トヨタのグループ会社として見たグランパス
こんにちは、久しぶりに記事を書くことになりましたシンゴビッチです。
今回のお題は、グランパスの親会社・トヨタ自動車です。トヨタ自動車と言えば皆様の中では世界的大企業で経営は安泰、このコロナ影響下において2020年の最初の四半期決算においても黒字という驚異の企業であります。
そんなトヨタのグループ会社であるグランパスがなぜクラウドファンディングに踏み切ったのか?先日清水専務がその目的を話をしていましたが、グランパスを”トヨタグループの会社”として考えるとまた違った目的があると推察しました。
参考:INSIDE GRAMPUS【インタビュー】専務取締役清水克洋「ファミリーと共にhttps://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/?sid=1575&cid=104
そこで今回はトヨタ自動車そのものでは無くて恐縮ですが、トヨタのグループ企業で人事として勤務しており、企業の根幹を為すトヨタの品質・安全・コンプライアンスを講師として社員に講義するため、会社の経営層とも話をする私が、トヨタ自動車とは何を考えているのか?なぜこの時期にクラウドファンディングをするのか?を”トヨタ自動車のグループ会社”として見たグランパスから推察・説明したいと思います。
小西社長の”クラブの存続が非常に危なくなる可能性がございます。”の本当の意味
そもそも私がこの記事をかくきっかけになったのは、小西社長がクラウドファンディングを募集する際に発言しました”クラブの存続が非常に危なくなる可能性がございます。”という言葉。これを聞いたときに、トヨタ系企業の人間とそれ以外の人間とで捉え方が変わってくるのではないか?という考えからでした。
( 参考:クラウドファンディングを開始するにあたっての小西社長のメッセージ)
結論から言いますと、”このクラブはクラブが無くなる3歩手前の段階にある”と私は思ってます。具体的には下記表をご覧ください。
クラブの状態 |
クラブ無くなる |
クラブ無くなる危機 |
クラブ無くなる危機の可能性がある ←こうなるかも・・・ |
まだまだ大丈夫 ←イマここ |
すごく楽観的な言い方をしてしまいますが、グランパスはまだまだ大丈夫ですし小西社長が危惧している状態になっても、まだクラブが無くなる段階では無いと私は判断しました。
言葉の揚げ足とりではないか?と思われるかもしれませんが、トヨタの中の人間は経営層のメッセージを正確に捉えることを要求されます。先日、弊社社長がこんなメッセージを出しました。
”今は危機的状況ではなく、危機であると捉えていただきたい”
トヨタの経営層というのはメディアに出ることも多いので、マスコミ対策もしっかり教育されてますし、場合によっては秘書が万全の台本を用意することもあります。ちなみに私も仕事で役員のメッセージの台本を書くことがごく稀にありますが、言葉の一字一句や助詞の使い方まで気を使って書きます。
すなわちトヨタの経営層・役員の言葉と言うのは非常に繊細で意味のない言葉など無いと思って下さいので、なのでグランパスファミリーの皆様はこれから小西社長のメッセージが出た時は今まで以上にメッセージを集中して読み、本質を捉えていただけると幸いです。
では、小西社長のメッセージ ”クラブの存続が非常に危なくなる可能性がございます。”を改めて見たうえで本当に楽観視していいのか?クラウドファンディングなんかする意味はあるのか?俺たちファミリーはクラウドファンディングを支援する意味はあるのか?と疑問に思う方もいるでしょう。
私の答えはYES。敢えてここは風間前監督風に言わせていただきますと、理由は2つあります。それは”トヨタグループの企業に課されている社会的役割”と”トヨタがグループ会社に期待していること”の視点からです。この2点から、このクラウドファンディングの達成は私は不可欠だと考えています。この二点についてこれから説明します。
トヨタグループのミッション ~ステークホルダーの期待に応える事~
私が研修講師として新入社員に必ず教える事は、楽しく働く事とトヨタグループの社員として絶対に遵守しなければいけない3項目です。その3項目とは
- 安全
- 品質
- コンプライアンス
になります。どれが一番大事かと言われると全部大事にになるのですが強いて言うならまず安全になります。
安全
これは小西社長も以前インタビューで答えてました。今年のサンフレッチェ戦がコロナ禍で中止になった際もトヨタグループの企業としての安全に対する姿勢が出た一面だと思います。
そこは以下のインタビューにも現れていると思います。
最後に小西社長は、かつての上司で現トヨタ自動車の豊田章男社長が「フルスイングして三振したら野次るのではなくて“ナイススイング”と言って笑顔で迎え入れてやると言ってくれていたので、私はそういう上司に恵まれて、今それをやっているだけ」とコメント。「とにかく突き抜けないと。その先の世界を見ることができない。4.3万人でスタジアムが埋まったら、お客さんの交通整理で問題がおこるかもしれない。安全と安心は妥協してはいけないが、他のことは多少の失敗をしても私が“ゴメンナサイ”と言えば済むので、どんどん面白いことをやってくださいと言っています」と言って、上がってきた企画に対しては、ほぼNGなしで積極的に仕掛けていく理由を明かした。
(引用元:https://dogatch.jp/news/tx/57502/detail/ グランパス小西社長「サポーターの経営参加」に勝村政信「ソシオに近づいている」)
品質
次に品質、トヨタと言えば品質です。皆様も一度は聞いたことがあると思われるトヨタ生産方式、カンバン、カイゼン、ジャストインタイム……。これらはトヨタの製品を支えるものである徹底的なムダを排除することにより他者に比べて優越、圧倒的に壊れにくいクルマを作る。これが今までのトヨタでしたが、実はこれは豊田章男の下で、今は変わりつつあります。今のトヨタの合言葉は”まずいいクルマを作ろう””まちいちばんの車屋さんになろう”です。
