FC東京戦、点を決めて揉みくちゃにされた中から出てきた木本恭生の顔は笑っていた。
サポーターから見るとシャイで塩対応に見えて、どれだけ目の前でユニフォームを掲げても森下選手や、中谷選手のように大きな反応があるわけでもなく、いつも試合後はロダンの考える人のような彼。
そんな彼が笑う瞬間はチームに貢献出来たと自分自身が納得したとき。
その笑う瞬間が彼を応援していて痺れる時だ。
??「木本はセンターバックよりアンカーやわ」
??「今日のセンターバック木本かよ」。
夏に加入したキムミンテがすぐにチームにフィットし、獅子奮迅の活躍をしたことで、SNS上では木本が入ると「不安の言葉」を目にすることが多くなった。
なぜ不安の言葉が出てくるのか?恐らくは名古屋グランパスの中で「応援する人と彼との距離が離れている」事も1つの原因だと考える。(SNSの使い方も自身のサポーターへの売り込み方も彼自身そこまで上手ではない)
そこまで自分達との距離が遠く感じて、塩対応な彼をなぜ応援するのか?
それは彼が「チームスポーツの面白さ。考える楽しさ」を教えてくれる選手だから
どんな意図で彼が試合でプレー選択をしてどんな面白さが彼にあるのか?東京戦を基に振り返ってみる。
前を向かない選択
東京戦では木本が後ろ向きで相手ディフェンス2、3枚を引き連れてビルドアップが詰まってしまうような場面が見られた。
その位置でパスを受ける側(木本)が取れる1番簡単な行動は「そのディフェンスを剥がすために動き直す」だろう。そうすると木本がディフェンスを剥がしてボールを受けて球を出せばいい。
恐らく、木本がビルドアップできない。や、見てると不安に感じる人の殆どが「動き直せよ!そりゃあ動き直さないからプレッシャー来るんだよ!」と思っているのではないだろうか?
では、現状の名古屋グランパスのビルドアップを考えてみる。
剥がして受けた時には当然相手も動くので、それに合わせて味方もボールの受ける場所を常に連動して変えなければいけない。そういう選手が常にピッチにいるシステムを名古屋は選手達に落とし込めているだろうか?
剥がして受けるなら剥がして受け終わった時に次が受けれるように動き終わっている必要があるが、現状それがチームの枠組みにはなっていない。(剥がして受けたら隣のポジションの選手かが動いておらず突っ立って被る。と言う現象が起こる)
そこで木本は「動かない」選択をして、相手のディフェンスを引き付け、自分の後ろ(CB)が視界をとって周りを認知し、ボールを扱う時間をつくる。(東京戦のセンターの場合)
周りの選手の判断が遅くとも、人を引き付けスペースを作り、ビルドアップのルートをボールを持たずとも作成する能力がある。
長澤や森下が試合に出る機会が増えてから木本の安定感が増したように見えるのは「彼のゴールへの筋道の意図を読んでくれる選手達」だからだろう。
センターバックで出場するときもセンター二人orサイドバックのどこかに彼らのような色の選手がいれば充分輝いている。
プレーの向こう側
相馬、吉田、木本でFC東京のプレッシャーを剥がして相手のサイドバック裏にスペースを作り、前田が斜めに走り抜けたが木本から出してもらえずに前田が「遅い」と声をかけていたシーンが印象的だった。
その場面を見返すと、東京のプレッシャーをかわしている段階で木本は「前を向いてボールを受けられる立ち位置」を取っている。
そして木本が前向きでボールを貰う事も予測できるチームでのプレッシャーの剥がし方だった。
しかし、木本の足元にボールがついた瞬間には相馬、吉田、木本で作り出したスペース(サイドバック裏)に誰も走り出していなかった。そして彼がボールを止めた時にようやくそのスペースに気付き走り出す。それにより木本は相手を自力で剥がしてボールを出すか、ビルドアップをあきらめるしか選択肢がなくなり、無理矢理出そうとしたが出せずに前田に「遅い」と言われていた。
この一連の流れを見ると木本が「先を予測し、意図をもってプレーしている事」が分かる。
しかし、今の名古屋は「ボールを基準」にプレーの判断をしている選手が多い為、彼の賢さや先を見る力が活かされることが少ないのが現状だ。
この現象はセンターバックで起用されるときも同じだが、センターバックの時は後ろにゴールキーパーしかいないためやり直す事が出来ない状況にある(キーパーに戻すとロングボールでボールを手放す選択肢が今の名古屋は取られやすい為)のがセンターバックで木本がボールを持つと見ている方が不安になる現象に繋がっているのではないだろうか?
味方の“無駄”を消す代わりに彼が取るリスク
木本は徹底して「盤面を基準」にサッカーをしている。
前ハメにいった際、「なぜこの局面で前からプレスをかけるのか?」「かけた結果がこうなるからこういう意図があるはずだ」と言った「盤面と時間の予測」を徹底している。
今回の東京戦、前からプレッシャーに行った際も吉田、稲垣、キムミンテ、中谷からかかる声の内容も守備の注文がすべて違う前半だった。
その中でも前線と連動して前へいったのは前線のプレッシャーが簡単に剥がされる状況。戦術的意味がなくなる状況。(東京戦でいうと前線のプレスと構えてる部隊の間にボールが通るシチュエーション)を起こしたくない為だろう。
自分がリスクを背負っても周りの行動が無駄にならないように動けるサッカー選手はそんな簡単には見つからない。名古屋グランパスは「本当の意味で周りを活かすことの出来る選手」を抱えている。
最後に
木本がカップで得点を決めるとそのコンペティションを取れる。という神話を名古屋で是非作って欲しい。
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