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仙頭啓矢はどんな選手なのか #grampus

サガン鳥栖からやってきた5人目の選手:仙頭啓矢(せんとう・けいや)

2019年の吉田豊、2020年の金崎夢生、2021年の森下龍矢、そしてこのオフの酒井宣福に引き続き、サガン鳥栖から5人目の獲得となった仙頭啓矢選手。

  • 生年月日 1994年12月29日
  • 出身地 大阪府
  • 身長/体重 170cm/63kg
  • ポジション MF
  • 利き足 右

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仙頭啓矢選手のプロフィール

仙頭啓矢選手は大阪生まれ。小学生のときにはガンバ大阪門真ジュニアでプレーもしていた。中学時代のクラブチームでのプレーが認められ、女子校から共学への転換を行い、スポーツでアピールをしようとしていた京都橘高校にスカウトされる。

3年時の2012年度第91回全国高等学校サッカー選手権大会に出場。同大会で準優勝の成績を収め、1学年後輩の小屋松知哉(2014年にグランパス入団)と共に5得点で大会得点王も獲得した。

高校卒業後は東洋大学に進学。3年時(2015年)は関東大学サッカーリーグ戦2部でベスト11に選ばれ、チームを総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントでベスト8に押し上げた。4年時(2016年)も関東大学リーグ2部でベスト11に選ばれ、チームの1部昇格に貢献した。

2017年より京都サンガF.C.に入団。ちょうどグランパスの降格に伴い、小屋松知哉が入団したところで、「京都橘コンビ復活」と騒がれた。

2019年5月に開催されたJ2リーグ戦5試合で3得点2アシストを記録、チームの躍進に貢献したとして5月度のJ2月間MVPを受賞したことを評価され、2020年、横浜F・マリノスに完全移籍で加入、自身初のJ1挑戦となったがちょうどCOVID-19の流行がはじまったこともあり、チームに馴染めないまま出場機会はリーグ戦3試合に留まった。同年9月26日、期限付き移籍により京都に出戻ることになる。

2021年、サガン鳥栖へ完全移籍。またも1年速くサガン鳥栖に移籍していた小屋松知哉とコンビを組むことになる。前年度の成績から躍進、チームは7位でリーグを終えることとなり、自身も38試合全試合に出場することになった。シャビエルの退団、阿部浩之の怪我でゲームを作ることができる選手を欠いたグランパスからのオファーを受け、2022年から名古屋グランパスに加入する。

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仙頭啓矢選手の素顔

高校選手権のスター、大学でも表彰を受け、プロ入りしている選手なんだからさぞや強気の選手なのでは、と思っていたが、その人となりをひもといていくと意外な一面が見れた。

「楽しめ!」
挫折というか、選抜とかセレクションとか落ちまくっていた落ちまくっていたタイプなので、成功体験というのがなかった。
試合にでれなかったときとか、自分と同い年のやつがどんどん活躍しているのに結果を残せないときとか、葛藤もありました。
それでもサッカーを純粋に楽しんでいました。
サッカーに限らず、毎日楽しくないなって、嫌やな、て思いながら仕事していても、絶対自分が損をするというか。
辛いことがあっても前向きにやるということが大事なんじゃないかな。
サッカーを楽しむということを忘れずに心がけて、やっています。

Jの言葉 https://twitter.com/J_League/status/937868094134816769?s=20

「成功体験というのがなかった」という下りに違和感を覚えた。実際同じ京都橘出身のお馴染み小屋松知哉はどちらかというと強気のキャラクターだっただけに尚更だ。

しかし考えてみると、キャリアのなかでタイトルというのを取っていないのだ。高校選手権も準優勝、大学4年のときの昇格も2位。タイトルを獲っていないということが彼に取っての負い目になったのではないだろうか。

それを裏付けるようなインタビューがあった。

――決勝戦は仙頭選手にとって、いい思い出ですか? それとも、嫌な思い出ですか?
仙頭 もう最悪ですね(苦笑)。申し訳ないという気持ちが一番あります。橘は高校でサッカーを辞める選手も多いので、優勝という形で終わりたかったですし、両チーム合わせてPKを外したのは僕だけなので、当時は「本当にごめん」という気持ちしかなかったです。

