いささか旧聞になりますが、長谷川健太監督の契約更新が発表されました。
Twitter(X)界隈でも賛否両論だったな。直後のアビスパ福岡戦で惨敗したこともあって、不満の声を挙げるサポーターも多かったようだ。
後半戦(18節以降)で勝ち点12しか取れていません。これは18チーム中15位です。それを心配している方も多いようです。
確かに後半戦、マテウス後の戦い方に苦しんでいるのは間違いないな。
心配するのはしかたないですね。8月下旬以降、成績が振るわなかったことは事実ですから。
とはいえ、今年どうにかなってしまうわけではない。来年に向けてはまた補強もあるだろうし、来年のことを今から騒いでもしかたないのでは?と俺は思う。
来年どんなメンバーで臨むことになるのかもわからないうちから、「もうダメだ」なんて弱音吐いていてもしかたないですよね
長谷川健太はビルドアップが仕込めていない?
ビルドアップ:守備でボールを奪った後、攻撃の初期段階の「組み立て方=ビルドアップ」のこと
タイムラインを見ていると、もう2年目も後半になりつつあるのに、まだビルドアップを仕込めていないのは問題なのでは?という声があがっていました
自分の記憶が確かなら、名古屋グランパスのビルドアップが機能していたことなんて、相当前まで遡らないとないと思うのだが。ピクシー時代か?
Jリーグ.jpの上に貼った記事でも、サガン鳥栖のパス回しにやられてしまうところを取り上げられていました。やはり堅守速攻以外のウリがなかったのが23年前半までのグランパスということで間違いはないのかもしれません。
一つの武器を突き詰めれば強力な武器になる、というのは間違いないので、その武器を持っていたことだけでも十分だとも思うぞ
まあ、それは良いとして、ボールが良い形でキャスパー・ユンカーを中心とした前線に入りません。前にボールを進めることができていない、というのがここ数試合の傾向です
ビルドアップと言っているが、突き詰めればパスが繋がるかどうかだ。
パスを成功させるための要素はなんでしょうか?
要素は3つあると思う
(1)パスを出す側のポジショニング
(2)パスの正確性
(3)パスを受ける側のポジショニング
グランパスの場合、どれが問題なのでしょうか?
まず、サンフレッチェ広島にしても、アビスパ福岡にしても、相手FWに機動力のある選手・献身性のある選手を起用して、(1)パスを出す側の選手にプレッシャーをかけてきている。すると影響が出るのはどこになる?
DFが慌てるシーンが増えている気がします。(1)パスを出す側のポジションに無理が出てきますし、(2)パスの正確性が落ちますね
アビスパ戦でも永井謙佑がボールを貰いにセンターラインよりも自陣寄りに戻ってきてパスを受けようとするシーンが何度もあった。プレスを回避するには、常に複数のパスの選択肢を(3)パスの受け手のポジショニングで作っていくしかない
現状では長いボールを蹴ってしまうようですが、前線に繋がることはほとんどありませんね
藤井陽也がたまに出す意図的なサイドチェンジのロングボールは「狙った」ものなので繋がる
しかし、苦しまぎれに出すロングボールは(2)パスの正確性 に欠ける。だから繋がらない
前述の通り、永井謙佑やキャスパー・ユンカーが自陣に戻ってきても、そこを使わずにロングボールを蹴り出してしまうケースが少なくありません。何故でしょうか。
「繋ぐ勇気がない」からじゃないだろうか。ボールを繋ごうとして失敗すれば、それで失点に繋がってしまう。
DFラインに蹴り込まれてハイプレス、そこで慌てて蹴り出したところを回収してまた・・・この繰り返しがずっと続いている感じなんですよね
パスコースを作ろうとする動きは見えているので、仕込みはしていると思うので、コーチ陣の責任だけではないとは思う
ハイプレスにも弱点がある。プレッシャーをかけに前線が行けば、中盤が空く。そこを押し上げてDFが中盤を埋めたら背後が空く。ハイプレスをかわすことができれば、十分にチャンスは作れるはずなんだ
勇気と自信を持ってプレーをして欲しい
今のグランパスはフィッカデンティの遺産だけ?
