侍「どうも侍です」
記者「どうも記者です」
侍「今回の題目は『選手の年俸総額をどう抑えるか』だ」
記「それでコストカット侍さんの出番なんですね」
侍「切り捨て御免」
選手の年俸(基本給)は活躍の期待値で決まる
記「選手の年俸を抑えたければ、どうすればいいんでしょうか」
侍「どういう時に上がるかを理解していなければならない。わかるか?」
記「結果を出したら上がりますよね」
侍「然様(さよう)。これは日本プロ野球でも同じ……いや、スポーツ選手の年俸は基本的に全部そうなのだが、『選手の年俸(基本給)は、未来の活躍に対する期待値』が金額になったものだ」
記「?結果に対する評価ですよね?」
侍「ふむ。例えばどんな構図だろう」
記「例えば、グランパスの酒井宣福は2021年の年俸が1000万円とされていました」
侍「2022年は1500万円とされているな」
※例によって金額が正確とは限らない某サイトの情報です
記「2021年の8ゴールという結果をグランパスが評価したわけですよね」
侍「ちょっと違うのだ。2021年の8ゴールに対して1500万円ではない。正確に言えば『2021年に8ゴールしたから2022年にも8ゴールくらいするだろう、という活躍の期待値』に対してグランパスは1500万円と値段をつけたわけだ」
記「うーん、言葉遊びのようにも思えますが」
侍「結果から推測される未来に対する評価が年俸(基本給)だ、という話だ。結果に対する評価は出来高払い(勝利給、得点給、等々)だな」
記「わかったようなわからないような」
侍「結果を出せなかった選手や、ピークアウトしたベテラン選手の年俸が下がっていくのもこの理屈だぞ」
記「はて?」
侍「架空の想定をしてみよう。2021年に34歳で5ゴール、年俸4000万円というFWの選手がいるとする。記者なら2022年の年俸をいくらにする?」
記「ええっ!うーん、その選手の成績は下がり傾向ですか?」
侍「2019年に32歳で7ゴール、2020年に33歳で10ゴール」
記「露骨に衰えてるわけではなさそうですが……35歳で10ゴールは期待できなさそう……10%ダウンで3600万円て感じですかねえ」
侍「うむ。実際にはもっと細かく査定しているが、要するにそういうことなんだ」
記「そうか、今のシミュレーションで僕は『過去の実績や年齢から未来の活躍を推測』して評価しました」
侍「前置きが長くなってしまった。つまり選手年俸を抑えるためには、選手が活躍しなければいい」
記「活躍した選手は上げるしかないですもんね」
侍「ただ、年俸上げたくないから選手に活躍して欲しくない、というのは本末転倒だ。チーム全体として優勝を目指し、より良い結果を出したいわけで、それには選手の活躍が不可欠なんだから」
記「年俸が上がったり下がったりはそれだけなんでしょうか」
選手の年俸は移籍絡みでも上がる
侍「例外も色々あるわけだが、他所のチームから選手を獲得しようとしたら、元々の年俸より上積みした額を提示する必要がある」
記「基本的にはまずお金ですもんね」
侍「同様に、自チームの選手に他所のチームが声掛けしている時、引き留めたいなら、年俸を積む必要が出てくる」
記「グランパスでも、某選手を関東某チームが引き抜こうとして、引き留めるためにかなり積んだとの噂がありました」
侍「『他所のチームも欲しがるような能力を持った選手』の年俸が積みあがるわけだな」
記「年俸を抑えたいなら、なるべく他所からの移籍獲得をしない、となりますね」
侍「そのとおり。よって、年俸総額を抑えたければ『程ほど活躍してくれる生え抜き選手』で固めるのが最適解となる」
それで強ければ誰も困らない件
記「いやー、よくわかりました。言われてみれば当たり前のことばかりでしたが」
侍「問題はここからだ」
記「はて?」
侍「そのチーム、強いか?」
記「……」
侍「そもそも、生え抜きでスタメン揃えられるか?」
