2023年にもご寄稿いただいたさかりーにょさん
プレーヤーとしては大学サッカー日本一を経験され、その後海外でプロサッカー選手としても活躍。JFAライセンスB級を持つ指導者でもあり、分析官としてのキャリアを目指してAlliance of European Football Coaches’ Associationの研修も修了し、日々アウトプットの日々を過ごされています。そんな方にご寄稿いただきました。
今期はセレッソ大阪に軸を据えて分析を行われております。
合わせてお読み下さい!
本編
8節終了時点で無敗の首位セレッソ大阪を迎え撃つ名古屋グランパス。序盤圧倒される苦しい内容でありながらも勝利を掴み取った名古屋グランパス。試合中に長谷川健太監督が選手交代やシステム変更などのテコ入れをしていましたが、その詳しい内容と意図を知りたいのですが・・・
どうもさかりーにょです。確かに長谷川健太監督の采配は勝負師モウリーニョ監督を彷彿とさせるものでしたね。今回は、そんな長谷川健太監督の「ゲーム修正力」に焦点を当ててその采配の意図や効果を2024 J1第9節名古屋グランパス VS セレッソ大阪の試合を基に分析していきましょう!
本記事の信頼性
- 年間平均200試合以上を分析しながらオリジナルのさかりーにょ分析メソッド開発
- JFA公認指導者ライセンスB級
- CAF(アフリカ大陸サッカー指導者) C級
- JFAフィジカルフィットネスC級
- IFCO公認サッカー戦術アナリストベーシックコース修了
- AEFCA公認マッチアナリストコース修了
- 元海外プロサッカー選手&指導者
2024 J1第9節 名古屋グランパスVS セレッソ大阪
スタメン
名古屋グランパス長谷川健太監督が修正した3つの課題とは?
課題①:左サイドの数的劣位&ネガトラ時に突かれるWB背後のスペース問題
1つ目の問題は吉田温紀選手の左サイドを攻略され続けていたことだ。ここまで攻略された原因は大きく以下の3つだ。
- 問題①:ルーカス選手が吉田温紀にジャンプしてプレスをしたこと
- 問題②:名古屋グランパスがボールを失った際にWBの背後に大きなスペースを与えてしまうこと
- 問題③:セレッソ大阪のWG・IH・SBで形成されるサイドアタックに対して数的劣位であったこと
詳しく分析していく。
問題①:ルーカス選手が吉田温紀にジャンプしてプレスをしたこと
セレッソ大阪のWGルーカス選手はランゲラックからCBに対して出されるパスに対して猛烈なプレスを実行。
もともと右利きということもあり吉田温紀はオープンでボールを持ちたがらないために幾度となくこのプレスからボールをロストした。その後もルーカス選手と入れ替わる、逆を取られるシーンが幾度となく散見され、デュエルの相手としてシンプルに相性が悪い相手でもあった。
問題②:名古屋グランパスがボールを失った際にWBの背後に大きなスペースを与えてしまうこと
名古屋グランパスは守備時に5-4-1で攻撃時に3-4-2-1にシフトする。この立ち位置を変更している間にボールを奪われたときに両サイドの背後に大きなスぺ―スをセレッソ大阪に与えてしまうのだ。
セレッソ大阪のWG、IHにこの空いたスペースを利用され攻撃の起点を作られてしまっていた。
問題③:セレッソ大阪のWG・IH・SBで形成されるサイドアタックに対して数的劣位であったこと
セレッソ大阪は攻撃時にサイドを攻略するためにWG・IH・SBの3枚でトライアングルを形成する。
この3枚に対してサイドでは実は数的不利な状況が多く発生していたためにポケットや背後を取られるシーンが多く見受けられた。
この問題を解決するために長谷川健太監督はこの課題に対して前半27分に次のような「修正」を施した。
課題①に対する長谷川健太監督の修正
【前半27分修正内容】3-4-2-1から4-2-3-1ヘシステムを変更
この3つの問題を解決するために長谷川監督は吉田温紀選手に変えて河面旺成選手を投入。
この投入で左利きでオープンにボールを扱えるためにルーカスセンスのジャンププレスに対して対応することが可能になった。また、河面選手は攻撃時にオーバーラップをせずにサイドのスペースに立つことでセレッソが活用できるスペースを消すことに成功した。また、4-2-3-1にしたことで相手のサイドのトライアングルに対してSB、DM、SHが対応するという役割が明確になり、サイドの攻防で劣勢に立つ回数も減少し、結果として0-0で前半戦を終えるとこに成功した。
課題②:4-2-3-1の形ではカウンターを発揮しにくい
一方で、4-2-3-1では相手を意図的に自陣に追い込んでのカウンターを発動しにくい。そのために長谷川健太監督は再び後半開始から修正を施すのである。
【後半0分修正内容】4-2-3-1から3-4-2-1への回帰
グランパスは後半開始から再び3-4-2-1に形を戻す。しかしこの時には、守備力が山中に勝る内田を左に配置し、右には登里が偽SBとして中に入ってきたときに空いたスペースをスピードで突くために中山を起用し、後半はゲームを優位に進めることができるようになった。
課題③:同点に追いつかれて追加点を取る必要がある
名古屋は得意のセットプレーから先制したものの、すぐに同点に追いつかれてしまう。
どうしても追加点が欲しい長谷川健太監督は後半23分に再度修正を施す。
【後半23分修正内容】高さのオプション&セカンドボール回収率を上げる
後半23分にパトリックと椎橋慧也を投入し、前線に高さの選択肢を提供し、それによって生じるであろうセカンドボールの攻防に対する回収率を上げるために椎橋慧也を中盤に配置。これが見事に功を奏し、決勝点はパトリックが得たFKからパトリックが競り勝つことで産みだしたものであった。
課題④:セレッソ大阪の猛攻を凌ぎ、ゲームをクロージングする必要がある
勝ち越しに成功した名古屋グランパスはさらに攻勢を強めてくるセレッソ大阪の攻撃を断ち切り、ゲームをクロージングする必要性がある。このために長谷川健太監督は最後の修正を後半40分に施す。
【後半40分修正内容】4-4-2の3ラインで守備を固める
野上選手を投入し、再び4バックにすることで後方のスペースを消して安定をもたらした。
また、4-4-2にすることで後方でブロックを敷くだけでなく奪いに行くこともできる守備を実践し、疲労が見えてきたセレッソ大阪にとってはただゴール前にバスを止める5バックよりも効果があり、見事に逃げ切ることに成功した。
さかりーにょEYEs
試合中に問題が発生するたびに迅速に選手の入れ替えと立ち位置を修正し続けた長谷川健太監督。
それぞれの交代や修正の意図が明確かつ効果的であったことは試合をもう一度見返してもらえればお分かりいただけるのではないだろうか。
3-4-2-1、4-2-3-1、4-4-2をゲームの中で瞬時に変える決断力とそれを選手たちが即座に遂行できる実行力。事前のプランニングがどこまでなされていたのかは未知数であるがどちらも非常にレベルの高いものである。一方で、セレッソ大阪は問題点に対する修正がなされなかったことが敗戦の大きな要因になってしまったともいえるだろう。
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