タイムラインでは「フィッカデンティの遺産を食い潰しているだけ」という声も挙がっています。
フィッカデンティさんの功績はもちろんある。cm単位でポジショニングを仕込んだ守備など、仕込まれた堅守はある意味名古屋の代名詞にもなっていた。その遺産の影響はもちろんあった。去年30得点しかできなかったのに8位に入れたのはその影響が間違いなくあったと思う。
それならば、フィッカデンティ監督のままでも良かったのでは?
まずはグラぽの過去記事で青井高平さんの書いたこの記事を見てみて欲しい。
年齢層が高い、若手を起用するのはカップ戦の最初だけという感じの記事でしょうか?
それは、その時勝つというミッションがある場合、よく有る話だ。その場の最適化だけを考えてサッカーを組み立てられれば、比較的強いチームを作ることは可能だ。
やっぱり強いのが一番。勝つのは嬉しいし、それでいいじゃないですか。
そこで先ほどの青井高平さんの記事に繋がる。競争に勝ち残った若手しか使わない=育成よりも勝利を優先というのがフィッカデンティ政権だった。
フィッカデンティさんの退任のときの記事は覚えてるかな?
目先の給与の額とかが問題というよりも、育成もミッションに入れて欲しい、というチームの方針転換が合わなかったのでは?という予想でしたね。
先のことを考えると育成の優先度を下げる=戦力の獲得は移籍頼りということになる。
それでは選手の獲得費用などでチームの財政はずっと厳しいことになる
チームが育成も重視して欲しい最大の理由は、移籍獲得だけじゃなく、自前でも選手を育てられるようにしたいからじゃないかな
今のJリーグ、NPB(プロ野球)と違って、赤字経営を許さないっていうスタンスですからね。そこが難しい。
それにもうひとつ。移籍選手が多くて、生え抜きが少なかったことを「移籍してきた選手ばかりで、よく応援できますね」といった他チームサポーターからの揶揄があったのも覚えている
移籍してきた選手だからといって応援できないわけではありませんが、中学生・高校生のころから応援していた選手が頑張ってくれるのは、サポーターとしても嬉しいですよね。
貴田遼河選手の人気を見ていてもそう思います。
あらためて、なぜ長谷川健太監督なのか?
上で紹介した記事では、こんな風に長谷川健太監督を選択した理由を推測していましたね
現時点でもその考えは変わっていない。
監督に与えられるミッションは、勝つことだけではない、ということは十分に考えられる
長谷川健太監督に与えられたミッションを、もう少し解像度高く明らかにできないでしょうか
やはり、第1はチームをきちんと「若い選手がベテランを突き上げていくサイクルに乗せる」ということじゃないだろうか
若手はチャンスを与えて、試合に出ることで成長する
途中出場でもきちんとチャンスを与えていくことが重要だと思う。貴田遼河・ターレス・久保藤次郎・吉田温紀らに、出場機会をちゃんと与えている
まだ安定しているとは言い難いですが、貴田遼河・吉田温紀・久保藤次郎はゴールという結果を残しましたね
彼らがすぐにレギュラーに取って代われるかはわからないが、少なくとも刺激にはなったはずだ。永井謙佑も吉田温紀のシュートが決まったことには感じるものがあったようだしな
でも成績面では優勝が難しくなったことなどでサポーターに不満はありそうです
ミッションのなかに含まれるノルマがどうなのかだな。おそらく絶対優勝というノルマはないはず
だとすると、何位以上、という設定があったと思う。
それにしても、契約延長が早くないですか?ノルマが達成できるかどうかもまだハッキリしないじゃないですか
そこはやはりマテウス・カストロの移籍を止めることができなかったということについて、状況を難しくしたのは強化側の責任、と認めたからではないだろうか
なるほど、それなら、長谷川健太監督に責任はないからもう1年、となってもおかしくないですね
監督を変えるべき状態はどんなとき?
