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なぜ #名古屋グランパス は最終節を #豊田スタジアム で迎えることができないのか? #grampus

この記事の発表後、2023年3月3日16時に代替会場が「岐阜メモリアルセンター長良川陸上競技場」と発表されました。リリースにあったようにシーズンチケットの問題など、いろいろと難しい部分があると思いますが、その裏の事情を推測するための参考としてこの記事はお読みください

今年の日程が発表されたとき、日程のなかで3つもスタジアム未定が表示されていて、疑問に思った方も多かったと思います。

なかでも8月5日はまだ発表されていませんがラグビーのキリンカップ的な「リポビタンDチャレンジカップ2023パシフィックネーションズシリーズ 日本代表 vs フィジー代表」の会場になることが濃厚と言われています。

残る2つはこれ。

10月末~12月の日程
10月末~12月の日程

10月28日 or 29日のサガン鳥栖戦と柏レイソル戦です。

そこに大きなニュースが飛び込んできました。

WRCの最終戦「ラリージャパン」は11月16~19日に愛知、岐阜両県で開催されますが、そのスペシャルステージを豊田スタジアムで開催しようという動きが出てきたのです。

当初予定では豊田スタジアム近くの矢作川で開催される予定だったものを方針転換したということです。

日程発表の時点で「未定」となっていたということは、この話は早期に出てきていたことは間違いありません。報道されたのがたまたま2023年3月2日だっただけと考えられます。

シーズン終盤のホーム2試合が豊田スタジアムで開催できないことは、優勝争いや残留争いになっていた場合に大きなダメージとなります。

WRCと試合のスケジュール
WRCと試合のスケジュール

WRCで使われるとどんな風になるの?

ラリープラスさんの記事で、昨年のギリシャ大会でスタジアムに用意されたスペシャルステージの様子を紹介してくれています。

画像引用元: WRCアクロポリス:オリンピック・スタジアムのスーパーSSは6万4500人を動員
画像引用元: WRCアクロポリス:オリンピック・スタジアムのスーパーSSは6万4500人を動員

日本でもだいたい同じような形になるのではないでしょうか?

これだけの設営となると1ヶ月以上かかることは致し方なく、9月25日以降は豊田スタジアムを使えなくなるのは仕方ないことなのかもしれません。

芝を剥がしちゃったら、来年の開幕までに芝は元に戻せるの?

豊田スタジアムの芝は敷きっぱなしではありません。定期的に張り替えを行っているそうです。

ビッグロール工法とは

ビッグロールカッター(幅78㎝)で切り取った芝を巻き取り、ロール芝を作成。専用の機械(レーイングマシン)にてロール芝を敷設。均一厚な仕上がりで丈夫な芝生グラウンドを創造する工法です。
※敷設後、約3週間から1か月)で競技に使用できます。(施工時期、施工後の養生により使用できるまでの期間は変わります。

https://www.yahagi-green.co.jp/sports-turf/construction/
画像引用元: ヤハギ緑化株式会社: スポーツターフ事業天然芝グラウンド
画像引用元: ヤハギ緑化株式会社: スポーツターフ事業天然芝グラウン

豊田スタジアムの芝生を担当しているヤハギ緑化株式会社さんによると、上記のようにだいたい3週間から1ヶ月で使えるようになるそうです。

ラリージャパンの終了が11月19日、そこから最短の3週間でも間違いなく最終節には間に合いません。ただし、来年2024年の開幕に間に合わないということはありません

なぜグランパスを優先して貰えないの?

タイムラインを見ていると、これだけグランパスが豊田スタジアムを使っているのに、どうして重要なシーズン終盤の試合で使わせて貰えないの?という声が目立ちます。

簡単に言うと、豊田スタジアムは豊田市のもので、名古屋グランパスのものではないからです。

自前のスタジアムを持っているチームは?

