こんにちは。OTC公式(Gram_Leorep)です。
今回、初めてグラぽ先生のサイトに記事を載せていただきます。
初めましての方も多いかと思いますので、簡単に自己紹介をします。
私は東京在住のアラサーのグラサポで
高校時代から始めたレフェリーと大学4年間専攻したポルトガル語の知識を活かして(?)
- ブラジルでのグランパス関連の報道(選手コメントなど)
- サッカーのルールや審判に関するコメント
をTweetしております。
さて、2020年の競技規則改正の中で、意外と知られていない
「アドバンテージ」と「懲戒処置」(カード)について解説させていただきます。
少し長いですが、お付き合いください。
(ルールについて知識がある方は、3章からお読みください)
「アドバンテージ」とは
皆さんは、「アドバンテージ」(「プレーオン」とも言います)とは何か説明できますか?
競技規則には以下のように規定されています。
「反則が起きたとき、反則をしていない方のチームにとって利益となる場合は、主審がプレーをそのまま続行させること」
これは、反則があったとしても有利(チャンス等)な状況には変わりないから、試合を止めずに、そのままプレーさせようという、主審の「判断」になります。
「効果的なアドバンテージの適用」は審判のなかでも評価が分かれる「技術」と言えます。
- 反則に一つ一つ笛を吹いて、試合を止めまくっている審判
- 反則が起きても試合の流れを予測して笛を吹かずに、得点に結びついた審判
あなたはどちらが良いですか?
言わずもがな、後者は「ナイスジャッジ」として評価されるかと思います。
「アドバンテージ」ですが反則が起きた時に適用されるので、当然その反則が「カード」(正式には懲戒処置と言います)対象となることがあります。
その際、競技規則では
「警告や退場となるべき反則に対して、主審がアドバンテージを適用したとき、この警告や退場処置は、次にボールがアウトオブプレーになったときに行われなければならない」
と記載があり、これがプレーが切れた後「カード」が出る根拠です。
それでは、アドバンテージが適用された後に出る「カード」はどのようなものがあるのでしょうか。
「カード」(懲戒措置)になる反則とは
突然ですが、「カード」が出る反則が何種類あるかご存知ですか?
答えはイエローカードは8種類、レッドカードは7種類です。
どんな警告も退場でも、イエローなら8種類、レッドであれば7種類に分類されます。
去年まで、数あるカードの種類のなかで、「アドバンテージ」が適用された後に出るカードは主に次の2つでした。(異議を除く)
- 反スポーツ的行為
- ラフプレー
「反スポーツ的行為」は抽象的で判りづらいものですが、代表的なものとして
相手のチャンスを反則によって妨害・阻止する「タクティカルファール」(SPA:Stopping a Promising Attackとも言います)があります。(それ以外にもシミュレーションなどもあります)
具体的な例は、カウンターのピンチを相手選手のシャツを引っ張って阻止する等。
この「タクティカルファール」、これは反則で阻止した「状況」で判断されるものです。
一方の「ラフプレー」は、反則の「強度」に対しての懲戒措置となります。
例えば、相手へのアフタータックルを前方からしたのと、後方からしたのは危険度合が異なりますよね?
反則を「無謀」な(相手を危険な状況にさらす)形でしたら、ラフプレーとして警告されます。
カードについて詳しくはグラぽ先生の過去の記事でよくまとめられているので、そちらをご参照ください。
[小ネタ]知っておきたいファールとカードの知識
ところが、今年度ルールが改正され、「反スポーツ的行為」で警告されるべき「タクティカルファール」については、「アドバンテージ」が適用された場合、警告されなくなりました。
次の章で詳しくご説明します。
2020年ルール改定「アドバンテージ」適用時の「カード」
過去に私もTweetしたのですが、競技規則には以下のように記載があります。
「警告や退場となるべき反則に対して、主審がアドバンテージを適用したとき、この警告や退場処置は、次にボールがアウトオブプレーになったときに行われなければならない。しかしながら、(中略)反スポーツ的行為で警告され、反則が大きなチャンスとなる攻撃を妨害、または阻止したものであった場合は警告されない」
平たく言うと、「イエローとなるタクティカルファールでアドバンテージ適用したら、ノーカード」ということです。
とっても今更感ありますが、必見です!!
— OTC公式 (@Gram_Leorep) June 7, 2020
最初の5分だけでも見て下さい!!
