これまでにOTC公式さんからなんどもサッカーのルールについて解説をいただきました
2024年9月4日に行われたルヴァンカップでのオフサイドになった山岸祐也選手のゴールについてまとめておきます。
オフサイドそのもの、特に「インパクト」については、この記事をご覧ください
論点1:戻りオフサイドって?
通常のオフサイドは以下のような状態で発生します
引用元:オフサイドって?サッカーのルールを分かりやすく解説!新ルールの変更点も
このパスの出し手がパスを出したときにはオフサイドになる場所にいたのに、受けたときはオフサイドラインより手前のケースです。
一見オフサイドではないように見えるけど、実はオフサイドっていうのが「戻りオフサイド」です。
この試合の場合、
- ユンカーはオフサイドポジションから戻ります
- 十分にゆっくりとした浮き球を山岸祐也選手と佐々木翔選手が競り合い、佐々木翔選手がクリア
- それを拾ったユンカー選手が山岸祐也選手にパス
- 山岸祐也選手が決める
という流れでした
1.のあとにユンカーが直接ボールに関与したら、100%オフサイドです。
面白いことに、ここで2のところで山岸選手がコントロールできていた場合は、そこが起点となり、ユンカーはそのプレーに関与していないのでオフサイドになりません。山岸祐也選手がコントロールした時点でユンカー選手はオフサイドポジションにいないからです。
しかしここでは山岸選手はボールに関与することができず、佐々木翔選手がクリアしていました
論点2:クリアは意図的だったのか?
実は2022年のルール改正で、オフサイドに関するルールが変わっています
ここでポイントになるのが「意図的にプレーした」というポイントです。
オフサイドポジションにいる攻撃側選手にボールが渡った場合、
- 守備側選手が意図的にボールをコントロールした→ そのボールを攻撃側が拾って攻撃した
→オフサイドではない
その逆が「ディフレクション」です。
- 守備側の選手が意図せずボールに当たり方向が変わったボールを攻撃側が拾って攻撃した
→オフサイドになる
「ディフレクション」とは、ボールが選手に当たり意図せず方向が変わることを指します。
ディフレクションしたボールがオフサイドポジションにいた選手に渡った場合は、コントロールしたとは見なされません。そのまま渡ったのと同じことになるからです。
意図的のガイドライン
「意図的なプレー(意図的なハンドを除く)」とは、競技者がボールをコントロール下において、次のプレーができることである。
- ボールを味方競技者にパスする、
- ボールを保持する、または、
- ボールをクリアする(例えば、ボールをけって、またはヘディングして)。
これは、競技者がコントロールできる状況にあるボールをパスする、保持しようと試みる、または、クリアすることがうまくいかなかったり、失敗したりした場合であっても、ボールを「意図的にプレーした」という事実を無効にするものではない。
この日のプレーを見てみましょう。佐々木のプレーは3つ目にあたります。
佐々木翔がミッチのフィードを山岸と競りながらクリアしましたが、それが不十分でそれを拾った(オフサイドポジションから戻った)ユンカーが山岸にパス、ゴールしました。
ではここで同じ競技規則のガイドラインをみてみましょう。
競技者がコントロールできる状況にあるボールを、結果的に、「意図的にプレーした」とみなす指標として、必要に応じて、次の基準が使われるべきである。
- ボールが長く移動したので、競技者はボールをはっきりと見えた。
- ボールが速く動いていなかった。
- ボールが動いた方向が予想外ではなかった。
- 競技者が体の動きを整える時間があった、つまり、反射的に体を伸ばしたりジャンプせざるを得なかったということでもなく、または、かろうじてボールに触れたりコントロールできたということではなかった。
- グラウンド上を動いているボールは、空中にあるボールに比べてプレーすることが容易である。
1つずつ検証してみます
- ボールが長く移動したので、競技者はボールをはっきりと見えた。→◎:GKからのフィードなのではっきり見える
- ボールが速く動いていなかった。→◎:GKからのフィードなのでそこまで速いボールではない
- ボールが動いた方向が予想外ではなかった。→◎:十分に予測できるボール
- 競技者が体の動きを整える時間があった、つまり、反射的に体を伸ばしたりジャンプせざるを得なかったということでもなく、または、かろうじてボールに触れたりコントロールできたということではなかった。→△:競り合いなので「かろうじてボールに触れたり、コントロールできた」という解釈ができる
- グラウンド上を動いているボールは、空中にあるボールに比べてプレーすることが容易である。→△:空中である
4項目目、5項目目については△がつきます。事例のビデオでもGKからの長いフィードの競り合いを「ボールに触れられるかぎりぎりの状況でチャレンジ」としているケースはありませんでした。
ただ、これはOTC公式さんから教えていただいたのですが、このルール改定があったあと、ネーションズリーグの決勝戦で、フランス代表のムバッペ選手が「相手がかろうじて触ったボール」を受けてゴールするということがありました。決勝戦の勝敗を左右するゴールでしたので大きな問題となり、このあたり、「意図的の解釈」が厳しくなったのだそうです。
おのれムバッペ!
最終的な判断は審判の主観
今回の判定は微妙なラインで、ディフレクションの判定強化が行き届いている審判だけとは限りません。正直今回のケース、佐々木選手のクリアをディフレクションと取る主審が10人中10人ではないのでは、と思います。
直近の審判向けeラーニングでも競り合いによるディフレクションの事例がいくつかでていたそうです。
オフサイドを取らない審判もいらっしゃるかもしれませんが、今後は同様のケースではディフレクションとしてオフサイドを取る審判のかたが増えてきそうです
ガイドラインはある。でもそれをどう適用するか、そのあたりの分かれ目は審判の主観です。
それを飲み込んだ上で、審判の主観・判断も運のうち。
審判にヘイトを向けないで行きましょう。
追記:結局反則か、反則でないか、ということにはどこかに基準をつけなければなりません
そしてその基準は0と1で簡単に区別できるものではありません。だから主観が必要なのです
その基準が適切なのかどうかは、長い間に洗練されていくものだと思っています
僕も今の基準に納得感はありませんが、いったんは今の基準で戦い、駄目そうなら再度改善していくしかないのではないでしょうか