デスク:前回の記事はおかげさまでUU2万越えと好評をいただいた
その日のうちに監督の続投が発表されたのでヒヤヒヤものだったが。
編集者:続投が発表されたら、あとは来年に向けての準備ですね。
デスク:今年の残り2試合も忘れてもらっちゃ困るんだが、確かにそうだな。
編集者:(残り試合のことはスルー)はやくもパトリック選手の契約満了が発表されました。寂しいですね。
デスク:つらいところだが、出会いあれば別れあり、去る人がいれば来る人もある
というわけで、グランパスに必要な人材像を少し考えていこう
一番補強が必要なポジションは?
編集者:長谷川健太監督記事のなかでも触れましたが、勝敗に一番大きな影響を与えたのは河面旺成選手の離脱でした。河面が欠場した試合は1勝2分9敗。平均勝ち点は0.25です。2024年11月28日現在、17位の柏レイソルが平均勝ち点1.11なので、もしも河面旺成がずっといなかったらダントツ最下位になってしまいそうです。
デスク:今シーズンは12試合と3分の1近くを欠場しているので、そこをカバーできる選手が必要だな。
編集者:なんで河面旺成選手のポジション(左センターバック:以降左CB)にほかの選手が入ってもうまくいかなかったのでしょうか?
デスク:CBができそうな選手は野上結貴選手、三國ケネディエブス選手、内田宅哉選手、ハ・チャンレ選手、井上詩音選手、吉田温紀選手といて、左CBを実際に務めたことがあるのは野上選手・三國選手・吉田選手だ。でも全員右利きだ。
編集者:右利きだと左CBをやるとよくないんですか?
デスク:左センターバックが右脚しか使えない場合
1) 右利きが左サイドにいると、正面にプレスかけられたときは中央か、左横にしか出せない(ターンして持ち直す回避ができるだけの足技があれば可)
2) 左前方の味方にフィードをするには、中にボールを持ちだして対角に出すしかなく、リスクを伴う
3) 中央側のパス可能範囲は広いが、ゴール側なのでパスミスしたら即ピンチ
4) ゴール側にボールを持つと、突っかけられて奪われたときにそのままシュート体制に入られるリスクがある
編集者:なるほど。たしかに右脚でパス出して引っ掛けられたらかなり危ない・・・ガンバ大阪戦で似たようなことがありましたよね。怖っ
デスク:一方で左利きが左CBを務めた場合は
5) 低リスクで外にボールを持ち出せる
6) 右側前方にはフィードはしづらいが、対角線の大きなパスなら出せる(右利きが左CBやる場合、対角線にパス出すと、身体を開いた状態で蹴ることになるのでサイドライン割りがち)
デスク:当たり前だが、CBはいろんな方向からプレッシャーをかけられるので、両脚同じくらい蹴ることができることが望ましい。
とはいえ利き足があるのが当たり前だから、左利きCBは大事なんだ。
編集者:いまググったら、左利きは全体の10%くらいしかいないんですね。
名古屋にも左利きの選手は結構いますが、菊地選手やカラバリ選手、ユンカー選手と徳元選手、小野選手、山中選手と攻撃寄りの選手ばかりです。
デスク:強いて言えば徳元選手がCBの経験もあるが、そこで使ってしまうと徳元選手を使いたかった場所で使えなくなってしまう。
編集者:なるほど難しい。でも左利きかどうかだけで、そこまで差がでるものでしょうか?
デスク:それはもしかすると、長谷川グランパスが2024年途中から取り出した戦術の特殊さが影響しているかもしれないな
編集者:そこ、気になります。教えて下さい!
名古屋の左右CBに求められるポイントとは?
デスク:開幕戦前、岐阜戦のCBは右:内田宅哉、中央:ハ・チャンレ、左:河面旺成だった
編集者:そういえばこの時から左右のCBは内田・河面だったんですね。その狙いはどこにあるんでしょうか?
