名古屋グランパスは今得点力不足に喘いでいる。
下位カテゴリーとの試合を除けば、フィッカデンティ監督就任後、2019年1勝3分3敗:得点6失点10
2020年1勝:得点1失点0。8試合で7得点というのはかなり少ない。平均得点に直すと0.88となる。
昨年の成績をひもとくと、上位チームは多めだ。
- 横浜Fマリノス 総得点68 平均得点2.0
- ヴィッセル神戸 総得点61 平均得点1.79
- 川崎フロンターレ 総得点57 平均得点1.68
- ガンバ大阪、鹿島アントラーズ、北海道コンサドーレ札幌 総得点54 平均得点1.59
- FC東京 総得点46 平均得点1.35
堅守で勝ち進んだFC東京ですら平均得点は1.35ある。
では0.88はどういう値かと言うと、降格したジュビロ磐田の数字に近しい。
- 最低 松本山雅FC 総得点21 平均得点0.62<降格>
- 次点 ジュビロ磐田 総得点29 平均得点0.85<降格>
得点力不足がすべてフォワードの責任とは言わないが、責任の一翼を担うのは間違いない。昨年のFWの得点は以下の通りだ。2桁得点が1人もいなければ成績が悪いのは当たり前だ。
- 前田直輝 29試合9得点
- ジョー 32試合6得点
- ガブリエル・シャビエル 32試合3得点
- マテウス 9試合3得点
- 相馬勇紀 16試合1得点
名古屋グランパスが残留争いから脱するにはまず、得点力を向上するしかない。そのためにはFWが決めるしかない。チャンスがないわけではない。あとは決めるだけなのだ。
それでは、FW陣を紹介していきましょう。
FW
7 ジョー
- 生年月日 1987/3/20
- シーズン中の年齢 33歳
- 出身 ブラジル
- 身長 / 体重 192/91
- 紹介
2018年得点王の実績を持つ、元ブラジル代表のストライカー。長身と90kgオーバーの身体をうまく使って、DFを翻弄し、ゴールを陥れる。年俸は3億円を超えるとも噂されるが、完調であれば3億円は惜しくないと言えるだろう。
- 課題
昨年のルヴァンカップ、ヴィッセル神戸戦で大崎玲央のファールで受けた怪我から、一向に調子が上向かない。再起を期した今年のキャンプでは早々に左膝の違和感で離脱。未だに合流すら出来ていない。まずは怪我をしっかり治すこと。
また、前線での守備で素早いカウンターを狙うフィッカデンティ監督のサッカーでは、どのように自分を嵌め込んでいくのか、監督とよく話し合う必要がある。
- 期待
完調ならば、JリーグのDFでは簡単に止めることはできない。VARが介入するようになる今年からは、もっと活かされる可能性が高くなる。昨年審判運がよくなかった分の借りを返して貰うには、まずはきちんと怪我を治すことだ。
10 ガブリエル・シャビエル
- 生年月日 1993/7/15
- シーズン中の年齢 27歳
- 出身 ブラジル
- 身長 / 体重 170/68
- 紹介
魔術師と呼ばれた男は、名古屋に来て4シーズン目を迎える。本来は選手の多いウィンガーを取る予定はなかったらしいが、ブラジルでスカウトをしていた中村直志が惚れ込んで、絶対に獲得するべき、と上層部を説得して獲得したらしい。
シャビエルは単騎でゴールを陥れる選手ではなく、ボールを交換できる選手とコンビネーションで抜けだしていくことができる。単なるウィンガーではなく、ゴールを陥れることができる。
- 課題
課題は3つある。
1つめは、既に宿痾となっているハムストリングの負傷をどうにかすることだ。毎年数回、ハムストリングの負傷で離脱をしている。その度に早すぎる復帰をしているが、復帰後の試合のコンディションがよくなかったことのほうが多い。
2つめは、守備にもう少し真面目に取り組むことだ。フィッカデンティ監督のサッカーでは前線の選手は守備を期待される。どんなに攻撃が素晴らしい選手でも、監督が使わなければ成績はつかない。成績がつかなければ、良い契約は得られない。
最後は、戦術に従うことだ。風間八宏さんのサッカーでは、シャビエルは本当に自由気ままにプレーをしていた。しかしそれではフィッカデンティ監督は使わない。
- 期待
実はシャビエルはカウンター向けの選手だと思っている。現状のフィッカデンティ監督のカウンターは、本当は前で奪って相手ゴールに近い位置からカウンターをかけようとしているので、前線での守備力を重視し、前線でのハードワークを重視している。また奪われた場合に戻ることができる献身性も求めている。
しかし、現状中盤や最終ラインからのカウンターになっているので、ボールを長距離運ぶ力とスピードが必要だ。その能力で言えばシャビエルも他の選手に負けていない。とすれば前線でのハードワークと奪われた場合の献身性を見せれば、チャンスはあるはずだ。魔術師の復活に期待している。
16 マテウス
- 生年月日 1994/9/11
- シーズン中の年齢 26歳
- 出身 ブラジル
- 身長 / 体重 167/69
- 紹介
