シリーズの他の記事は以下の通りです。
これまで見てきたGRAMPUS SOCIO PROJECTなどの事例の目的はなんでしょうか?
それは以下の2つに集約できると思います。
- 強固なファンベース構築
- ファンエンゲージメントの向上
今回はそこを実現する手段について考えていきましょう.
ファンベースの復習
上に挙げた記事にあるとおり、ファンベースとは、プロスポーツの興行を「長期的に支えるコアなファンの基盤」のことです。 単なる「観客数」ではなく、チームに深い愛着を持ち、継続的に応援・購買・発信してくれる人々の集合を指します。これは興行収益の安定化や地域価値の向上に直結する重要な概念です。
名古屋グランパスが61万人という動員を達成できたのはこのファンベース構築がうまく行っているからです。
ファンベースの構築には、上の図のようなサイクルに入り込んで貰わなければなりません。一度「行動」までを成功させることができれば、あとは一定確率で持続的にサイクルが回っていきます。
ファンベース構築を強化する打ち手とは?
それぞれの過程での一般的な打ち手と、グランパスが実際どうしているのかを比較してみます。
知ってもらわなければ意味がない「認知」
「認知向上」の打ち手は、端的に言えば “ファン以外の生活動線にチームを自然に入り込ませること” です。
自然と入り込ませる例として名古屋グランパスが積極的に行っている「地下鉄や駅構内での選手アナウンス参加」などがあるでしょう。自然と名古屋グランパス、そして選手の名前がアナウンスされることで、「耳に慣れさせる」ことができています。これは本当にすごいことです。TV CMで埋もれてしまうよりもかなり実効性が高い打ち手だと思います。
認知は広告だけで作るものではなく、 ファンの発信 × 地域接点 × ストーリー × 初回体験 の掛け合わせで広がります。
具体的には
- ファンの声が認知拡散に寄与する
- 共感・愛着が認知の土台になる
- SNSでの口コミが新規顧客獲得につながる
と言われています。日常生活やSNSなどで、その名前をどれだけ目にし、耳にいれるかが課題です。方法論は時代とともに常に増えていくはずで、それにフィットする方法を探していかなくてはなりません。
ファンの“類似層”に届く施策【実施済み:継続強化】
ファンベースマーケティングでは、既存ファンの周辺にいる類似層への認知拡散が重要とされています。
施策例
- ファンの友人を誘いやすい「ペア割」「友達招待キャンペーン」
- ファミリー層向けのキッズイベント
- 大学生向けの学割・サークル招待
- 企業向けの団体観戦パッケージ
効果
- ファンの“周辺コミュニティ”に自然に広がる
- 認知 → 初回観戦の導線がスムーズになる
このあたりはグランパスでは小中学生や大学生などテーマを決めた「無料招待」も認知向上に役に立っていると思います。
「好意」を高める鍵は「接触 × 共感 × 参加」
一番難しいのが「好意」の段階です。好意は“自然に生まれるもの”ではなく、 クラブが意図的に設計し、積み上げるものです。
- ストーリーで心を動かし
- 地域でつながり
- 参加で関係を深め
- 初回体験で惹きつけ
- 価値観で共感を生み
- サプライズで感情を跳ね上げる
この積み重ねが、ファンベースの厚みを決定します。
一般的に「好意」を向上させるための打ち手は以下のようなものがあります。
1. “情緒価値”を感じさせるストーリーテリング【実施済み:継続強化】
ファンは「強いから好き」ではなく、「好きだから強さも弱さも受け入れる」ようになります。(もちろん弱さにも限度はありますが、そこは本筋ではないので割愛します)
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 選手の人間的な背景(努力・葛藤・成長)を伝えるショートムービー
- クラブの歴史や地域との関係を“物語”として編集
- 若手育成の裏側、スタッフの仕事など“舞台裏”の可視化
- SNSでの「日常の素顔」発信
効果は以下の通りが想定されます。
- ファンが“人としての好意”を持ちやすくなる
- 勝敗に依存しない愛着が生まれる
おわかりいただけると思いますが、Inside GrampusやYoutube、Tikitokなどの発信はほぼこの流れで行われています。