今回は延長という結果になりましたが、どんな状態なら監督を変えるべきなんでしょうか?
もちろん、残留争いで今のやり方のままなら降格してしまう!というような状態ならばシーズン中であろうとも交代すべきなんでしょうけど
監督を交代すべき状況というのは2パターンあると思う
(1)組織や戦術がマンネリ化してしまっている
(2)組織が崩壊してしまっている
(1)は、前の記事でも取り上げてましたね。
そういうときは、
・人(選手)を代える=新陳代謝する
・人(監督)を代える=やり方を変える
・プレーの質を上げて、勝ち続ける
のどれかしかないってことでしたね
そう、(1)は長期政権の弊害だ。そのため、サッカーの監督はだいたい3年から5年くらい、というサイクルで交代すると言われている
(2)の組織が崩壊している、とは?どんな状態なんでしょうか
選手起用に納得感がない、たとえばどんなにいいプレーを見せても使って貰えないなどの状況で、レギュラーの選手以外が腐ってしまうようなパターンだ
そこに関しては、先日の山口素弘GMの囲み記事に参考になる部分がありました。
本人も練習からそれだけのものを見せていたし、少し前に貴田が言ってたのかな。『監督が見てくれている』と。練習で良いプレーをすれば出るチャンスは十分にあるというのは、今の練習場では繰り広げられていて、それは当然クラブとしては求めているものだったし、そういう競争をしながらタイトル、優勝争い。それとチームの成長という部分もやってほしいというところも、できているかなというところですね」
https://www3.targma.jp/akasyachi/2023/10/11/post103548/
若手たちも、頑張ればチャンスがある、と感じているのは、とても良い状態だと思う
この状態のチームを作れているのに、成績以外の理由で契約を打ち切る理由は感じられない
正直な長谷川健太監督の評価はどうですか?
長谷川健太監督の印象は、この2年で変わりましたか?
チームに来る前よりも印象は変わった
来る前は良くも悪くもクラシカルな監督というイメージだった。
今年に入って分析チームを強化したり、動画を用いた細かいフィードバックの提供など、時流に乗った改革も見せている
自分でできない部分は思い切ってほかの人に任せているところも好印象だ
ぶっちゃけましょう。正直に長谷川健太監督をどう評価していますか?
戦術面で言えば、ビルドアップの問題はさておき、ファストブレイク以外の繋ぐサッカーを仕込むところに不安が残る。そこは不満があるところだ
短期間で劇的になにかを改善できるタイプというわけでもない
いわゆる戦術家ではないからだ
ただ一方でミッションに従ってチームを作り上げるという点では優れている
監督の仕事はサッカーの戦術を仕込むところと、チームをマネジメントするというのが両軸だと思う
その観点から考えた場合、戦術の仕込みは満点とは言えないが、マネジメントはかなり良いのではないかと思う
総合的に見たときには、十分な合格点だと考える
世の中には素晴らしい戦術家でかつマネジメントもしっかりしている、という人もいると思いますが、そういう人が欲しいです
若手の野心家監督の起用を!という声があるのも知っているが、グランパスはJ1に居続けないといろいろ破綻して難しくなってしまうところもある。失敗はできない
そう考えると実績がちゃんとあって任せられる監督じゃないといけない。それがグランパスの監督選びの難しさだ
ぶっちゃけ、どんな名監督でも、グランパスに来てくれなければ俺にとっては名監督ではない
グランパスに来てくれる監督のなかで、一番いい人であることを望むよ
そうですね。
まずはいったん契約延長が決まったので、長谷川健太監督を応援しましょう!
次の試合では、みんなの笑顔が見れますように