2回目のお邪魔になります。フルゐ @gra_senki と申します。
サスパス不全症候群。
造語です。最近のグランパスは、”刺すパス”がなかなか通らないなーと思いまして。
ここで言う刺すパスとは、相手が引いて守備ブロックを作っているときに、名古屋のディフェンダーやボランチから守備ブロック中央の密集地帯に入れるグラウンダーの鋭いパスとします。
最近のサスパス不全症候群は、チームの勝ち点やファミリーの精神状態にも大きく影響しているのではないでしょうか?例えば、神戸戦や横浜FC戦でリードを奪われてからのフラストレーションは、サスパス不全症候群の最たるものだったと思います。
そこで、今回は刺すパスのワンテーマで話を進めていきます。
成瀬への期待感の本質
最近、成瀬に対する称賛の声が止まないですが、その成瀬への期待感の本質は刺すパスが出せる事ではないでしょうか?
こちらは19節3-1で勝利した清水戦における、成瀬のアタッキングサードでのパス成功率です。全選手中最高のパス成功率100%(12/12本)を達成しました。晴れがましい。
明治安田生命J1リーグ 第19節
アタッキングサードへのパス成功率ランキング‼️見事1⃣位に輝いたのは…#成瀬竣平 選手(名古屋) 100%✨https://t.co/8skdMQcoHE
先制点の起点となったパスをはじめ、12本のパスを成功させた成瀬選手が1位👏@nge_official #Jリーグ #jleague #footballlab pic.twitter.com/lehc0In6Ls
— Football LAB (@football_lab) September 28, 2020
この試合の1、2点目は成瀬の刺すパスをスイッチにして攻撃のスピードを上げ、ゴールに結びつけました。清水戦は、チーム全体としても刺すパスが多かったと思います。よって、直近の試合では攻撃の良かった印象を持っている人が多いのではないでしょうか?
今シーズンの成瀬は、失敗も積み重ねながら刺すパスを磨いていきました。いまでは現メンバーで最も刺すパスの期待できる選手になっていると思います。
刺すパスの功罪
名古屋で「刺すパス」といえば、サスパス専用機エドゥアルド・ネットがいましたよね。ネットのプレーを思い出すと、パスを刺して自らも突進する姿が浮かびます。風間監督時代はみんな刺すパスを出していました・・・ん?嫌な記憶が・・・そう、刺すパスを失敗するとカウンターを受けやすいのです。
つまり、密集にパスを出すので、カットされた場合に相手は近い距離でパス交換ができます。また、敵はタックルやインターセプトの方向と攻撃したい方向が同じになるので、スピードが上がります。そのうえ、自軍は前がかりなので独走を許しやすくなります。よって、刺すパスの失敗はカウンターの餌食になるのです。
一方、フィッカデンティ監督が最も嫌がるプレーは、不用意な「刺すパス」をカットされてカウンターを受けるプレーであると想像できます。名古屋がカウンターをできて相手ができないという盤面が、最も勝率が高いことは自明だからです。
サスパス症候群が重症化した神戸戦
こちらは、29節神戸戦のボールタッチの分布です。ペナルティーエリア内が3回しかないんです(涙)。ペナルティーエリア内のタッチが少ないことは、刺すパスが通らなかったことも大きな要因だと思います。
3 – 名古屋は第29節神戸戦での敵陣ペナルティエリア内タッチがわずか3回に終わった。J1の2015年シーズン以降、1試合での同回数としてはチーム最少だった。迷路。 pic.twitter.com/XCjQfgc4ik
— OptaJiro (@OptaJiro) September 30, 2020
本来、丸山は縦パスをつけるのが上手いCBです。また、中谷や米本も風間監督のもと、かなり刺すパスの出せる選手になりました。シミッチだって準サスパス専用機です。
ではなぜ、刺すパスが入らないのか?要因は2つに分けられます。
1つ目は、リスクを減らすためです。試合序盤や、0-0の試合中盤、リードしている試合終盤はカウンターを受けるリスクを取らない傾向が強く、意図的に刺すパスを入れていない可能性があります。この場合は、サイドハーフの個人技や裏抜けをベースに攻撃します。
