール裏エリアがどうなるかわからないことを、俺達が推進するわけにもいかないです。

青井:
確かに。

カズヤ:
2017年J2に落ちて、一緒に新しくやり直そうっていう想いを共有しながら、一緒にやってきたはずなのに。ファミリーって名前が付いたら急に、「みんなファミリーだ。大丈夫でしょ?」ってブラック企業みたいな、完全にそういう言葉の使い方だなと思えてしまう。

FAMILY
FAMILY

こないだ「ファミリーっていうのはそういうことじゃねえ」というのを言って、コレオにもファミリーというのをもう一回出したんです。ゴール裏の人たちはそういう気持ちで分かってくれてると思ってます。

席に関してのことは、みんながみんな考えて一番良いものができればいいんじゃないかな。色んな人に聞くんですけど答えが無いですね。

今は抽選を色々な人と協力しながら場所をとって感謝は持ちつつやってますけど、いつまでもそれではやっぱりね。指定席になればいいんでしょうけど。どんな方法でも応援が壊されない、皆がある程度納得できて応援の熱量が下がらないものにしないと。

青井:
指定席は、例えばUNに優先枠等があれば実現できるんでしょうか?

カズヤ:
実現したとしても枠の線引きですよね。

青井:
そうか、UNという組織があるわけではないから。

カズヤ:
100人が「優先枠」となっても、その周りにいつもいる、顔はわかるけど名前は知らない、話はしたことがないけど試合ではいつも仲間と思って一緒にやってる人がたくさんいるので、線引きしてその人達を切る訳にはいかないです。

青井:
指定席だとやはり、プロ野球の応援団と同じ問題が起きてしまう。

カズヤ:
自分たちのことだけ考えたらとっくに解決してるはずですが、そうじゃない次元になってると思ってます。偽善者的な言い方ですけど、みんなと一緒にやってると思ってるから、みんながうまく行くやりかたとなると、迷子になっちゃって答えが出てこない。

青井:
全員が幸せになるのは難しいですね。

カズヤ:
最悪、みんながある程度納得できるところに持っていけたらいいんですけど、今は抽選以外にないのかなと。

グラぽ:
瑞穂が改装されるじゃないですか。間違いなくベンチシートから個別シートに変わる。すると全席指定化になるかもしれませんね。

カズヤ:
そうですね。「名古屋すごいじゃん。プレミアじゃん。」って言われるようにやるならJリーグで一番最初に全席指定化したほうが良いんじゃないかと、でもそうすると最初の席決めが……(笑)

グラぽ:
ですよね(笑)

カズヤ:
一定期間は席交換のやり取りが可能で、みんながある程度理想の位置に移動し合えれば良いのかも。

グラぽ:
今はリセールはありますけど、そうではなく交換と。

不思議なのが、そんなにコアに応援するわけではないけどゴール裏の中心に来たがる人がいるじゃないですか。あれは何なんでしょうね?

シンゴ:
それは本当に聞きたい(笑)。

カズヤ:
まず「一番盛り上がってる所に行きたい」というのはわかります。

それを否定はしません。応援しない奴に「来んな!」とか「やれよ!」とか言ってましたよ。シンゴなんて、昔は試合中にトラメガ叩きつけて何しに来てんだって強い口調で言いに行ったよね。

シンゴ:
それは若さだったね(笑)

カズヤ:
今はそういう人も含めていかに盛り上げられるか、自分たち次第だと思ってます。でも棲み分けという意味では考えてほしいなと思うところもあります。

ただ、あんまり棲み分けられて、固まりすぎると、手拍子や声に差ができてそこで止まっちゃうんですよ。

グラぽ:
応援の熱がそこを乗り越えられなくなってしまうと。

カズヤ:
今までも応援の熱が両端で止まって、メインやバックまで拡がらない時もありました。抽選になることである程度シャッフルされて、棲み分けの境界がぼやけたところもありますね。

グラぽ:
逆にそういう良い部分もあるのかもしれない。

カズヤ:
そう考えるようにしています。中心に来たい人が増えたり、中心にいた人が端にいったりするのは、メインとバックにも応援の熱を拡げようと思ったら、抽選が必ずしも駄目とは思わないです。

ただ、毎試合毎試合、自分の席が分からないっていうストレスもすごくあります。

クラブはゴール裏層なら勝手に来てくれると思ってるのかもしれないけど、新規顧客の事を考えるのも良いんだけど、苦しい時期に皆で一緒にやって来た人たちが集まってるゾーン………ゴール裏にも、こんな苦労しなくて良くなる様にちょっと金と頭と手間をかけて欲しい。

グラぽ:
釣った魚に餌をくれてもいいんじゃないかと(笑)

カズヤ:
あはは(笑)。分かってるとは思うけど、今のクラブの言い方からは、分かってないように聞こえる事が増えてるから。また『愛されたいクラブ宣言』を言う前くらいに戻ってるんじゃないかなと思える節はあります。

