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楽しめこの時を!スタジアムで1つになる シンゴさん&カズヤさんインタビュー(2)

第1回 ULTRAS NAGOYAってなんだ? シンゴさん&カズヤさんインタビュー(1)
第2回 楽しめこの時を!スタジアムで1つになる シンゴさん&カズヤさんインタビュー(2)
第3回 ゴール裏と応援の未来 シンゴさん&カズヤさんインタビュー(3)

名古屋グランパスのチャントは、オリジナリティを感じるものが毎年増えてきている。風チャントはその代表格。
GLAPも慣れてきたなかで、今年バージョンアップを果たした。その魅力溢れる応援がどのように作られているのかについて、聞いてみた。

革命を起こそう

グラぽ:
2002年からの18年間ですよね。18年間続けるのって、実は結構大変だったんじゃないですか?
シンゴ:
大変でしかないですよね(笑)
カズヤ
気付いたら18年経ってた感じじゃない?
シンゴ:
今シーズンもそうですけど、その都度色んなことがあるじゃないですか。その都度その都度、ない頭絞って色んなこと考えて、みんなにそれを共有するためにどうしたらいいんだろう、ていうのはすごく常に考えてます。試合の時とかって頭はずっとフル回転の状態に近い感じできてるんで、なんだろう、全然まだ必死ですね。

振り返って「ああこんな感じだったんだな」とか「こんなことあったんだな」って思い返して、ああ、そうだった、って思うくらいです。どんどん上書きされていくんで、今が全部、みたいな感じですね。

過去は過去で、正直自分たちで作ってきたけど、他人事っぽいっていうか。だから振り返る機会をもらった時に、ああ、そんなにやってきたんだな、って思いますね。
カズヤ:
分かりやすいかな、と思ってUNのマフラーを一部ここに持ってきたんですよ。

歴代のタオルマフラー(一部)
歴代のタオルマフラー(一部)

前回も言った通り、ゴール裏は全部ウルトラスのような熱狂的な空間を作ろうという想いを込めて作ってます。

その時から百合のダンマク(revolutionの横断幕)も出してます。「革命をゴール裏に起こそう」って想いで。SA時代から革命を起こして、ファミリーがきて、2007年頃からもう優勝を狙うんだって”target”とかマフラーに書いていた。

自分たちの想いが移り変わっていってるんですけど、それが単純にモチベーションなんですよね。

最初の頃はゴール裏を良くしよう、もっと俺達の考えるような世界へ、革命を起こそうとか、みんなファミリーだよって想いで増やしていって、そして優勝を目指しましょうみたいに、だんだんだんだん変わっていくのがモチベーションになっているんじゃないかな。

グラぽ:
これはいつぐらいから出し始めたんですか?
カズヤ:
“Revolution” って出したのは最初の頃ですね。名古屋市の市の花が百合で、百合のマークを自分でデザインして、あそこに出しました。あんまり頭のいい話じゃないんですけど、”Revolution(革命)”って書いた時にフランス革命がパッと頭に浮かんで、色々調べると『ラ・マルセイエーズ』って歌はフランス革命で革命軍が歌ったってエピソードがありました。なんか自分たちにピッタリじゃんと思って、当時セリエAとかでも歌ってたんで、そのチャントも聴いていいなと思って、”Revolution” って書いて、百合のマークを出して、ラ・マルセイエーズを自分たちも使おうと思って名古屋風にアレンジして歌い始めました。
グラぽ:
それが、2004年くらいですか?
カズヤ:
UNがスタートしてすぐだったから2004年とか2005年くらいですね。
シンゴ:
「la famiglia」ってダンマクを出したのも2006年くらい。
カズヤ:
このマフラーのデザインも“Revolution” から、”We are family”がきて、まずは革命を起こすところから、「オレたちが革命を起こすんだ」くらいの勢いで、ガンッて表に出た時に使ったんです。ものすごく一番最初です。
シンゴ:
リーグもはじまって25年以上経つんだけど、そのなかで初めてスタジアムに来た人とか、友達に連れてこられた人とかが、自分たちがやってるゴール裏を見て「凄いな」って思ってもらえたりして貰えるのが理想。

今になって、そういう人たちがスタジアムに来て1試合通した中での、「いいな」って思える体験の中に、俺達のゴール裏もコンテンツとしてある、というようになったと思います。

