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自由席チケットを通して与えられるものは何か、というお話

それは突然か必然か

ホーム開幕戦を週末に控えた2月27日。グランパス運営より、このような告知がされました。

「2019シーズンホームゲームでの先行入場ルールの試験導入&前日シート貼りルールについて」(http://nagoya-grampus.jp/news/game/2019/02272019-49.php)

この告知について、少なくともTwitter上は賛否両論、議論が巻き起こりました。特に、発表当時は全ての自由席ともとれる書き方だったことから、不満含めた意見も相当数に上っています。その後、28日にホーム側ゴール裏のみと追記がされ、また一部の方による運営への電話直撃の報告がされ、ある程度クラブ側の意図や意志が確認できたことでいったん議論の勢いは沈静化。とはいえ、開幕の4試合分をもってどのようになっていくのか、火種はいまだにくすぶり続けているのが現状でしょう。

何が原因で今回の告知に至ったかというと、上記リンク先を読んでも分かる通り、「先行入場者による過剰な席確保」です。今回のルールは「先行入場後アナウンスがあるまでの15分から30分間は確保した自席にて待機し、荷物での席確保や自席以外の確保は禁止」というもの。これは、「先行入場列が解消され、一般入場列の並びが早い組が自席を確保したタイミングまで待機させることで、先行入場組と一般入場組の不公平感の解消を狙った」のだろうと考えられます。(具体的な運用が出ていないので、どう転がるか読めないのが現状ではありますが)

アナウンス後は荷物を置いて席を離れることが許されるため、旗竿やタオルマフラー横置きなどといった目に見えてあからさまな複数席確保でない「一つの席を一つの物品で押さえてある」ものは取り締まりようがないと推測されます。しかし、公式ホームページには「以降につきましては試験導入時の様子やご意見などを踏まえて後日、公式サイトにてご案内いたします」とあります。これを見る限り、今回の対策でもなおかつ悪質な席取りが横行するのであれば、さらに対策もせざるを得なくなるのだろう、というのは容易に想像がつくところです。

観戦チケットを通して得られるもの

では、なぜこのように議論になってしまうのでしょうか。これは、僕たちがチケットというものを通して何を得ているのか、何を与えられているのかについて、実は共通理解がなされていない、それが原因なのではないかと感じました。そこで、チケットがもたらすものについて、「When(時間)」「Where(場所)」「What(対象)」で切り分けて考えてみることにします。

そうすると、チケットが僕らにもたらすものとは

  • When=時間=試合が行われる時間に
  • Where=場所=スタジアム内のある場所で
  • What=対象=グランパスの試合を見る

と定義できるのではないでしょうか。Whereの部分はチケットの種別によって、「規定されたあるエリア内の1席」(自由席)であったり、「ある特定の席」(指定席)であったりするわけですね。

しかし、「もたらされるもの」を考えるだけではこの場合不十分です。併せて「もたらされないもの」を考えなければなりません。そして今回の場合、僕が考える限りでは、「自由席ではもたらされないが、指定席ではもたらされる可能性がある」要素であると思っています。

この要素とは、「Who=誰と」という項目です。自由席のチケットに定義されているのは「規定されたあるエリア」での観戦であり、それが「誰と」であるかは保証されていないのです。一方、指定席の場合、購入時に一続きの席を確保できた場合は、その時点で「Who=誰と」という部分も保証されることになります。今回の件については、保証されていない事柄について、限られたパイを取り合うことによるひずみが引き起こしている、という風に認識しておく必要があるでしょう。
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どこまで「Who」を認めるべきか

では、ひずみが起きているからと言ってこのWhoが蔑ろにされるべきか、と言われれば、僕はそうは思いません。サッカー観戦という非日常の空間を、誰と一緒に体験するのか、ということは観戦時の満足度の最大化にとっては必要不可欠なものだからです。おそらくそれは、チーム側もはっきりと認識しているでしょう。それを認識したうえで、それでもなお今回のような動きとなった背景は、ひとえに「チケットの売れ行きが従前より遥かによく、過剰な席取りや詰めて座らないことの弊害が無視できないものになった」ということではないでしょうか。

そのような中、保証されていないはずのWhoの部分を、最大多数の最大幸福を意識しながらどう確保するべきか。これは、複数出てくるクラスタについて、誰がどう優先されるべきかに線を引く行為と言えるでしょう。現在のレギュレーションで行くと、以下のように分けることができるように思います。

  • ① シーチケ先行入場組
  • ② 開場後スタジアム入りする先行入場組の仲間
  • ③ 並んで一般入場組
  • ④ 開場後スタジアム入りする一般入場組の仲間
  • ⑤ 開場後スタジアム入りする③④以外の一般客