デスク:まずはポイントをまとめてみた
ポイント(1) 数的同数で守り切れる
デスク:そもそも名古屋の戦い方というのは基本カウンターだ。カウンターは相手に攻めさせることで空いたスペースを使って攻撃をする。
編集者:フィッカデンティ監督以来ここ5年間はこのやり方で来ていますよね。
デスク:それできっちり守り切るには、相手の攻撃に切り替わったら、守備ブロックを素早く構築することが必要だった。
守備ブロックとは、サッカーにおいてディフェンスを強固にするために、選手を一定の配置で守備するために配置する戦術のことです。こうすることで、相手の攻撃を効果的に防ぐことができます。守備ブロックを作ることで、選手同士が互いにサポートしやすくなります。これにより、一人の選手が抜かれても他の選手がすぐにカバーできます。
編集者:フィッカデンティグランパスではDF4人、MF4人が戻り、強固なブロックを構築していました。
そうなると攻撃はマテウス・カストロ選手のような強力な個が必要だったということは判っています。残念ながらもう1枚のFWに決定力のあるタイプではヤクブ・シュヴィルツォク選手くらいしか揃えられなかったことが残念でした。
デスク:攻撃は自陣からのスタートが基本で、その長い距離をどうにかするためにマテウス・カストロ選手が必要だったわけだよな。
編集者:その後のJリーグの流行で、CBとサイドバックのすき間を狙う戦術が増えました。
デスク:それで3バックを採用して、相手の攻撃するコースをふさいだわけだ。
そうなると相手の攻撃の圧力が高いときにはウイングバック(以下WB)まで押し込まれて、守備ブロックが5-4になってしまうことが発生した。
編集者:そうなると攻撃に割り当てられる選手が1枚になってしまうので、フィッカデンティ時代より悪化してしまいますよね。シュート数がダントツ最下位の20位になってしまったのはそこが原因ですよね
デスク:なので、5-4ブロックを諦めることが最初の打ち手になる。簡単に言えば「相手の攻撃の枚数を超える守備ブロックは作らない」だ。
編集者:それってリスクありすぎじゃないですか?
デスク:シーズン始めに「可変だ!」と騒がれた右CBのサイドバック化も、攻撃時にCBも攻撃参加するための決まり事というだけだった。もちろんリスクはある。が、難しさはあるものの、攻撃の枚数を増やすための手立て。中山克広選手や久保藤次郎選手はWBというより、右サイドMFとしての起用だったわけだな。
編集者:まずは右WBだけを高い位置(相手ゴールに近い位置)に上げていこう、という考えですね
デスク:ちなみに左WBも山中亮輔選手を最初起用したのは中山克広選手同様に高い位置を張らせたかったからだろう
編集者:うしろはCB3枚とセントラルMF(椎橋・稲垣)で守れ、と。そうなるとCBに求める要素はどう変わりますか?
デスク:少ない枚数で守備をしなければならないので、機動力(スピード+敏捷性+スタミナ)が必要となる。スピードに関する指標と相手攻撃時のスプリント回数の表を見て貰おう。
編集者:うわー、ケネの数値が圧倒的ですね。スピードも永井謙佑選手なみ。スピードも5位に内田選手が食い込んでいます。ハ・チャンレ選手も6位ですが?
デスク:トップスピードに入れるまでの早さ=敏捷性で内田選手が優っている、ということだろう。相手攻撃時に素早く守備に切り替えられることが大事になってくる
編集者:まず、少ない枚数で攻撃に対処するためには機動力(スピード+敏捷性+スタミナ)が必要、ということはわかりました。
でも河面旺成選手はあまりスプリントでもスピードでも上位に来ていませんね?
デスク:これらの指標が積み上げ型なので、スプリント回数では上位に入らないな。トップスピードではある意味仕方ないところがあると思う
編集者:河面旺成選手は別のポイントが重視される、ということですね
ポイント(2) WBはサイドの高い位置を取っているので、そこにパスを届けられる
デスク:徳元悠平選手にしても、山中亮輔選手にしても、1人で長距離をドリブルで切り裂くというタイプじゃない。そうなるとそこにパスを届けられるようにしなければならない。
編集者:そこで先ほどの左利きCBのメリットが出てくるわけですね。
デスク:そうなんだ。両WBに対して効果的なパスを出しやすいというところが大きなメリットになる
編集者:河面旺成がいないと、左サイドの組み立ての割合が減ってしまう理由ですね。
デスク:キックの種類が多彩で、いろんなタイプのパスが送れることも魅力だな
編集者:攻撃的な名古屋グランパスの左WBを活かすには、河面旺成選手のようなパス出しができる左利きCBが必要だ、ということがわかりました。
ポイント(3) 相手FWが下がったら付いていき、DFラインを押し上げられる
デスク:名古屋の攻撃がルヴァンカップ優勝に向けてバチッと切り替わったのは対ボール保持チーム決戦仕様がハマったからだ。
前線からボールを狩りに行くことで、相手の攻撃の組み立てを阻害しようという流れだ。
編集者:前(FW)が攻めっぱなしだと、後ろが自陣にずっといたら、中盤にスペースができちゃいますよね
