毎年公開している「移籍に関してサポーターが知っておきたいこと」まとめを、アップデートして補足しました。新年1月4日からの1週間はチームの編成を固めるために大きな動きがある期間です。
特に、今年のグランパスは現在契約の残っている選手(ランゲラック・三井大輝・藤井陽也・成瀬竣平・重廣卓也・豊田晃大・前田直輝・ターレス・ユンカー・酒井宣福・貴田遼河)だけでも11人の去就が明らかになっていません。
ほとんどの去就は新体制発表会までには明らかになるはずですからこの1週間でどれだけ動くのかが想像できるはずです。
未確定の選手が全員残留するとは思えないので、悲しいお別れはほぼ確実に発生します。
悲しいニュースを聞いたときに、
- 「知識がないと、なぜそんなことになったのかがわからない」
- 「情報がないと、不安にしかならない」
という可能性があります。
なにがどんなことに影響しているのか、知識を持っておきましょう。
2023-24オフの移籍の傾向
- J2がJ1より1ヶ月近く早く終了していたため、J2チームの編成が思いのほか早く進み、J2→J1の移籍が例年より少なくなった
- 上記に関連して、編成完了が遅くなっていたJ1昇格プレーオフに残ったチーム(清水エスパルス)などが移籍のターゲットになった
- フットボールエージェント(俗に「代理人」と呼ばれるもの)に関連する規則が厳格化され、その影響があると思われる、チームの主力の移籍が増加した(中谷進之介・山本悠樹・登里享平(※1月4日時点で未成立)・一森純など)
- 税制の解釈の変化により、外国籍選手の税率が約20%から約50%にアップしたため、新たな外国籍選手が来づらくなった
移籍ニュースのまとめはJリーグ公式サイト 【公式】明治安田生命Jリーグ移籍情報まとめページ 2024 が網羅されていて良きです。
名古屋グランパス的には、驚きのニュースもいくつかありました。
- 丸山祐市の契約満了
- 藤井陽也・森下龍矢の海外移籍
- 3年連続で加入初年度の選手(今年は山田陸)が移籍してしまった
- 中谷進之介のガンバ移籍
それぞれについてはまた本文のなかで触れていきたいと思います。
誤解しやすいプロ野球とサッカーの移籍の仕組みの違い
「なんで○○を移籍させちゃうんだよ」
「チームは○○を要らないってこと?」
急な移籍が決まると、そういう声が飛び交います。あたかも、チームが選手を「イラネ!」ってやっているかのように見えているのではないでしょうか?
それは実は昔から馴染みのあるプロ野球の制度が影響しているのかもしれません。
プロ野球はチームが選手を保留(保有)でき、サッカーはチームと選手は対等の関係
プロ野球の移籍制度
プロ野球では「保留制度」というものがあり、球団(チーム)が選手を保留(保有)しています。だから移籍はチームの好きなように行うことができます。
- ポイント:野球ではチームが選手を自由にトレード(売り買い)できる権利を持っている
- ポイント:サッカーではチームがその選手を不要と考えた場合は次の3択しかない:
- 契約の切れ目なら「契約更新」をしない
- 契約期間中なら契約期間が過ぎるのを待つ
- 欲しがるチームを見つけて移籍させる
毎年見られる、Jリーグのチームから発表される「契約満了」というのが「チームがその選手を要らない」と考えた場合のアクションです。しかし、契約を更新したいとチームが思っても選手側が更新したくないという場合もあります。
しかし基本的に、プロ野球とは異なり、選手の意向も聞かずにトレード(売り買い)できる権利をサッカーチームは持ちません。すなわちチームが「○○選手イラネ!」とすることは、ほとんどムリなのです。
ですからほとんどの移籍は、以下の2つの条件を満たした時に発生します。
- 選手がそのチームでこれ以上プレーをしたくない or 新たなチームで挑戦したい
- 移籍先チームからオファーがある
他チームから移籍オファーが届き、本人も移籍する希望を持っている場合、契約期間中か契約の切れ目かどうかで変わります。
- 契約の切れ目の場合はそのまま移籍成立する可能性大
- 契約期間中の場合は違約金が発生
- 違約金を満額払えば移籍成立(例:2021-22年の児玉駿斗)
- 違約金が払えない場合は以下のどちらか
- 移籍不成立(例:2016-17年の田口泰士)
- レンタル移籍に切り替え(例:2021-22年の米本拓司)