記「揃えるだけならできるかと」
侍「強いか? それで優勝を狙えるか? 残留できるか?」
記「難しい……ですかねえ」
侍「生え抜きだけでスタメンを固め、トップカテゴリで強かったチーム……21世紀のサッカー史上でも皆無ではないか」
記「じゃあどうすれば」
侍「当然、他所からの移籍によって『補強』しなければならない」
記「そうするとチーム年俸総額上がっちゃいますね」
侍「プロスポーツチームは、まずは良い結果を出したいわけで」
記「でも無限にお金を使えるわけではないですよね」
侍「そこで各チームが頭を悩ませながら予算を組んで、なるべく効率よくお金を使おうとしている」
まとめ
- 生え抜き選手が戦力化し主力になれば、同程度の実力の選手を他チームから獲得する場合と比べ年俸を抑えられる可能性が高い(逆に、選手としては年俸アップのために移籍する選択が有り得る)
- チーム強化のために移籍での選手獲得は避けられないが、それに頼り過ぎると「お金効率の悪い選手編成」になってしまう
- そもそも予算は有限である
記「なんか本当に当たり前のことばかりですね」
侍「その当たり前を知らない方だっているのだ」
記「当たり前っぽいことって他人に聞きづらいから」
侍「そういう『今更聞けない当たり前のこと』を記事にするのにも価値がある、と判断した次第」
記「おあとがよろしいようで」
侍「それではまた次の記事でお会いいたそう……御免!」
おまけの箇条書き
以下、本記事の主題とは外れるので文章にはしませんが、知っておくとちょっと役に立つかも……な年俸関係の事項ですので、興味ある方だけお読みください。
- 2022年のJ1選手の年俸中央値は1800万円、年齢の中央値は26歳
- よって「J1に定着できた普通の選手はだいたいそれくらいの価値」と言える
- ポジション別に平均年俸をみると FW>MF>DF>GK との傾向がある
- これは「ゴールに直結するプレーをできる選手の価値が高い」ことを示す
- 得点能力の高いFWは高いので、生え抜き選手がそういう選手に育ってくれれば、チーム全体の年俸効率を向上させる(直近では川崎時代の三笘薫、岐阜時代の古橋亨梧、金沢時代の加藤陸次樹が代表例。安いのにめっちゃ得点していた)
- ただし若くて得点能力の高い選手には海外含め他所からの誘いが発生すると推測されるため、移籍していなくなるか、引き留めのための年俸アップが結局避けられない(そう、三笘、古橋、加藤のように……)
- 年俸をそんなに積まなくてもチームに残ってくれる・来てくれるように、チームとしての魅力向上はお金の面でも重要(お金しか魅力が無いチームだと、選手の価値以上の年俸を積まざるを得なくなる。言うは易く行うは難し……)
- エースFWは自前で育ててもどうせ値上がりするので、割り切って外から取って来るという考え方もアリ
- GKやDFは世界的にも他ポジションと比べ年俸が低めなので、お金をかけられるなら、J1基準より遥かに有力な大物選手獲得チャンスがあったりする(ランゲラックやスウォビィクのように)
- J1全選手の平均年俸は3360万円とされるが、イニエスタを除外すると3004万円(イニエスタ一人で平均を約360万円も上げている!)
- ちなみに、イニエスタに加え、大迫勇也、酒井高徳、山口蛍、サンペール、ボージャン、武藤嘉紀のヴィッセル神戸勢を除外すると、平均年俸は2780万円まで下がる
- チーム単位では、J1の年俸中央値はマリノス(8億7千万円)と浦和(8億6千万円)
- マリノスが優勝争いをしていることからわかるように、それくらいのお金でも戦力は整えられる(マリノスくらい「やり手」な、主力の売却もやる前提ではある)
- グランパスは約13億円なので、10億円くらいで安定して優勝争いできるチームにするのが目標なのかもしれない(根拠のない推測)