それをクラブにわかってもらいたいですよね。

グラぽ:
年に4、5回くる比較的ライト層のお客様に注力する、みたいな記事も先日出ていしたね。

カズヤ:
営業努力は良いことなんですよもちろん。ただし、そういうお客さん達がリピーターになるための雰囲気を俺達・ゴール裏が作っている、とまでは言わないけど、一翼を担ってるのは間違いないと思ってます。ライト層を定着させるのに必要な事は営業以外にもありますよね。

あとは、ダイナミックプライシングですか。瑞穂のゴール裏が5000円、6000円とか、頭おかしんじゃないのと(笑)。

グラぽ:
ダイナミックプライシングで、確かに売上は上がってるんでしょうね。

カズヤ:
名古屋もチケット収入の比率をしっかり上げて、スポンサーに頼らない経営をしようとすることは正しいと思うんだけど、単純に財布と相談しないと、一般人の収入からすると…(苦笑)。

グラぽ:
ちょっと納得いかない気持ちになりますよね。言ってみれば私達の給料とか全然上がってないじゃないですか。私は会社を経営してますけど、20年くらい自分の給料上げてないんですよ。子供が大きくなってきたりすると可処分所得はどんどん下がっていっちゃう。

カズヤ:
転売対策としてダイナミックプライシングをやるのは良いんですけど、収入で考えてるならファンクラブとして、ソシオ制度みたいな、熱意のある人たちが出す仕組みを作れば良いと思う。俺達だってその枠だったら出しますから。チケットが値上がってしまうのは、ライト層を定着させる流れとちょっと逆行してるんじゃないかなと思えます。

グラぽ:
むしろ「ここの席で観たい」という人たちから割増の料金をとる方法なんかも今後はありそうですよね。

カズヤ:
もっとみんなが真剣に考えて、誰か賢い人が答えを見つけてくれれば良いんです。

ただ、どんな形になるとしても、2017年J2であれだけ一緒にやった、アウェーでもあんなにファミリーが行くようになったなったのは2017年からだと思うんですが、そういう熱い人たちと一緒に応援していけるようにして欲しい。そこにライト層が絡んでくればいい。

それを壊されるようなことになれば、クラブに物凄く文句を言いに行きますね。今のところなんとかギリギリ保ってる状態です。

グラぽ:
けっこう危ういバランスまで来てますよね。席もそうだしお金もそうだし。遠征も安くないですからね。

ゴール裏のこれから

グラぽ:
応援の輪を広げていくための、具体策みたいなものはなにかお持ちなんでしょうか?

カズヤ:
メインとバックを巻き込むために、(2回目のインタビューで話した2018年の鹿島戦のような)『風』チャントの手拍子もそうだし、J1昇格プレーオフの福岡の時のコレオもあり、どんどんやっていこうと思ってますし、検討してることもあります。

ただ、何かアクションをして行こうとする中で、応援の輪を拡げていくには、ゴール裏真ん中・コア部分の熱量が絶対に必要なので、今のやり方で悪い方向になりゴール裏がバラバラになると難しいです。クラブの人気が高まって、席を取るのにみんなが一生懸命になるのは良いんですけど、もうちょっと落ち着いて欲しい(笑)。多少は譲りあいながらある程度自分が希望するエリア周辺に行ければそんなに我先に行かなくても、皆で一緒にやりましょうよと。

俺達が始めた頃を思い出せば、数十人でやっててせいぜい瑞穂の今のゴール裏3ブロックくらいまでしか拡がらなかった。ところが今は真ん中の5ブロック7ブロックがまとまった熱量をもって応援出来る様になったので、メイン・バックにまで熱が拡がるようになった。その流れは壊されたくないです。

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グラぽ:
これから先、ゴール裏をどういう風に繋いでいくかについて想いはあったりしますか?

シンゴ:
今やっていきたいことと、これからやっていかなければいけないことについて、自分でこんなこと言うのも何ですけど、たぶん俺達が一番本当に考えてると思うんですよね。これからやっていくことについては、皆の反応を見ながら「じゃあこうしていこう」みたいなやり方を考えている。自分達で本当に必死で、真剣にやっている。

だからゴール裏の人材育成的なものは正直やってないですね。若い仲間達は、昔の言い方をすると「俺の背中を見て」学んで欲しい。

カズヤ:
皿に残ったソースをなめて味と作り方を覚えろ(笑)。

シンゴ:
俺の背中を見て盗め(笑)。

カズヤ:
正直、繋いでいく必要性はあまり感じてないですね。やめる気がまだ無いので(笑)。

グラぽ:
あと20年はやれますか(笑)

カズヤ:
わかんないです(笑)。

Jリーグのデータで、名古屋サポでは40代の男性の割合が一番多いって数字が出てて、むしろ欧州ぽくて嬉しかったぐらいです。まだまだ、俺達のやれることがあると思ってます。

ただ、どこかで身を引く時が絶対にあるんでしょうね。

グラぽ:
かつてのシンゴさんやカズヤさんが出てきてくれたら………その時に初めて考えるということでしょうか。

シンゴ:
自分も初めはそうだったんです。ゴール裏の中心に立ちたい欲だったりがあった中で、きっかけはもらったかもしれないけど、最終的な決断は自分でしたんですよ。今までやってきたことも自分で決めて、カズヤと一緒に共有してやってきました。