ですから、まとめるとこうなります。
敢えて例外を挙げるとするとチームの方針転換があった場合、チームの方向性にマッチしなくなった高年俸の選手に出場機会が減る可能性を伝え、その上で移籍先を募るような場合もありますが、レアケースです。
契約のしくみ
規約などは基本的に以下の2箇所にまとめられています。
Jリーグの規約は前者にまとめられていますが、移籍や選手契約については後者にまとめられています。
プロサッカー選手の契約
プロサッカー選手の契約は、JFAなどは、こちらに従う必要があります。
Jリーグでプレーするサッカーの選手は「日本サッカー協会選手契約書」を結ぶ必要があります。
これにプロ契約の決まり事が書かれています。
標準的な契約期間は、日本サッカー協会の、「プロサッカー選手の契約、登録および移籍に関する規則」にまとめられています。複数年契約でなければa年2月1日からa+1年1月31日までがここに記載されます。(ここに記載できる契約年数の最長年数は5年です)
あれ?でも●●選手の契約更新通知って毎年来るよ?と思いますよね。複数年契約なら、契約更新必要ないじゃんって。
実は日本ではプロスポーツの先達、プロ野球(NPB)の統一契約書は1年単位の契約になっています。そのため複数年契約でも毎年契約更改をする、という先例をつけてしまいました。そのため、他のスポーツも慣例的に1年契約が標準契約書になっています。
上記のプロサッカー契約書に複数年の記述も行うことができますが、これまでの例から、複数年契約の選手でも毎年契約の見直しを行います。といってもプロA契約契約書で取り決めることができる内容はほんのごく僅かです。
通常は付帯契約(個別契約などの別の呼び名の場合も)という形で細かい条件を設定します。出場や成績によるインセンティブ(成果に応じた支給)だったり、移籍金(正式には移籍補償金)の額、場合によってはレギュラー確約や最低試合出場数なんていうものもあるようです。
能田達規先生の「となりの代理人」第2話で、海外移籍の決まった若手のニュースに「今日は契約書作りで徹夜だ!」と代理人が意気込むというシーンがあります。ここで言っている契約というのが付帯契約なのです。複数年契約の最中でも、この付帯契約が見直しの主役なのです。
フリー移籍って多いの?
やるせない鯱さんの「フリー移籍が多いのでは?」という推測についてですが、国際移籍限定で言うと、62%という統計が出ているようです。(2022-23冬マーケットの統計)
ちなみに、複数年契約かどうかを見分けられる手がかりとしては、12月の中旬くらいまでにサクっと契約更新を発表しているかどうか、があります。この場合は高い確率で複数年契約で、付帯契約のみの見直しと思われます。
代理人(フットボールエージェント)とは
この付帯契約を、法律や契約に詳しくない選手が独力でしっかりと結ぶことは困難です。そのようなときのためにいるのが代理人(正式にはフットボールエージェント)です。
この代理人(フットボールエージェント)の制度が2023年10月1日より大幅改定されました。主な改定のポイントは以下の通りです。
- FIFAの認定フットボールエージェントだけが契約の仲介業務を行うことができる
- FIFA FOOTBALL AGENT認定試験に合格したものだけがFIFA認定フットボールエージェントになれる
- 旧フットボールエージェントでFIFA認定フットボールエージェントではないものが契約の仲介業務を行った場合、無資格者のみならず、無資格者を利用した選手・クラブも懲罰の対象になる
- 手数料の上限設定の厳格化(守らず選手から不当に搾取する仲介人が多かったため)
- FIFA認定フットボールエージェントの最新版リストはFIFAにて公開されている
※なお、現在手数料上限設定については裁判で係争中のため、施行は延期することが発表されています。
フットボールエージェントは、JFAの定義する契約書に従って契約を行うことになります。ただこれも最低限のことだけを決めているものなので、チームとの契約同様、付帯契約があるかもしれません。
このフットボールエージェントは「サービスの内容」に記載された業務を行うことになります。
