サッカーの記事を求めて来られた方、安心してください。
ちゃんとサッカーの話もグランパスの話もします。
(バスケの話をしないとは言っていない)
こんにちは。
青井”Nacky”高平です。
何年か前にも言った気がしますが、サッカーはどんどんバスケットボールの戦術に近づいていますね。
というか、同じような形のコートで行う点取りゲームだから似通ってくるのは当然ですよね。
…という話もずっとしているように思います。
さて、監督がミシャことミハイロ・ペトロヴィッチに交替し、新たなスタートを切った我らが名古屋グランパス。
私もキャンプの記事を読んだり、キャンプに突撃した知り合いの話を聞いたりして間近に迫った百年構想リーグ開幕に備えているわけですが、最終的にこのような感想を抱きました。
「何かさらにバスケっぽいことを目指すようになっているな?」
と。
何がバスケっぽいのか、ということを並べてみます。
1. 攻撃の考え方の軸がバスケっぽい
ここまでのミシャの指導で一番目立つのは練習におけるタッチ制限やリターン禁止のルールによってとにかく3人目の動きを要求する部分だと思います。
これはかなり過酷なルールで、最初にパスを受ける選手は「自分がその位置で受けることでその次に受ける選手が次にどこで受けようとするか」を意識しなければなりません。
さらに3人目の選手は「最初にパスを受ける選手がワンタッチツータッチで出せてなおかつ合理的なポジション」をとる必要があります。
これを実現するには少なくともピッチ上で、特にパスを受ける選手が把握している「画」から導き出される次のパスコースを3人目4人目が作っていなければ成立しません。
「守備の立ち位置から相手の反応を考えながら次の手を考え続ける」ことを求められることになりますが、それら全てを即興でやるにはプレーに関わる全員がファンタジスタである必要が出てきます。
もっとも、今のご時世でそんな選手構成は不可能ですし、もし出来たとしても守備が崩壊することは必至。
たいていの場合は場合分けを行ったいくつかの選択肢に集約されていきます。
これは現代バスケにおける攻撃の考え方に非常に近いんですね。
BリーグやNBAを見ている方は、
「中に切り込んでいった選手が相手に囲まれた瞬間、見ていない方向にパスを出したらそこにノーマークで別の選手が待っている」
という光景を見たことがあると思います。
これは練習の中で「こういうシチュエーションではここに走りこむ、ポジションをとる」という約束事が徹底されているから成立するプレー。
そのシチュエーションをきちんと身体に染み込ませ、認識する知性と、それを続ける精神肉体のスタミナ、両面が要求される大変な戦術だと思います。
2. 速く、ゴールに向かうことを求めるのがバスケっぽい
サッカーもバスケもトップレベルはどんどん進化していますが、実は今季のNBAは「より速く」という方向へ舵を切っています。
具体的には、自分たちがボールを保持した瞬間にどんどんボールを前に運び、相手が守備の体制を作り切れなければたとえ自分たちのほうが人数が少なくてもシュートまで行ききる、というチームが増えているのです。
これは攻撃の効率性が極まり、その効率のよい攻撃を守るための戦術も進化した結果として、守備戦術が整わないシチュエーションで攻撃を完遂することを試みるほうがより効率がよいと見做されるようになった、という文脈になっています。
このトレンドを知ってか、はたまた偶然の一致かはわかりませんが、ミシャの志向する攻撃はゴールに向けて非常に速く向かっていくもの。
真横のパス交換を極力減らしどんどん前に進めていこうとする姿勢は今のトップレベルのバスケにも似たダイナミズムをもたらすことでしょう。
うまく繋がらなければザックリカウンターで斬られそうなのもバスケそっくりのダイナミズムと言っていいのではないでしょうか。
そういうダイナミズムは少な目でお願いしたい?