ここまで来るまでが長かったのか短かったのかはわからないですけど、俺達がこうしたいと思ったって、理解して協力してくれる人がいないと、あんなゴール裏にはならないじゃないですか。そうやって考えると、伝えてきたことが間違ってなかったのかなと思うし、今ああやってみてると、ありがたいです。
カズヤ:
ありがたいっすよ。モチベーションの維持っていうのは、様々な立場の方々との新しい出会いがあり、協力してくれる人が年々増えているのが大きいと思います。オマエら辞めろってずっと言われてたら、モチベーションもどんどん下がって、とっくに俺たち終わってると思うし(笑)。
シンゴ:
名古屋の人たちは本当に協力的だと思うんですよ、色んなことに対して。
カズヤ:
ピクシー引退で一回燃え尽きたのに、ピクシーが監督で帰ってくるっていうストーリーがまた良かったよね。ピクシーって本当にストーリーを持ってるなと思うんです。

2009年のACLでのカズヤさんとシンゴさん
2009年のACLでのカズヤさんとシンゴさん

グラぽ:
ではこの”We are family”マフラーはピクシーが就任ぐらいの時のものなんでしょうか。
シンゴ:
マフラーが先。

ピクシーが来る前からこの言葉を使い始めてて、2008年にピクシーが監督として戻ってきた時に、「我々はファミリーだ」って記者会見で言って、俺達の中では「おっ」ってなったんです。

ピクシーが、自分が現役として過ごした中で、終わってからもずっと名古屋を忘れないでいてくれて、名古屋に戻ってきた時に、ファミリーだと感じた、言ってくれた。俺達とかクラブに関わる人に対して、家族と思ってくれたというのには、自然にリンクする気持ちの部分がありました。俺達の中でも、ピクシーが戻ってきてくれて、またグッと纏まった部分はあるのかな。
カズヤ:
きっかけとしてピクシーのことはあったし、優勝したからってそれで終わりじゃなかったし、もっと上がある。当然ACLとか、クラブW杯とか、上を見たらキリがないですけど。だから全然、そこで満足したってことはないんです。

今はゴール裏も盛り上がってきましたけど、まだまだもっと、2万人4万人の観客って言ったらもっともっとできるはずだと思ってます。だから、モチベーションはどうやって保つかって言われると、もっと次へ次へってなるから、試合が来るたびに勝手にモチベーションは上がってきますね。
シンゴ:
ピクシーが就任した2008年、最終節まで一応、ごく僅かながら優勝の可能性があったじゃないですか。

最終節は大分戦で、アウェーだったけど、ほんとにけっこうな人数のファミリーが大分に行ったんですよ。あのときはじめて、本当にJ1のタイトルに対して欲を、本当に取りに行こうよって、みんなが少しずつ思うようになったと思うんです。
そういうこともあって、「俺たちには明確に本当に狙ってるタイトルがある、それをみんなで取りに行こうぜ」って意味を込めて、ゴール裏で”target”のコレオを出したりとか、そういう意思をだんだん明確にしていった部分はあります。
カズヤ:
この頃まではJ1優勝なんて全然、夢物語だったもんね。もちろんしたいとは言ってたけど。
シンゴ:
だってピクシーが来る前の、2007年とか、もうJ2に降格するんじゃないの、みたいな感じだった。
カズヤ:
あれは1番焦ったね。
シンゴ:
それでJ1残留できたら、次の監督ピクシーだわ、みたいな。監督としては未知数だったじゃないですか。監督やったことなかったし。いや、ピクシーはそりゃ嬉しいけど、大丈夫なのかなっていう部分もあった。
カズヤ:
ほんとにそういうことを言えるようになったりとか、都度モチベーションが生まれてくる。この頃はゴール裏なんて全然まだ盛り上がってもなかったので、自分たちが革命を起こすぞって張り切ってやってたけど、真ん中の1ブロックぐらいしか跳ねたり声出したりしてなかった。
グラぽ:
あの大分戦では人集まりましたよね。私も行ってたんですけど、私の隣の人たちは宮城から来たって言ってたことを覚えています。
カズヤ:
いっぱいいましたね。ああいうふうに、クラブのストーリー的に1番面白くなりそうなピクシーが来て、しかも結果として2010年に優勝できたのは大きかったですよね。まあその後があるんですけどね(苦笑)

