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グランパスの再建の財政的な切り札とは

ゴールデンウィーク中のアップだったために、あまり話題にならなかった記事があります。筆者はかつてエル・ゴラッソで名古屋番を長らく務めていた西川結城さん。

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直接の引用はしませんが、そこには強烈な話題が挙げられていました。それはグランパスの「減資」と「増資」です。かつて、サンフレッチェ広島が取った手法でもあり、それによって20億円ほどの累積損失を抱えていたサンフレッチェ広島は減資を行うことで経営破綻を避けることができました。最近では電機メーカーのシャープが1000億円以上の減資を行うことが発表されたところです。

債務超過とは

わたしたちはお金がなければ生きていくことはできません。

仮に社会人であれば毎月の給与があり、その中で暮らしていきます。しかし不慮の事態によって支出が給与を超えてしまったら、借金をしてそれを調整をすることになります。
でも借金は無限にすることはできません。

金の貸す方の立場で考えてみます。返してもらうアテがなければ、貸したくないですよね。その人が持っている資産の範囲だったら回収できそうですから貸しても大丈夫そうです。その範囲を超えてしまうのが「債務超過」なのです。
定義として書くと「自分が持っている資産より負債が多い状態」ですが、債務超過になると、基本的には金融機関からお金を借りられなくなります。従って、倒産しやすくなりますから、なんとしてでも避けなければならないことの一つです。

グランパスの資本金は4億円、累積損失は3億6千万円。Jリーグのライセンスは債務超過は一発アウトとなっていますのでJFL降格の危険性が極めて高い債務状況であるということがわかります。

ここ数年、名古屋の補強があまり思い切ったことができないのはこの3年連続赤字の危険があるから、とされてきました。昨年度黒字となったので今年は派手な補強ができるとおもいきや、永井選手の復帰とノヴァコビッチ選手のフリートランスファーでの獲得で終わってしまったのは債務超過の危機があるからなのです。すなわち4000万円以上の赤字を出せば、債務超過に陥るのです。

債務超過を解消するには

通常、借金が多くなってる場合は出費を抑えて借金を返すか、収入を増やして借金を返す、この2つの選択肢があります。しかしJリーグでは出費を抑えすぎてしまうとリーグの成績や集客にダイレクトに影響が出てしまうため、収入を増やすか、資産をなんらかの方法で増やすしかありません。お金はいきなり降ってくるようなことはないので、なんらかの打ち手がないと実現はできません。

2兆円の純利益を誇るトヨタ自動車なんだから、10億でも20億でもグランパスに出してよ!なんて思われるかもしれませんが、資本金5億円の壁を超えると「大会社」扱いとなり、税制上の優遇をうけられなくなるし、監査法人の設置や財務状況の公告義務など負担が大きいからです。

また、株主比率が代わってしまうということも問題になるかもしれません。出資により、過半数の議決権を得るということは出資者がその会社を支配している、とみなされます。サンフレッチェ広島の場合は資本金約15億円の状態からDEODEOが5億円の増資を行うことで、マツダ自動車の支配からDEODEOの支配に移行しました。基本的に支配下にあると決算の連結対象となり、そうなると支配側の会社の株主の強い監視の目に晒されることになります。グランパスの場合は名古屋五摂家(名古屋鉄道、中部電力、東邦ガス、松坂屋、東海銀行[現・三菱東京UFJ銀行])がある程度分担して出資している状況ですが、そのバランスを崩してしまう可能性もあります。

しかし第3の方法として示されているのが、西川さんの記事でとりあげている減資という方法です。簡単にいうと、資本金=返さなくても良い、会社が持つ資産を取り崩して、累積損失を消しこむという方法です。

今回、シャープが2億円に減資する予定ですが、なぜその金額なのかというと累積損失を消しこむことで債務超過解消を狙っているからです。グランパスも同じことを狙っています。ただこれには現在の出資者の同意がなければ実現はできません。西川さんの記事もそこに帰結しています。

書類上とはいえ累積損失を消しこむことができれば、ある程度の強化費の捻出は可能になります。

ほんとうにトヨタ自動車と名古屋五摂家が減資に同意するのか

よく勘違いされますが、減資は「借金の棒引きではありません。」
減資は株主に財産の払い戻しを行わず、計算上資本金額を減少され、純資産が資本金額に満たない資本欠損の場合に資本金を純資産額以下にする場合に行われます。この場合、帳簿上資本金額が変更されるだけであり、会社財産は減少せず、一株の資産も変わりません=株主に損は一切ありません。

ただし、問題なのは通常は減資と同時に、新たに増資を行い資本増強する場合などが多いことなのです。新たな株主が増資した場合には既存株主の権利はその分薄くなるわけです。

今回の場合、トヨタ自動車だけが増資すると連結対象になってしまう可能性があります。一方でバランスよく増資するとなると名古屋五摂家にも増資を願うということになり、それは簡単なことではありません。トヨタグループがグランパスを丸抱えする覚悟を持つのか、そしてそれをトヨタグループの監査人が許すのか、株主が許すのか。

現在のところまだ見えていない部分が多いのですが、これから注目して見て行きたいと思います。

参考記事:
http://www.jleague.jp/aboutj/management/club-h25kaiji.htmlJクラブ個別経営情報開示資料(平成25年度)
http://www.huffingtonpost.jp/hirofumi-tanaka/jal_b_6206126.html今改めてJAL再上場を検証。100%減資を行い企業再生支援機構の象徴的なディールへ

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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