2. 地域・コミュニティとの接点を増やす【実施済み:継続強化】
好意は「接触頻度 × 体験の質」で強化されます。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 選手・スタッフの地域イベント参加
- 地元企業とのコラボ(商品・企画)
- 学校訪問、地域清掃、社会貢献活動の可視化
- ホームタウンの“誇り”を感じる演出(入場演出・映像)
効果は以下の通りが想定されます。
- 「このクラブは地域の仲間だ」という感情が生まれる
- ファンの“自分ごと化”が進む
このあたりについては選手の参加、グランパスくんを使ったイベントを熱心に行っています。ただ、4市のホームタウンがある影響からか、川崎フロンターレやヴィッセル神戸、横浜F・マリノスと比べると、地元自治体を強調した「ホームタウンの“誇り”を感じる演出」はまだ強化の余地があるように思います。
3. ファンとの距離を縮める“参加型”施策【実施済み:継続強化】
好意は「一方通行の発信」では育ちません。ファンが“関われる余白”をつくることが重要です。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- ファン投票(MVP、ユニフォーム、演出)
- ファン参加型イベント(公開練習、トークショー)
- SNSでの質問企画、選手が回答するライブ配信
- ファンの声をクラブ運営に反映する仕組み(例:意見箱の透明化)
効果は以下の通りが想定されます。
- 「自分がクラブの一部だ」という感覚が生まれる
- 好意が“関与”に変わり、継続的な行動につながる
公式が行っている部分もありますし、あと最近頑張ってくれているのが「Fantrance」というサービスです。Liveなどを通じてファンと選手がふれ合える仕組みで、YouTuberやV-tuberに慣れている世代にはフィットする打ち手ではないでしょうか。(名古屋グランパス公式サービスではありません)
4. “初回体験”の質を徹底的に高める【実施済み:ただし強化が必要】
初めて来た人が「また来たい」と思うかどうかは 好意形成の最大の分岐点です。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 初観戦者向けのガイド(動画・冊子・アプリ)
- スタジアムでの“迷わない導線”設計
- 初観戦者限定の特典(ステッカー、写真スポット)
- 試合前後の“体験価値”を強化(音楽、演出、飲食)
効果は以下の通りが想定されます。
- 初回の心理的ハードルが下がり、好意が一気に高まる
- リピート率が向上し、ファンベースの裾野が広がる
これらは既に実施済みではあるのですが、強化の余地があります。UX(ユーザーエクスペリエンス)の観点から、初観戦者向けのガイドはもっとアクセスしやすいほうがよく、そのガイドへの導線はもっと増やすべきです。現状、特典系のものはファンクラブ会員に寄せられており、FSPでしかありません。
用語解説:FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム):顧客の来店頻度や購入金額など貢献度に応じてランク分けし、優良顧客を特定して特別な特典やサービスを提供することで、ロイヤルティ(愛着心)を高め、継続的な利用を促すマーケティング手法。ポイントカードなどはその典型。
初観戦者のインセンティブ強化はやるべきですし、スタジアムでの“迷わない導線”設計の強化もまだまだ手を入れる余地がありそうです。
5. “クラブの価値観”を明確にし、共感を生む【実施済み:ファミリーステートメントとして定義】
好意は「共感」から生まれます。 クラブが何を大切にしているかを言語化し、行動で示すことが重要です。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- クラブのミッション・ビジョン・バリューの再編集
- 価値観に基づくキャンペーン(例:育成重視、地域密着)
- 選手・スタッフの言動を価値観と紐づけて発信
- “クラブらしさ”を感じるクリエイティブ(映像・コピー)
効果は以下の通りが想定されます。
- ファンが「このクラブを応援する理由」を言語化できる
- 好意が“信頼”に変わる