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名古屋のモヤモヤを吹き飛ばす

グラぽ:
先ほど、お二人がULTRAS NAGOYAになってから、チャントを全部入れ替えたってお話がありました。名古屋のチャントってけっこう独特だって言われることがあります。イタリア由来のいろんな曲やチャントとか、例えばガンバさんとかと被る場合もありますけども、ここ数年では、他とは被らない曲が多いのかなと思っています。チャントの選曲だとかっていうのはどなたがやられているんですか?
シンゴ:
完全に俺達2人ですよ。あと、もう1人いるんですけどね。
カズヤ:
最初は2人だけでした。最近はみんな色々言ってくれるんで、意見も考慮しつつですね。だから、ほんとに最初の数年までは手探りだったんですよ。盛り上がり方もわかってなかったから。
俺達がヨーロッパのゴール裏、特にセリエAが好きだったんですが、イタリアみたいに旗振って、みんな熱狂的にやろうよって言っても、周りには響かないし、イタリアかぶれした歌ばっかり歌いやがってっていう感じでした。じゃあ自分の作曲した曲を使おうとしても、それはそれで誰もチンプンカンプンなんで。まずはセリエAを一生懸命見て、聞こえてくるチャントをかっこいいじゃん、っていうパクリからでしたよ。
ただ、ある時期から、Jリーグの試合に行けば、どこもかしこもそういう風になったので、最近は海外のゴール裏で歌っているものを参考にしようというよりは、単純にこの曲カッコイイじゃんっていうところから考えているんで、昔と比べて雰囲気は変わったと思います。それでもJリーグの他のチームのチャントは聞かないので、たまに被ったりしますけどね(苦笑)。

最近のシンゴさん、カズヤさん
最近のシンゴさん、カズヤさん

グラぽ:
お2人が1番好きなチャントを聞いても大丈夫でしょうか。このチャントにはすごく思い入れがあるんだ、みたいなのとかってありますか?
シンゴ:
やっぱ都度都度、ずっと流れていくから、たぶんその時その時、思い入れの強い曲って変わっていく気はするんだけどな。どう? ある? そういうの。
カズヤ:
いや、どれっていうのは無いかな……。ただ、何が気に入ってるっていうのとは別に、今、『』チャントが、名古屋でよく、まあまあみんな知ってるし、みんな手拍子もメインもバックもしてくれるようになったので、けっこう代表曲なのかなと。
2016年にJ2降格して、そこでじゃあ応援やめようとは誰もならなかった。ただなんかモヤモヤがあった。その落ち方が良くなかったと皆思ってたんじゃないですかね。クラブの内輪もめがサッカーに影響しちゃった、みたいなところがあったと思うんです。
2017年、僕らもモヤモヤを抱えながら、俺達は沖縄キャンプに行ったんですよ。いつも行ってるんですけど。

そして、ほとんど選手全部入れ替わって、監督も風間さんに替わって、今までとまったく違う新しいチームを見た時に、なんかこう、頭の中に「ひゅーっ」と爽やかな風が吹いたような感じがしたんです。
俺達も、自分たちが風を起こして、名古屋の街にあるモヤモヤを全部吹き飛ばせたらいいなっていうのを思って『風』チャントを作ったんです。

だから、やっぱり思い入れはありますよね。
今歌っているのも、残留争いとか、監督が変わったとか、色々と不安な空気もあるけど、自分たちが大きな声で歌って、その熱量でまた風を起こして、俺たちの声で、そういう悪いものを全部吹き飛ばしたり、みんなの背中を押せるように、っていう思いを込めています。

『風』チャントは使いやすい曲になったなと。

後から知ったんですが、他所と被ってたらしいんですけど(苦笑)。
グラぽ:
そうなんですか?
カズヤ:
曲作るにあたって、被ったりパクりだって、よく論争になるんですけど、Jリーグの他クラブのチャント全然聞かないですから(笑)。作った後に被ってないかくらいは詳しいヤツには聞きますけど、カッコ良ければそれでいいので、あまり気にしてないです。
グラぽ:
デスパシート』も人気のあるチャントですね。
カズヤ:
デスパシート』やろうぜってなって、UN-TVで発表する時に、他所が開幕からデスパシート始めたらしいよって聞いて、「マジで~」って思ったけど、こちらのホーム開幕が第2節だったので、そんなの関係無いですよね。別にそこからパクってるわけでもないし。そんな1週間で作れるもんかと(笑)