フットボールエージェントの報酬は、選手の報酬xこの契約書に記載された%になります。ただ、この額は昔から3%上限とされていましたが、守っていないケースが多数ありました。手数料上限設定が厳格化されたため、現在のところ一部の事務所にとっては大幅な減収になることが予想されています。
余談ですが、ここのサービス内容に書かれたものが業務対象となり、クラブとの契約交渉以外に税金対策や肖像権の管理など財政面のサポートやコンディション管理、移籍先の新居探しなどパーソナルな部分まで担当することもあるそうです。その場合の代理人の仕事ぶりは以下の記事をご覧ください
「サッカーの代理人って普段どんな仕事してるの?」 エージェント田邊伸明氏に聞いてみた(村上アシシ) – 個人 – Yahoo!ニュース
移籍におけるフットボールエージェントの立ち位置
上記では選手の代理人の話を書きましたが、実はフットボールエージェントはチームに付くこともあります。そのため、フットボールエージェントが以下の図のように存在することもあり得ます。
移籍に関係するフットボールエージェントの数
この図の場合はフットボールエージェント同士のやりとりによって移籍の交渉が行われます。さらに、外国籍選手の移籍の場合は現地のフットボールエージェントが絡んでくることもあり、そうなるとフットボールエージェントが最大4人登場することになります。こういった取引は奇々怪々です。
注意しなければならないこと
FIFA認定フットボールエージェント制度が始まったため、厳密に言うと今年の契約更改からはFIFA認定フットボールエージェントが仲介することが必須になっています。繰り返しになりますが、罰則が設けられています。
これによって起きていると思われる事態が、「これまで仲介人だった方がFIFA認定フットボールエージェント試験に合格しておらず、外国籍のFIFA認定フットボールエージェントを代理人事務所(エージェンシー)に迎え入れる」といういうケースの発生です。たとえば久保藤次郎やターレスのエージェンシー(所属事務所)ODOROKIがその例になるのでは?と話題になっています。この推察が事実の場合、厳密にはこれまでの仲介人だった石田さんが単独で接触すると違反になる可能性があります。
注意:FIFAで公開されているFIFA認定フットボールエージェントのリストに石田博行さんの名前がないことは事実です。敢えてFIFA公認代理人を明記しているのは、業務が石田さんの合格まで止まってしまうことを避けるためではないか、と推察されます
チーム側の担当者:強化・編成部のお仕事とは
チームの強化を担当するのが強化・編成部(名古屋グランパスでは強化部)です。契約交渉の窓口はだいたいここの方です。GMや社長という存在は、強化部のお仕事に承認をするだけになります。ですから強化部のメンバーの良し悪しはチームの成績を左右することが多くなります。
有名な強化担当は1992年から2021年まで鹿島アントラーズの強化を取り仕切っていた鈴木満さんが有名です。鈴木満FDが語る、鹿島が30年で築いた財産と未来への自負【未来へのキセキ-EPISODE 14】 – スポーツナビ
強化担当の仕事は以下の記事を読むと良いでしょう。
強化担当のお仕事はだいたい以下の3つになります。
- 1)選手・スタッフの編成
- 2)契約・スカウト
- 3)対戦チーム視察
名古屋グランパスでは古矢さんをはじめとする少数精鋭で活動しています。黒部さんは残念ながら徳島に移籍してしまいました。
契約のスケジュール
通常の契約更新の流れは、以下のようになっています。
リーグ戦が終了したら、5日以内に、契約更新の意思を通知しなければなりません。
- ポイント:リーグ終了直後には、クラブが来年契約したい選手は決まっている
送られる書類は、以下のような書類になります。
契約更新を行わない場合は「(4)以降、貴殿と契約を締結する意思はありません」に○がつけられて通知を行います。
通常、契約更新通知期限(シーズン終了から5日以内)から12月31日までは現所属クラブの優先交渉期間になります。
- ポイント:12月中に決まる移籍は、上記フォームに対して拒否の応答が行われたか、他クラブから契約交渉開始の通知書を出して交渉されたもの
- ポイント:契約更新通知に返答を行わないと通知条件を受け容れたことになる
- ポイント:C契約提示で、基本報酬のダウン提示を受けたときは自由に移籍先を探すことができる(案外知られていない)
