グランパスの試合結果で1週間のテンションが決まる人にとっては明日への活力になった試合だったのではないでしょうか。
雲行きが怪しかった前半を耐え、後半はプレーや個人の質の部分でのりきった。
トップが不在の中「勝てばよかろうなのだ!」という声もあるかと思いますが、勝ちの試合の時こそ落ち着いて内容を振り返って「勝って兜の緒を締めよ」
配置
名古屋はFC東京戦と変わらないスタメンで前線の「ファンタスティック4」が即興性と流動性でピッチに色をつける。(ファンタスティック4についてはこちらを参照)
後ろの7人でFC東京を封殺しつつ、前線の4人が各々の個性を発揮し、瞬間的なイマジネーションで敵を切り裂く様は見事でした。
なので、勝手にあの4人を名古屋のファンタスティック4と呼びます。 https://t.co/CjFUtXF426 pic.twitter.com/spuZuZ8SjF
— やるせない鯱 (@yarusenaisyachi) November 16, 2020
一方の湘南は352でセット。とにかく形を縦に圧縮してコンパクトに。
前半の展開
名古屋がボールを持つと、センターバックからボランチへの球の供給コースを遮断する。名古屋は前へボールを運ぼうとパスコースを確保するために、サイドへボールを預ける。すると、松田天馬と中川寛斗のボールサイドにいる選手が前へプレッシャーをかける。松田天馬と茨田がデフォルトで名古屋の選手と選手の間に立つ為、手前から組み立てるのが非常に難しくなった。
名古屋はなんとか相手を剥がして突破しようとするが、名古屋のボランチに対して湘南の中盤3枚が見張りについており、中央は数的不利を強いられる。又、湘南は縦にコンパクトにしてるため選手間の距離が離れすぎず、適度な距離感を持っていた。その為、齊藤未月の脇が空いてるように見える場面でも、縦パスを入れづらい配置と湘南の選手間の距離によって阿部やシャビエルが下りてボールを受けに来るものの、そこから一瞬で攻撃のスイッチが入って突破するようなシーンはあまり見られなかった。
湘南の前線の選手が献身的に守備や2ndボールの競り合いに参加してくる事もあり、ボランチに対して球際強く当たられていたのが印象的だった。ただし、激しく行かれる部分を米本、稲垣の個人の質でなんとかしきってくれたのと、名古屋が剥がした先(ボールの逃げ道)を見つけれたのが大きかった。
湘南がボールを持つと…
湘南がボールを持つと両ウイングバックにボールをつけて名古屋のサイドバックかボランチ、サイドハーフの選手を横に引っ張り出す。その瞬間に空白になるスペースを使い相手に選択肢を迫る。センターバックの石原が空いてる所に走ってきたりと、対名古屋の特効薬「横に広げて空いた所を殴る」を忠実に実行。勝負するのか、パスで崩すのか。その駆け引きから獲得したセットプレーが同点弾につながる。
リスクを負う勇気
前半に比べて後半は名古屋がボールを持った時のボールサイドのボランチの位置が少し高くなる。
相手が蓋をしたいところの内側に入り込みリスクのあるところでボールを動かす。どっしり構えてボール回す基礎は変わらないが、後半の押し込んでいるシーンはボランチのどちらかが高い位置で前線と絡んでいる姿が観られた。
試合前のコメントで「より人数をかけて攻撃しないといけないかな」と思っている。とリスクに対する考えを話したフィッカデンティ監督。ようやく中央でもリスクを負うという事が視野に入ってきたのかもしれない(それが出来てるのはボランチの鬼のような上下する運動量のおかげ。)
得点シーン
阿部の勝ち越しゴールは吉田の視野とパスが完璧だったのもあるが、一番の収穫はセンターバックからの「攻撃してくれ」という着地点のあるパスに対して攻撃に参加してる選手が反応してあの形を作れたことにある。
シャビが降りた事で空いたスペースを最終到着点と定めた丸山が放った強めのパスを合図に阿部が反応し動き出す。
吉田とマテウスで一瞬考える時間が合った為、裏に行けないと判断した阿部は相手を釣り出すように横にスライド。マテウスとのワンツーでマテウスのボールが流れた瞬間に顔をあげた吉田が前田の位置を確認する。(その前にシャビが降りたことで前田もそこを使う準備をしていた。その証拠が石原と畑の間にポジション取りをしていたという事。)
ポジション取りの段階でアドバンテージを得ている前田に綺麗にクロスが合う。ボールに対して反抗して入る形な上に、ボールの下を擦ってあげられたパスな為コントロールが難しくなったがフォローに入った阿部に渡りゴールと言う形に。
程よく相手が食いついてゴールまで最短手数に近い崩しが出来た。
NEWファンタスティック4
即興性と流動性で相手の壁に穴を開ける前線の4人の中に割って入る選手が現れた。成瀬峻平だ。一枚上で使われた成瀬は前線に顔を出したり、トップ下でボールを受けたりとスタメンの前線4人が作った流動性を壊すことなく継承した。逆サイドで攻守ともにいい動きだった相馬と共にピッチで活き活きしていた。(途中出場で元気!という事も関係すると思うが。)
まとめ
3バックで選手間の距離が開いて隙間を殴られるという3バックのデメリットを選手間の距離を詰めて徹底したコンパクトさで消そうとした湘南に対し、最初は困惑した名古屋。しかし、プレーの質(ボール奪取、ドリブル、パスetc…)で相手をねじ伏せた。奪ってから前へリスクを負って来てくれる湘南が最終的には名古屋の「食いつかせて剥がす」をいう策にハマっていった。
名古屋としては東京戦に続いて主体性が完璧にはまったようで、実は他の部分(プレーの質)でカバーしてなんとなく形になってるふわついた試合だった。しかし、ベースが出来てないと形を再現することも出来ないので、ポジティブに捉えてもいいのではないかと思う。
良かった所
- シャビエルJr、Birthdayゴール
- 相馬の壁を乗り越えた感
- リスクを取るという事を口にできた監督
心配な所
- 形になればなるほど出番が減る選手は出てくるのが今の名古屋
- プレーの質に支えられてるインスタント状態が相手の戦術練度や質が高い時どうなるか。
- みんなうっすらケガしてるのでは?(なんとなく騙し騙しプレーしてるように見える選手も)
最後に
ゼロトップが「形になった!」とは言い難いですが、なんとか勝ちを拾って2位浮上。ガンバ次第ですが、なんとか首の皮がつながっている状態。次節は瑞穂。感謝の勝ち星を