特に4:09-からのSPAへの警告を見ないと、審判に「なんでイエロー出さないんだー!!ブー!!!!」と、ブーイングをして、周囲に「私はルール知りません!」と主張してしまうことになります😱😇👻https://t.co/YbyRnriiiA
それでは、実際の例で見ていきましょう。
(1)アドバンテージ適用したものの、カードが出る例
【2020年8月19日 J1 11節 湘南 VS 名古屋 90分】(動画上は121:15頃)
https://www.dazn.com/ja-JP/sport/Sport:289u5typ3vp4ifwh5thalohmq/7edr5j5016ukel7f51qd45eui
(2)アドバンテージ適用しても、カードが出ない例 その1
【2020年7月4日 J1 2節 清水 VS 名古屋 94分】(動画上は6:20頃)
https://www.youtube.com/watch?v=nDegYjRW7-s&t=391s
この2つの事象を見ると、
- (1)が湘南の岡本選手によるラフプレー(後方からのタックル)
- (2)が清水の選手のタクティカルファール
であることがわかります。
(2)については今までの感覚からすると「イエローだろ!!」となり、事実、執拗に抗議した相馬君に異議で2枚目のイエローが出され退場となってしましました。
しかし、ルールは改正されたのです。
でも、このルール改正、言ってしまえば「削られ損」ですよね。
では、なぜこのような改正がされたのでしょうか。(次の章に続く)
【マニアック論点】「DOGSO」と「アドバンテージ」
みなさん、またまた突然ですが「DOGSO」ってご存知ですか?
Jリーグジャッジリプレイではお馴染み、
「Denying Obviously Goal Scoring Opportunity(決定機阻止)」の頭文字をとっての「DOGSO」です。
一定条件下で3重罰(PK・退場・出場停止)が回避されるようになったという話は聞いたことがあるかも知れませんね。(ここでは割愛します)
DOGSOについて追加のマニアック論点ですが、DOGSOの反則が起きたときに主審が「アドバンテージ」を適用した場合、アウトオブプレーで提示されるカードの色はレッドからイエローに1段階下がるんです。
私もこのルールを知った当時「ざわっ」としたのですが、このルールが今回の改定に大きな影響を与えています。
DOGSOでの「アドバンテージ」適用で1段階下がるなら、
タクティカルファール(SPA)での「アドバンテージ」適用でも1段階下がらないとおかしいよね。
と整合をとったということでした。
「なんだかなぁ」と思う気持ちはわかります。しかし、ルールなので仕方ないですね。
おわりに ~【番外編】2020年 J1 10節 FC東京 VS 名古屋の荒木主審の基準~
私は実は2019シーズン、ホーム開幕戦で荒木主審に花束を贈呈しています。
それ以来、荒木主審が推しレフェリーの仲間入りしました。
(ほかには、西村主審、佐藤主審、井上主審、高山主審を推しています)
若くしてプロフェッショナルレフェリーになった荒木さんは実力は十分、
普段はとても安定しており、信頼しているレフェリーの一人です。
それでは、なぜグラサポにとってフラストレーションがたまる試合となってしまったのでしょうか。
それは、前半10分、中谷選手のレアンドロ選手へのファールがノーカードだったから
だと個人的には思っています。(動画上23:30付近)
https://www.dazn.com/ja-JP/competitor/Competitor:e90fnsgtnamze3yssxpg392eb/7dk272vu7gy2qwekilrrqjn8q
当初は、「中谷選手にカードなくてラッキー」とみていたのですが、
これで、「見えている方面からくる、多少のアフターチャージにはカードを出さない」
という基準ができてしまったため、FC東京の数々の正面からのアフターチャージにはカードが出なかった。
一方、成瀬選手の警告はすべて後方からのアフターチャージ。
冷静に見返してみると、基準はここか、とハッとしました。
レフェリーをしていて、最初に出すカードは特に気をつかいます。
それがDFの選手でかつ前半10分だと、「あまりカードを出したくない」という心理がはたらきがちです。カードを出さずに試合をコントロールしようとしたのだと思います。
でも、グラサポだったら納得できないという、サポ心理はとても理解できます。
私はいつも、レフェリーの判定に一喜一憂しないように心がけています。
というのも判定の多くは、判定の根拠や原因がわかれば、実は受け入れることができるものが多いからです。
ルールを知り理解するということは、結果的にサッカーという競技を面白く感じることに役立つと考えています。
なので是非、スーパープレーだけではなく、ルールや審判に注目してみていただければ嬉しいです。
長文読んでいただき、ありがとうございました。