今年の前半も日本では外国籍のかたの入国制限が課せられており、そのため徳島ヴォルティスのポヤトス監督をはじめ、多くの外国籍スタッフ・選手が入国できず、その後も選手本人は入国できても家族ができないなどの問題が発生していた。
その時まとめたのが上記の記事だ。
しかし緊急事態宣言も解除されたことで、それも過去のはなしになったと思いきや、このニュースが報じられた。
入国停止は「当面1カ月」 邦人待機、英独など追加(共同通信) – Yahoo!ニュース
- 入国禁止国:アンゴラ、イスラエル、イタリア、英国、エスワティニ、オーストリア、オランダ、カナダ(オンタリオ州)、オーストラリア、ザンビア、ジンバブエ、ドイツ、チェコ、デンマーク、香港、ナミビア、フランス、ベルギー、ボツワナ、マラウイ、南アフリカ共和国、モザンビーク、レソト
- 入国禁止国は今後全世界に拡大される見込み
- 新規査証の発給はひとまず1ヶ月間停止
- 状況に応じて延長の可能性もあり
- 既に査証が発行済みでも、はじめての入国は不可
- 新規入国でなくても14日間の自宅待機を要請
既にサッカー界でもポルトガルでオミクロン株感染のため、人数不足だったチームが試合を打ちきる結果になったという報道もある。
サッカー日本代表 来年1月21日に埼スタでウズベキスタンと親善試合 オミクロン株急拡大には柔軟に対応
≪ポルトガル13人クラスター≫ポルトガル1部ベレネンセスで関係者13人がオミクロン株に感染していたことが分かったと同国の保健当局が29日に公表した。同クラブは南アフリカからの帰国選手1人を含めた14選手ら総勢17人が新型コロナの検査で陽性と判定され、27日に9人でベンフィカと対戦。0―7の後半2分に負傷者が出て6人となって試合が打ち切られる騒動になった。南アフリカ代表選手が感染源の可能性があり、感染力の強さを示す事例として注目を集めることになりそうだ。
こういったなかでは、感染拡大を止めるための処置を残念ながら受け入れるしかないだろう。
この制限される新規査証の発行。査証について上記記事より、もう少し詳しく掘り下げてみよう。
そもそも査証(ビザ)とは
渡航先の国に事前に申請し、審査を経て発行される「入国許可証」ともいえるものだ。パスポートが出国元の国で発行されるのに対して、査証は 出国元の国にある日本大使館・領事館が日本に入国する予定の外国人に対して発給するものである。入国審査が終わると、使用済みとなる。
日本には「外交査証」「公用査証」「就業査証」「一般査証」「短期滞在査証」「通過査証」「特定査証」「医療滞在査証」と、8種類の査証がある。
在留資格とは
在留資格は、日本に滞在するための「許可」である。入国管理局が審査し、在留資格が許可された外国人だけが日本に滞在できる。査証によって入国許可され、なおかつ適切な滞在許可を得る必要がある。査証の取得と在留資格の取得はほぼセットになる。(そのため、査証と在留資格をまとめて、ビザと呼んでしまうこともある)
在留資格を取得するには、入国後に自身で必要書類を用意し入国管理局へ申請する方法と、入国する前に日本にいる代理人(雇用主や配偶者など)に「在留資格認定証明書」を申請してもらう方法の2通りがある。俗に興行ビザと言われるプロスポーツ選手の場合は、在留資格認定証明書をチームから申請することが通例なようだ。(「在留資格認定証明書」とは、その名の通り日本での在留活動が認められた者に交付される証明書を指す。)
外国籍の方が日本国内で就労する場合の在留資格には以下のようなものがあり、その種類を超えた就労はできない。
- 「教授」(例,大学教授)
- 「芸術」(例,作曲家,画家,著述家等)
- 「宗教」(例,外国の宗教団体から派遣される宣教師等)
- 「報道」(例,外国の報道機関の記者,カメラマン)
- 「経営・管理」(例,企業等の経営者,管理者)
- 「法律・会計業務」(例,弁護士,公認会計士等)
- 「医療」(例,医師,歯科医師,看護士等)
- 「研究」(例,政府関係機関や私企業等の研究者等)
- 「教育」(例,中学校,高等学校等の語学教師等)
- 「技術・人文知識・国際業務」(例,機械工学等の技術者,通訳,デザイナー,私企業の語学教師等)
- 「企業内転勤」(例,外国の事業所からの転勤者)
- 「介護」(例,介護福祉士)
