5G、って何のことかご存じですか?
「あー、CMでなんかやってるよねー」ええ、そうですそうです。
「携帯電話の新しいナントカ?って」おお、携帯電話のことだってご存じなんですね。
「新しい技術で新しい電波の使い方をする、みたいな?」そこまで理解してるなんてすごいです。
「国際電気通信連合が定める規定IMT-2020を満足する無線通信システムで、ミリ波が…」ちょっとあっち行っててもらっていい?
最近、サッカースタジアムでも、野球場でも時折目にすることになった「5G」というフレーズ。グランパスの鎖骨スポンサーにも5Gの文字が。これが何なのか、そしてこれで何が変わるのか。軽くまとめてみたいと思います。
そもそも5Gって何? ~移動通信の進化
ではそもそも5Gとはなんでしょう。まず、この5Gは略語です。何の略かというと、
「5th Generation」
ちなみに「ファイブジー」と読みます。日本語訳したら「第5世代」。世代というからには、何かが代替わりしていっているわけですが、ここで代を重ねているのは「携帯電話などの移動通信の通信方式」です。
日本の移動通信は概ね上の表のように、1985年の自動車電話の開始から進化を積み重ねてきました。今現在の主流は第4世代です。この進化はあくまで「通信方式」の進化、つまり、
「限られた資源である電波をどう効率的に、便利に使えるようにするか」
という内容です。現代社会は何をするにも通信が必要。この通信を、より多くの容量、より速く行うことを求めて、進化が繰り返されてきました。
そして、この2020年から商用サービスが始まった5Gはこれまでの通信よりもさらに
超高速、大容量、低遅延
の通信ができるのが特徴となっています。特に、低遅延、という部分は今後、様々なサービスを遠隔で行うにあたり非常に重要な要素です。
例えば我らがトヨタ自動車も多くの取り組みを続けているであろう自動運転技術は、要求される安全基準を満たすためには、リアルタイムに状況を判断し、相互に情報を交換し続けるだけの超高速な通信が必要不可欠です。
また、遠隔地に対する医療に超高速通信を取り入れ、画像診断や遠隔での内視鏡手術を行うなどの取り組みも、研究がすでに始まっています。
通信が高速になることでわたしたちの生活に影響する分野は多岐にわたるんですね。
スポーツ×5Gの現在
さて、5Gで変わる領域は生活だけではありません。スポーツの世界にも、この特性を活かしたサービスを提供すべく、様々な試みが行われています。
例えば、バスケットボールにおいてはソフトバンクがこのような試みをしていました。
サッカーにおいては、我らがグランパスもトヨタスタジアムにおいて、auの「au 5G」と提携して、5G観戦体験シートを発売しました。これについてはグラぽライターとしてもお馴染みのゆってぃ(https://twitter.com/yusan_1tb1 )さんのnoteに体験記が詳しく書かれていますので、こちらをお読みいただくと現状が大まかに掴めるのではないかと思います。
そしてわたくし青井も、野球の内容ではありますがナゴヤドームにできた「docomo >>5G プライム・ツイン」という5G体験のできるシートで観戦してきました。
そして席に備え付けられた5G端末で、場内に設置されたカメラアングルを手元で自由に変えて見ることができる、というものでした。
野球観戦として面白い体験だと思ったのは、普段のカメラアングルではなかなか続けて見られないアングルの映像を見ることが出来たことでしょうか。例えば投手の投げるボールのスピード、迫力が丸わかりのこのアングルとか、
5Gの体験動画その1 pic.twitter.com/oeetzIPWQu
— Nacky a.k.a.青井高平 (@Nacky_FENGCD) October 31, 2020
投げられたボールがどこを通ったか一目瞭然なこのアングルとか。
その2 pic.twitter.com/nelF6OOGTz
— Nacky a.k.a.青井高平 (@Nacky_FENGCD) October 31, 2020
