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そこにあったのは,色とりどりのベンチ.#ありがとう瑞穂

そこにあったのは色とりどりのベンチ.長いなぁ.いったい何人座れるのかな?

客は僕たち以外ほとんどいない.ぽつぽつとまばらに座っている.ベンチの間の広く大きな階段を駆け回って遊んでいると,母親がたしなめる声が聞こえる.確かにこの階段から転げ落ちるのは危なさそう.いい天気で,暑かったかな?

「中」に目を向けると,レーンに区切られた茶色い地面.直線は長く,カーブは大きく,その中には広々とした芝生とサッカーゴール…広いなぁ.小学校とは大違いだ.足の速いお兄さんお姉さんが走っている.

小学校の校庭は一辺で50mをとるのがやっとの,正方形だった.なんの気まぐれなのか,冬だけのサッカー部に所属していた僕は,正方形の校庭で窮屈に向かい合わせになったゴールの間で,ボールを蹴るのを楽しんでいた.当然校庭は土で,スライディングを試そうなどという発想すら出てこない.ボールと友人になりたかったけどボールは僕と友人になってはくれず,飛んできたボールの落下点が全く予想できなかった僕は練習試合ですらほとんど出る機会が無かった.けれど,それはそれで楽しかった.

そんな中,生まれて初めて見た「本物の競技場」の記憶はあまりにも鮮明で,今にも記憶に残っている.兄が陸上の大会に出るというので連れてこられた「本物の競技場」,それが瑞穂だった.400mの陸上コースも,フルサイズのサッカー場も,生まれて初めてだった.

それが何歳の頃だったのか,小学校でサッカーボールを蹴る前だったのか後だったのか,バスで行ったのか父が運転する車で行ったのか,何時間くらいスタンドにいたのか,結局兄は何の種目に出ていたのか,などの細かいことは正直記憶から抜け落ちてしまっているのだけど,あの時に見たベンチとスタジアムの景色はよく覚えている.広くて,長くて,色鮮やか.

その時から,「瑞穂」は僕の中で「すごいところ」になった.

パロマ瑞穂スタジアム(2020年10月,著者撮影)
パロマ瑞穂スタジアム (2020年10月,著者撮影)

とはいえ,中学では運動に縁がなくなった僕が瑞穂に行く機会は無く,「すごいところ」の記憶を思い出すこともなくなっていた.でも,それが変わるときが来た.

 「名古屋にプロのサッカーチームができるって?」

 ワールドカップの得点王が来るんだって.本当?瑞穂で試合をやるみたいだよ.本当に?!

そしてJリーグが開幕すると,テレビ中継や新聞に出てくる「瑞穂」の文字.球技場は水たまりでPKが止まるほどだと有名になってしまったけど,「瑞穂」が有名になるのはなんだか誇らしかった.競技場での試合では,開始前や終了後にちょっと映るスタジアムの様子の方が好きだったりもした.あそこ,知ってる!

瑞穂の現地観戦デビューはいつだったかは覚えてないけど,結構遅かった(大学生くらい?).ただ,その時,スタジアムの中に入った瞬間に思い出したのが,あの小学生の頃の記憶.

「あぁ!あのままだ!!」

色とりどりのベンチはあの時の記憶を呼び覚まし,ただ,ちょっとだけ色が違っていたようにも思う.実は,今でもあのベンチは幼い記憶を呼び起こす.

正直にいうと僕はあまり熱心なサポーターではないし(自認としては「ライトなファン」),地上波かBSの中継があれば観るかなぁ,という態度を貫いていたらいつの間にかJリーグが観れなくなっていたし,現地観戦試合数は頑張れば2シーズンあれば追い越せるくらいしかない.

ただそれでもグランパスは僕にとって特別なチーム.なぜなら,「あの瑞穂」をホームにしているから.

サッカー選手の現役時代は長いわけではなく,ごく例外的で幸運な関係を除けばこの街のクラブに来てくれた選手も数年程度でこの街を離れてしまう.スポーツだからチームは負けが込んだりたまに勝ったりを繰り返す.それでも,僕が初めて「すごいところ」だと感じた競技場はそこにあり続けている.

兄が走ったあの場所で,2万人を超える観客を集めるチームがあるんですよ.誇らしくないですか?兄も,瑞穂も,この街も.そして,僕が感じた「すごいところ」が本当にすごいところであり続けるためにも,このチームには誠実であり続けてほしいと願っている.ひょっとしたら,節目ごとの選択肢で,そうではない可能性も多分にあったけれども,ことごとくこの街に残る方に転がってきた僕自身と何かを重ねてしまっているだけかもしれない.

パロマ瑞穂スタジアム(2019年6月,著者撮影)
パロマ瑞穂スタジアム(2019年6月,著者撮影)

そんな瑞穂陸上競技場も,2021年から閉場することが決まっている.

瑞穂公園陸上競技場(パロマ瑞穂スタジアム)建て替えに伴う休場について|ニュース|名古屋グランパス公式サイト

観戦で瑞穂を訪れたことがあればだれもが気づいてしまう.屋根が小さくて,通路が狭くて,トイレが…など設計の古さは郷愁を誘うものの不備であるという事実は隠しようもなく.ついに瑞穂は大規模な改修に入ることとなりました.2026年アジア大会のメイン競技場として利用される予定です.

瑞穂公園はPFIで、名古屋市がマスタープラン(案)に意見募集

ということで,2020年は瑞穂としばしのお別れを伝える年になってしまった.幼少期よりは今の方が瑞穂の近くに住んでいて,ネット上のグラサポの皆さんの熱に当てられてグランパスへの関心をちょっとは取り戻した僕は,「何試合瑞穂に行こうかな…」と楽しみにしていたんですが.

そこへきて,予想外のコロナウイルス.観戦は今まで通り,とはならなくなってしまったけど,この10月には観客の制限を緩和して3試合が予定されている(10日,14日,24日.主催者・関係者・これまでマナーを守って観戦してきたサポの皆様に感謝!).1試合は見に行きたいかな.

もう一度,幼き日のあの記憶と今を確認に.そして瑞穂に「短い」お別れを伝えに行こう.

道の先にパロマ瑞穂スタジアムを望む

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