これはもう説明不要と思います。 “グランパスファミリーの想いを未来につむぐ”「グランド パーパス(Grand Purpose)」「グランパス ファミリー ステートメント(Grampus Family Statement)」を策定しました!|ニュース|名古屋グランパス公式サイト
GRAMPUS SOCIO PROJECTのもう1つの産物がこちらでした。これをきめたことで名古屋グランパスの背骨ができたように思います。
6. 小さな“嬉しい驚き”を積み重ねる
好意は“サプライズ”で一気に跳ね上がります。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 試合後の選手のハイタッチやサイン会
- 誕生日・記念日のメッセージ(アプリ・SNS)
- スタジアムでのランダムプレゼント
- ファンの投稿を選手が引用・コメント
効果は以下の通りが想定されます。
- 「このクラブ、好きだな」という感情が強化される
- SNSでの自発的な拡散が増える
好意 から 「応援」 への変化の本質は「当事者化 × 感情のスイッチ × コミュニティ」
ここがファンベースにおける最大の転換点です。「好き」から「支えたい」へと意識が変わります。
好意は“受動的な感情”。 支える・応援は“能動的な行動”。
その橋渡しをするのは、
- 推す理由の言語化(ストーリー)
- 関われる余白(参加)
- 応援の導線(ガイド)
- 感情のスイッチ(演出)
- 仲間の存在(コミュニティ)
- 応援が届く実感(フィードバック)
この6つを丁寧に設計することです。
これは前の記事 名古屋グランパス「GRAMPUS SOCIO PROJECT」に見る「お客さん」から「当事者」への転換 #グランパス #grampus GR719 | グラぽ でも取り上げた内容になります。
- ファンの心理:
- 自分ごと化: 「彼らの勝ちは私の勝ち、彼らの負けは私の負け」。
- 役割意識: 「私が応援しないと」「私たちが支えないと」
- 連帯感: 同じ対象を応援する仲間(ファンコミュニティ)への帰属意識。
1.“推しポイント”を明確にするストーリー設計【実施済み:さらなる強化と継続を】
好意は「なんとなく好き」。応援は「この人(クラブ)を推したい」。
その差を生むのは “推す理由の言語化” です。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 選手のストーリーを短尺で編集(努力・葛藤・成長)
- クラブの価値観を“行動”で示す(育成方針、地域貢献)
- 若手選手の成長物語をシリーズ化
- スタッフや裏方の仕事を可視化し、クラブの“人格”を伝える
効果は以下の通りが想定されます。
- 「この選手を応援したい」「このクラブの姿勢が好き」という“推し理由”が生まれる
- 好意が“主体的な応援”に変わる
選手のストーリーを発信することは既にかなり行われています。特にInside Grampusでの選手インタビューによる深掘りは有償サイトなのが惜しいくらいです。コンテンツの作成費用もタダではないのでしょうがないのですが、なんとか重要なインタビューなどは無償で幅広く見て貰える仕組みが欲しいものです。
2.ファンが“関われる余白”をつくる参加型施策【実施済み:さらなる強化と継続を】
応援は「関与の深さ」で強くなります。ファンが関与できる「ツッコミどころ」や「助け舟を出せる余地」を残す。完璧すぎると応援の余地がなくなります。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- ファン投票(MVP、ベストゴール、ユニフォームデザイン)
- SNSでの質問企画、選手が答えるライブ配信
- ファンの声をクラブ運営に反映する仕組み(意見箱の透明化)
- ファン参加型イベント(公開練習、トークショー)
効果は以下の通りが想定されます。
- 「自分がクラブの一部だ」という感覚が生まれる
- 好意が“当事者意識”に変わり、応援行動が自然に増える
これはGRAMPUS SOCIO PROJECTのようなプロジェクトが該当します。ソシオは重要な打ち手ですが、回数はこなせません。ですので、ファン参加型のイベントなどを回数こなしていくことが必要になると思います。
またSOCIOもこんなアイデアで再度実施してもいいのではないでしょうか?