引用元:「決勝は最悪の思い出」…第91回選手権得点王の東洋大MF仙頭啓矢「プロになって活躍することが恩返し」 | サッカーキング

同じインタビューでは、選手権京都府予選を勝ち抜けたときの成功体験も語っている。

――最後の年の選手権を予選から振り返っていただけますか?
仙頭 全国に出る最後のチャンスだったので、全部の試合が苦しかったですけど、特に決勝は強豪の東山高校が相手だったので、本当にどうなるかわからない試合でした。雨が降っている中、前半はポンポン点が入って3-0で折り返したんですけど、後半開始5分で2点返されてしまったんです。そこからは防戦一方で、危ないシーンもたくさんありましたけど、何とか守って3-2で勝った瞬間は、人生で一番と言ってもいいくらいうれしかったです。その時、初めてうれし泣きをしたんですけど、疲労が全部飛んで、今までのキツかった練習は全部この瞬間のためにあったのかなと思いましたし、「うれし泣きってこんなに素晴らしいんや」と感じました。

引用元:「決勝は最悪の思い出」…第91回選手権得点王の東洋大MF仙頭啓矢「プロになって活躍することが恩返し」 | サッカーキング

人間は成功体験を重ねることで、少しずつ成長していく。予選を勝ち抜いたことは十分に成功体験として仙頭啓矢の中に積み重ねられているだろう。しかし、終わりよければすべてよし、とも言うが、最後の最後で自身がPKを外してしまったことが心残りだったようだ。

大阪人のステレオタイプな見方では、陽気で楽しそう、という評価をされることが多いが、仙頭啓矢は真面目で責任感の強い選手なのでは、と感じた。

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仙頭啓矢選手のプレーの特徴

高校時代から仙頭啓矢のプレーを追い続けていたエル・ゴラッソ京都サンガ番の雨堤俊祐さん @suque3によると、京都橘時代の仙頭啓矢は最初攻撃的ポジションをいろいろサイドを含めてプレーをしていたが、高校3年時に小屋松知哉とコンビを組んだ際に仙頭啓矢がパスを出して小屋松知哉がゴールをする、という形を練り上げ、FWとしてのプレーが多かったのだという。

プロ入り後は2017年はFWとしてのプレーもあったが、チーム事情でセントラルMF(ボランチ)に挑戦することが多かったが、そこで壁にぶち当たった。

「主力2人が負傷離脱したボランチでの出場が続く中で守備面の課題が露呈してきた。同時期にチームは戦い方をツインタワーを前線に配置するキック&ラッシュへ変更。中盤の選手に求められる役割は上手さよりも運動量や強さが優先されるようになり、仙頭は出場機会を失っていく。夏には「今は運動量や切り替え、球際で戦うことを求められています」と克服すべきポイントを話していた。」

引用元: 【ライターコラムfrom京都】仙頭啓矢、プロ1年目で感じた課題と手応え…目指すはチームを“勝たせられる”選手 | サッカーキング ※前述の雨堤さんのコラム

FWからセントラルMFへの転換というのは徐々に定着してくるようになっていた。

しかし2018年途中からはまたもチーム事情で左ウィングバックを務めることに。しかしこんなプレーを魅せている。

左サイドハーフライン付近から、相手DFラインと勝負するスピードのある小屋松知哉を一発で抜けださせる素晴らしいパスを魅せた。(背番号14が仙頭啓矢選手)

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サガン鳥栖での変化

京都サンガ時代もセントラルMFでの出場が多かったが、サガン鳥栖で4-3-3のインサイドハーフ(逆三角形の上辺のポジション)を務めることが多くなっていた。そのなかでの変化をサッカーダイジェストのインタビューでこう語っている。

僕はこのチームに来てからボランチというポジションをやっていますが、そのなかでもバイタルエリアは攻守両面において重要な場所という認識です。攻撃においてはそこから得点をどう演出するかという面白いエリアでありますし、逆にそこでボールを失ってしまうと、カウンターを食らうなど守備においてもリスクのある場所です。そこをどうやってバランスを取りながら攻略していくか、すごく考えますし、バイタルエリアでどうスペースをつくり出すかということが、現代サッカーでの重要なテーマになっています。)
ピッチ全体を後ろから見上げていく中で、最終的にこのエリアを攻略する方法をイメージしながらプレーするのは、すごく面白い。バイタルエリアでボールを受けた選手はいろいろアイデアが必要だし、そこでボールを受けた時がサッカーにおいて一番の腕の見せ所だったり、ボールを持っている選手の面白さ。バイタルエリアという場所はサッカーにおいて非常に重要かつサッカーの魅力がいっぱい詰まっているところですね。

