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中2日でできることのすべて 2023年J1リーグ第26節 横浜FC戦マッチレビュー #grampus #yokohamafc

鯱の大祭典最終節は連敗にもかかわらず33,235人を集め、稲垣に対する爆音のチャントが響く試合となりました。

結果は引き分けとなりましたが、中2日:48時間での修正。

天皇杯から何が起きたのか?を深掘りしていきます。

試合情報

名古屋グランパス・横浜FCのスターティングメンバー・ベンチ

横浜FCの基本構造

横浜FCも3421の形でスタートする。鏡合わせの展開となり、シャドーの小川が森下に張り付き、山下が藤井に張り付く形を取る。和泉には林を当てて名古屋のウイングバックを押し込む。

横浜FCは鏡合わせのポジションで押し込むのではなく敢えてずらす形を取った。

ずらす形を作ることで人を浮かせる事と、スペースを作ることに成功する。

名古屋は構えさせる選択肢として構造以外にも中央でボールを出しいれすることで名古屋の選手を中央に寄せる。

寄せて押し込まれる展開は柏戦と似たような形を作ることになり、名古屋は中央を絞めて構える展開へ

2.鏡合わせにしない横浜FC前線のプレス
2.鏡合わせにしない横浜FC前線のプレス

中央が締まると外へボールを振って中央を広げる。

広げた時のギャップにボールを刺し込む展開と外へボールを振って外から勝負する形が横浜FCの名古屋戦での基本構造。

3.横浜FCに作られるズレ
3.横浜FCに作られるズレ

天皇杯からの修正

試合開始からプレビュー通りの541の構えを選択する横浜FC。

それほど厳しいプレッシャーが来ることも少なかった中で名古屋は、中2日で柏戦で表出した課題の修正を行う。

まず目についたのは選手の配置関係。

柏戦では3421のような形を取り、2センターの前に人が置かれる形を取った。

前回のレビューではこの形により、稲垣から逆算してチームを作ることができず、彼自身も強みである「前に侵入する」という役割を失い、チーム自体が「得点をとる」部分から逆算できなくなってしまった。と推察した。

しかし、今回の横浜FC戦では稲垣の一列前のスペースには誰も立っていなかった。柏戦の前田の位置に入ったのは森島。彼がどこに立っていたかというと稲垣と離れた左。

物理的に稲垣の周りにスペースを作る配置を取り、稲垣から「逆算」するチーム構造を作った。

内田に底を任せて一列前に立つ稲垣、左でも同じ高さに森島が立ち、この試合でボールを持つ時の名古屋は3142のような形とした。

4.名古屋が設定した狙い所
4.名古屋が設定した狙い所

修正が横浜FCに及ぼす効果

稲垣と森島が高い位置で受ける効果は稲垣の逆算の効果だけではなく、外にボールを預ける意味も出す。

中央の選手が半列高い位置を取ることで、外側でウイングバックと共にユニットを作り続ける点となる。低い場所からのユニットはセンターバック、中盤、ウイングバック。高い位置ではウイングバック、センター、フォワード。

ボールを受けようと顔を出すだけでユニットによりボール前進できる形を見せられる以上、横浜FCとしては構えてる形を崩す必要が出た。

形を崩す中でも「構える選手、チーム」として厄介なのは「ズラされた上にユニットが流動的に動くこと」

ただでさえ「構える」という約束事が配置で崩されるのにも関わらず、人が動くことで瞬間的な思考停止やマークの受け渡しのズレも発生する。それを誘発していたのが森島が森下の外側を回る動き。

森下と森島で外側へマトリョーシカのように追い越しを繰り返すことで横浜FCのサイドは外へ外へと誘導される。横浜FCの選手としては「外へ誘導&制限している」という心理的優位、しかし横浜FC側が同時に陥っているのは「守備の基本構造の崩壊」だった。

5.左サイドで森島司・森下龍矢・永井謙佑で作った崩し
5.左サイドで森島司・森下龍矢・永井謙佑で作った崩し

名古屋としては横浜FCの誘導&制限さえ突破してしまえば後は穴の空いた盤面。

逆をいえば、その誘導と制限の深みにハマるとボールロストに直結する。

・森下が森島のカバーがないのに外に意識がいっている横浜FCの壁に突っ込んでロストしたシーン。

・森島がボールを受けた時に狭い壁に向かって右向きにターンをして、逆を取れずに手詰まったシーン。(左ターンなら逆を取れて自分の得意なパス一閃が出せたシーン)

これらは名古屋の手札に対応して外側への意識が強くなった横浜FCの守備に対してのこちらから出すアンサーが使えなかった場面で、このアンサーが選手の技術力や急な役割変化により出せなかったのがもう一押しが難しかった部分でもある。

修正の成功体験

これらの名古屋の考えた形が完璧にはまった成功の瞬間が得点シーン。

底の役割だった内田が身体を入れてスペースで仕事をした部分から始まる。

森下が引いていたが森島が外に流れる。森下から森島へのパスで1枚で3枚が引っ張られる。

途中で「構える」という約束を思い出したのかユーリララが中央へ意識を向けたが時すでに遅し、永井へとつながる。

ここで重要なのが稲垣の上がりの部分。前に選手がいないので稲垣が「前に侵入せざるを得ない状況となり」中央にはユンカーと稲垣。

稲垣が前に走っていることによってもう一つの効果。それがサイドのアイソレーション(密集と逆側の選手)の飛び込む判断の助け。

前に人がいないことは、ウイングバックが前へ飛び込む決断の勇気を助ける。

キャスパーも「稲垣から逆算」する構造が戻ったことで稲垣から「どうもらうか?稲垣をどう使うか」というポジショニングを取る。

6.稲垣祥から「逆算」する構造
6.稲垣祥から「逆算」する構造

新しい攻撃構造が及ぼす守備への影響

攻撃に関しては人を動かす事で課題の修正を行なったがサッカーは攻撃だけでは無い。守備に関してはどうだったのか?