1) MATCHDAY SOCIO(観戦体験の“共創”)
- 狙い:ライト層の定着(初観戦の壁を潰す)+来場満足度UP
- 共創設計:
- 「初観戦者」「子連れ」「車移動」「公共交通」「雨の日」など“ペルソナ別”に少人数SOCIOを複数立ち上げ
- GIRLSで実施したような“裏側ツアー→対話”の導線で、体験の解像度を上げてから改善案を作る
- 成果物:当日の導線改善(入退場・トイレ・売店・キッズ導線)/“初観戦セット”の再設計
- KPI例:初回来場→2回目来場率、NPS、スタジアム滞在時間、家族連れ比率
2) WOMEN’S CX SOCIO 2.0(“女性比率30%未満”課題の次手)
- 狙い:女性ファン獲得の実装フェーズ(企画→運用→改善まで)
- 共創設計:GIRLS SOCIOの参加者約40名規模・課題設定(女性比率が30%を下回る)を踏まえ、「当日体験の不満→改善→実験→評価」まで回す
- 成果物:試合日ごとの“女性向け施策パッケージ”ではなく、常設の改善(導線/安全/楽しみ方/情報設計)
- KPI例:女性来場比率、女性FC継続率、単独来場比率、滞在満足
3) U-15 “はじめての運営” SOCIO(子どもが作る試合の一部)
- 狙い:次世代ファンの「自分ごと化」最短ルート
- 共創設計:U-15のテーマ(子どもたちがもっと笑顔で楽しめる)を、「子どもが企画→当日実装」まで引き上げる
- 成果物:子どもMC/子ども実況席/キッズ導線改善/“親子ミッション”など
- KPI例:子ども同伴来場、再来場、家族FC化率
4) GOODS SOCIO “日常侵食”ライン(グッズを“生活導線”へ)
- 狙い:ライト層の購買・着用頻度を増やす(=接触回数増)
- 共創設計:第4弾のテーマ(誰もがもっと笑顔になれるグッズ)と、公募約40名の形式を継承
- “プロトタイプが速い”強みを前提に、短サイクルで小ロット実験
- 成果物:通勤/通学/子育て/車内向けの“目立たないけど嬉しい”ライン、カプセルコレクション
- KPI例:購入者のリピート率、日常着用UGC、非コア層の購入比率
3.”応援の仕方”を分かりやすく提示する【実施済み:さらなる強化を】
好意はあっても、応援の仕方が分からない人は多いのが現状です。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 初心者向け「応援ガイド」(チャント、観戦マナー、楽しみ方)
- SNSでの「今日の応援ポイント」発信
- 試合前のスタジアム演出で“応援の参加導線”をつくる
- キッズ向け応援講座、ファミリー向け応援体験
効果は以下の通りが想定されます。
- 応援のハードルが下がり、ライト層が自然に巻き込まれる
- 応援文化が育ち、スタジアムの熱量が上がる
GLAPなどのわかりやすい参加できる応援、強烈なパンチラインとなる「風」チャント。こういったものを活かして、それに参加しやすい形にすることは大事です。
また、既に「“初回体験”の質を徹底的に高める」のところで書いた通り、そのなかで応援のポイントなどは、繰り返し発信していくことが必要そうです。
4. “応援したくなる瞬間”を演出する【実施しているが、継続的な改善が必要】
応援は感情のスイッチで生まれます。その感情を巻き起こすなにかが必要だと思います。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 選手入場時の演出強化(音楽・映像・照明)
- 試合後の選手挨拶・ハイタッチ・サイン会
- 勝利時のセレモニーや“感謝の見える化”
- 選手の家族・地域との温かいエピソードを発信
効果は以下の通りが想定されます。
- 感情が動き、「応援したい」という気持ちが強化される
- スタジアム体験が“記憶”として残る
既にこれらの打ち手というのは繰り返し挙がっていますが、重要なことはその打ち手はどんどんと過ぎ去っていってしまうということです。だから定期的な発信が必要になります。