自分たちでスタジアムの管理を自由にできる、自社(グループ内で)所有のスタジアムは柏レイソルの日立台と、ジュビロ磐田のヤマハスタジアム磐田だけです。

自前のスタジアムを持っていれば今回のようなことは起こりませんが、その代わり固定資産税も掛かりますし、スタジアムを維持管理する責任を負うことになります。日立台も建て替えた場合は厳しいスタジアム基準を満たさなければならない(たとえば「新設及び大規模改修を行うスタジアムについては、原則として屋根はすべての観客席を覆うことを満たすこと」が求められる)ため、小規模な修繕しかできていません。

第2の道:指定管理者になる

指定管理者制度は公の施設の管理を市が指定した者に代行させる制度です。

鹿島アントラーズの事例:引用元:スポーツ分野における民間資金・先端技術 の活用推進と先進事例の横展開等:スポーツ庁
鹿島アントラーズの事例:引用元:スポーツ分野における民間資金・先端技術 の活用推進と先進事例の横展開等:スポーツ庁

鹿島アントラーズの事例に書かれている通り、「地方自治体は、指定管理者に施設を維持・管理運営させる代わりに、施設運営で発生した収入を指定管理者の利益としてOK」とする仕組みです。

見逃せないのは「施設運営で発生した収入」とは入場料収入だけではなく、飲食物販収入、そして試合日以外の施設利用に関する収入も指定管理者の利益となることです。不勉強で、鹿島アントラーズがフィットネスやスキンケア事業をカシマサッカースタジアムで行っているとは知りませんでした。

試合会場となるスタジアムがクラブのものでない場合、入場料収入以外の飲食物販収入などは原則としてスタジアム運営者の収入となります。(もちろんグランパスへの配分もあると思いますが)

1年間でJリーグのホーム開催利用日は多くても21日です。試合日以外でもスタジアムを貸出したりイベントを開催する事でさらに収入を増やすことができます(たとえばパナソニックスタジアム吹田の指定管理者であるガンバ大阪は昨シーズン終盤戦に藤井風のライブにスタジアムを貸していました)。

※ちなみにライブに貸して得られる費用は俗にサッカーの試合運営単価の10倍以上とも言われています。

Jリーグではガンバ大阪・鹿島アントラーズ以外に浦和レッズなど、指定管理者となっているチームがいくつもあります。サンフレッチェ広島も新スタジアムでは指定管理者となるようです。

なんでグランパスは指定管理者になれないの?

豊田スタジアムの指定管理者は、「株式会社豊田スタジアム」です。この会社はトヨタ自動車や名古屋グランパスも出資していますが、あくまでもごく一部です。

株式会社豊田スタジアムの出資者一覧
株式会社豊田スタジアムの出資者一覧

出資者一覧 │ TOYOTA STADIUM │ 豊田スタジアム

そのため、豊田スタジアムは名古屋グランパスなどにスタジアムを貸して利用料金を得るかわりに、施設の維持管理を行う必要があります。おりしも可動屋根の改修を行ったばかりで、その費用の償却も行わなければなりません。

指定管理者であるからには「自力でこのスタジアムを黒字化させなければならない」というミッションを負います

現在のところ株式会社豊田スタジアムは黒字のようですが、それを維持していくのは簡単なことではありません。

画像引用元: 株式会社豊田スタジアム 第22期決算公告

グランパスが指定管理者になれないわけ

豊田スタジアムを維持管理する「その役割、グランパスが引き受けますよ!」と言えたなら良いのですが、そうなれないわけがあります。それは聖地瑞穗の存在です。

ただでさえ21試合しか保証されない試合を2026年(本格的にはアジア大会が終わった2027年)からは21試合を分け合わなければなりません。

そうなると、豊田スタジアムだけに集中することはできなくなります。

たしかに瑞穗の工事をしている間は豊田スタジアムに頼り切りなのは確かですが、それ以降はそうではありません。

「26年までは頼りにしてるけど、それ以降は知らん」なんて自分だけに都合が良い態度を取られても豊田市は困ってしまうでしょう。

かといって、新瑞穗スタジアムの維持に、名古屋グランパスをあてにしていないはずがありません。

原則的にほぼ半分ずつ分け合うことになるはずです。そうなるとグランパス単体で豊田スタジアムを抱えることはできなくなります。

そうなると豊田スタジアムは自前で収入を得られるための、グランパス以外のコンテンツを探すことになります。

今回のWRC SS開催も、その一環として考えられたものでしょう。

ちゃんと養っていく責任を取れない以上、今回のようなことが起きることも受け容れるしかないのでは、とグラぽは考えます。

ではどこで開催することになるの?