それはそう。
3. マンツーマンがバスケっぽい
昨季からやっているので慣れてきてもいますが、やっぱりマンツーマンという守り方はバスケっぽく映ります。
サッカーという競技はバスケよりはるかにフィールドが広いので、「マーク相手にどこまでもついていく」という本来の意味でのマンツーマンは適していません。
選手の多くをフィールドの別のサイドに寄せて、攻撃側が1on1で勝てる組み合わせのところだけで勝負する、というやり方が成立しやすくなるからです。
これを防ぐためにはおおむね二つの手段があり、一つが守備の各選手がそれぞれある程度決まったエリアを守るようにするゾーンディフェンス。
この守り方はエリアの設定の仕方によっては個の力の強い選手を複数の選手の力で抑え込めるなどの利点がある反面、エリアの隙間(ギャップ、という言い方をされることが多いですね)を狙われたときに誰がそこを守るのかが曖昧になるという弱点が存在します。
もう一つが、別の選手が1on1に負けた時と、自分のマークにパスが出た時両方で守れるようにカバーを行うというやり方です。
これは各選手の責任範囲はある程度はっきりする半面、一人の選手が1on1で完全に負けてしまった場合、エリアで守っているときよりもマークのずれの連鎖が起こりやすいという弱点もあります。
実際のところはこの二つの考え方はどちらかを選ぶべきというものではなく、両方の考えをどんなときにどれくらいの優先順位で行って失点の可能性を最小限にするかが大事になります。
その結果として、コートが狭いバスケではマンツーマンとカバー(バスケではヘルプとも言われます)が多く使われ、フィールドが広いサッカーではゾーンの考え方が優先的に取り入れられるケースが多いのです。
そういった中でも近年はマンツーマンの比重の高い守備戦術を組むチームは増えており、グランパスも昨季はマンツーマン的な考え方の守備を多く行っていました。
監督が交替した今季も守備面においては
「まずは対面の選手との1on1に勝ってなんぼ」
という考え方の守り方であるようで、これは極めてバスケに近いと思います。
なお現実の試合では1on1どころか「相手選手3人に対し自軍はキーパーのみ」というシチュエーションが出現しそうですね。
うっ頭が。
※著作権の関係上掲載できませんが、皆さん同じ絵面を想像しているはず
4.万能性を求められるのがバスケっぽい
ポジションをどんどん動かし、ゴールに迫っていく攻撃。
そこから守備に転じれば、いち早く相手選手を捕まえてマンツーマンに移行。
こう書いてみるとバスケのことか今季グランパスが目指しているサッカーのことか分からないくらい、目指しているところが似ています。
「スラムダンク」をお読みの皆様はバスケのポジションが5つあり、それぞれが特徴的な役割を持っているということはご存じだと思います。
しかし、現代のバスケットボールにおいては戦術の進化が進んだ結果として、選手の万能化、ポジションレス化が求められることになりました。
小さい選手でも大きい選手を、回りの選手が助けられる程度に守れなければいけませんし、大きい選手も自分よりはるかに速い選手を守ることを求められます。
攻撃でも小さい選手は外でしかプレーできなくていいということはなく、中に切り込んで得点を取ることを求められますし、大きい選手もゴールに遠いところからシュートを狙い、ドリブルで切り込んでいく技術が必要になりました。
この流れはすでに極東のBリーグにまで波及していますが、今のグランパスの選手たちには同質のものが求められているように思います。
3バック真ん中にはボランチの能力が、3バック左右にはウイングとボランチの能力が。
ボランチにはシャドーとセンターバックの能力が。
シャドーにはボランチとセンターフォワードの能力が、センターフォワードにはシャドーの能力が求められます。
キーパー?
そりゃセンターバックの能力と守備範囲ですよね。
自陣全部が守備範囲や!(ガンギマリの眼で)
ごく個人的には、バスケと同程度に全員にフィニッシャーとしての能力を求めたいところではあります。
いや、贅沢は言わないからヴィニシウスだけでもたくさん点を取ってくださいお願いします。
進化の過程を楽しもう
長谷川さんからミシャに監督が交替したことによって、攻撃のために頭と身体を絶えず動かし続けることを求められている選手たち。
この「頭と身体を絶えず動かし続けること」こそが、いちばんバスケ的なんだと個人的には思います。
守備面では大きな変化はないという意味で、昨季までのチームへの積み上げではありますが、この積み上げは簡単なものではないのも事実でしょう。
とはいえ、百年構想リーグは公式記録に残らない特殊なシーズン。
なんなら全部負けたってどうってことはありません。
(そうなってほしくないしならないとも思うけども)
(編注:そんなことはないです。ものの例えですのでそのまま受け取らないように)
目的は2026-27シーズンが始まった時、闘えるだけの完成度まで高められていること。
そんな風に、夏場までの進歩を眺めていければ良いんではないかと、個人的には思っております。
結びに
キャンプ見学した知り合いに聞いた練習メニューで、
「これはバスケ的だけどバスケ超えたわ」
と感じたものがありました。
ビルドアップの練習から守備側がボールを奪った際、即座に攻撃に転じ、逆サイドのゴールへ走りこんでシュートを決めきることを求められる、というものです。
バスケ経験者は速攻の練習として散々やったのではないかと思うのですが、なにぶんバスケは攻撃側に24秒という時間制限があり、なおかつコートの端から端までの距離が30mに満たないというところでまだ救いのある練習内容です。
それと比べて、同じ練習をサッカーでやる場合、攻撃側は(おそらくタッチ数などの制限があるでしょうが)ミスをしない限り時間をかけ放題、つまり守備側は下手をすると無限に走らされます。しかも距離はほぼ100mです。バスケの3倍以上。
そこからボールを奪った時には速やかに攻撃を展開して逆サイドでのフィニッシュを求められる。
聞いてるだけで脂汗が出るメニューです。
解説者那須大亮氏のYoutube取材で選手たちがヘロヘロになって崩れ落ちていたのも無理はありません。
これは一例でしかないのでしょうが、精神・知性・肉体全てに過酷なキャンプを過ごし、進化しようとする名古屋グランパスを、大いに応援し、見守っていこうじゃありませんか。