被ったら被ったで、他所よりカッコ良くやって、俺たちの方がカッコいいって思われれば良いだけの話なんで、気にしてないですね。
シンゴ:
あれは世論も助けてくれたよ。同じ曲使ってるのに、こうも違うのかって(笑)
カズヤ:
みんなが支持してくれればそれでいい。俺たちの勝ちじゃないですか。だから被りはあんまり気にしてないです。俺達が良いなと思ってやって、たまたま被った場合は、「あ、被ったな」ってときは、より力を入れて、こっちのがいいものと思われたいじゃないですか。だから被ったチャントをやる時は現地で頑張ります(笑)。
グラぽ:
ちなみに風チャントだと、去年の鹿島戦、4万3千人の時にも体験したんですが、手拍子モードの『あったじゃないですか。あれは最初から考えてやられたんですか?
シンゴ:
イメージはあったけど、なかなかできなかったね。
カズヤ:
ああいう世界・スタジアムを作るためにUNを始めたんです。スタジアム全体が、1つにまとまるような……。
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それを思ったきっかけは、ピクシー現役最後の瑞穂の試合なんです。あの時って、すごく鮮明に覚えてるんですけど、スタジアム全部で、ドラムの音も聞こえないはずなのに、「ピクシー、アレ!」のコールが手拍子から声まで揃ってたんです。名古屋の応援で一番最初にバチッとスタジアムが一つになった瞬間だと思ってます。天皇杯優勝した時よりすごかったですね。
あのすごい空間を、いつかまた作りたいって想いがある中で、2017年のJ1昇格プレーオフがありました。あの試合でもかなりスタジアムの一体感はあって、相当凄かったんですが、最近だと去年の鹿島戦の時ですね。

』を歌い始めて、ちょっとドラム止めて手拍子に変えてみようってやってみたんです。そしから俺達の後ろから手拍子が始まっていって、周りを見回したら、バーッと手拍子が広がって、すごいなと思ってました。試合見てなかったですからね、その時。シンゴに「すごくない?」とか言って、俺達、手拍子見てたもんね。
シンゴ:
ある意味、本当に自然な流れだったと思うんですよ。試合中、結構あるんですけど、自然に嗅ぎ取ってじゃないですけど、今だったらこれできるなとか、今だったらこういうふうになるんじゃないかなみたいな、イメージの共有はカズヤと結構できてると思うので。あの時は、「いけるんじゃない、やってみる?」「じゃあドラム止めようか」みたいな感じから、ふわーってなっていきました。
カズヤ:
あそこまで上手くいくと狙ったわけではなくて、手拍子にしたらどうなるかなと思って一回切ってみて、もし全体に広がったらいいなくらいの思いだったんです。そう思えたのも、やっぱりプレーオフを経験してたから。あの時の一体感が相当すごかったんで。

鹿島戦の手拍子は、狙ったというよりも、いけそうだな、とドラム止めて手拍子で始めてみたら一気にバッと広がった。雰囲気も良かったですからね、試合の。
シンゴ:
周りが、だから、そうさせた部分はあると思いますよ。
カズヤ:
皆さんのおかげです、本当に。皆で作った。
グラぽ:
それだけの多くの観客が手拍子で揃うのは、誇れるものなのかなと。
カズヤ:
本当にそこまでなったんだなっていう、UNを始めて十何年経って、ここまでできるようになったんだっていう達成感、満足感みたいなものもあったけど、この先もっとできるんじゃないかと思えました。
例えば、欧州チャンピオンズリーグとかの大きな試合では、バックもメインも立って、全員で手拍子して歌っているじゃないですか。あれくらいの雰囲気を次は目指そうぜと思って、すぐまたそれがモチベーションになって、もっともっとできるっていう気分になりましたね、あの日は。最初に夢見た応援、サッカーの応援スタイルっていうか、全員で手拍子と声とっていうのができるようになってきたのかなと。

