2015年3月25日付け中スポ/グランパスウォッチャーで、開幕してから公式戦5試合連続で出場している小屋松知哉選手について特集されています。
http://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/grampus/news/201503/CK2015032502000105.html
小屋松知哉選手についてはグラぽでも何回も取り上げていますが、よく表現として「永井なみの快足」という言葉が使われていることが多いです。
しかし開幕節のトラッキングデータでもあったように、実は最高速度は31km代と本多選手や牟田選手らとあまり差はありません。個別のトラッキングデータが公開されていないのでわかりませんが、おそらく脚の速さだけで言ったなら田鍋陵太選手のほうが遙かに速いと思われます。永井謙佑選手は34km/h弱で、おそらく田鍋陵太選手も同じくらいでしょう。比べて牟田選手や小屋松知哉選手、本多選手は31km/hくらいが最高速になります。
永井謙佑選手や矢野貴章選手、田鍋陵太選手がしかける裏街道(ディフェンスの裏の誰もいないところに自分でボールを出して、ダッシュでボールに追いつくことでディフェンダーを引きはがすプレー)などはそれほど多くありません。裏街道は最高速が高いからこそできるプレーです。
怪我をする前の小屋松知哉選手であれば、やろうと思えばできたでしょう。しかし怪我から約一年間、セーブしている部分はあるにせよ、一般的なディフェンダーも30km/h前後の脚の速さがあるので、1km/hの違いではスピード任せのプレーは難しいでしょう。むしろ藤春選手などではディフェンダーのほうが速いかもしれません。
小屋松の良さとは
では、小屋松知哉選手のどういうところが西野監督に評価されているのでしょうか。実は青木亮太選手も西野監督の評価が大変高い選手ですが、二人に共通して言えるのは、崩しを意識して自分で考えることができる、ということです。
今日のグランパスウォッチャーで、西野監督の評価の部分だけ引用します。「動きだしも速いし自分で打開できる」
たとえば、小屋松知哉選手のどういうところが「自分で打開できる」になるのか。自分で打開できる、と一般で言うと、かつてのウェズレイ選手みたいに、ボールを預ければとりあえず一人でなんとかゴールまで持って行けてしまう。というところでしょう。しかし西野監督が言っているのはそういうところではないと思われます。
まず、鹿島戦ではサイドバックに下がる矢野選手に代わって右サイドで動きを出していくことが求められていました。ただ、西野監督からは「ポジションチェンジを繰り返そう」という指示が出されていたとのことで、適宜矢田旭選手とポジションチェンジを繰り返し、ノヴァコビッチ選手への決定機2つは、左サイドでディフェンダーとの駆け引きから1つ、右サイドで独走しかけたところをいったん落ち着かせて、そこから再びしかけてクロス、と両サイドから演出しています。
かつて小川佳純選手とマギヌン選手の全盛期では、ポジションチェンジから変幻自在の攻撃が組み立てられていました。それは二人の戦術眼に因るところが大きかったと思われますが、それらはおそらく、「ポジションチェンジしながら相手を混乱させ、攻め上がれ」程度の指示しか受けていないと思われます。ディティールは小川選手とマギヌン選手に任されていたと思われます。より、深く解釈ができるチカラがあったということですね。
西野監督は細かい指示を出し続けるタイプの監督ではない
たとえば「おつかいにいって、タマゴを買ってきて」と言われたら、普通に近所のお店でフツーに買ってくるケースが多いでしょう。ところが「スーパーAは普段は近所のお店より高いけど、水曜日が特売だったな。」という判断で、スーパーAを利用できる。
これが西野監督の言う、自分で打開できる、なのではないでしょうか?
試合前のミーティングなどで、様々なシーンを想定した指示をしていると思いますが、そのような場で絶対の答えは出すことはできません。ムリです。田鍋陵太選手のプレーを見ていると、どうも「縦の速さを活かせ、相手のサイドバックを押し込め」みたいな指示を忠実に守っているのではないか、と想像しています。選択するプレー、戦術に広がりがあまり感じられないのです。素晴らしい身体能力と技術を持っているのだから、もったいないじゃないですか。
小屋松選手はポジションチェンジという指示から、崩し方にまで自分で考えて戦術に翻訳することができます。タイプは違い、よりゲームメーカーっぽいとはいえ、青木亮太選手も同じように指示から監督の意図を読み取り、それを戦術に翻訳することができる選手です。こういう選手こそ、チームの司令塔となり、タクトを奮える選手なのではないでしょうか。残念ながら青木選手の今季の復帰は難しそうですが、二人が揃った状態になったら、グランパスはまたもう一段階上に行けるのではないか、と今から期待をしています。
まずは仙台戦を期待したいですね。