今日、「止まない雨は無い……って言うよね」と、君が言ったことを思い出した。
この数週間、断続的に日本に降り続く雨に打たれていると、いつか止むと理屈ではわかっていても、感覚的には『止まない雨』そのもので、乾かない洗濯物を部屋干ししては憂鬱な気分だった。
それでも雨は止んだのだ、豊田の地で。
Jリーグ再開後、初めて観客を入れた豊田スタジアムをまるで祝うかのように、試合前には太陽が顔をのぞかせた。止まない雨は無かった。そして雨が降れば地固まるのが日本的お約束というものだ。
名古屋グランパスも良い状態になってきている。
スタメンは米本
さて、この試合、マッシモ・フィッカデンティ監督はCMFとして稲垣と米本を選択しました。前節スタメンだったシミッチはベンチスタート、代わりに米本スタメン。米本とシミッチとを比較すると、機動力とボール奪取力に優れる米本に対し、パスを散らす能力と高さ強さで勝るシミッチとなるでしょう。
この試合、フィッカデンティ監督としては恐らく、パスを散らす……つまりシミッチ起用で主体的にボールを保持することよりも、ハーフウェイラインより自陣寄りで相手のボールを刈り取って、すばやくカウンターへ移行したかったんだと思われます。
序盤
試合開始からしばらくは、グランパスの守備陣が鳥栖の苛烈な前からプレスに晒され、ボールを奪ってもセーフティ気味に前に蹴りだす光景が目立ちました(相手スローインになっちゃってもOKというように見えた)。
稲垣米本のコンビだと、ハイプレスに晒されるとなかなかボールを前に進められない、ということかもしれないですね。ただし、ハイプレスを仕掛ける側には時間と強度の体力的限界があるし、仕掛けられる側も慣れて対応できるようになるもの。
10分頃に鳥栖の安に良いシュートを打たれた場面もありましたが、それ以後では丸山、中谷、稲垣、米本が相手のハイプレスを特に苦も無く剥がすようになり、自陣での守備的なボール保持は安定しました。
阿部の位置と空くサイド
自陣でのボール保持が安定したら、次はどうやって相手陣地に攻めようかという話になります。阿部が下がってボールを受けることでその問題は解決しました。阿部が受けて米本・稲垣に落としてやれば、二人は前を向いてボールを持てます。前を向いてボールを持てれば米本・稲垣も前進できる。
前半15分頃の攻撃がまさにそういうパターンでした。自陣でボールを持ちつつ阿部のヘルプから前を向いた米本が右サイドに張っていた相馬へロングパス。鳥栖のサイドバックがかなり中に絞ってプレーしていたこともあり、相馬かマテウスかどちらかのサイドはだいたいフリーで、そこまでボールを届けられさえすれば、あとは相馬とマテウスの突破力勝負となります。
そして、今日の相馬とマテウスが総じてちょっと良くない日だったようで、お互いに攻める時間帯がありつつも試合は膠着しました。
そして前田……の得点をお膳立てした阿部と周囲の選手達
選手の交代とかを見る限り、鳥栖は後半に選手を入れ替えてから勝負しようという作戦だったと思われます。
しかし鳥栖の選手交代と同タイミングで投入された前田が惜しいシュート(クロスバー直撃!)を打ってからはグランパスの攻勢が続きました。特に、鳥栖のアンカー横のスペースの埋め方が時間経過につれなんかテキトーになってきていた(ように見えた)こともあり、主に阿部が左側のそのスペースからグランパスの攻撃を操っていましたね。
得点自体は阿部のスーパーなパスを前田がスーパーなボレーで決めきった(あのボレーめちゃくちゃ難しいですよ)ものでしたが、阿部があのスーパーなパスを出せた陰には周囲の選手達の働きがありました。
こんなコンビネーション狙ってできるものではないので、状況を上手く利用した阿部が一番上手かった………と言うかよく見えていたんだと思います。ただ、阿部と稲垣に限って言えば、前節のあのゴールもそうだったように、二人のコンビネーションは確実に高まっているんじゃないかな、と思わせられる光景でした。
最後のクローズ
グランパスがリードしたまま迎えた85分頃から、グランパスの選手達が露骨に時間を消費し始めました。フィッカデンティ監督にそのあたりをよーく言い含められて出てきたであろう途中交代のシャビエルはともかく、ドリブル勝負大好きマン前田ですらコーナーフラッグ近辺でのボールキープをする姿には笑ってしまいましたが、これもフィッカデンティ監督の『現実的』な感覚が選手達に浸透してきた証拠なのでしょう。
鳥栖さんの反攻が強まることも無く試合はそのまま終了。スーパーゴールによる一点を地味~に守り切ったグランパスの勝利でした。
この試合の個人的良かったところ
- 日に日にフィットする稲垣
- 阿部を信じる者は救われる
- 信頼と実績のミッチisゴッド
- ミッチが弾いた後のポスト跳ね返りを集中切らさずクリアした成瀬
- ようやく周りと息が合いだした感のある山﨑(もっとやれるはず)
- 相変わらず地上戦守備最強吉田豊
- 中谷のポジトラどりぶる
- マッシモの選手起用は認めざるを得ない感じ
この試合の個人的ウーンなところ
- 毎回ちゃんと攻撃のフォローしてる吉田豊をガン無視するマテウスと相馬
- 同じく成瀬をかなり無視するマテウスと相馬
- そもそもマテウスと相馬
- 山﨑まだまだ周囲に遠慮しすぎでは?(山﨑から漂う良い人感半端ない)
- 丸山のキックの精度が相変わらず良い時と比べてなんかイマイチなような………?(どっか痛めてたりします?)
最後に
どう考えても阿部がいないとヤバくなるのが目に見えまくっていて、阿部不在時を想像すると思わず動悸がするんですけど、暗い未来を考えすぎても仕方ないし、きっと僕たちの大天使シャビエルがそんときはやってくれるはず。
着々と濃厚に固まりつつある阿部と稲垣のコンビネーションを堪能し、そして選手達に浸透してきたイタリアの風を感じながら、次の試合を待ちましょう。チャオ!