スタジアム全員で参加する – GLAPの変化

グラぽ:
そういう、観客みんなが参加する応援というと、今年からGLAPを試合中にも積極的にやっていますね。ウーッなんて声も入れて、まるでアイスランドのバイキング・クラップみたいに。
カズヤ:
今年からだっけ?記憶力ないもんで。
シンゴ:
GLAPを変えたのは今年から。
グラぽ:
あれはお2人から始められたんでしょうか。
シンゴ:
去年の終わりぐらいに、スタジアムでもうちょっとみんなを巻き込めないかなと、『風』チャントのそういう手拍子の経験から考え始めたと思います。
カズヤ:
そんな成功体験もあって、更に上を、と。
シンゴ:
ゴール裏だけじゃなくて、スタジアムみんなで何かできることってないのかなっていう話をしてた中で、じゃあGLAPをもうちょっと派生させるというのはどうかと。例えばどんな方法があるのかなと考えた時に、GLAPあの最後の終わりのところにみんなで「ウー!」とやれば良いんじゃないか、スタジアムのみんなが参加したくなるような、何かきっかけを自分たちで出せないかなって。
カズヤ:
それも『風』チャントの手拍子の時に、手拍子でみんながあそこまで広まったので、試合中にもっとみんな今なら巻き込めるチャンスなんじゃないと思って何かやろうよってなったんです。
風間(前)監督のサッカーって、ボール握ってずっとボール回してるじゃないですか。あの時間、ドラム叩いてドンドンドンドンとかやってるのを、名古屋だけの新しいもので何かないかなって考えた時に、GLAPやっちゃおうよ、試合中できるじゃんと気付いたんです。そこで声も入れたら試合中盛り上がるんじゃないって、ある意味、GLAPは風間監督のポゼッションサッカーありきで始めたんです。
フィッカデンティ監督になって、ポゼッションを意図的に抑えてきているので、尺が足りないこともあるんですけどね。それでも俺たちとしてはやりますけど。GLAPに合うサッカーを求めて。

GLAPの変化のきっかけとしてはボール支配率70%とかそういうサッカーありきで、そこで盛り上げられるようにというのと、『風』チャントが鹿島戦の時にあんだけ広まったのを見て、手拍子と「ウー!」くらいだったらスタジアムみんなやってくれるんじゃないかと。メインでもバックでも、歌は歌いにくいかもしれないけど、ウー! くらいならって始めたんです。
グラぽ:
バイキング・クラップとか、サンダー・クラップって他チームでは試合終了とかに選手とかと一緒にやるみたいなイメージだったんですが、それを試合中でもやっちゃうんだというところが、驚きでした。そんな狙いがあったんですね。

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GLAPはこうしてはじまった


カズヤ:
GLAPって、名前はクラブとかヨースケとかあの辺が決めたんですよね。俺達が決めたわけじゃない、GLAPって名前は。
シンゴ:
そう。
カズヤ:
試合前の選手入場のところで、ゴール裏はチャントも歌うけど、手拍子だったらメインもバックもみんなやってくれるかも、歌は歌いにくいだろうけどって考えたんです。「手拍子ができるノリのドラムのパターンでやりたいんです」ってクラブに提案したら、「いいですね」とは言われたんですけど、クラブはドン・ドン・ドン・ドンみたいな四つ打ちのもっと簡単なものに出来ないかって言ってきたんです

でも、俺達は嫌だと、そんなつまらないのはやりたくなかった。

ちょっと難しくて、ちょっと練習しないとやれないものの方が、隣の人に教えたりとか、みんなで教え合ったりとかして、交流も増えるし、できるようになった時に楽しいじゃないですか。名古屋以外やってないようなことやりましょうよって言って、クラブからだいぶ反対されたんですけど、嫌だやりたくない、俺達はこのリズム(編注:現GLAPのリズム)じゃないと嫌だっていうので押し通して、その時にGLAPって名前を付けてもらったんです。
シンゴ:
拍手のCLAPとGRAMPUSの。今でこそGLAPになっているけど、最初はGRAPだったんだ。クラップとグランパスのグラをかけてるんで。
カズヤ:
クラブにも、俺達の思いをくんでくれる熱量がある社員の人がたくさんいて、GLAPのリズムは押し通してもらいました。広まるのに時間はかかったんですけど、今スタジアムに来る人はある程度全員ができるようになったのかな。試合が終わって帰る時に、子どもがGLAPをやりながら帰ってるのを見て、いい絵だな、と。結構浸透したなと嬉しくなりました。

