2010年代のビジネスのトレンドは”顧客を主体的に運営に関わらせること”
こんばんわ。シンゴビッチです。
前回まではグランパス観客動員50万人達成のポイント、”主客一体のデジタル経営”の”デジタル”部分に焦点を当てました。今回は後編、”主客一体”の部分に焦点をあてさせていただきます。2010年代のビジネス業界における成功のトレンドは”如何にして顧客に運営参画くさせ、忠誠心を醸成させるか”と言われています。
そのトレンドの中で、近年世界的に注目を集めているのがフランスの”La Louve(ラ・ルーヴ)”というスーパーマーケットです。このスーパーマーケットはコストコのような会員制のスーパーマーケットなんですが、会員には以下の3つの変わった義務が課されています。
- 入会時に出資金100ユーロを支払う
- 2か月に1回開催される総会に必ず参加し、議案に対する議決権を行使する
- 1か月に3時間以上店舗で働く。
これは言い換えるとお客様は”お客様””株主””従業員”三役を兼ねておりまさに、”スーパーマーケットの主役”と言えるのではないでしょうか?現在ラルーヴの会員の忠誠心、ラルーヴ以外のスーパーで買わない顧客の率は非常に高く、この3年で会員数は7倍以上に増えました。これ以上書くとただのサッカーではなくスーパーマーケットの記事になってしまうので詳しくは下の記事を読んでみてください。
https://r-tsushin.com/feature/movement/paris_lalouve_supermarche.html
さて、ここで聡明な方はピンと来たかもしれませんがJクラブというのは、そもそも”主客一体経営”の土壌が元々あるのです。我々サポーターはお客としてチケットやグッズを購入し、名古屋の勝利を目指すもの、ある意味従業員としてクラブの勝利を応援しております。FCバルセロナのようなクラブですとソシオ制を採用しており会長選への投票権を有す等”株主”の役割もサポーターは果たせます。
「降格」と新たな「指導者」によってサポーターは「ファミリー」になった
名古屋グランパスは2016年に降格したとき、全てを失って焼け野原になりました。そこから手探りで再建への道を歩んできたのは、皆様周知の事実だと思います。クラブとして風間監督を招聘し、小西社長を監督に据え、選手を集め、様々人材を集めた取り組みは、まさに1からクラブを作り直すんだという高い志の下にあったと思います。
そんな中で、我々サポーターも1からクラブを作り上げていく過程で「このクラブこそ俺たちが作るクラブだ」と気概を持ったサポーターもいらっしゃるのではないでほうか?
そして2019年、名古屋グランパスを「我々のクラブ」と思わせる決定的な出来事がありました。小西監督がサポーターの事を「ファミリー」と呼んだことです。
辞書をそのまま紐解くとサポーターとは支えるものです。支える方法は色々あって、実はクラブの外からでも支えられるし内からでも支えられます。即ちクラブの外の存在でも中の存在でもある曖昧な存在だと思われます。対してファミリー、これは「血のつながった存在」です。
養子縁組もありますがそれも何かしら疑似的に血をつなげるものですし、それは完全に「内なる存在」であり「外の存在」足りえません。その瞬間、グランパスサポーターはグランパスファミリーという一つの共同体になり、クラブは「俺たちのクラブ」になったのです。
しかし、”俺たちのクラブ”はファミリーを裏切った。
貴方にとってのクラブとは?
いきなり敢えて過激な言葉で表現させていただきましたが、クラブが意図して裏切った又は裏切り行為を働いたわけではない事は皆様頭の中では理解出来ていると思います。クラブの中でどのような事が起こって、どのような経緯で風間八宏が解任されマッシモ・フィッカデンティが就任しサッカーを180度転換することになったかは私では事情を報道ベースでしか推察することしかできませんし、今回その考察は記者や他のグラぽライターに任せたいと思います。
ですが、恐らく少なからずのサポーターが主観的には”裏切られた”と思われているのではないでしょうか?私も客観的には何らかの事情があって止む無く方針転換したというは理解はできますが、心情的には裏切られたと思っています。
グラぽ先生にも協力いただいてアンケートをさせていただいたのですが、まず驚いたのは票数の多さ。正直200票ぐらいを想定した作ったアンケートですが950票近いアンケートを頂きました。この票数の多さは今年後半のグランパスに対する失望の強さではないでしょうか?
失望は「希望を失った」ということ=なにか期待していたものを裏切られた証ではないでしょうか?