これは壊れないクルマを作るだけ、ではありません。豊田章男さんはこう言っています。
「うるさくて、ガソリン臭くて、そんなクルマが大好きなんですよ」
これは”ただ壊れない車””ただ安全な車”からの脱却を意味します。乗っててワクワクする楽しいクルマ、そんな車作りを目指す。それを為すためには”まちいちばんの車屋”で無ければいけないという考え方です。
それはグランパスでも同じです。ただ勝つ、ただいいサッカーをする。これだけではいけない。クラブとしてワクワクするクラブ。面白いクラブ。夢を与える魅力的なクラブ。抽象的な表現ですがそれを目指さなければいけないと私は考えています。その抽象的な概念を理解して具体化することを私自身1サポーターとして実践してきたつもりです。
そしてこれを為すために必要なことこそ、”まちいちばんの車屋”ならぬ、小西社長が日々言っている”まちいちばんのクラブ”になります。この言葉を聞いたとき、自分は凄く今のトヨタらしいなと思いました。
※ロッソジャッロ・ギャラクシーはまちいちばんのクラブとして、ワクワクする魅力的なクラブとは何かを解釈した上で私なりに具現化した例になります。
コンプライアンス
そして最後にして今回の記事の主題でもあるのがコンプライアンスです。コンプライアンスとは企業倫理と訳されている方も多いですが、私は講義でこう言っています。それはステークホルダーの期待に応える事。
ステークホルダーとは何か?というと会社に関係する全ての人たちと思ってください。グランパスで言いますとファミリー、スポンサー、地域社会はもちろん、選手、監督、スタッフ、対戦相手も含めてグランパスに係わる全ての人たちです。
トヨタ自動車及びトヨタグループでは元々ステークホルダー、社会貢献への意識は高かったのですが8年前に1度、日本の社会貢献度の高い企業ランキング1位から陥落しました。世界企業のトヨタが日本の社会貢献度1位から陥落するなどあり得ない。それ以来トヨタは一念発起し、最優先課題としてこのステークホルダーの期待に応えることに取り組んでいます。昨今では毎年他者を引き離すブッチギリの結果を見せています(7年連続トップです)
クラウドファンディングの意味
私はこのクラウドファンディングはグランパスがどれほど社会的貢献、ステークホルダーの期待に応えられているかを問われていると考えています。経営的には確かに苦しいが、それよりも姿勢を問われている。達成目標が7580万円という語呂合わせは、実際に経営危機を乗り超えるために、どこのセクションにどれだけの金額投資すればいいかという、具体的データに基づいた見積もりではなく、”トヨタから呈示された達成マストな目標”と私は受けとりました。
なんだそんなことか・・・。と思って安心したファミリーもいるでしょう。しかし私はこの呈示は危機だと思っています。なぜなら本当に危機ならば、トヨタは救ってくれます。サッカーというコンテンツは世界、特に欧州に対して強力なアイコンになり、F1は撤退しながらも欧州においては影響があるWRCや世界耐久選手権、ニュルブルクリンク24時間耐久レースに継続して参戦しているのは、トヨタが欧州マーケットを重視しているからです。トヨタがサッカークラブを潰したら、トヨタは社会貢献に於いて欧州への面目を潰します。
(そういう意味では欧州でそれなりに知名度があったジョーの獲得は理にかなっていた)
ただし、トヨタは無条件にグランパスを救うわけではありません。トヨタグループである以上、グランパスにも独立して採算を確保し、トヨタに依存しない体制を作ることを求められているからです。
トヨタは頑張る会社しか救わない。
トヨタグループの主要企業、例えばグランパスの背中スポンサーを務める所謂”トヨタ御三家”デンソー、アイシン、豊田自動織機の収益におけるトヨタの占有率はどれぐらいかご存知ですか?
答えは50%です。これの捉え方は皆様にお任せしますが、この割合をトヨタグループの経営陣は毎年意識しています。我々従業員も50%を超えたら危機感を覚えます。それはトヨタグループは脱トヨタを求められているからに他なりません。
そして実際に危機に陥った時、例えば今回のコロナ禍とかで多数の企業が経営危機に陥った時は”どこの企業を救うか?”というのは当然ふるいにかけられます。救える企業は限られてくるので当然救われるのは、”価値のある”企業です。
その指標の一つとして見られるのは独立採算制です。私も以前、調達部署にいたときがあり毎年各下請け企業に財務状況の提出を求めていたことがありました。その時に求めた指標の一つが”自分の会社が全体の取引に占める割合”と”トヨタが全体の取引に占める割合”です。リーマンショックが起こった際、何処の会社に資金を投入するか。それを会社経営陣が決断する際に、この資料は実際に使われました。
今、名古屋グランパスはクラウドファンディングを通じてこれを見られていると私は判断しています。今の名古屋グランパスは社会的貢献と脱トヨタが出来ているか?この2つが達成されないとグランパスは価値の無いクラブと判断され、トヨタから見放されると思っていいでしょう。
そうなったとき、”クラブの存続が非常に危なくなる可能性”が実際に”クラブ存続の危機”になり、”クラブ消滅”になってしまいます。
名古屋グランパスは社会的貢献ができ、ステークホルダーへの期待に応えられ、トヨタに依存しない企業であることをトヨタ自動車に証明するために、今回のクラウドファンディングの目標金額は必ず達成しなければいけません。
以上の考察より、私は今回のクラウドファンディングは3万円コースにさせていただきました(笑)
大のコーヒー好きなので、自分の名前入りマグカップでコーヒーを飲むのが夢でした(^^;