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2017年J2リーグ第39節 名古屋グランパスvsザスパクサツ群馬において、名古屋グランパスのツートップに杉森考起と玉田圭司が起用されました。38節の対長崎戦と比べると、ロビン・シモビッチがベンチに、杉森がスタメンという変化がありました。ロビンと杉森とのプレーの違いから、杉森がどんなことを求められていたのか考えてみましょう。
杉森考起のプレー
杉森がボールに絡んだプレーをいくつか抽出して見てみましょう。
1)スペースへの走り込み
群馬の一柳がクリアしたボールを和泉が拾う。その瞬間に右ストッパーの一柳が戻りきれていない裏のスペースへ走りこむ杉森。その杉森へ和泉ロングパス。残念ながらパスの精度を欠きましたが、通れば決定的なチャンスとなった可能性大でした。相手に隙があれば走りこむ………それがロビンにはできないプレーなのかもしれません。2)細かい動き直しでパスコースを作り続ける
群馬を押し込んだ状態。櫛引がパスコースを探している間に、杉森は最前線から降りてきて、櫛引のパスの選択肢を増やしました。その後、櫛引から宮原へパスしたところで杉森は右サイド高いところへ動き直し、そこへパスが出てこなかったため、改めて宮原のフォローへ降りて来ました。つまり、杉森は図中の赤色の円あたりの範囲を細かく動き回り、味方のフォローおよび自分の裏抜けを狙っていました。昨シーズン以前の杉森はこのような細かい動き直しをほぼしていなかった印象ですので、大いに成長した部分ではないでしょうか。3)守備陣のスキマでボールを受けてシュートに行く
杉森が相手ディフェンスラインとボランチとの間のスペースでボールを待っていたところに田口がパス、杉森反転してシュートもディフェンダーにブロックされ、キーパーにキャッチされました。杉森はこのエリアで前を向いてボールを持ってからのプレーを得意としていたはずなので、できればもっと決定的なプレーをして欲しかったですね。でも自分で打つのは良いぞ、杉森。もっとやれ。4)運動量を惜しまず、圧倒的な加速力を活かしたプレー
杉森の交代直前のプレー。相手に押し込まれるもボールを奪った後、小林から和泉に出し、空いていたスペースへ和泉が縦のロングパス。ボールがタッチラインを割りそうになるも、杉森がダッシュでなんとかボールを収め、前に出てきた小林へ落としました。杉森の魅力の一つ、加速力です。杉森のプレーまとめ
- 最前線には張り付かない
- 敵陣奥の空いたスペースへの走りこみ
- 相手ディフェンスラインとボランチの間のスペースでの細かい動き
- サイドの味方のフォロー
代わって入ったロビンのプレーはどうか
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杉森と交代でピッチに入ったロビン・シモビッチ。ロビンはこの試合ではどんなプレーをしていたでしょうか。最もわかりやすい、グランパスの得点シーンを見てみましょう。
1)相手の注目を惹き、他の選手のマークを軽減する
グランパス2点目。和泉からロビンの足元へパスし、ロビンが小林に落とし、小林が青木へスルーパス。スルーパスは群馬の石田にカットされるも、玉田が即座に奪い返して右足で叩き込みました。この局面では、ロビンにボールが渡った瞬間、群馬の選手全員がロビンに注目しており、結果として小林や青木が相手の視界から消えていました。2)注目を惹き、正確なポストプレーで味方を活かす その1
グランパス3点目。右サイドから崩して押谷がロビンの足元へクロス。ロビンの落としを田口がダイレクトでコントロールシュート。ビューティフルゴールでしたね。ここでも、ロビンにボールが渡った瞬間、群馬の選手はロビンしか見ておらず、田口や和泉が完全にフリーになっていました。3)注目を惹き、正確なポストプレーで味方を活かす その2
4点目。宮原からロビンの胸へパス。ロビンが収めて青木へスルーパス。難しい角度でしたが青木が素晴らしいシュートを逆サイドネットへ突き刺しました。ここでも、ロビンにボールが渡った瞬間、群馬の選手はロビンしか見ていません。例えばポジション的に押谷をケアすべき高橋や、青木をケアすべきヨ・ソンヘも自分のケアすべき選手を見ていませんでした。ロビンのプレーまとめ
- 原則として最前線にいる。
- 相手をペナルティエリア近くまで押し込んだ状態で、高い位置で攻撃の中継地点となる。
- 相手にとって脅威に思われているのか、ロビンがボールを持つと高確率で相手がボールウォッチャー化する。
杉森とロビンとの違いはプレー範囲
杉森は相手のディフェンスラインとボランチとの間のスペースを広い範囲で動き、自分からボールを貰いに行き、あるいは味方のフォローをしていました。対して、ロビンは最前線に張り付き、自分のいるところにボールを呼び込んでいました。結果として得点に多く絡んだのはロビンでした。しかし杉森も良さを見せていました。
この試合で風間監督が杉森をスタメン起用したのは、杉森とロビンとの違いを見る限り、恐らく、前線での流動性と運動量を期待していたからではないでしょうか。そして、玉田の負担を軽減しようという意図だったのではないでしょうか。杉森玉田のツートップ(ゼロトップ的)であれば、杉森が広い範囲を動き回り、玉田は決定的な仕事をするのにある程度集中できます。ロビン玉田のツートップの場合、玉田が広い範囲を動き回らねばならず、玉田の負担が非常に大きかったのかもしれません。
杉森は名古屋グランパスファンの『誇り』になって欲しい
現地で試合観戦していると、杉森がスタメン発表された試合では、スタジアムのそこかしこから 「今日は考起がスタメンだって! 嬉しいね」 というような声が聞こえてきます。途中交代で出てくる時でも、杉森への期待の声は一段と大きく感じられます。老若男女問わず、グランパスファンから杉森は本当に愛されていて、期待されています。彼の、愛知出身のクラブユース生え抜き、16歳でプロ契約という経歴や、可愛い顔等による部分が大きいのでしょう。グランパスファンは杉森のことを可愛い弟、息子、孫くらいの思いで見守っているような印象です。それはとても幸せな関係なのかもしれませんが、杉森ももう20歳、プロ4年目を迎えています。そろそろ杉森には、『そこに杉森がいるだけで愛おしい存在』から、試合に出場し輝かしいプレーを見せ、『杉森は名古屋グランパスの誇り』になってほしいのです。杉森個人にとっては幸運なことに、選手育成には期待できる風間監督がグランパスにやってきました。その成果は、既に杉森のプレーに現れています。今シーズン開幕時点と、群馬戦での杉森のプレーとを見比べれば、その差は歴然としています。恐らく、もう二歩くらいのところまで来ているのです。残り3節、杉森のゴールでグランパスファンを泣かせてほしい。頑張れ、杉森。