最初はGLAPを試合の前にやったり、勝った試合の後、選手を迎えるのに使ったりしてたけど、試合中の手拍子のリズムとしてやっても全然いけるんじゃないかなと思ったんです。

でも今なら試合中に何か、風間監督のサッカーだとボール回してる時が長かったんで、見てるだけの時間を作りたくないので、選手を乗せられる何かをやりたかった。新しく手拍子を作るよりは、今あるGLAPで、声も入れて、ちょっとテンポを早くしてやれば良いかなと。
グラぽ:
昔だと、パス回しの時に「オーレ、オーレ」とかやってましたね。
カズヤ:
それも良いんですけどね。
グラぽ:
風間さんのパスの回し方だと、あれ追いつかないですよね。
カズヤ:
疲れちゃう。
グラぽ:
死んじゃいますよね(笑)。
カズヤ:
だからGLAPの浸透具合と、他クラブに無いものっていうことで、試合中でも使うようになりましたね。
グラぽ:
貴重なお話をありがとうございます。今、チャントだとかに反応する人が増えてるってだけでも、スタジアムの応援がどんどん変わってきたんじゃないのかなって思います。
カズヤ:
すごくありがたいですね。『』チャントもそうなんですけど、毎年沖縄のキャンプに行っていろいろ感じた思いを込めたりします。去年だって、必ずしんどい時があるから、壁を越えようって言って、『デスパシート』にもそういう歌詞を入れてますし。
今年は、去年何とかJ1に残留して、攻撃的サッカーというか風間のサッカーで貫いていくという意味でも、もっとできるでしょって思いでカモンカモン切り拓け俺たちの道をって歌ってました。

チャントは、そんな感じたままに作ってきたんですけど、最近みんなが色々言ってくれるのはありがたいんだけど、プレッシャーじゃないけど、毎年何か出さないといけないんじゃないか、みたいになってて……。
グラぽ:
今年のテーマみたいな。
カズヤ:
そうそう。
シンゴ:
半分アーティストみたいな。「新曲まだですか」と。
グラぽ:
「今年は無いんですか」と。
カズヤ:
何かやろうとすると、チャントの発表がないともうしらけるって人も。
グラぽ:
きついですよね。
シンゴ:
新チャント、楽しみにしてます」みたいな。
グラぽ:
今年も去年を越えていくみたいな。
カズヤ:
ちょっとね……。
シンゴ:
そんな簡単じゃねーよって(苦笑)。
カズヤ:
ここ数年は、開幕のタイミングでやっぱり思うこともあって、言葉にしてちょうど連発して続けてきたんでそういうイメージがあるんですけど、若干プレッシャーというか気軽に作れないですね。プレッシャーって言ったら変だけど、それでみんなが盛り上がってくれるんだったらなんぼでも頑張りますけど。

「あれ行こう!」選曲は自然と決まる

グラぽ:
試合中、チャントの選曲や、どんなタイミングでどの曲って決めてるのはシンゴさんなんでしょうか。
シンゴ:
そうですね。ただ、意識はカズヤと多分そんなにずれてないと思うんです。だって自分が歌い出したら、ドラムも入らないといけないじゃないですか。カズヤとずれてたら、ドラムがずれたりしますよね。でも、ほぼずれることはないです。多くても3つぐらいの選択肢の中から、ポーンって歌い始めた時に、そっちきたか、みたいな感じで。

カズヤ:
チャントの時はこれとか、さっきも言ったけど本当に試合中はお互いがお互いを半身みたいな気持ちで……一心同体とは言いませんけど、気持ち悪いんで(笑)。ただ、それくらいリンクしてるんですよ。俺がこうだな思ったらシンゴがそのとおり歌い始めるし、みたいな。今、俺が思ったとおりのことをシンゴがやったりとか、話さなくても不思議と一致してることが多いんです。だから長いこと一緒にやれてるのもあるんでしょうね。気持ち悪いけど(笑)

