29分と55分。「守りが長所」といわれるチームにとっては絶好の時間帯のゴール。監督は試合後のインタビューで「もう一つ加わった」と語った。
大事な試合を迎える前に「積み上げ」は出来ただろうか?
監督インタビュー
(https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=2016&cid=102)
スタメン
対パトリックとして木本をスタメンに。コンタクトがズレようがセットプレーをやりきる根性を見せた。監督が「深いところで1対1の局面を作ることができたらチャンスはある」と試合後のインタビューで言っていた通り、サイドが深い位置で勝負できるように手前で相手を引き付けるボールの持ち方ができる成瀬(木本のフォローも兼ねる)もピッチに戻ってきた。
ガンバはチュセジョンでは無く、動きに無理がきく山本を先発に。名古屋の前からのプレッシャーを無効化するような人選。それに加え、福田、小野瀬の前がかりになることが得意なサイドバックも選出。名古屋がプレスを無効化されると分かれば構えてくる事も見据えたサイドバックの選出だった。
ガンバの形
形は442だったが、名古屋の守備を揺さぶるために保持した際の形は以下のような形だった。
小野瀬と福田である程度、相馬とマテウスを外側に貼り付ける。倉田と宇佐美、井手口で米本と稲垣から数的有利を取る。構えて来る名古屋の選手に複数の選択肢をちらつかせながら前進してゆく。
山本が顔を出すところで名古屋は潰したいので前からプレッシャーに行くも、連動するとどこかで弊害が出てくる(主にサイドバックの裏とセンター)
山本のセンターバックのビルドアップを手伝う“顔出し”の上手さもありそこから崩されるシーンもいくつか見られた。
名古屋が付いた穴
形だけ取り上げて見ると非常に理にかなってるガンバだが、1つ問題点が。「相手に守備の選択肢を増やす」という事は攻撃の際にある程度、相手が自分を気にするような位置取りを取らなければいけないという事。となると山本、三浦、昌子以外はある程度前がかりになる。名古屋の一点目はガンバの「理にかなってる所」を突いての得点だった。
ランゲラックがDAZNのカメラが切り替わる前に素早くスローで攻撃開始。ランゲラックのスローが攻撃のスイッチだった。低い位置で受けた吉田が倉田を引き付け、相馬と小野瀬の1対1を作り出す。ガンバが前がかりになって、空いたスペースを相馬が持ち上がる。攻撃に偏重させたサイドバックの選出の為、そこまで守備の整理がついていなかったガンバは相馬に対して3枚使い防ぎに行く。
センターバックがはがれた事を確認したマテウスがニアを走り、これまた山崎を昌子に監視させるのではなく福田にマークを渡して昌子がマテウスのフォローへ。結果的に山崎と福田でミスマッチの完成。相馬の「山崎に届くボール」は「福田の届かないボール」となり得点を生んだ。
山崎凌吾の使い方
この日の山崎の使い方はチームで共通意識が出来ていた。「山崎が孤立する場面では長いボールを選択しない」「山崎の状況を必ず確認する」
①「山崎が孤立する場面では長いボールを選択しない」に関しては、インサイドグランパスで山崎自身も語るように、山崎にボールが来る場面で柿谷なりマテウスなりがいい距離感にいた。(参考→https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=2017&cid=102)
有料記事だが山崎自身かなり考えてプレーしている事が分かるので是非一読を。
②「山崎の状況を確認する」
これは、数試合前からだが、山崎を囮に山崎がロングボールを触らずに相手ディフェンダーを引き付けて空いたスペースに落とし、相馬やマテウスが走り抜けてボールを受けるというシーンが何回かある。競り合いが成功するかどうか?味方が山崎を確認して初めて成功する引き出しだ。
この2つが今回のガンバ戦ではかなりチーム全体で共有できていた。相手プレッシャーにも我慢できる成瀬が最終ラインに入り、米本、木本の球で人を操れる選手が試合で目立ったのもこういった経緯があるからかもしれない。
点と点をつなぐ難しい作業。即興演奏のような「言葉をかわさない」攻撃から「言葉で作る」攻撃へ。少しずつだがチームは前へ進んでいるように見える。
センターが背負う責任
「誰かが死に役に」「どこかでリスクを」名古屋の試合後よく使う言葉だ。リスクを負う責任を背負う選手が出てきたように見えたシーンがあった。
前半22分。米本のインターセプトからカウンター。しかし、遅れて相手は守備がセットされた。いつもならクロスをそのまま上げるか、浮いてる稲垣に渡してミドルシュートを狙うシーン。相馬は迷わずハーススペースに入っていった米本へパスを出した。
パスの受けに失敗したが、インターセプトから爆速で駆け上がる米本をみて何か希望の光が差した気がした。(最終着地点は残った前線が連動しきってくれれば…)
なんにせよこの崩しを含めてガンバにサイドからの「パターン」を刷り込んだのが2点目の相馬自身のシュートにつながった。
監督コメント「崩せたら中への入り方など、徹底して数多くぶつけようということをやりました。」
このスペースへの侵入は鳥栖戦で長澤も試みていたので、この二人は「リスクを負う責任」を背負える貴重な選手だな。と感じる。
まとめ
明確に「こういう事をしよう。」「したいことを通すためにみんなでどうしたらいいのか?」を考えながら試合を勧められた。「個の能力だけで勝負」ではなく「最大限発揮できる状況は?状態は?」をチーム全員が冷静に見ていた気もする。
鳥栖戦で目一杯頭を使わされた反動がある程度は見えた試合だった。
通常のシステムでも擦り合わせが足りてない新加入の選手達を、大まかな事しか言ってないであろう5‐3‐2で使うのはいかがなものか…とは思うが、監督の「メッセージ」だろう。頑張って欲しい。
良かった所
- 山崎、米本の奮闘
- チームの意識共有
- 攻めの形の成功体験
心配な所
- 後半押し込まれるのは仕方ないが、当たり前だが長時間ピッチにいる選手の運動量は落ちる。絞め方の再整理は必要。(要は532をするなら仕込んでくれ。No!気合!)
- チームが前へ進み始めたので、そろそろ慣れてほしい新加入選手、出番をなんとか取り戻してほしい選手はいる。みんなでサッカーを作らないとどこかで苦しくなる。
最後に
監督も「一強を崩せるかもしれない」中で連続して試合があるのは世界でも稀、次のホームに集中する。とコメントを残した。フィッカデンティ監督の川崎の評価は“何でもできるチーム”
何でもできるチームvs何にもさせないチーム。
強烈なカウンターパンチをホームでお見舞いしてほしい。