デスク:そうなんだ。相手の守備陣がパスの出しどころに困ると、相手FWがDFを助けに戻る。
そうしたらDFラインを押し上げて、相手にスペースを与えないようにしなければならない。
編集者:そうなると相手のカウンターを受けたときにスプリントで戻って守備ができないといけませんね。
デスク:そう、だからここでも機動力が必要になる
編集者:守備のラインを相手陣内近くまで上げると、カウンターを食らったときに後追いの守備になることが多いですが、そこで冷静に中に入られないようにコースを切って、サイドに押し出すことが重要になるわけですね。そういった守備テクニックも重要になりそうです。
ポイント(4) 相手のプレッシャーがないときはパス交換をしながら攻撃参加できる
デスク:相手が自陣でパス回しをしているケースだと、CBへのプレッシャーはないわけだ。
編集者:相手がプレッシャーかけてこないなら、ただ待ってるだけでは無駄ですよね
デスク:そうなんだ。だからMF的にパス交換をしながら攻撃に参加できる要素が欲しい。名古屋グランパスが攻め込んでいるときはだいたい河面旺成選手も上がって、クロスを入れる役目を果たすことが多い。内田宅哉選手や野上結貴選手なんかポケットを取ってクロスを入れたり、クロスに飛び込んでシュートしていたりする。
ここでいうポケットは、守備ラインの裏、ゴールエリア横のエリアのこと。ここまで侵入してクロスを上げられるとなかなか防ぎづらい。
編集者:なるほど、攻撃に参加できるだけの能力、パス能力や実際にシュートやクロスに参加できるチカラも必要ということですね。
ポイント(5) CBの1人が攻撃参加したときはスライドして2バックで守ることができる
デスク:CBが攻撃参加すると、相手のカウンターへの対処が甘くなる。実際昨年の湘南ベルマーレ戦などでも結果1人で守ることになっていて、大橋祐紀のカウンターにやられてしまったことがあった。
編集者:リスクを考えると、2枚は守備に残りたいですね。
デスク:CMF(稲垣祥・椎橋慧也)のどちらかが残るという選択肢もあるが、それがまたMFは攻撃参加してしまうことが多い。
編集者:名古屋グランパスの場合、内田宅哉選手が攻撃参加することが多いので、必然的に三國ケネディエブス選手と河面旺成選手の2枚で守り切ることが必要になるわけですね。
デスク:そう。なので一定水準以上の守備能力は必要だ。
編集者:そこだけ聞くと、井上詩音選手やハ・チャンレ選手にもチャンスがあるように聞こえますが。
デスク:その2人は守備能力は間違いない。しかしその2人については機動力をまずもっと上がらないといけないだろうな。
編集者:もうちょっと具体的には?
(もちろん我々が見ることができるのは公開データの範囲だけなのは承知してます)
デスク:井上詩音選手の場合は吉田温紀選手よりトップスピードが1.1km/hも遅い。そういったアスリート能力を鍛えることが大事だし、あとはパス出しの能力だろう。
吉田温紀選手が使われるのは攻撃参加できて、パス出しもできて、機動力もそこそこあるからだろう(敏捷性だけもうちょっと上げたい)
編集者:それって改善できるものですか?
デスク:サッカーのアスリート能力を向上させるパーソナルトレーナーの類いというのはいて、それで効果をあげている選手もいるという。そういう対策もアリなのではないだろうか
結論:名古屋グランパスの左右CBに求められる能力は?
編集者:検証してみた結果をまとめると、
1)左右CBは少ない枚数で守ったり、カバーリングを行うために、機動力(スピード+敏捷性+スタミナ)が重要
2)一定以上のパス出しのスキルが必要
3)MF的な攻撃参加ができるだけのスキルが望まれる
と、なるでしょうか
デスク:はっきりいって、スーパーマンだな。
シーズン序盤うまくいかなかったのはやはり少ない枚数で守り切れなかった(岐阜戦しかり)ことと、中盤でなかなか相手の攻撃を止めきれず、結果5-4ブロックに押し込まれることが多かったから、だろう
編集者:そこが徐々に改善されてきているのはわかりますが、やはりリスクを取って攻撃的に行くので、守備の負担は大きいですよね
デスク:攻撃にも参加できることを求めて、単純な守備能力だけでなく相手に付いていくだけのアスリート能力が必要。となると従来のCBの場所は、中央のCBしかない、ということになる
編集者:その1つだけのポジションを三國ケネディエブス選手とハ・チャンレ選手、井上詩音選手で争っているわけですね
デスク:タイプ的にはサイドCBのタイプじゃないからな。ハ・チャンレ選手も、井上詩音選手も。
編集者:誰かこの条件を満たす、補強候補はいますか?
デスク:この選手がいたらいいな、と思う選手はいるが、契約のあることだからな。具体名は挙げないでおこう。
編集者:河面旺成選手、内田宅哉選手の更なるレベルアップにも期待ですよね。
デスク:河面旺成選手には怪我をしないための体質改善もお願いしたいところだ。
編集者:怪我のないようにみんなで新年を迎えられますように。