5. ファン同士のつながりをつくる【より多くの打ち手を検討すべき】
応援は“個人の感情”では日常に埋没してしまいます。“コミュニティの文化”として繰り返し浴びていくことによって定着が期待できます。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- ファンクラブ内のコミュニティ(オンライン・オフライン)
- サポーターグループとの協働企画
- ファン同士が交流できるイベント(観戦会、交流会)
- SNSでのファン投稿の紹介・拡散
効果は以下の通りが想定されます。
- 「応援する仲間がいる」ことで継続性が高まる
- 応援が“文化”として根付く
名古屋グランパスの発信はどうしてもプッシュ型の配信に偏りがちです。
プッシュ型については以下の記事を参考にしてください。
グラぽはこのファン同士のコミュニティを支えることを目標にしています。ウチのサイトのことを好きになって貰わなくてもいいので、グランパスのことを話題にしていって貰えればいいと思っています。
6. “応援が選手やクラブに届く”実感をつくる【必要だが、慎重に行うべき】
応援は「届く」と感じた瞬間に強くなります。
打ち手として考えられるのは以下の通りです。
- 選手がファンの投稿にリアクション
- ファンの声をクラブが紹介(動画・SNS)
- 応援がチームに与えた影響を可視化(データ・コメント)
- ファンの応援を選手が語るコンテンツ
効果は以下の通りが想定されます。
- 応援が“自己効力感”につながる
- ファンが「応援し続けたい」と思う
応援したことで、クラブがなにかを成し遂げる、勝利を得るという結果が得られることは重要です。
それが届いていることを可視化できるようななんらかの仕組みがあると、応援するインセンティブになります。誰だってやり甲斐が欲しいですよね。ただ難しいのはリスクもあることです。
- 見返りを求める心理の醸成: 「応援すれば(インプット)、反応や勝利が返ってくる(アウトプット)」という構造を強調しすぎると、「応援したのに反応がない」「応援したのに負けた」という状況が生まれた際、不満が倍増するリスクがあります。
- 「無償の愛」の消失: 本来、スポーツの応援は「見返りを求めない情熱」によって支えられている側面があります。これを「効果」や「成果」で可視化しすぎると、純粋なファンの感情が「労働」のような感覚(やり甲斐搾取)に変質してしまう恐れがあります。
- 「選手がリアクションする」「ファンの声を選手が語る」という施策は、選手個人に大きな負荷とリスクを背負わせることになります。
- 敗戦時の責任転嫁: 応援と勝敗の因果関係を強調しすぎると、チームが負けた時に「応援が足りなかったからだ」とファンが自分たちを責める、あるいは「これだけ応援したのに勝てないのは裏切りだ」とクラブを攻撃するきっかけになります。
- 「届く実感」を「自分の投稿が取り上げられること」に強く紐づけると、歪んだ承認欲求を生む可能性があります。
想いを「形」にする「行動」
蓄積された熱量を、物理的なアクション(観戦・購買・発信)に変換するフェーズです。ここで重要なのは「行動のハードルを下げる」ことと「行動する理由を作る」ことです。
1. 観戦行動を強化する打ち手
① “行きやすさ”を最大化する(ハードルを下げる)ことはもっとも重要です。既に取り上げた打ち手ばかりですが、まとめて再掲します。
- ダイナミックプライシング+ライト層向け低価格席
- 友達招待キャンペーン(ペア割・グループ割)
- 試合日の導線改善(アクセス案内、混雑緩和、アプリでのナビ)
- 初観戦者向けガイド(動画・冊子・SNS)
狙い: 「行きたいけど不安」「高そう」「難しそう」を消す。
② “行きたくなる理由”をつくる(魅力の強化)ことは必要です。たとえば鯱の大祭典のようなイベントは良い理由になるはずです。
- 試合前後のエンタメ(音楽ライブ、花火、グルメフェス)
- テーマ試合(キッズデー、学生デー、レジェンドデー)
