名古屋の守備は変わったのか~「守備ポイント」から見えた変化~
はじめに
コンウェンですこんにちは。
先日グラぽさんの磐田戦プレビュー読んでいてどうにも腑に落ちない画像を見かけました。
この画像はFootball LAB様の「守備ポイント」という指標の表です。このサイトではサッカーの膨大なデータに対し、統計分析を行った結果より様々な指標を提示されています。
さて、この画像をパッとみると、「なるほど、大分が一番守備が良くて、名古屋が一番守備が悪いのか」と見えます。大分が守備が良い、という部分に異論はありません。しかし、名古屋の守備は、相手に組み立てさせない前からの守備、中盤のハンター米本らによる即時奪回、ラインを押し上げ前を支えつつ緊急時最後の砦となるスピードと対人能力に秀でた強力なDFラインにより、まだ完璧とは言わないまでも、確実に良くなってきています(詳しくはfootballistaの青井高平さん< @Nacky_FENGCDの記事をどうぞ)。この時点における失点は6(全チーム中4位)と数字にも表れており、名古屋が最も守備が悪い(と見える)指標には納得がいきません。しかし、考えてみると僕が勝手に「守備ポイント」の解釈しているに過ぎません。そこで、「守備ポイント」が何を表しているのか、を確認してみました。
するとこの指標が守備の良し悪しでなく名古屋の守りかたの大きな変化を表していることがわかったので以下まとめてみたいと思います。
指標から見えたもの
現状の確認
冒頭の画像は磐田戦前のデータですので新しい8節終了時のデータを再度確認します。
8節の結果により両チームとも失点6(平均失点0.8)と同じ数字になりました。守備ポイントは変わらず一位大分、最下位名古屋です。
指標を確認していると、もうひとつここで気になった指標が出てきました。「奪取ポイント」です。
こちらも名前から守備を表す指標と思われますが名古屋2位、大分最下位と守備ポイントとほぼ逆になっています。これらについて整理してみます。
指標の定義
まずは指標がどのような思想で作られているか確認していきます。なお、FootballLAB様では指標のモデルは公開されておりませんので、説明文を読んだ上での私の独自解釈となりますのでその点はご承知おきください。
説明詳細URL
・守備ポイント定義
ざっくり言うと、相手の決定機に近いプレーを止めるほど、守備ポイントがたまりやすいということです。
・奪取ポイント定義
こちらもざっくりいうと前でボールを奪うほど奪取ポイントはたまりやすいということです。
奪取ポイント×守備ポイント×失点率
指標をグラフにて整理します。縦軸に奪取ポイント、横軸に守備ポイントを取り、その上に各チームをプロットしました。バブルがサイズが大きいほど失点率が高く、色でも分類しています。
すると、図中にも書いたように大きく5つの群に分けられました。
- A:前で奪取でき失点の少ない群(名古屋)
- B:後ろで止め失点の少ない群(大分)
- C:中間で守れ失点の少ない群
- D:前で奪いたいが結果押し込まれ失点の多い群
- E:奪うポイントがなく失点の多い群
※各チーム固有の事情(スタイル、フォーメーション、事故的な失点等々)は考慮していません。あくまで指標から私が読み取った分類です。
つまり守備ポイントが低い名古屋は守備が悪いのではなく、前で奪取できているからこそ後ろでの相手の決定機数を抑えられ、ポイントが上がりにくかったというわけです。逆に大分は前で奪うのでなく素早く引いて、後ろできっちりと守れているがために守備ポイントが高くなっているのです。
一つの疑問
ここで、奪取ポイントが高いので、前で奪えているのはわかるが、守備ポイントが低いのは純粋に後ろで守れていないのでは、シュートまで持ち込まれているが,キーパーが頑張った結果失点が少ないのではないか、という疑問がわきました。そこでセーブポイントと被シュートを確認してみました。
・セーブポイント定義
名古屋は被シュートは少なめ、セーブポイントは中位と、キーパーだけで何とかしている、というわけではなさそうです。
名古屋の大きな変化
それでは冒頭に書いた名古屋の変化について見てみます。守備ポイント×奪取ポイントの図に17年名古屋と18年名古屋を追記してみます。