【バイタルエリアの仕事人】Vol.8 仙頭啓矢|好調鳥栖を牽引! 生粋のアタッカーがボランチ転向で見えた景色 | サッカーダイジェストWeb

京都橘から大学時代までは、最前線で決定的なパスを出す、というグランパスファミリー的に言えばピクシー的な役割を果たすことが多かった選手だったが、インタビューにもあるように、ピッチ全体を俯瞰して、相手チームを攻略する役割を果たすことが多くなってきたわけだ。京都サンガでのポジションの放浪を経て、サガン鳥栖でいまのスタイルを確立した。

意外なところでは、同じインタビューでこのようにも語っていることだ。

僕自身、個人的に身体能力がすごく高かったり、足が速かったりするわけではないので、相手より早く良いポジションをとって、その優位性を意識しているので、そういう面では自分にも合っているサッカーだなと思います。

【バイタルエリアの仕事人】Vol.8 仙頭啓矢|好調鳥栖を牽引! 生粋のアタッカーがボランチ転向で見えた景色 | サッカーダイジェストWeb

サッカー脳の高さで自分を活かし、プロで活躍してきた、と言うことだろう。

名古屋グランパスにはパワーとテクニックのマテウスしかり、スピードの相馬勇紀、ドリブルの前田直輝、ハードな守備の米本拓司といった、一芸に秀でたタイプの選手が多い。しかしそれを「使う側の選手」が圧倒的に足りなかった。使う側として柿谷曜一朗を想像するひともいると思うが、本来彼も使われる側の選手で、攻撃だけに専念できた2013年には21ゴールを挙げていたことを忘れてはいけない。田口泰士の退団以来、グランパスにはほとんどいなかった、まさに待望の「使う側の選手」と言えるだろう。

仙頭啓矢選手の2021年のプレイングスタイル指標
仙頭啓矢選手の2021年のプレイングスタイル指標

引用元: 仙頭啓矢 2021 選手データ | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB

グランパスで予想される役割

このパスに象徴されるように、広い視野から繰り出される長短のパスが仙頭啓矢の魅力だ。それをどこで活かすのか。

1.インサイドハーフ

インサイドハーフ
インサイドハーフ

2021年のサガン鳥栖で負っていた役割とほぼ同じ役割となる。長谷川健太監督は4-3-3も使用する監督なので、ありえない話ではない。確実に仙頭啓矢の実力を発揮させることができる役割になる。問題は木本恭生を失ったグランパスで、4-3-3をやれる中盤のメンバーがいるかどうかだ。

2.トップ下

トップ下
トップ下

長谷川健太監督がFC東京時代、同じく長短のパスを繰り出す特徴を持つ「高萩洋次郎」を起用することが多かったのがこのトップ下だ。前線で決定的な仕事をできる選手は貴重で、こういった使い方をする可能性も十分にある。ただし2021年のグランパスではこのポジションは柿谷曜一朗が務めているポジションということもあり、その使い分けが懸念材料になる。

3.セントラルMF(ボランチ)

セントラルMF(ボランチ)
セントラルMF(ボランチ)

木本恭生を失い、米本拓司の怪我も心配な現在、手薄な中盤をどう編成するのかが不透明な状況だ。稲垣祥とコンビを組むことも予想できる。木本恭生に比べて攻撃面ではアップするかもしれないが、守備面では劣るところが懸念材料になる。

4.サイドハーフ

サイドハーフ
サイドハーフ

グランパスで実は層が薄くなったのがサイドハーフ。前田直輝がいなくなったためだ。マテウス・相馬勇紀・森下龍矢の3人がいれば問題ない、と常識的には考えられるが、現代サッカーではゲームメーカーをサイドに置くことも多く、ここに置く可能性も微粒子レベルにはあり得ると思われる。

仙頭啓矢がフィットできるかどうかが2022年のグランパスの成績を左右する

グランパスでは最近あまりいなかった選手なだけに、仙頭啓矢の役割をチームが受け入れられるかどうか、ということには一抹の不安は残る。ただ、彼のような選手が輝かせることができれば、2022年のグランパスが悲願の2回目のJリーグタイトルを手にすることも夢ではないはずだ。

グランパスファミリーは、ストイコビッチやマテウスのような超人のような選手ばかり見てきた。それに比べると身体能力が抜群なわけでも、脚が速いわけでもない、そういった選手を見て不満に思う人も出てくるかもしれない。しかし、仙頭啓矢の命は、そのサッカー脳の高さと視野の広さ。その頭の良さを是非堪能して欲しいし、フィットするまで気長に応援して欲しい。

この記事の作成にあたり、助言頂いた雨堤俊祐さん、ありがとうございました。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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