なぜこの原稿を正月明けに出しているかというと、優先交渉期間が終わると各チーム、そこまでの契約交渉によってチーム編成に穴が空いている部分を積極的に埋めにいくことになり、移籍マーケットが活発化する期間だからです。
契約更新通知を拒否したか、他クラブから契約交渉開始の通知書が出されたか、1月1日以降は、選手は他クラブと自由に交渉することができます。
実は、12月31日までに合意した契約更新をすべて発表するわけではないので、一般のサポーターは選手がどういうステータスなのかわからないのです。
このわかりにくい移籍マーケットのタイムラインを、グランパスのチーム目線でまとめてみましょう。
グランパスから「来季の契約はできない」と判断されると、そもそも「契約更新に関する通知書」の「契約更新の意思なし」が記載されます。
おそらく、今年のグランパスでは丸山祐市選手がそれにあたると予想されます。
丸山祐市選手は誰もが認める実力者ですが、ここのところ怪我が多く、稼働率が低くなってきています。それでいて年俸は高く、「計算しづらい」という評価になってしまうこともわかります。早めに公表されたことで、お別れの機会を得られたことだけが幸いだったと思います。
さて、シーズンが終わると、今度は「契約更新に関する通知書」に記載された新年俸と、あとは来季構想、契約条件などを選手と交渉をすることになります。フットボールエージェントと契約している場合はフットボールエージェントがシビアに条件などを精査し、タフな交渉になるでしょう。
しかし一番大事だと思われるのが、「来季構想」です。この来季構想が、新年度このチームで戦って良いのか、という判断材料に占める割合が大きいと思います。
0円提示はチームからの契約満了、しかし交渉決裂の場合は選手からの契約満了となります。(もちろん選手としては自分の言い分を採用してくれなかった、ということで裏切られた感を持つと思います)
2023年-24年オフの山田陸選手の移籍は、来年度も稲垣祥・米本拓司がいて、内田宅哉も完全移籍で獲得する。そのなかでポジションを争って欲しいという構想を聞かされ、もっと出場機会を得られるところに行きたい、と考えたのでは、と想像できます。
移籍のオファー
2023年12月29日に山岸祐也選手の移籍が発表されました。
これはアビスパ福岡は優先交渉期間ギリギリまで慰留に努めていたが、選手が更新オファーと、移籍オファーを見比べて検討した結果、移籍を決断した、と思われます。
移籍のオファーはいつから出せるのでしょうか?実は契約終了半年前からオファーを出すことができます。ただし、以下の通知書で相手選手所属クラブに通知をしなければなりません。通知をするということになると、相手もプロテクトをしてくることでしょう。シーズン中にこのような交渉はやりにくいのは確かです。
1月1日以降に契約更新が未発表の選手は以下の4通りのパターンがあります。
- 契約更新に合意しているが、ただ発表していない
- 契約更新に合意しているが、付帯条件を交渉中である
- 契約更新に合意していないので、現所属クラブとさらに交渉中である
- 契約更新に合意していないので、他クラブと交渉中である
1から4のいずれかなのかは外部からは見分けることはできません。ただ選手に近い記者やライターさんには、自主トレの状況を見たり、選手間での噂を耳に挟むことから、どの選手がどのパターンか、という情報を一部得ています。自主トレに1月になっても施設を利用している選手は、だいたい1か2のパターンです。
まったく姿を見せない選手については、代理人に交渉を一任し、3か4のパターンになっていると考えられるでしょう。
3や4のパターンだと、フットボールエージェントや相手チームから情報が漏れることもあります。
また、複数年契約中の選手の場合、違約金が発生する可能性があります。他クラブと交渉中であっても、違約金を満額支払うことができなければ契約更新になることもあります。
- ポイント:1月に入っても合意ができていない場合でも、チームと契約更新が行われる可能性はゼロではない
このあたりを理解しておくと、オフシーズンの選手の動きが判りやすくなるかもしれません。
選手の契約期間
契約期間については基本的に1年は2月1日から1月31日ということになっています。しかし、多くのチームは過密日程のため、1月中に始動します。グランパスも新体制発表会後から本格始動します。そのため、移籍加入選手もそこに参加します。(厳密に言うと冬の移籍可能期間(ウィンドウ)も1月9日から始まります。)