天災などの理由で、当初予定していたスタジアムとは違うスタジアムで開催されることはあり得ます。しかし今回はスタジアムの都合によるものです。

2023明治安田生命J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項

2023明治安田生命J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項第1条1項
2023明治安田生命J1・J2・J3リーグ戦試合実施要項第1条1項

そのため、名古屋グランパスは自前でなんとかスタジアムを確保する必要があります。

その時に気をつけなければならないのが、J1基準のスタジアムを借りるということです。

J1の試合を開催するにはJリーグスタジアム基準を満たしたスタジアムであることが必要になります。

Jリーグスタジアム基準 [2023年度用]

おそらくはJ1の試合を開催した実績のあるスタジアムであることが求められるでしょう。

特に気をつけなければならないのは以下の点です。

  • 座席数15000(芝生席を除く)
  • 照明
  • VARのカメラが用意されていること(もしくは取り付けることができること)
  • 車椅子席・VIP席・マッチコミッショナー席・記者席を規定数設けられること

候補1:パロマ瑞穗ラグビー場

かつてはJ1リーグの試合を何回か開催した実績がありますが、それも2007年が最後です。

  • 座席数15000:◎J1基準クリア →×座席は10900 のこりは芝生席でJ1基準クリアせず
  • 大型映像装置:◎あり(2014年に入れ替え済み)
  • 照明:×基準をクリアせず
  • VIP席・記者席など:◎あり
  • VAR設備:×おそらくなし

2022年に天皇杯の同志社大学戦を実施しましたが、天皇杯なので照明の基準を満たしていなくても開催可能でした。

VARの設備は足りていないと思われます。

指定管理者は2023年4月1日から株式会社瑞穂LOOP-PFIという会社(2021年発足の特定目的会社)が引き継ぐことになっており、もしスタジアムを借りるとしたらこの会社との交渉になります。

設備を指定管理者がこの2試合のために整備するとは思えず、VARカメラを追加するとしたらレンタルなどで対処することが可能ならそれで対処、設備投資が必要なら名古屋グランパスが費用負担をすることになりそうです。

デヨデヨさん、音無き鯱さん、キノさん、サイドスタンドの状況を教えていただきありがとうございます!

候補2:CSアセット港サッカー場

2022年にルヴァンカッププレーオフステージ京都サンガ戦を行ったことがあるCSアセット港サッカー場は、J1リーグ戦は1994年で使われたのが最後で、29年間使われていません。

理由としては住宅地と隣接しているため、応援などの騒音が問題になるからです。

  • 座席数6700(芝生席13300相当):×J1基準クリアせず
  • 大型映像装置:△文字のみ対応
  • 照明:×基準をクリアせず
  • VIP席・記者席など:△あるが数が不足
  • VAR設備:×おそらくなし

指定管理者は名古屋市教育スポーツ協会です。

ネックはあおなみ線しかないアクセスと座席数の少なさ、騒音問題にVAR設備がないことと盛りだくさんです。

候補3:静岡県小笠山総合運動公園スタジアム:エコパ

第1種公認の陸上競技場です。陸上競技の大会のほか、ラグビーとサッカーのジュビロ磐田の準ホームとして使われています。陸上競技場であることは残念ですが、スタジアムそのものは豊田スタジアムとほぼ同期生で問題はありません。

  • 座席数50889:◎J1基準クリア
  • 大型映像装置:◎2基あり
  • 照明:◎
  • VIP席・記者席など:◎
  • VAR設備:◎?:少なくとも2022年基準までは満たす

エコパに関する問題があるとすれば、アクセスです。

エコパへのアクセス(14時キックオフに40分前に到着することを想定した場合)
エコパへのアクセス(14時キックオフに40分前に到着することを想定した場合)

