前半はラグさんの記事 体力と揺り籠 2021年J1リーグ第19節 サンフレッチェ広島戦ミニレビュー #grampus #sanfrecce を観ていただくとして、後半に絞った記事を。短いです。
後半はなぜサンフレッチェ広島の一方的な展開になったのか
前半のグランパスがいやらしかったのは、サンフレッチェボールになったときに守備への切り替えがはやかったことだ。
相手ボールになった途端に、齋藤学・柿谷曜一朗・相馬勇紀が全力で自陣に戻り、この中の1人がボールに近い処にいれば必ずボールホルダーへのアタックをしていたところだ。
これによって、4-4-2の守備陣形をキープする
マテウスの守備が前残りしていることが多く、これは攻守の切り替えの速さと守備力の高い齋藤学を東俊希の抑えにしていたものと思われる。(攻撃時はマテウスがサイドに張る)
おや、と思ったのが後半開始直後の46分~47分のプレー。前半だったら全力で守備に切り替える齋藤学・柿谷曜一朗の出足が遅い。
47:30、相馬勇紀のサイドはプレッシャーがキツイので守れているが徐々にグランパスの右サイドから攻められることが多くなる。
その比較的守備強度の高い相馬勇紀がミスを犯して相手ボールにしてしまったところでおそらく交代を決断したのだろう。
守備への切り替えが遅くなれば、それはいつもの守り方ができなくなるということ。
サンフレッチェはここでグランパスのゴール前で左右にボールを振り始める。そうすると52分のシーンのように、グランパスのピンチを招いてしまう。
そこで阿部浩之と前田直輝である。
阿部浩之の役割
この時点で、前からプレッシャーをかけてサンフレッチェの攻撃の組み立てを阻害するという狙いは捨てた。
阿部浩之が今季使われていないのは、あのポジションで休みなく前線からプレッシャーをかけ続けて欲しいというフィッカデンティの狙いがあるからだろう。
だが中2日でコンディションが悪い中ではそれは無理、という割り切りがあったものだと思われる。
阿部浩之は無理にボールにプレッシャーにいったり、カウンターで突っ込んで全体を間延びさせるということはない。それらのプレーは齋藤学のスピードで戻れるという能力あってのプレーだからだ。阿部浩之のスピードではそういったプレーは効果的ではない。
フィッカデンティ監督は会見で以下のように述べている。引用元:https://inside.nagoya-grampus.jp/inside/detail/index.php?sid=2000&cid=102
「広島は日数的に(試合間隔が)我々より1日多かったです。我々が大分で試合をする前日に行われた湘南(ベルマーレ)戦のメンバーを見ると、たぶん我々との試合ではメンバーを代えてくるだろうという起用でした。試合展開というのは、先ほどの総括でも話しましたが、後半は少し押し込まれる展開になるだろうなと。やはり体力面で我々のペースが落ちるだろうと予想したゲームのプランでした。後半、体力が落ちてきたところで、こちらもただ選手を代えるのではなく、相手のやり方によってどうぶつけるかという交代となりました。阿部(浩之)に関しては気の利いたプレーができますし、回収したボールを相手にまた与えてしまうのではなく、うまくボールを溜めて味方のチャンスを作ることができます。前田(直輝)と山﨑(凌吾)は攻撃的な選手が疲れてきた中でフレッシュな選手に代えていきたいという狙いがあり、しっかりと攻めるという意味で、前線でスピードや体の強さを生かしてくれました。長澤(和輝)に関しては逆に相手の攻撃パターンをしっかりと封じるため、まず短いパスはしっかりと潰すようにと。彼はそういうディフェンスの面でいい特長を持っています。彼はどちらかというと守備をプラスするために投入しました。」
阿部浩之はグランパスの守備時、相手陣内ではあまり強いプレッシャーにいかずにスペースを埋める動きをしていた。そしてフリーになってパスの出しどころになるようにしようとしていた。
相手に押し込まれているときになにがキツイかというと、「せっかくボールを奪ってもパスの出しどころなくまた奪われて無限に攻め続けられる」ことだ。
古いグランパスファミリーならば2016年降格してしまった年のプレーを思い出してくれればわかるだろう。
実は2021年のグランパスは、下手にボールを保持するよりも思い切り大きく蹴り出して、相手陣内まで戻してしまうというプレー(非保持)を選択することが多い。しかしこの日のサンフレッチェ相手にそのプレーはマズい、という判断だろう。このコンディションでは守り切れない、と。
そこで阿部浩之にボールの収めどころになってもらうという選択肢になったのだと思われる。
そんなプレーができるのはグランパスでは阿部浩之しかいない。
トップ下の選択肢と特徴
現在のグランパスのトップ下に起用される選手の特徴をまとめよう。
- 柿谷曜一朗:献身的な動きができ、運動量は豊富だが、守備はそれほどうまくない。キープ力もある。シュートはなかなか決まらないが攻撃よりの選手。
- シャビエル:スピードがあり、シュートも上手い。クロスも種類は少ないが狙いは正確。キープ力もある。ボールを低い位置から運ぶことが上手い。守備はまったく得意ではない。
- 阿部浩之:テクニックがあり、スペースを使うのが上手い。キープ力もある。決定的なパスを出せる。ミドルシュートも得意。守備はそれほどうまくない。
- 齋藤学:献身的な動きができ、運動量も豊富。スピードがあり、FWとしての守備もしっかりできる。シュートは膝をやってしまっているせいか、あまり強いシュートが蹴れない。本来自分で決める人なので、パスはそれほどうまくない。
- 前田直輝:運動量とスピード、相手を抜くプレーは得意。シュートも上手い。パスは独特のセンスを持っているので、相手と通じ合っていれば良いが通らないことも多い。自分で決めるFW。
現状、グランパスのトップ下には前線からの守備と攻守の切り替えの速さ、クリアボールを収める(キープ力)というのが一番重視されているように思える。そうなると優先されるのは柿谷曜一朗と齋藤学になりそうだ。
押し込まれ続けた後半
サンフレッチェとの試合での後半、ずっと押し込まれ続けた。
グランパスとしては押し込まれる中でカウンターを狙っていたようで、実際カウンターでいくつもチャンスを作っていた。そこはフィッカデンティ監督の狙い通り。
長澤和輝を入れるという選択をしたが、木本恭生を入れなかったのはなぜだろうか。それはサンフレッチェが空中戦を挑んでこなかったからだと思われる。
とはいえアディショナルタイムのピンチを含めて、かなり危険だったシーンは多かった。
中2日の試合はこれからも何度もある。押し込まれた中で根性を見せる以外の守り方はなにか模索できないだろうか。