そして今度は今回のテーマ「忠誠心」を元にフォーカスしてみましょう。まず下2つ「貫かなかった」「16年から変わっていない」は明らかに17年以降の風間グランパスが好き、もしくは好きでなくても「0からの積み上げ」を期待して風間体制を支持していた層ではないでしょうか?これで50%約半数を占めています。
残り「勝てない」「守備的でつまらない」に関しては、もちろん勝てばなんでもいい、元々守備的サッカーが嫌いという人もいると思いますが、「マッシモになって勝てるなら仕方がないが勝てないから失望した」「攻守一体のサッカーをするという約束を反故にされたから失望した」という深層心理から投票した層もいると思います。
※この層を分類できない設問にしてしまったのは、私のアンケート設計ミスです
今回の結果から、少なくとも過半数以上のサポーターが「現体制を支持していたのに裏切られた」という感情を抱いた、と解釈することができます。
裏切られたと思ったのはサポーターの勝手で、ただの被害妄想だろと思われる方もいらっしゃると思います。
そんな気持ちを抱えていても、次のシーズンはやってきますし、その時には嫌でもテンションを一段上げ、クラブのために死力を尽くして戦うのがサポーターというものだと私は思います。
こういう苦境の時に必要なものは強い精神力、と言いたいところですが、皆が強靭な精神力を持つわけではありません。そんな「大和魂」は無限に沸いて出るものではないことは、皆さん人生の中で嫌というほど味わったと思います。
しかし、幸いなことに今はオフシーズン。開幕までしばらく時間はあります。色々と移籍情報もあるでしょうが、ここは冷静に自分の心情を探ってみましょう。
自らの心の中で何が起こっていて、どこを治療処置をしていけば良いを考えましょう。
クラブの事は冷静になれないかもしれませんが自分の事は冷静に見れるはず。今回は医者になった気持ちで自分の心を他人の心だと思って診察してみましょう。
まず、私が敢えて”被害妄想”と称したクラブの理解しがたい行動に対する怒り、嘆く、悲しみ。
この正体は私は「自分が思っているクラブと実際のクラブのズレ、乖離」だと解釈してます。
この乖離・ズレを小さくする方法が2つあると私は思います。
一つはもっとクラブを良く知ること。風間監督流に言うと”目をそろえる”ことになります。
もう一つはサポーターの思うクラブ像の範囲を絞ることです。
このクラブ像の範囲を絞る行為が「貴方にとってのクラブとは?」を問いかける作業になります。考えたことがある方はもちろんいる思いますし、考えたことが無い方も実は自然とやっている行為ではないでしょうか?
例えば、今年小林裕紀が移籍した際にサポーターは大きな悲しみと失望を感じたと思います。
しかし大多数のサポーターはそれでもグランパスを応援し続けました。これはサポーターの頭の中で、グランパスの定義から「小林裕紀」をあえて除外する、という作業が行われたからです。(中には小林裕紀を外せずに彼と一緒に大分に旅立ったもの、兼任になったものも知っていますが、それも1つの選択です)
しかし、それでも「失望」を無くすことは出来ません。
今回の失望が大きかったのは自分の考えるクラブが「2017年から明確な志を貫く、俺たちをファミリーと呼んで信じてくれたもの」と定義したサポーターが多かったのではないでしょうか?
私もその一人でしたので修正しようがない絶望感に襲われまして、目の前にあるクラブが自分の信じてたクラブではない。これを突きつけられた絶望感は残酷でした。
ですが、それでも来シーズンは2か月後には来ます。この間に我々サポーターがすべきことは名古屋グランパスというクラブを自分の中で定義しなおすこと。自分にとってのクラブを早く定義しなおすことです。
これは非常に難しい作業ですし、出来ない方もいてクラブから離れるかもしれませんが私は責めません。それほど今回のクラブの行動は我々の考えてたクラブの定義を根本から覆すものでした。
しかし、私は意外と大多数のグランパスサポーターは来年までにこの作業をこなしてしまうのではと思っています。この作業は無理やり自分の中のクラブの定義を変える苦しいものです。
しかし歴史をひもとくと、実は日本人は数百年前から、自分の持つ価値観を崩されては再定義をして、ということを繰り返していることがわかります。第2次世界大戦の敗戦による天皇制の崩壊、江戸幕府の体制崩壊・・・・みんな乗り越えてきました。まさに遺伝子レベルでやり方を覚えていると言っても過言ではないでしょう。
これができるのも日本人特有の思想に基づくものであると思っています。
次回はそのサポーターの思考・思想を紐解き、それを踏まえたうえで、来季以降グランパスサポーターをやっていく上で私が必要と思う、サポーターの心構えについて提案させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。