新幹線を使用すればもう少し早くなりますが仮に14時キックオフで試合開始40分前に着こうとすると、10:46に名古屋駅を出ることになります。実に2時間半の片道です。これは厳しいですよね。

2310円というのも問題です。

候補4:岐阜メモリアルセンター長良川陸上競技場

FC岐阜の本拠で、かつて名古屋グランパスも2001年までホームゲームを開催したことのあるスタジアムです。

  • 座席数16300(芝生席9809相当):◎J1基準クリア
  • 大型映像装置:◎あり
  • 照明:◎
  • VIP席・記者席など:◎
  • VAR設備:×おそらくなし

VAR設備以外はまったく申し分ありません。

アクセスもエコパとは比べものになりません。

長良川へのアクセス(14時キックオフに40分前に到着することを想定した場合)
長良川へのアクセス(14時キックオフに40分前に到着することを想定した場合)

仮に14時キックオフで試合開始40分前に着こうとすると、12:15の電車に乗れば1時間も掛からず到着できます。名古屋市内でも場所によっては豊田スタジアムより近いのがメリットです。

問題は瑞穗ラグビー場同様のVAR設備と、もう1つ、日程です。

実は最終節の試合前日、FC岐阜のホーム最終戦が予定されていることです。2日連続の開催というのは芝のコンディション的に心配なところです。

候補5:国立競技場

ラグビーが豊田スタジアムを使うと予想される8月5日にグランパスが代わりに利用するのが新国立競技場です。同じくスタジアム都合で利用できないとはいえ、かなりネガティブな意見が散見されました。

  • 座席数68000:◎J1基準クリア
  • 大型映像装置:◎あり
  • 照明:◎
  • VIP席・記者席など:◎
  • VAR設備:◎

問題は名古屋からのアクセスです。シーズンチケットを持っている人が全員東京まで来られるわけはありません。リセールに出して買い手がついたとしても豊田スタジアム開催なら見れたはずなのに、というモヤモヤは残るでしょう。

スケジュールはガラガラのようなので、あくまで最後の手段ということになると思います。

グラぽの予想は・・・

上記を考え合わせると、

本命:パロマ瑞穗ラグビー場岐阜メモリアルセンター長良川陸上競技場

対抗:岐阜メモリアルセンター長良川陸上競技場席数たりないけどパロマ瑞穗ラグビー場

大穴:エコパ

と考えます。

16000席数があるので、長良川陸上競技場ならなんとかそれなりの人数が観戦できそうです。ただ日程の問題があるので、FC岐阜が首を縦に振るかどうか。

パロマ瑞穗ラグビー場の場合交渉の本番は前述の通り、4月1日に指定管理者が交代した後になると思われます。

グランパスの財政状態はいまだそれほど盤石ではないと思われるので、VAR設備を常設する必要なく、レンタルで済ませることができることを祈っています。

ただし、どちらも座席数は11000~16000、シーズンチケットが何枚売れているかわかりませんが、その方を優先した場合には一般発売枠は極めて少なくなるでしょう。ひょっとしたらシーズンチケットを持っていても観戦できなくなる人が出てくるかもしれません

いずれにしても、誰も犠牲にならずに解決できる問題ではなさそうです。

それでもなんだかモヤモヤする方へ

2026年、新パロマ瑞穂スタジアムが落成するまでは、同じようなことは何度も起きることになるでしょう。しかし我慢するしかないと思います。

こういうモヤモヤを感じないで済むようにするには、自前でサッカースタジアムを持つしかありません

それが可能になるのは、名古屋グランパスがスーパービッグクラブに成長したときです。そうすればスタジアムの運営もなにもかも名古屋グランパス優先でできるようになるでしょう。

そうなるように、グランパスをみんなで一緒に盛り上げていきましょう。

About The Author

グラぽ編集長
大手コンピューターメーカーの人事部で人財育成に携わり、スピンアウト後は動態解析などの測定技術系やWebサイト構築などを主として担当する。またかつての縁で通信会社やWebメディアなどで講師として登壇することもあり。
名古屋グランパスとはJリーグ開幕前のナビスコカップからの縁。サッカーは地元市民リーグ、フットサルは地元チームで25年ほどプレーをしている。

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