シンゴ:
結局きっかけを作るのは俺なので、ほぼほぼ自分からタイミングとしては出してます。ただ、ずっと長いこと一緒にゴール裏でやってる人とかは、だいぶ自分の癖とかをわかってるとは思うんで。
カズヤ:
あれいこう、これいこうって。
シンゴ:
そうそう。だから歌い出した時に、周りの反応で何となくわかるんです。みんな待ってたな、やっぱりこれだって思ってたんだなみたいなのは、声の返りでわかるんですよ。
カズヤ:
次このタイミングでこれいこうとか、あれいこうって試合中もやり取りはするけど……。
シンゴ:
これいくかみたいな話をちょろっとすることはあるんですけど、基本的にはやり取りは全然しない。だから「次、何々いこうか」、「じゃあいくね」みたいな、基本は全部、意識で共有できてると思いますね。
カズヤ:
合わないのは1年に1回2回あるかどうかだよね。
シンゴ:
任せてもらってるというか。だから基本は自分で決めてます。
カズヤ:
もし違うことやってたら、とっくに「違うだろ」って言ってますから。昔はそんな時もありましたけど、今はもう無いですよ。

チャントに込める想い

グラぽ:
私のイメージだとやっぱり、これから追いつこうよとかっていう時なんかだと、『イエロー・サブマリン』なのかなとか。
シンゴ:
それはそうですね。点取りたいという時には『イエロー・サブマリン』。
カズヤ:
決め打ちじゃないけど、ある程度パターンはあって、それでみんなが同じ意識で『イエロー・サブマリン』歌ったら点を取りにいくんだって空気を出してくれたりとかしたら、やりやすいですよね。それがいいか悪いかはともかくとして。
シンゴ:
だから、作る時だったり発表する時、歌い出す時とかに、ある程度みんなにもそういう思い、何でこういう曲を今ここで入れるのかとか、こういう曲を作ったかっていうのは説明します。その歌詞の中にもやっぱりそういう言葉はちゃんと織り込まれてたりするので、こういう時間にはこういう曲歌うよねみたいなのは共有はできてると思います。
カズヤ:
そもそもチャントを作るにあたって、どっかからパクって、あれいいじゃん、これやろうよというノリよりは、今こういう試合が多いから、こういうタイミングで歌える曲を、こういう思いで歌える曲をって考えて作ってるところがあるんです。そのチャントごとに、使いどころじゃないですけど、気持ちとか考えが入ってるんで、そのタイミングで選ぶ時が多いですね。
グラぽ:
自然に使うタイミングが決まってくる、作る時にそういう思いが入っていると。
カズヤ:
そうそう。
シンゴ:
絶対、作る曲の中に一つキーワードがあるんですよ。そこからまわりを肉付けしていくという感じなんです。だからキーワードがまず最初にあることが多いですね。そっから、じゃあどういう曲をはめ込んでいくかとか、この言葉に合うテンポだったりとか曲調はどうだろうとか。
カズヤ:
なので試合展開含めて、流れの中で今こうでしょっていうタイミングがシンゴと一致してるんで、単純にチャントの選択も一致するのかもしれない。
グラぽ:
楽しめこの時を」なんていうのはまさにそういう……。
カズヤ:
しんどい時でも、挑戦者なんだから、楽しく行こうぜって意味で使ってましたね。
シンゴ:
お互い、そういう音楽聴いたりとかするの好きで、ジャンルも色々聞きますし。だから、この曲使いたいな、こういう曲いいよねってストックはたくさんあるんですよ。あとは出すタイミングと、キーワードに本当にハマるかなっていうのがあるんで、やっぱりまずは言葉からですよね。

心のタンスを開けて曲を引っ張り出してきて、そう言えば前あの曲いいって言ってたよね、と。
カズヤ:
自分の好きな曲歌ったほうがテンポが盛り上がるんで。……そうですね、だから試合中も含めて、状況に合うっていうのはそういうことだと思います。

想いとか、使いたいタイミングとか。

監督がマッシモになって、来年のことはわからないですけど、風チャントのときと同じように、「こういうのが俺たちに必要だよね」ってなった時に、何か言葉が生まれて歌詞になって、それに合う曲を今まで自分たちが考えた中から取りだしてきて当て嵌める。

そうやってあふれ出てきたものをチャントにしていけたらいいと思っています。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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