これは上記11条3項の解釈によるものです。
- ポイント:移籍してきた選手は、所属関係が消滅したとみなされて1月から参加できる
2026年より秋春制が導入されますが、現状のフォーマットは春秋制を前提に作られています。(2月1日から1月31日)そのため、この契約期間を含めた契約のフォーマットは大幅に変更されることになるでしょう。
チームが考えていること
チームが良い選手を集めるのは、勝つためです。
- 良い選手は、長期間安定して保持したいので長期契約を結びたい
- 活躍してくれるか自信がない選手(例:高齢の選手)はできるだけ短い契約を結びたい
- 同じポジションであってもスケジュールが厳しいJリーグでは複数の選手を確保したい
- 戦術の柔軟性を考えると、「この戦術のときに欲しい選手」も欲しい
- そのため、レギュラーではないけど欲しい選手というのもいる
代理人(フットボールエージェント)が考えていること
代理人は、選手の価値を最大化することが使命です。(現在は「フットボールエージェント」が正しい呼び名ですが、ここでは通称にならって代理人と表記します)
- 年俸のうち決められた割合と、移籍時の移籍補償金のうち決められた割合の手数料(最大3%)で収入を得る
- そのため、選手の給料(最大3%)を上げるか、移籍させることが収入アップに繋がる
フットボールエージェント(代理人)の報酬に関する推奨事項
たまに、この選手がなぜこんな時期に移籍するのか?という疑問の残る移籍があります。
選手の報酬に伴うフィーは新しいフットボールエージェント規則で(年間報酬2500万以上の選手の場合)最大3%に制限されました。そのため5000万円だったら150万円までしか得られません。だとすると代理人が収入を増やすには、以下の2つの方法しかありません。
- 選手の報酬を増やす(例:5000万→150万から8000万→240万)
- クラブと契約し、契約期間中の移籍を成立させて移籍補償金を得る(最大10%)
ちなみに選手の報酬を増やす手っ取り早い方法は、「契約切れの状態で0円移籍をさせ、移籍補償金分を選手報酬に上乗せしてもらう」です。
そのため、移籍を積極的にさせようとしているのでは?という代理人(エージェンシー)がいくつかあります。ただ、むやみやたらに移籍させても選手の価値が上がらないこともあります。「この代理人では価値が上げられない」と選手が感じたら契約解除される可能性があります。選手も厳しい目で代理人を見ています。
- むやみやたらに移籍をさせてばかりいると、選手からの信頼を失ってしまう
- 選手の価値を上げられると確信をし、選手も納得させられるときに切る「切り札」が「移籍」
このあたりに興味のあるひとは、junjunさんのブログを読むとよいでしょう。クラブとエージェントとの関係性(名古屋グランパス/2022年編)
参考:2024年新加入選手のエージェント会社
- 三國ケネディエブス:JEBエンターテインメント(森島司らのエージェント)
- 小野雅史:フットステージ(和泉竜司らのエージェント)
- 山中亮輔:アスリートプラス(東ジョンのエージェント)
- 中山克広:UDN SPORTS(甲田英將・酒井宣福らのエージェント)
- 椎橋慧也:ジェイピーコンサルティング(名古屋は
- 山岸祐也:ユニバーサルスポーツジャパン(宮原和也らのエージェント)
グランパス所属選手とエージェントの一覧表
エージェント | 主な契約選手 |
R4SE | 山口素弘・吉田温紀 |
スポーツソリューションインターナショナル(稲川朝弘) | ランゲラック |
JSP | 武田洋平 |
eAMA | 杉本大地・永井謙佑 |
JEBエンターテイメント(田邊伸明) | 野上結貴・三國ケネディエブス・森島司 |
アスリートプラス | 山中亮輔・東ジョン |
スポーツコンサルティングジャパン | 米本拓司・相馬勇紀・藤井陽也 |
UDN SPORTS | 酒井宣福・甲田英將・中山克広・小島亨介 |
イマージェント | 丸山祐市 |
Jプランニング | 稲垣祥・行徳瑛 |
ユニバーサルスポーツジャパン | 山岸祐也 |
フットステージ’(久米宏典・宮本行宏・吉崎博文・飯田正吾)※Webなし | 和泉竜司・小野雅史 |