…説明不要ですね。一応書くと「奪うポイントがないままゴール前で守備ポイントを稼いでしまうも止めきれず」です。18年がやや右よりなのは後半のマルシン加入によるゴール前での守りの質が若干上がったことによるものでしょうか。とにかく、現在の名古屋は過去2年間の名古屋に比べ、明らかに守りのスタイルが変化し、向上しています。変化したと言うよりやりたいことがやれる理解度とメンツになったというべきでしょうか。全員が前からの守備と即時奪回を意識し、実際にやれる技術を持つことで、大きく図の左上に触れ、失点を抑えることができているのです。
2つの心臓
個人のデータに目を移しますと、やはり、米本とジョアンシミッチの貢献度が抜群です。奪取ポイントは米本が全選手中1位、シミッチが4位です。
米本は素晴らしい奪取スキルと冗談みたいな運動量で狩りまくっているので1位でも意外ではないんですが、シミッチの順位の高さは意外でした。もちろんシミッチ個人のスキルもあるでしょうが、前からの守備で簡単に組み立てさせないFW、SH陣、ラインを上げ圧縮し簡単に繋がせないDF陣、すべての選手が即時奪回に向け動いた結果の数値なのでは無いかと考えます。ちなみに、宮原が9位、丸山が27位、中谷が30位に入っており、ベスト30内のランクイン人数は、名古屋が5人で最多です(8節時点で2位は鹿島東京横浜の3人)。完全に余談ですがシミッチは攻撃ポイントランキング1位です。化物。
まとめ
- 「守備ポイント」は後ろでの守備指標
- 「奪取ポイント」は前での守備指標
- 合わせるとボール奪取位置が見えてくる
- 名古屋の守備は個の能力と組織で前からの守備が出来るよう変化、失点数も改善
終わりに
名古屋の守備スタイルは、目に見えて良い方向に変わって来ているのは皆さんご存知の通りですが、それが指標にも現れていることが確認できました。正直言うと、気になって整理を始めた段階では、ここまで指標で表されるとは思っていませんでした。また、指標は嘘をつきませんが、意味を考えず読み取ろうとすると「名古屋の守備良くなってないじゃん」の様な真逆の誤解を招く事がある点については気をつけなければと言う良い学びとなりました。とはいえまだ8節が終わっただけですので、引き続き、「奪取ポイント」と
守備ポイント」の変遷は気にかけて行きたいと思います。
ご拝読ありがとうございました。
最後にFootball labさんには、記事の指標の解釈について確認に快くご協力いただきました。誠にありがとうございます!
おまけ
Football LAB様ではKAGIという指標も提唱されています。これはKeep Away from Goal Indexの略で、「守備の際にどれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣ゴールに近づけなかったか」を表した指標で
- 相手の攻撃時間のうち、自陣ゴールから遠い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
- 相手の攻撃が始まってから、自陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が長い
場合に高い評価となるように指標化されています。
名古屋は現在広島に次ぐ2位で、この指標も名古屋の前から嵌める守備が上手くいっている一つのデータでは無いでしょうか。
かつてハリルホジッチが「Jリーグでゾーンプレスをやっているのは湘南と、川崎が時々やるぐらい」と言ったのを思い出した。あれは16年3月のことだから監督は風間さんでしたね。
レスありがとうございます。はたして今の名古屋がゾーンプレスか、というと謎ですが、たしかに川崎時代はそういう雰囲気もありましたね。
だから風間八宏監督は個人戦術だけ!っていう意見は違うんじゃないって思います。
守備への言及が極端に少ない監督なので何を仕込んでいるかは謎が多いですが、川崎の最初期(山瀬がいる頃)から現在まで一貫して「一人で二人見ろ」と言われると選手が言ってるのでマンツーで前から嵌め込みたいわけではないんだろうなと思っております。FWの選手起用を見ても自分の後ろのスペースや相手の状況を気にせずボールホルダーにアタックしちゃう選手は徐々に使われなくなるので。対してジョーのように運動量こそ少ないけれど相手DF二人を同時に牽制出来る位置取りが出来る選手は出続けられる印象があります。牽制しつつ相手が出し所に困った所で狩りに行くのが理想なのかなと。
ジョーがいてくれることの本当の意味ですよね。わかります