でも所詮は趣味、遊びじゃないですか。「お金貰って行ってるんですか?」「どこかから遠征費出てるんですか?」とか言われたりして、お金を貰って義務的にやってるように捉えられたりもしますが、「いやいや何を言ってるの?」ですよ。自己犠牲でしかないじゃないですか。

カズヤ:
私生活も捧げてますから(苦笑)。

一番自分の中で楽しめてワクワクできて、輝いてる場所です
一番自分の中で楽しめてワクワクできて、輝いてる場所です

シンゴ:
でも結局楽しんでる。あそこに立つことが、一番自分の中で楽しめてワクワクできて、輝いてる場所です。俺達だけじゃなくて絶対みんな思ってると思うんですけど、自分が一番名古屋を好きで情熱・愛情を注げてるって想ってるからやれてる。それが応援のパワーだと思うし、皆に対してモノ申せる資格だと思います。

そういう立場に居て、身代わりというか自分の代わりを作るのに、その辺のちょっと頑張ってるなみたいな人を引っ張り上げて横に置いて「じゃあ見とけよ」「こういう時はこうだぞ」とかやるのは………。

グラぽ:
それは完全に仕事と同じレベルですよね。

シンゴ:
俺はそうじゃなかったですから。本当にやりたい、俺を超えていきたいって思うんだったら、俺を引きずり降ろしてでも中心に上がってきて「自分がやります!!」って言えば良い。そういう奴がいたらさすがに「おおっ!」てなるかもしれない。ただ、少なくとも今の段階でそういう人間はいないです。

これは世の中の流れと似てるかもしれないです。与えられたものに対してやってくれる子はいっぱいいますけど、それにプラスアルファ自分の色を付けたいとか、自分の意見をさらに上乗せしてくる人間ってなかなかいない。もちろん、意見共有したり会話したり、考えを一緒にすることができる子はいるし、協力してくれる子もいっぱいいます。シート張りとかでも若い子がやってくれるから、その分自分たちが楽をさせてもらってる部分もあって、その分だけ他のことを考えられるのは確かですが………。

新しい何かがきっと始まると思う
新しい何かがきっと始まると思う

カズヤ:
仕事じゃないので、誰かを「お前を次期社長にするから経営を覚えろ」みたいなことは絶対にしません。自分たちがそうだったように、きっと今いる子たちの内、誰かが中心になって動き出すと思ってます。そこは信用してます。

そうなれば新しい何かがきっと始まると思うし、自分たちがやってきたこととは違っても、それは次の時代の人たちが決めてやることだから、それに対して何か言う気は無いです。愛情をもって、俺達と同じようにやってくれる人が、俺達の予備軍がいっぱいいる。だから敢えて『繋ぐ』ことはしません。仕事じゃないですから。

いつかその時が来たら、きっと彼らが「やるぞ!」となって「革命だ!」って、絶対そうなると思ってるんですよ。

だから俺達は考えなくても良いし、次の時代は次の時代の人が絶対にやると思う。俺達と同じように。

今やってる事を続けていれば、繋いでいる事になっていると思います。

グラぽ:
自然に変わっていくだろうと。

シンゴ:
俺達のやりたい事が完成はしてないと思うんですが、これまでやって来た分だけ土台みたいなものは出来てると思う。

だから、今ここで俺達がスパっと抜けたとしてもそんなにパワーが落ちることはたぶんないと思います。将来のゴール裏の中心が、今の土台の上に新しく何かを積み上げていくのか、ぶっ壊してもう一回作るのかは分からないですけど、とにかくやろうとする人間は出てきます。

でも現時点ではまだ俺達の中でやりたいことが出来上がったと思ってない。

もっと効率良くできるんじゃないかとか、こういうものができるんじゃないっていう、そういう夢・可能性をゴール裏のあの場所に感じてるので、俺達がやり続けてます。

「貫く」は、俺たちが表現する

グラぽ:
そういえば「狂熱のシーズン」って本をお読みになったことありますか?

ヴェローナFC(編注:イタリアのプロサッカークラブ)のセリエAでの2000-2001シーズン1年間を追っかけた本で、その中に「選手と監督は来て去る、でも俺たちサポーターは永遠だ」なんて言葉があって、それをちょっと思い出しました。

カズヤ:
あります。他にも似た様な言葉を別の、「 フーリファン 」というチェルシーのフーリガンを描いた本で、同じような台詞を見ました。

クラブの色を作るのは俺たちだ 。何故なら監督、選手はいずれいなくなるが、俺たちはいなくならないからだ」みたいな事が書いてありました。

今、俺達が思ってるのは本当にそういうことで、2019年のチームスローガンは「貫く」でした。

監督に誰が来ようと、クラブがなにを言おうとも、「貫く」のは自分たちで、俺たちが、あるべき姿とクラブの色を表現してやろうと思ってます。

俺達が貫いてれば、クラブの貫くは間違ってないと思えるから。多少、クラブの人たちがブレようが、俺たちが貫いてればそれでいいと思ってます。
(了)

インタビュー制作スタッフ

シンゴ様・カズヤ様・UNの皆様に多大なご協力を賜りました。ありがとうございました。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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