久々に「相手の良さを潰して、耐えて勝つスタイル」を観た気がします。
前回のレビューで書いたシュヴィルツォクという着地点も、「彼のチームメイトを理解しようとする前向きな姿勢と、それに応えようとする周りの選手」のおかげで見え始めて、悔しそうな顔をする回数もリーグ戦より少なかったですね。
(現地にいた人は彼が沢山の選手とピッチで意見交換してる姿を観られたと思います。直輝と話し込んでましたが英語で会話出来てるんですかね?インスタでも直輝との関係性の良さが観られるストーリーの投稿があったり、いい関係なのが分かりますね)
スタメン
監督コメントにもあった通り、シュヴィルツォクがフルコンディションではない状況でシャビエルが離脱という事で阿部が頭から。福岡戦で米本が出られないためきついけど頑張っての選手が多かった。ミンテに変えて木本、ブロック形成での守備判断等の部分と疲労度の都合で宮原となりました。
一方で、神戸は試合後の監督インタビューで「コンディションでメンバーがそろわず、スタートから行ける選手が少なかった」とあるように攻撃陣に若手を採用。(中二日のチームにそれ言うか?と思った人は少なくないはず…)
静かな試合のワケ
名古屋の課題としてセントラルMFが食いついてそのスペースを使われるというパターンがあったが、今回の試合では変化が見られた。
セントラルMF前のスペースに「相手をたたせない事」を第一目標のような形に
セントラルMF同士の噛み合わせに加えて、サンペールの両脇に柿谷と阿部が立ち(稲垣と米本の前のスペース)名古屋のセンター2枚が食いつくスペースを消してしまった。
序盤はサンペールがCB間に落ちず、なんとかセントラルMFも引き出したいような素振りを見せたが、柿谷と阿部は明らかに菊池とフェルマーレンを捨てる判断。サンペールも持てるが楔を打ち込むのは受け手の能力次第。という展開に。
見慣れた442のブロックなのだが、明らかに柿谷と阿部が稲垣と米本の突っ込むスペースを消していたので「癖の部分の解決法が味方にプレーを制限される事なのね。」と少し苦笑い。しかし、サンペールは明らかに両脇に立たれることを嫌がり菊池やフェルマーレンの横に逃げる展開も。
神戸はいよいよサンペールもCB間に落として柿谷と阿部が立つ意味を消しに行く。但し、サンペールが落ちれば中央で数的有利を取るのは神戸も難しくなる為に勝負はサイドとなる。
宮原、吉田が効く形の完成となる。
サンペールが上がってこない事も守備がハマる要因となった。
名古屋の早攻めの形
名古屋は取ってから早く攻めたい攻撃の時は前述した守備の形からなので中央にボールを回収させて、そこでサイドが抜ける時間を作ってあげる形。神戸の目線を中央へ向けながら相馬の裏側or柿谷へ納める二択を迫っていくカウンターの形が多くあった。
但し、相手の目線を外すときに阿部が中央に降りていたり、守備時にサイドハーフがしっかり降りている事もあり、柿谷が孤立して受けて4対1や3対1を時間を作らなければいけないシーンも。守備と攻撃のバランスの難しさを感じた瞬間でもあった。
しかし、サイドハーフ二人の動き出しの判断の早さは中央を柿谷を使うための伏線となり、いつものリーグ戦ではボールがセントラルMFで停滞して遅攻に切り替わる場面でも、早出し早攻めが見られた。
遅攻の変化
名古屋はボールを持ってもプレスで手放す。という印象が応援してるこちらも印象付けされている中で神戸相手に明らかに意識してる部分があった。
サイドハーフの横パスの意識の変化だ。
阿部も入っているという事も大きいが、ハーフスペースの意識がチームを通してかなり変化した。湘南戦のレビューでも書いたが前田のハーフスペースの意識や今回だと相馬の真横を使う意識の向上は明らかに「持ちながら攻める部分」を意識している。
稲垣も米本もフォローに入ってるので、今までも横パスには見られたが、稲垣や米本が横パスを受けに行くと展開するにしても前向きのボールを出すにしてもかなりのプレッシャーの中でボールを扱う事を要求される。「パス能力や視野」の部分に長けた選手でない限り、前向きのボールを出すことは難しい。名古屋の遅い攻めが上手くいかないように見える原因でもあった。
横パスを受けるのを阿部が頻繁に行なうことで、稲垣、米本が前を向く時間が作られると同時に選手間の距離が均一になり、相手がどの選手にプレスに行けばいいのか曖昧になる。それによってプレーの選択肢の幅もボールの展開のしやすさも普段の数倍やりやすそうに見えた。
試合中、阿部が横パスを受けた時「祥!前!」と追い越してスペースを使う指示を出していたが印象的だった。
木本・阿部の「攻めの選択」
