第1節の試合に関するレビューは、ラグさんの記事を読んでいただくとして、現地でグラぽが観戦して、こんな変化があった、ということについてまとめてみました。
プラスの変化
- 小林裕紀がやっていた最終ラインにMFが降りるビルドアップ(サリーダ・ラボルピアーナ)がない
サリーダ・ラボルピアーナは、リカルド・ラボルペという監督が完成させたメキシコ発祥の戦術メカニズムです。
https://at-foot.com/1745/ より引用
昨年度までの名古屋グランパスでは、名古屋DF陣へのプレスがきつく、それをかいくぐるための手段としてつかわれていました。
相手が2トップで、センターバックが2人だと、数的同数になり、プレスをかわすことが難しくなります。サイドバックはパスの逃げ道としてできるだけサイドに張りたいので、数的不利を解消するためには、パスに優れた選手が低い位置(自チームゴールキーパー寄り)を取り、開いたセンターバック2人を通じて外>外や外>中のビルドアップを行えるようにするものです。
ただ、サリーダ・ラボルピアーナの弱点は、MFが1人落ちるということは、前に運ぶためのメンバーが1人少なくなるということでもあります。それは前に運ぶためには、シャビエルや前田直輝、和泉竜司のようなドリブルのエクストラ・スキルを持つ選手に頼るか、エドゥアルド・ネットのようなピンポイントのロングパスを出せる選手が必要でした。
そうなるとメンバーが不足しているときにはボールが前に運べない=攻めることができず、逆に自陣でサンドバック状態になってしまうということが発生していました。
今年の大きな変化は、ボールを前に進めるために、米本拓司・ジョアン・シミッチの二人のところで攻撃の組み立てができるようになっていることです。するとビルドアップのポイントが約20m前になっているわけで、敵ゴール前までに達する距離が少なくなっているということでもあります。
これにより、ボールを持って上がるエクストラ・スキルを持たないけど、クロスやパスの得意な選手がこれから輝いていく可能性もあります。
- ボールを貰うためにシャビエルが下がることが少なくなった
この試合はライブトラッキングの対象試合ではないので、残念ながらヒートマップを出すことができません。しかしながら昨年度はシャビエルが運ばれてこないボールに業を煮やして、低い位置(自陣ゴールに近い位置)まで降りてきてしまい、なかなかボールが前に運べなくなってしまうという現象が多数発生していました。これも攻撃がうまく行かなくなる原因だったと思われます。さらに言うとドリブルなどのスタミナを多く使うプレーが増えることで、肝心な攻撃の時にスタミナが残っていないというようなことも多かったように思います。
今年の大きな変化は、シャビエルが低い位置に下がるのは守備で数的不利の時だけになったことです。なぜなら米本拓司・ジョアン・シミッチの二人がボールを握れるので、シャビエルはサイドでの攻撃と、たまにピンチのときにサイドバックのフォローに下がるくらいになっていました。攻撃に集中できるようになったわけです。
その結果、大きく目立つプレーは少なかったものの、相手ゴール近くでファールを貰う=FKのチャンスを得るという仕事を多くできるようになっていました。これはシャビエルを活かすという意味ではとても重要な変化だと思われます。
- 宮原和也の攻め上がりが多くなった
相手ゴール側の位置にシャビエルとともにプレーする機会が格段に増えました。Jリーグ.jpの以下の画像を確認してみて下さい。
自陣でのパスが13に対して、敵陣でのパスが46ということは敵陣でプレーする機会のほうが格段に多いということです。これまで宮原和也は守備には定評があっても、攻撃には物足りないことを指摘されていました。
懸念点(まだ解決できていないポイント)
スタッツ面での問題
数値の面で名古屋が劣っているところは以下の通りです。
- クロス精度
- 名古屋3/20 (15%)
- 鳥栖6/15 (40%)
- ロングボール精度
- 名古屋16/41 (39%)
- 鳥栖39/78 (50%)
- ドリブル
- 名古屋4/16 (25%)
- 鳥栖7/8 (88%)
- デュエル
- 名古屋68
- ※湘南81
クロス精度については、シャビエルと宮原和也のこの値を見てみて下さい。
宮原和也はクロス1、シャビエルは11で成功は2人合わせて1です。これはいくら鳥栖のディフェンスが固いといっても、圧倒的フィジカルを誇るジョーが前にいるのに低すぎるのではないか、と感じています。
ロングボール(ロングパス)も、この二人からは少ないだけでなく、成功が0です。短いパスを繋いでいくことが風間スタイルとはいえ、ショートパス一辺倒では、相手も対策が立てやすくなってしまいます。「相手の裏を取る」ことこそが風間八宏流であるわけで、相手の予測の逆を、高精度で行えるようにならなければならないのではないでしょうか。
ドリブルの機会は名古屋のほうが圧倒的に多いわけですが、成功しきらないケースが多いようです。一番危険なのは自陣でドリブルをしかけて潰され、ショートカウンターを食らうことなわけで、そういう意味では前田直輝がドリブル失敗でショートカウンターの起点になってしまったプレーはいただけませんでした。ドリブルには絶対成功はありえないのですが、ショートカウンターを食らうリスクは考えた方が良さそうです。
デュエル(1対1)に関しては、名古屋が鳥栖を上回っています。しかし、その数字は同じく2位につけている湘南ベルマーレの81にくらべると3/4に過ぎません。デュエルで1人を抜けば、最大相手は10人しかいなくなるわけで敵を減らせます。1対1で負けないプレーができないといけません。
全体のスタッツは以下の通りです。
前田直輝のポジショニング
前田直輝のポジション(25)に注目して下さい。ほぼトップ下のようなポジションになっています。
実際には左サイドに構えていた時間もありましたので、右サイドに寄ってしまっていた時間が長すぎたのではないか、と感じています。実際左サイドからの攻めが少なすぎる、というのがDAZNでのスタッツの結果でした。
これが意図したアンバランスだったのか、それとも前田直輝の独断でのものなのかが気になるところです。場合によっては、修正を明確に施さないといけないのかもしれません。
まだまだ名古屋グランパスは成長しなければならない
いかがだったでしょうか。数字で見たり、去年との比較で見てみると、良くなってきている部分はたくさんありますが、まだまだ優勝にはほど遠いのがおわかりいただけると思います。
これからも名古屋グランパスが成長し続ける姿を、みんなで応援していきましょうね。