2つ目は、上手じゃないためです。引いた相手を崩すというのはサッカーにおいて最も難しい局面です。アジア予選のジーコジャパンや風間政権中の名古屋など、例を挙げればきりがないほどよく見る光景だと思います。引いた相手を崩すには、難易度の高いサッカーが必要です。刺すパスを入れることで、相手DFを一度密集させてサイドに1対1を作るとか、ライン間でターンをする技術とか、フリックやポストプレーやスルーパスにタイミング良く走り込むとか。
すると、頭によぎるのは「フィッカデンティ監督、何とかしてよ」ということです。監督も当然「何とかしなきゃ」と考えていると思います。「監督も刺すパスが入らない事を気にしているんだろうな」と思う展開が、神戸戦の後半飲水タイム後にあったので、ご紹介します。
サスパス症候群への処方箋(仮)
0-1でリードを許している名古屋は、米本と金崎の代わりにシャビエルと山崎を入れました。そして、押し込んだ時の選手の配置を以下のようにしていました。
全体のフォーメーションとしては、右上がりの3-4-2-1というような表現になります。阿部とシャビエルは山崎の両脇を動いて中央の距離感を良くします。相馬は裏抜け専用機として右のタッチライン際でディフェンスラインと駆け引きをします。左の幅は吉田が取り、その分宮原が絞って3バック気味になります。特筆すべきは、左ボランチにマテウスが入ったことです。
私はこの形を以下のように解釈しています。攻撃は左ハーフスペースを中心に組み立てたいんだなと。左ボランチにマテウスが入ったのは、このブログの主題である刺すパスを入れるためだと思います。普通、ボランチに入れるなら阿部かシャビエルが適任と思われますが、そうしませんでした。
理由はたぶん3つ。
1つ目はマテウスはカウンター守備でも当たりが強いから。
2つ目はシャビエルと阿部には密集の中でボールを受ける技術があり、そこでラストパスを入れて欲しいから。
そして、3つ目は、マテウスが刺すパスを出すと同時に前進することで、攻撃に推進力が生まれるからです。
つまり、刺すパスを入れるためには、組織全体としてマテウスがボランチの方が適しているという狙いだったと思われます。
以上のような配置をみて、「フィッカデンティ監督も刺すパス入れたいんだなー」って感じました。(実際は、ほとんど入りませんでしたがorz)
引いた相手から得点できるようになるのか?
神戸戦のロスタイム、中谷を上げてパワープレーも見せました。左ハーフスペースに中谷、右ハーフスペースに山崎をターゲットとして、ハイボールを放り込みます。中央ではなく、SB-CB間で競らせるという、ダンクレーを意識した戦術だとと思います。
ボランチマテウスやパワープレーの中谷の様に、配置という点では引いた相手から点を奪う工夫が見られます。そこから、チーム内の課題認識とファミリーの願望の方向性は一致しているんじゃないかと感じています。
刺すパスを入れるを入れることは、引いた相手から得点を奪うための大きな手段ですが、一朝一夕にはいきません。サッカーで一番難しい宿題です。風間監督は難しい宿題から初めて、易しい宿題に手が付けられませんでした。一方、フィッカデンティ監督は易しい宿題から初めて、一番難しい宿題が残っています。予習が済んでる分、早く片付けることができるといいのですが・・・
実際に、何をすれば良いのかって事が書ければ説得力も増すのですが、月並みな事しか浮かびません。
パスの出し手は、左右どちらの足に付けるのかというレベルで精度が必要です。(その意味で滑るノエスタはきつかった。)
受け手は、密集の中でも正確なボールタッチが求められます。その上でターンするとなると、香川や清武や宇佐美のような特殊技能が必要となります。
密集に刺すパスを入れた後は、タイミング良く3人目の動きでシュート体制に入る必要があります。そのため受け手と3人目の距離感も大事です。
これらはコンディションの回復だけでも全然変わる可能性もあります。仙台、浦和、清水戦辺りの攻撃のイメージを取り戻す作業も良いと思います。
あとは、どれだけ試合中に刺すパスをチャレンジするか。前述のようにカウンターを受けるリスクをコントロールしていると思うんですが、これから後半戦、どんどん成績を上げていくためには、「伸びしろ」として刺すパスをチャレンジする頻度を上げて欲しいと思います。
最後に、「サスパス不全症候群なんて言わせるな!!」を応援メッセージとして終わります。ここまで、お読みいただきありがとうございました。