キムミンテが来た影響か、自分と似た感覚の視野や判断意識の選手が入った影響か、いつもに増して木本のコーチングの声が光っていた。
木本の特徴として「視野が広い。事前判断能力が周りよりも高い」事が挙げられる。その弊害としては、今の名古屋は木本がボールを持った瞬間に受ける準備が完了してる選手が少なく、それを見て次の準備をしてる選手も少ない。あくまで「ボールが動き終わってから次を考える選手」が多い。
そんな中で、なんとか打開しようを場所を探してプレッシングを受けるなんて場面が多かった。
しかし、今回の試合では木本がボールを受けた瞬間、阿部が必ず楔を打てる位置に走り込んでおり、前半から再三「恭生!」と楔を呼び込む場面も。
後半からは明らかに阿部は木本を意識したポジション取りになっていた。
今回の試合でいきなり楔を打ち込む勇気が出ないのは仕方ない。理解者がピッチにきてチームや彼に変化が付けばこの先、もっと面白いチームになっていくかもしれない。
最終ラインの中では「見えてる視野が1人だけ違う事」で孤立しがちだったり厳しいコーチングを周りから受けてしまう木本。
彼を見てるとスイミーの話を思い出す。
キミならヒーローになれるはず。
後半からの攻防
神戸はサンペールを落としてビルドアップを続けるが、それに対して名古屋は前半は我慢していたが、後半は明らかにサンペールがボールを持つとつっかけに行こうという意識で守備を開始。配球係を窒息させて奪ってカウンターが多くなった。
監督としては後半勝負だったのでこの守備の変化はしてやったりなのだろう。
対して神戸は、真ん中の釣られないセントラルMF(稲垣、米本)が非常にうっとおしく感じてたようで、負傷交代を機に井上を投入。明らかに井上の役割はセントラルMFを外側へ引っ張り出すことで、セントラルMF前から流れながら受けに入った。
名古屋はそれに対して大外に前田、宮原をハーフスペースの管理という形に変更(連勝中の名古屋のレビューで解説しましたが、しっかりサイドハーフが守備をしていた時の名古屋は宮原がハーフスペースを埋めて守備をする形が実は多かった。)
チームとしての守備意識
現地にいた人は、名古屋で言う守備時に置ける判断のオーダー(指示)を担当していたセンターとサイドバックの選手と前線の守備を始める組(阿部&柿谷)の選手への指示の相違を感じたはずだ。
ex.名古屋のサイドハーフのプレス、セントラルMFやサイドバックが行けという時に阿部がとめる。逆に、後ろが構えた時に前出ろという部分。
前線の守備の判断の指示は“自チームの危機管理”が主な意図で、今回の神戸戦に関しては、特に「ボールを扱う(受ける&仕掛ける)スペースを作らせない」事が最優先。
一方でサイドバック&セントラルMFは「自分がボール奪取を仕掛けた時にどこまで効果的に自分が効いてくるか?」という部分が最優先事項で、その為に周りをズラしても仕方なし(CBをスライド。自分がいない部分を瞬間的に穴埋めさせるなどのフォローが前提)という考え方。
後者は上手くいけば守備での聖域を作り出し、フォローさせて味方も敵も形がずれるので、ボールの脱出の仕方さえ仕込んであれば、前方奪取、数的優位、即時攻撃が可能となる。
但し、フォローに入った所で数的同数なのは変わらないので他の部分「フォローが遅れる。ズレた瞬間を狙われる。判断が遅れる」等の対人性能に頼らなければいけない場所は発生し、それも後手に回る事がある(ズレがいつ起きるか分からないので想定しづらい)ので相手が突ける隙は沢山ある。
今回は前半から聖域を作るために木本が犠牲に。2つの判断が入り乱れるピッチで負傷という代償を払いながらチームの守備意識のズレを必死に埋めてくれた。
まとめ
尾張名古屋は阿部で持つ。状態が2試合続いている。しかし、中3日のスケジュールで受けに回る70分ぐらいを過ごしたことと、選手の足がキツくなる形の攻撃を90分やったことがリーグ戦でどこまで響くのか…
良かった所
- 前田とシュヴィルツォクはお互いやりたいことは共有できてそう
- 連勝中の守り方を思い出した。(阿部ちゃんでなんとかしたのかもしれないが。これが続いてほしい)
- シュヴィルツォクの初ゴール
心配な所
- かなり早くから足首を気にしていた木本。(軽いといいけれど…)
- 今の守備意識がチームとして作られたものじゃなかった時の恐怖…
最後に
後半戦の入りが悪かったので、真夏の必勝祈願ウォークが足りないのか…また歩くしかないのか。(真夏の祈願ウォークはやめましょう!!)となっていましたが、なんとか復調、修正の兆しも出始めて、ウォーキング回避!となってくれそうな2試合でした。ルヴァンまでは疲労との戦いなので、色んな所からたくさん選手にパワーを送れるように感染症対策をして元気に過ごしましょう。