- 「興行」(例,俳優,歌手,ダンサー,プロスポーツ選手等)
- 「技能」(例,外国料理の調理師,スポーツ指導者,航空機等の操縦者,貴金属等の加工職人等)
- 「特定技能」(※特定技能1号,2号共通)
- 「技能実習」(例,技能実習生 ※技能実習1~3号イ及びロ,いずれも共通)
- 「文化活動」(例,日本文化の研究者等)
- 「留学」(例,大学,短期大学,高等学校,専修学校等の学生)
- 「家族滞在」(例,在留外国人が扶養する配偶者又は子)
- 「研修」(例,実務作業を伴わない研修生)
- 「特定活動」(例,外交官等の家事使用人,アマチュアスポーツ選手及びその家族,インターンシップ,特定研究活動,特定情報処理活動,医療滞在,観光目的等の長期滞在者,本邦大学卒業者及びその家族等)
Jリーグで外国籍選手が働くには
「就業査証」を日本大使館で発給してもらい、出入国在留管理庁で「興行在留資格認定証明書」を発給して貰う必要がある。
在留資格「興行」(例,俳優,歌手,ダンサー,プロスポーツ選手等)の場合 | 出入国在留管理庁
入国するだけならば査証を発給してもらうだけでできるが、短期ではない滞在を行うためには在留資格認定は必要だ。
このまま続くと
既に年末のスポーツ興行(スケートGPファイナルや格闘技など)で入国ができなくなり、開催が危ぶまれているものがいくつも出てきている。
それだけでなく、この入国制限が延長される可能性も十分にあり、そうなると毎年マーケットを賑わす「新規外国籍選手の獲得」ができないことになる。
[ニュース] 夏の外国人補強が原則NGに:これから起きること予想と、知っていそうで知らなかったビザの話 #grampus #jleague
上記記事から再録する。
———————–再録ここから———————–
新外国籍選手の獲得ができなくなるとすると、どういうことが起きるでしょうか。
- 新外国籍選手の獲得ができない
- 獲得できるのは以下の選手だけ
- 既にJリーグにいる外国籍選手
- 既にJリーグにいる日本人選手
- 外国リーグにいる日本人選手
- 今年Jリーグを離れたが、日本の興行ビザを持っている外国籍選手
- 本当の意味でプロテクトしたい選手は以下の手段でプロテクトするしかない
- 契約延長する
- 給料を上げる
- プロテクトから漏れた選手の移籍が活発化する
- プロテクトを破る高額移籍がいくつか発生する
- 海外の高給日本人選手の獲得が相次ぐ
上図のように、チームと選手の間でプロテクト枠の設定が始まります。これは、選手にとって、「このチームに今後も居ていいのか」という判断を迫るものになります。プロテクト枠に入ってよいのかどうか。江坂選手の移籍は、もしかするとそういった遠因から発生したものかもしれません。
「プロテクトを破る高額移籍」「海外の高給日本人の獲得」これは既に浦和レッズがはじめていることです。グランパスはそれに続けるでしょうか。
———————–以上再録終わり———————–
実際2021年夏に起きると予想していた「海外の高給日本人選手の獲得」は大迫勇也、武藤嘉紀、酒井宏樹、乾貴士など、実際に起きた。下手な外国籍選手を獲得するのと同じくらいのクオリティを持つ、海外リーグでの実績を持つ選手というのは魅力的だからだ。若手でこれから、という選手はまだ海外で頑張る可能性が高いが、これ以上上がり目が難しい20代後半以降の海外で活躍している選手には、間違いなくオファーが行くだろう。読者の皆さんも何人か頭に浮かんでいるはずだ。
諸外国でも同じように外国籍選手の保有は出入国が自由にできなくなる可能性があるというリスクがあり、積極的に保有したいと思うような選手でもなければ保有しない方向=中途半端な選手は要らない、になっている。選手自身も様々な制約下では日本にいたほうが家族のために良い、という判断もあるようだ。
今年は不景気も相まって、「高額年俸のベテラン選手の引退」が相次いでいる。最終節終了後にも恐らくいくつかの高額年俸のベテラン選手の退団が発生するはずだ。なかにはまだまだやれるだろう、というベテランが市場に出回る可能性もある。そういった「プロテクトから漏れた選手」のなかから掘り出し物を見つけることも、各チームの強化担当に課せられたミッションになる。「目利き」の試されるオフシーズンになりそうだ。