爆発的なパワーを持つブラジル人ウィンガー。同じウィンガーでもシャビエルがコンビネーションで活きるタイプなのに対して、単騎でゴールを陥れることができる選手なのだ。ルヴァンカップグループステージ第1節で見せたフリーキックは、まったく流れとは関係なくゴールを得られるというマテウスの怖さを示している。
- 課題
横浜Fマリノスで、戦術に嵌め込んだときのマテウスは恐ろしいプレーヤーだった。もともとはそんなに器用な選手ではないので、周囲がどう活かすかを考えてあげないといけない。そのためには周囲が彼のプレーを深く理解する必要がある。少々熟成には時間が必要そうだ。
- 期待
現状の名古屋グランパスのサッカーでは、カウンターが命だ。数的優位でゴールを落とし込むということはできない以上、単騎でゴールを奪えるマテウスのパワーに期待するしかない。10ゴールを期待する。
17 山﨑凌吾
- 生年月日 1992/9/20
- シーズン中の年齢 28歳
- 出身 岡山県
- 身長 / 体重 187/82
- 紹介
湘南ベルマーレからやってきた、ハードワークできるストライカー。前線からボールを奪いたいグランパスとしては、前でボール保持者にアタックできるハードワーカーが必要だ。少なくともフィッカデンティ監督のサッカーではジョーよりもハマる可能性はある。ブラジル人選手に負けない体格でありながら、あれだけ動けるのは素晴らしい。名古屋グランパスの今年の成績は山﨑凌吾の出来に影響されるといっても過言ではない。
- 課題
昨年ほとんど31試合出場していて5ゴールというのは少々寂しい。フィニッシュの精度に多少難があるが、チャンスに絡む割合が高いことはいいこと。その精度をどう高めていくことができるのか。
あとはキャンプのほとんどを怪我で棒に振ってしまった。怪我を再発させないことも求めたい。
- 期待
Youtubeビデオを見て頂くとわかるが、サイドに流れてクロスをあげることもできるし、ボールを収めて落とすこともできる。裏抜けもできるしヘディングも強い。あとはフィニッシュの精度だけ。ハードワークができてこれだけいろんなことができる選手は間違いなくフィッカデンティ監督の好みなはずだ。
https://www.youtube.com/watch?v=W32qeFnwemo
25 前田直輝
- 生年月日 1994/11/17
- シーズン中の年齢 26歳
- 出身 埼玉県
- 身長 / 体重 177/72
- 紹介
右サイドからテクニカルなドリブルで切り込み、カットイン(サイドの選手が中に切り込むプレー)して左脚シュートをたたき込む。名古屋グランパスのなかでもスーパーな選手といっても差し支えはない。
2018年夏に加入してすぐに大活躍。1年半46試合で16ゴールはかなり立派な数字だ。ゴールパフォーマンスは永井龍直伝のパーフェクト・オールバック。
- 課題
なぜか左利きなのに、左サイドでプレーすると窮屈そうになる。名古屋グランパスでは左利きが多いため左サイドでもプレーできないと出場機会を失う可能性も高い。カットイン以外の攻め手をもう一つ得て欲しい。
風間八宏さんも指摘していたが、考え込むと思い切りがなくなり、うまくプレーができなくなる。思い切りプレーできることも必要だ。
- 期待
今年はもう中心選手としてやってもらわなければならない。最低10ゴール。今の前田直輝ならできるはずだ。
27 相馬勇紀
- 生年月日 1997/2/25
- シーズン中の年齢 23歳
- 出身 東京都
- 身長 / 体重 166/63
- 紹介
内田篤人命名「ドラミちゃん」
千葉和彦プロデューサーが紹介してくれているこれがやはり一番インパクトはデカい。でもメチャメチャ初速が早いのだ。小さくてすばしっこい、それでいてパワフルなキックは代表でもゴールに直結するほど。右利きだが、右サイドでも左サイドでもどちらでもクロスをあげられる。貴重な存在。
https://www.youtube.com/watch?v=zBwszfZBnE8 より引用
- 課題
鹿島アントラーズ戦では、得意のドリブルを止められることが多数あった。抜き方の癖を見抜かれているのは明らか。だとしたら対策は、見抜かれても止められないくらいになるか、選択肢を増やすか、だ。相馬勇紀の選択に注目だ。
- 期待
まだまだ成長途中だが、不思議と結果を残してくれる。代表でも臆することなく結果を残した。今年は10ゴールを期待したい。
2020年シーズンに向けて
ここまで4回の選手名鑑をみていただいたかたはわかると思うが、シーズンインの時点で、怪我人が多すぎる。
- 復帰直後:渡邉柊斗、山﨑凌吾
- 軽傷:シャビエル(離脱はせず)
- 離脱:太田宏介、長谷川アーリアジャスール、ジョー
離脱者が全員帰ってくるまでに、相当多くの試合を消化してしまうのが、今年のオリンピックイヤーのJ1リーグの特徴だ。夏のインターバル明けにはもう10試合も残っていないのである。
今いる選手で、なんとか頑張るしかない。逆に若手にとってはチャンスだ。下剋上に期待したい。