- 選手との距離が縮まる企画(ハイタッチ、サイン会)
- スタジアム限定グッズ・限定フード
狙い: 試合+αの価値で「行く理由」を増やす。
③ “次も来たくなる導線”をつくる(継続化)ことは既に行われていますが、来場回数などはJリーグチケット経由じゃないとわからないところが気になります。企業チケットなどではそこはわからないので、初回なのか、2回目以降なのか、個別最適化をするためのなんらかの打ち手が必要かもしれません。
- 来場ポイント(スタンプカード)
- 来場回数に応じた特典(限定グッズ、選手メッセージ)
- 試合後の“感謝の見える化”(選手挨拶、SNSでの振り返り)
- シーズンシートの分割払い・柔軟な席種変更
狙い: 行動を“習慣化”させる。
2..購買行動を強化する打ち手
① “買いやすさ”を整える:ここも順調に実施されているところかと思います。
- モバイルオーダー(並ばず買える)
- キャッシュレス化
- スタジアム内の導線改善(売店の配置・混雑緩和)
- オンラインストアのUI改善
狙い: 購買のストレスをゼロに近づける。
② “買いたくなる理由”をつくる:まんまとやられてしまうことが多いところですが、選手の○○記念ユニフォームなどのデザインはもう少し考えて欲しいところです。
- 選手ストーリーと紐づくグッズ(努力・成長・地域)
- スタジアム限定・数量限定アイテム
- コラボ商品(地域企業・アーティスト)
- 試合結果に連動したグッズ(勝利記念アイテム)
狙い: グッズを“記念”や“共感”の象徴にする。
③ “購買の継続性”をつくる:ここは名古屋グランパスはガチャやカードなどとてもよくやっているところだと思いますので是非継続していただきたいところです。
- シーズンごとのコレクション(集めたくなる設計)
- ファンクラブ会員限定の先行販売
- 購買ポイント制度(来場ポイントと連動)
狙い: 「買うことが楽しい」状態をつくる。
3. 発信行動(SNS・口コミ)を強化する打ち手
総合して、ハードルを下げ、理由・ネタを創り、報われる実感が得られることが大事です。
SNS周りは本当にうまくやっている印象ではありますが
① “発信したくなる瞬間”をつくる
- SNS映えするフォトスポット
- 選手との写真撮影企画
- 試合前後のドラマチックな演出(映像・照明)
- ファンの投稿をクラブ公式が積極的に紹介
狙い: ファンの投稿が“自然に増える”。
② “発信のネタ”を提供する
- 選手の裏側・日常のショート動画
- 試合のハイライトを即時SNSで配信
- ファン参加型のハッシュタグ企画
- クイズ・投票・診断コンテンツ
狙い: ファンが「投稿しやすい」状態をつくる。
③ “発信が届く実感”を与える
- 選手がファン投稿にリアクション(いいね・コメント)
- クラブ公式がファン投稿を紹介
- ファンの声をクラブ運営に反映(意見箱の透明化)
- 発信者への特典(抽選で選手サインなど)
狙い: 「発信すると嬉しい」が行動を継続させる。
まとめ:推しは育てるもの、愛は行動で示すもの
「認知・好意・応援・行動」。 こうして分解してみると、私たちが普段何気なく感じている「グランパスが好き」という感情の裏側に、クラブの緻密な努力と、私たち自身の心の変化が隠されていることがわかります。
今のグランパスは、ハード(スタジアム)もソフト(施策)も含め、ファンと共に進化しようとする過渡期にあります。「知ってもらうこと」から「共に歩むこと」へ。各フェーズで打てる手はまだまだ無限にあります。
- まだ知らない人に、魅力を伝える(認知)
- スタジアムの楽しさを、体験としてシェアする(好意)
- チームの背中を、声と手拍子で押す(応援)
- そして、スタジアムへ足を運び続ける(行動)
クラブが仕掛ける戦略を理解した上で、私たち一人ひとりがこのサイクルの「エンジン」となること。それが、最強のファンベース、そして最強のクラブを作る一番の近道なのかもしれません。