中盤の形が変わったことで右サイドでは稲垣が守備でも前後動が激しくなる。今までのように前にシャドーがいた時よりも早い判断、速い撤退を強いられた(今まではシャドーがいることにより最低限の遅らせを前線が担ってくれていた。キャスパーもシャドーの位置にいたが基本は前線が行なう守備を前半は担っていた。)

早い撤退を強いられるという部分。稲垣がインサイドグランパスで語った「押し返す」という言葉で課題を述べていた部分は、この「変化」による体感があったのでは無いかと考える。

一方で、内田も稲垣が前へ出ていくことで、攻守の切り替えの瞬間の幅の管理。森島と森下が外を使う助けに自分も上がることによる守備に切り替える際の、縦の動きの速さを求められる。

7.新しい構造による守備への影響
7.新しい構造による守備への影響

そんな2人の負荷を助けられるようなキーポジションはどこなのか?それが稲垣と内田の前にいる選手達。この試合でいえばキャスパーと森島。

キャスパーが試合の次の日にSNSにあげた投稿

「個人的にはチームを助けるために、さらなるレベルアップすることが必要」

まさに横浜FC戦のキャスパーはチームを救うために確実にレベルアップしていた。

守備に奔走する時間増加にとどまらず、後ろの状況を判断しての最終ラインへのアプローチの変化。

相手の最終ラインのサイドの奥まで制限に走る動き。縦方向の動きだけでなく横方向へのプレッシャーの意味を理解して追い込む姿が印象的だった。

本人はインタビューでシャドーの位置での守備の話をしているが、2トップ時のような守備やシャドーで構える判断の時の引く動きなど、交代するまでうまく使い分けていた。

8.ユンカーが見せた新しい姿
8.ユンカーが見せた新しい姿

キャスパーが稼いだ2秒で名古屋が助けられる場面も。

一方でかなり苦労が見られたのが森島。森下や永井との出足の管理、取り所の設定も苦労していた(横浜FCのキーパーの参加も影響)が、一番苦労していたのは相手のパスコースを消す立ち方の部分。

この試合で森島が1stディフェンダーになりたがる動きが目立つ。

出て行こうとするが、永井の方が出足が早く、動き直すと永井に連動した選手達と被る。それに困ったのか「とりあえずボールホルダーの前に立つ」という動きを選択。

その結果、後ろが想定する取り所と違う方向を制限するといった状況に陥った。

この結果は森島の技術だけでなく、横浜FCの形を解説した際の“左サイドの人を浮かせる形”の影響も色濃く受けており、相当な守備技術か身体的能力を有していないと中々解決するのは難しい問題。

攻撃の逆算をした結果、左のシャドーで守備を担う選手の能力が今までと変わってしまう影響をどうするのか?が今後問われる。

後半:交代の妙

後半49分に名古屋は既にゴールキックで長いボールを選択する。長いボールをマイボールにした後も横浜FCは53分まで全くプレッシャーに来ない。マルセロヒアンを投入し、伊藤が右サイドに入ると最終ラインのプレッシャーがきつくなる。

スカウティングなのか、偶然なのかは分からないが、スピードがあってプレッシャーを掛けられる伊藤が河面の対面に来ることが名古屋の最終ラインにとっては想定外だった。

中谷も藤井も出す為に探しながら持つので、無理だった時の河面。を多用する。

その場所に対して、かなりきついプレスが53分から始まった。その時点で最終ラインは「最後の選択肢」が消されている状況となった。

この瞬間から最終ラインとゴールキーパーの頭の中に安全策の選択が無くなった事でピッチ上では誰もロングボールに対する疑問を持たなくなる。

それに加え、森島を残す選択をすることで永井を守備のカバー役として残す事になり、その中で右も同様に守備に関しての補填をしながら攻撃で変化を付けるならキャスパーを下げる選択となった。

野上が入り、和泉が内側へ移動したタイミングも重なり、自分達からボールを手放す選択を取ってしまった。

後半に入って横浜FC側は基本構造に変化はあまり見られなかった。にも関わらず、攻められている印象が強かったのは前半に比べて明らかに自分達からボールを手放す回数が増えたから。

試合雑感

  • 11分の河面のロストのシーン。外に流れてるから外に付けろと左利きの選手に指示を出すにはあまりにも何も考えられてない中谷のパススピード。11人の能力を理解し最適解を出す難しさ。
    中谷よ。河面に出すボール「そこに愛はあるんか?」(大地真央風)
  • キャスパーがあそこまでシャドーの守備を理解しているのは正直驚き。本人のインタビューでは「もっと前の選手見てよ」と割とハッキリ周りに注文はつけていた。守備理解についてもインタビューで話しているので一読を

  • ふと気になったのは森島がボールを受けた時に右ターンを多用するスタイル。特に片方の足が苦手というような触れ込みはなかったので、選手が密集している方向へターンしてロストするシーンが多かったように見えた。
  • 米本の怪我が恐らく横浜FC戦の前には分かっていた状況での中盤の新しい構造。山田の為のチャンス作りなのか?構造的にいよいよ稲垣、内田が限界を迎えそうなので頑張って欲しい

最後に

過密日程が続く幸せと苦しさと。

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