グランパスとauがやっていたような、目新しいリアルタイムデータの提供などは特に行われていませんでしたが、目の前の試合を見つつ色々楽しむという意味合いにおいてはなかなかの面白いものでありました。
ひとつ興味深かったのは、映像の伝送速度について。通常、場内で流れている映像は、実際のプレーからはかなり遅れて放映されています。DAZNなどのネット配信ほどではありませんが、丁度、ワンセグを現地で見ていると5~6秒遅れで放映されている、あれくらいの感覚です。それが、単純に伝送速度の速さの問題なのか、それとも他に何か理由があるのかはわかりませんが、
びっくりしたの、場内モニターよりも5Gの方が遅延少ないんだよね。いくら低遅延とはいえ伝送のやり方どーなってんだ。 pic.twitter.com/GML4vNpCcI
— Nacky a.k.a.青井高平 (@Nacky_FENGCD) October 7, 2020
場内のTVモニターよりも5G端末のほうが反映されるタイミングが速いんですね。低遅延を表すデモンストレーションなのかもしれませんが、印象に残ったことのひとつです。
スポーツ×5Gの未来
とはいえ、上記の内容、実際のところ、専門の端末を備え付けたら5Gでなくても成立してしまう、というあたりが、まだスポーツと5Gの関りが現在出来る領域から出ていないことを意味しています。通信速度が速くなり、色々なものをリアルタイムで送り出す準備は整いつつありますが、まだそこで送り出すべきコンテンツが出来上がっていないんですね。
では実際、どのようなコンテンツが考えられるでしょうか。
一つ、観戦体験としては、ARグラス、もしくは透過型のガラススクリーンなどを活用し、実際に現地で観戦している観客に、プレーから大きく目を切らずに必要な情報を見せる、というサービスは成立しうるでしょう。
野球でもサッカーでも、何かのデータを試合中に見たいと思うと試合の行方から視線を外さなければいけません。現地観戦の経験が多い皆様なら、「ちょっと手元のマッチデープログラムに目を落とした瞬間に得点が入った」などの経験をお持ちではないでしょうか。
また、しっかりと見ていたとしても、サッカーにしろ野球にしろ、今のプレーをどの選手が行ったのか、というのが瞬時に分からなくなる、ということはあるものです。画像認識技術なども駆使し、ボールに関わったのかがだれか、画面隅にすっと表示されるだけでも、観戦の便利さは向上するように思います。
もう一つは、回線が5Gであることが必要か、という問題はありますが、VRのシステムを使って現地さながらの観戦体験を遠隔地でできるようにする、というものが考えられます。
例えば、ピッチ横最前列のスポット、ゴール裏、TV画面と同じような目線のスポットから見ている形で映像を映し出し、首を動かすことで実際に現地でそちら側を向いているように画面が動く、というような形にし、音声もそのスポットでの現地音声を伝送し再現する、というような形であれば、居ながらにして没入感のある観戦体験が実現できるかもしれません。
先日、疑似的な体験として、VR端末(Occurus Quest2)にて、Youtubeに掲載されている海外アーティストのライブをスマホで撮影された映像を見てみたところ、本当にその人のスマホの位置からそのライブを観ているような没入感を味わうことができました。(VRを体験できる方はぜひやってみてください)
このような内容が、ちゃんとしたシステムが組まれ、実際のサッカーのピッチを見渡す形で、リアルタイムで再現されたらどうでしょうか。自宅に居ながらにして、実際に現地にいるのに近い没入感が生まれるかもしれません。
5Gとか通信速度というのは、データを送り込むための器に過ぎません。ただ、その器が大きくなることで、できることはどんどん増えていきます。また、このコロナ下の状況で、現場で起こっているライブなどを遠隔体験することについては、より多くの進歩が見込まれるでしょう。技術の進歩がスポーツ観戦体験にどんな進化をもたらすのか、楽しみに待ちたいと思います。