アントラーズ戦前半19分で前田直輝が負傷交代。本人は太ももにテーピンググルグルをして戻ろうとしていましたが、フィッカデンティ監督が止めて、相馬勇紀に交代を指示しました。
敗戦しましたが、負傷交代まではグランパスも悪いペースではなかっただけに、ここからリズムがどんどん狂っていったような感じもあります。
それだけケガは怖い。
皆さんのなかにも、休日にスポーツを楽しんでいる方もいるかもしれません。
プロの選手も激しいプレーを行うだけではなく、激しいプレーができるように準備としてケガ予防に取り組んでいます。今回は小ネタということでそのケガ予防についてご紹介します。
どんなケガが起きるのか
高校生を対象とした研究では部活で発生したスポーツ外傷の種類として、一番多いのが捻挫。次いで骨折、脱臼、腰痛。行った応急処置はアイシング 81.6%、安静 40.2%、圧迫・ 固定 29.8%で、捻挫は関節のトラブルなので、そこが多いようですが、野球以外の球技(サッカー、バスケットボールなど)では筋肉系のトラブル(打撲、肉離れ)が増えてくるようです。(※明治国際医療大学スポーツ科学講座の調べ)
大事なのはウォーミングアップ
ウォーミングアップ、面倒くさいって思ったりしませんでしたでしょうか。僕も競技をやっていた時代は面倒で、ちんたらちんたらジョグしてたりして、実はあんまりウォーミングアップになってなかったというのが記憶にあります。でもスポーツドクターが口を揃えて言うのは、このウォーミングアップを真面目にやれ、ということでした。
ウォーミングアップの目的
実はウォーミングアップで一番大事なのはまさに「暖めること」です。ウォーミングアップをおこない体温を上昇させることにより以下のメリットがあります。
- 心肺の活動が高まり、酸欠状態を起こしづらくなる
- 筋肉の柔軟性が保たれ、肉離れなどの外傷が起こりづらくなる。
- 動作を円滑にすることができ、パフォーマンスを発揮しやすくなる
筋肉系の外傷の予防には一番効果がありそうです。
実は心肺機能が上がっていると、筋肉の末端まで酸欠が起こりづらいということになり、それが肉離れの可能性をほんの少しでも減らしてくれるというのです。
たしかにサッカーの試合前には30分弱のウォーミングアップの時間がありますね。試合中にもリザーブメンバーはウォーミングアップを続けています。
バカにできないストレッチ
以前、グラぽでも「FIFA11+」というストレッチメソッドを紹介したことがあります。
僕が競技をしていたときは、ストレッチっていうと脚を伸ばしたり、肩をグルグルまわしたりして、関節を伸ばしておけばいいだろう、なんていう感じでやられていることがほとんどでした。
ストレッチという言葉は、引き伸ばす・伸びる・伸展する・伸縮性という意味をもちます。だから関節を伸ばすのは間違いではないのですが、上の記事でも言っているように、今の主流はそういうストレッチではありません。
ストレッチの目的
ストレッチには2つの目的があります。
- 関節を動かして、柔軟性を上げ、可動域を広げます。可動域が狭くなると、足が届く範囲が小さくなってしまいます。結果的にプレーの幅が狭くなり、パフォーマンスに差が出てしまいます。
- 筋肉を使うことで、柔軟性を確保します。筋肉の柔軟性を確保できないと、急な動きだしや方向転換などに対応できずに肉離れの原因になります。
関節と筋肉の柔軟性確保が目的ということになりますね。
ストレッチの方法
これはFIFA11+でも言っていることですが、一般的なイメージの、柔軟体操のようなストレッチは静的ストレッチと呼ばれ、実は筋肉のパワーを減らしてしまうという効果があると言われていて、主にクールダウンで行うように言われています。
では、試合前のストレッチはどんなことをやるのでしょう。
- ダイナミックストレッチ:動きを伴うストレッチです。体を大きくリズミカルに動かして筋肉や関節に刺激を与えます。試合前のウォーミングアップはこのダイナミックストレッチも含まれていると考えて良いでしょう。
- バリスティックストレッチ:反動を使ったストレッチで、関節の可動域を広げることを目的とします。ブラジル体操と呼ばれるストレッチがまさにこのトレーニングになります。実はラジオ体操もこのバリスティックストレッチの1種と言って良いでしょう。
ブラジル体操についてはこの記事と動画を是非
https://dailyportalz.jp/kiji/150428193426
だいたいダイナミックストレッチを行って、バリスティックストレッチ、そこからボールをつかったウォーミングアップに入るというのが一般的なサッカーの試合前のルーティーンのようです。
プロはもう1手間ある:インジュアリープリベンション
若い選手では通常のウォーミングアップで済んでいるかもしれませんが、ケガ持ちの選手は一般的なストレッチとウォーミングアップでは不足していることがあります。
それがインジュアリー(外傷)プリベンション(防止)になります。
ストレッチに入る前に、その個人に合わせたプログラムとして行います。その内容は千差万別になるそうです。
https://www.sakaiku.jp/column/interview/2020/014719.html
たとえば名古屋グランパスであれば前田直輝は軽症、重症は不明ですが太ももの肉離れと思われる症状に苦しんでいると思われます。
- 肉離れの急性期:48〜72時間(2〜3日)程度と言われており、その期間は患部に炎症症状(痛み、出血、腫れ、熱感など)がある状態です。この間は激しい運動は避けます。
- 柔軟性の確保:炎症が治まったら、安静による機能の低下を防ぐため、積極的に患部を動かしていくようにします。あまり筋肉を使わないでいると、炎症の修復過程でかさぶたのような瘢痕(はんこん)組織ができて硬くなり、運動再開後に肉離れを再発するリスクが高まると言われています。(※シャビエルの2018年から19年は、このような瘢痕組織による問題が起きていたのでは・・・と想像しています)筋肉が十分な柔軟性を回復できるようにストレッチを行います。(※ただし早い段階でのストレッチは痛みを伴うことが多いため、必ず医師や理学療法士の指導のもとに実施する)
- 筋力の回復:痛んだ筋肉は筋力が衰えています。たとえば太ももの裏側(ハムストリングス)を強化する場合、筋線維を伸ばすような動作は避け、ヒップリフトやレッグカールなど、筋肉を縮めながら力を出せるようなトレーニングを行います。ヒップリフトは膝を立てた状態で仰向けになり、お尻を挙げて横から見て体が一直線になるように両足で支えます。30秒程度キープできるようにします。片足支持で行ったときに、怪我をした脚としていない脚では差がでてしまっているので、左右の筋力がほぼ同じ程度に回復するまで続けるようにします。
- 再発予防:ふともも裏=ハムストリングスを使う際に、大殿筋(お尻の筋肉)を先に筋収縮できるようにすると、肉離れを予防しやすくなります。肉離れをしたことがある人、しやすい傾向のある人は動作時にハムストリングス⇒大殿筋の順に筋肉が収縮します。これでは肉離れのリスクが高まります。そのため予防の一つとして大殿筋→ハムストリングスの順に筋収縮を入れられるように身体に学習させるためのトレーニングをする必要があります。
現在、前田直輝はこのプログラムを経てからピッチに現れるはずです。現在は急性期のはずで、フィッカデンティ監督が「当日になってみないとわからない」というのは炎症が治まってくれないと判断はできない、ということと思われます。
これだけいろいろ準備していても発生してしまうケガ。我々にできることは、選手がどれだけ注意してコンディションを整えているのかを偲び、それを踏まえて応援することだけ。
前田直輝選手がはやく復帰してくれることを祈りましょう。