ODOROKI(石田博行) | ターレス・久保藤次郎 |
ヨコジスポーツマネジメント※Webなし | 河面旺成 |
Mundo Rico(小島卓) | 重廣卓也 |
ジェイピーコンサルティング(坂井充隆) | 椎橋慧也 |
CAA Base | 内田宅哉 |
グロボルフットビズコンサルティング | 倍井謙 |
シンプレ | 貴田遼河 |
選手が考えていること
選手が求めることは、選手によって異なります。以下の項目のうち1つ、ないしは複数を求めていると考えられます。
- 自分のやりたいプレーができるチームでプレーしたい
- プレー機会が多いチームでプレーしたい
- この選手とプレーしたい、という選手のいるチームでプレーしたい
- もっと自分をスキルアップさせてくれるチームでプレーしたい
- 自分が中心になって責任を持たせてくれるチームでプレーしたい
- 自分の好きなチームでプレーしたい
- 将来のキャリアに繋がるチームでプレーしたい(代表、海外)
- タイトルが取れるチームでプレーしたい
- もっとお金を貰えるチームでプレーしたい
自分のこととして置き換えてみれば、どれも納得のいく理由でしょう。
チームと選手がマッチング成功、だから長期契約をしよう
チームは「こんなプレーをして欲しい」と考えてオファーする。
選手も(1)こんなプレーがしたい。
マッチングできたら加入です。
もちろんしたいことだけじゃなくて諸々お金などの条件も満たさなければマッチング成功とはなりません。
長期契約のメリット・デメリット
さて、せっかくいい選手に加入して貰えたのでこういうサッカーがしたいということが固まっているチームなら、長期の契約を結ぶメリットがあります。毎年チームに合う選手を探さなくて良くなるからです。
しかし長期契約は選手にとって、メリットだけではなく、デメリットもあります。長期の契約には違約金が高額に設定されるからです。
一説では、宮原和也選手と中谷進之介選手が名古屋グランパスに完全移籍加入をしたときには2億円を超える違約金を支払ったと言われています。
選手にとってのメリットは
- ○長期にわたって雇用が安定する
ということです。
しかし、
- ×活躍しても給料が上がらない
- ×より良いオファーがあっても高額な移籍金のせいで移籍できないかもしれない
というデメリットもあります。
そのため、活躍できる自信があり、その結果、給与が上がったりオファーがくることが予想できる場合は、代理人が複数年を勧めないケースがあります。
マッチングできて加入したはずなのに、なぜお別れが発生するのか
たとえば(1)自分のやりたいプレーができるチームでプレーをしたい、としてチームに加入したとします。しかし、状況は変わるものです。
たとえば以下のようなパターンがあります。
- (1)のような理由で移籍したけど、(2)思ったほど出場機会を得られない
- (1)のような理由で移籍したけど、戦術変更で自分のやりたいプレーができなくなってしまった
その場合、選手や代理人が取れる選択肢は以下の2つです
- 契約期間が終わるのを待つ
- 移籍のオファーを貰う
移籍については、冬と夏の移籍期間しかできません。たとえば9月に夏の移籍期間が終わってからでは、(1)契約期間が終わるのを待つ しかないわけです。
この場合、クラブから「契約更新に関する通知書」に対して拒否をすることになります。すると1月1日を待たず、そこから移籍交渉が自由化されます。
名古屋グランパスの移籍でマッチングがズレた例を見てみましょう
- 2021-22年の木本恭生はセンターバックで勝負するために加入したのに違うポジションで使われた(やりたいサッカーの違い)
- 2022-23年の仙頭啓矢は60分程度でなぜか交代させられる&シーズン後半は控えに回ることが多くなった(出場機会)
- 2022-23年の吉田豊は怪我で出遅れている間に左WBのポジションを相馬勇紀が確保してしまった(出場機会)
- 2023-24年の山田陸はキャンプでCOVID-19罹患で出遅れたうちに米本拓司、内田宅哉がセントラルMFの地位を確立してしまった(出場機会)
きちんと選手の活かし方を考えて獲得しないと、お別れが発生することになります。
ただし、情勢が予想もつかない方向にいってしまうこともあるのは、サッカーによくあることでもあります。