そして、これまでのレギュレーションの場合、

①→②→③→④→⑤

の順番に席を確保する権利があったということです。

もし一切の席取りが許されない場合は、

①→②→③④⑤の先着順

となるわけで、それに比べると①の層の「Who」を確保する権限が強大であったということになります。

これが今回の変更により、席を確保する権利は

①→③→②④→⑤

という順番で割り振られることになります。②④⑤の開場後到着組で比較した席確保については到着時間よりも①③の層の「Who」の考え方が優先されることになるため、これまでと大きくは変わりません。ですからこれは「開場後スタジアム入りする先行入場組の仲間が、並んで開場を待つ一般入場組よりも席確保の優先権を持つのはおかしいのではないか」という考え方の下で②と③の優先度の入れ替えを目指した結果、と言えるのではないでしょうか。

変わるべき未来とは

実際のところは問題点はこの順番の部分だけではなく、過剰な席取りという部分にもあります。もちろん、「女性サポを隣に引き込むために居もしない連れ合いの席スペースを取っておく」とか「広く取っておけば結果として他の客が座らずに自分たちのスペースが広くとれる」なんてことを求めて席を確保するのは問題外です。が、そういった一発レッドの事例を差し引いても、①や③で先に入場する客にどこまでの「Who」を確保する権限を認めるのか、という問題点は残ります。

今回の運用ではまだそこまで強く規制されないであろう部分ですが、過剰な席取りが今後も横行するようであれば、例えば「シート張りの1人当たり確保できる人数を減少させ、その人数までは入場で確保することが許される」などの規制強化がなされることになるかもしれません。(編注:ジュビロ磐田の制約はもっとエスカレートしていて、「ご来場者の皆様方へ「席取り」禁止について」という方針が打ち出されています。
「改めてクラブ内で検討した結果、現状のままでは解決がされないと判断し、誠に不本意ながら、今後は「席取り」を行っているお客様に対し、「チケットの提示」と「お名前の確認」をお願いさせていただくことといたしました。また、スタッフより「席取り」をお止めいただくようお願いしても、お止めにならないお客様に対しましては、ご観戦をお断りすることも視野に入れて取り組んでまいることといたしました。」)

ただし、これらの規制はチーム側が望んでやっているわけではない、ととらえています。チーム側は「Who」の部分が観戦体験に大きく影響するのは百も承知でしょうし、何より追加の対策で人や物を導入しようと思ったらお金がかかります。そんなことはやらないに越したことがないのです。

実際のところこの対策についてはもう一つ、「自由席を廃止して全て指定席にする」というドラスティックな手段もありうることは間違いがありません。しかしそれはコアサポーターをどう扱っていくか(個人的には応援もスタジアム演出の一部であり、多少の優遇と融通はされるべきと認識していますが)、また今回のものとは違った問題点が出てくることでしょう。

2016年の崩壊で加速したチームの変化は、今になって我々「ファミリー」にも変化を促しているように思います。今この問題を通して求められているのは、ゴール裏を中心としたスタジアム文化の大枠を守るために、「ファミリー」側が少しずつ意識を変化させていくことなのかもしれません。

僕は今のスタジアムの雰囲気、観戦体験はとても好きです。それが良くない方向に変わらないで済むよう、いい落としどころが見つかることを願っています。

追記

この原稿を準備していたところ、ゴール裏ゾーンの入場について、本日UNからの説明で並び方が変更となって現場が混乱している、という内容を目にしました。

UNとしてはコアパートとなるエリアを確保しつつ、当日の混乱を防ぐためにブロック分け等の処理を行う、とすることで席を確保したい層のニーズへの対応と応援の強度の維持を両立したかったのだろうと推測しますし、その考え方については概ね賛同したいと思っています。とはいえ、今回は準備期間があまりにもなさ過ぎた。恐らくこれをやらかなかったとしても混乱が起こっていたであろうと考えると、この行動をもって批判を受けるのは、少し気の毒なことだと同情を禁じ得ない次第です。

今回UNが対応策として打ち出した、ブロック分けしての入場、という考え方はライブの時の規制退場と似通ってはいるのですが、退場の時と違い行き先の指定がある分、振り分けられたブロックでのお客様の振る舞いを誰が規制するのか、という問題が存在することになります。あくまで有志であるUNでそこまでを担保するのが正しいとは思えず、かといって運営がそこに口を出すかどうかというのも悩ましい。正直なところ、正解の見えづらい、難しい問題で、グランパス運営からの規制ルールと同様、しばらくの間はトライアンドエラーを覚悟するしかないのでしょう。

もっとも、運営がその時点で口を出さなかったとしても、入場後の振る舞いが運営からみられていることには変わりがありません。良くない未来を招かないよう、「自分さえ良ければ」の気持ちは抑えて、当日に臨みたいものですね。

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青井高平
愛知の片田舎出身・在住の本業サラリーマン。Twitter上ではNackyで通ってます。バスケ(FE名古屋)サッカー(グランパス)応援をはじめ、競馬漫画アニメゲームと守備範囲の広いオタク。爽やかに見えるのは擬態です。コワクナイヨ。

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