悲しいお別れを減らすためにはどうしたらいいか
選手の求めるものと、チームが求めるものが合致している限りは、ほとんどの場合お別れは発生しません。代理人が無理矢理移籍金を儲けに走らない場合は、移籍する必要がないからです。
選手の求めるものが変わる
選手はキャリアを積み重ねます。
若い頃は
- 「(4)もっと自分をスキルアップさせてくれるチームでプレーしたい」
と考えることもあります。
しかしキャリアの最盛期になると、
- 「(7)将来のキャリアに繋がるチームでプレーしたい(代表、海外)」
- 「(8)タイトルが取れるチームでプレーしたい」
などの欲が出てきます。
面白いサッカー、スキルアップできるサッカーだけではこれらの欲には対応できません。
そうなるとタイトルや成績などの「結果」をチームとして出していないと選手の欲に対応できないことになります。
もしもグランパスが成績が良くなくタイトルとは無縁で、日本代表などを輩出できていないチームだったら、
- 「タイトルの取れるチームに行きたい」
- 「日本代表に選ばれやすいチームに行きたい!」
と、選手が出て行ってしまう可能性があります
これを防ぐには
- チームが強くなる
- キャリアよりもチームを大切に想って貰う
くらいしかありません。
サポーターは、チームが強くなるために応援をして、チームは強くなるために強化を行い、そして選手を大切にすることしかできません。それによってチームに愛着を持って貰う以上のことなんてできませんから。
ただ今年の藤井陽也(24年1月4日時点で未発表)・森下龍矢のように、海外移籍の流れはなかなか止められないものがあります。サッカーの中心はどう考えてもヨーロッパの各リーグです。そこに行きたいという気持ちはサポーターとしては納得しづらいものはありますが、理解はする必要があるのかもしれません。
チームの求めるものが変わる
こういうサッカーをするということが固まっているチームがあります。
- 鹿島アントラーズならブラジル流の勝負にこだわったサッカー
- 湘南ベルマーレならば、運動量とストーミング
- 横浜Fマリノスならば、欧州最先端の戦術を取り入れる
やるサッカーが固まっているチームなら、選手も自分がそこに入ってプレーすることがイメージしやすくなりますし、こういう選手がフィットするということをチームが求めやすくなります。
チームのやり方がコロコロかわってしまうようだと、チームの求めるものが変わり、ミスマッチがしょっちゅう発生してしまうことになります。もしそんなチームがあったら、選手にとってはリスクのかたまりです。
残念ながら、そのやり方がコロコロ変わるというのは珍しいことではありません。
監督がかわるとともにチームのやり方がコロリと変わってしまうことがあります。というかよくあると言ってもいいでしょう。
監督が変わった時、前任者の路線を継承するとなると、「なんだよ同じじゃないか」と思われてしまうかもしれません。プライドの高い新監督は、それを嫌って「俺は違うぞ!」という方向にいってしまうわけです。
本来ならば、良いと思われるところは残し、悪いと思われるところを改善するのが一番効率的なはずなんですけどね。
ただし、やり方を固定的にすることにもデメリットはあります。
同じメンバーが長く指導をしていると、悪い意味の「馴れ」が生じてしまうことで悪い面もあります。いわゆる「マンネリ」に陥るということです。
そのため適宜指導者を入れ替えて、「マンネリ」「馴れ合い」を防ぎながら、それでもチームとしてのやり方は統一していった方が良いと言われています。
まとめ
- 1月に入っても去就が未発表な場合は覚悟が必要(名古屋グランパスは新年に発表なのでわからない)
- 悲しいお別れを減らすためには、選手とチームのマッチングがうまくいくようにする
- 選手の求めることは他人からは変えられないし、選手が歳を取るにつれてどんどん変わっていく
- チームとしては選手が選びやすいように、チームとしての「やり方」「ビジョン」などを明確にして、コロコロ変えないようにする
- ある程度タイトルや成績を伴わないと選手もついてこない
いかがだったでしょうか。毎年発生する移籍騒動も、こういうことを知っていると、ちょっと見方が変わってくると思います。覚えておいて下さると幸いです。
移籍については以下のような記事も作っています。よろしければお読み下さい!